イギリスのプディングの美味しさをもっと多くの人に知ってもらいたいと活動する、イギリス菓子研究家、パティシエ。ル・コルドン・ブルー横浜校にて菓子ディプロムを取得。英国コッツウォルズのスリーウェイズ・ハウス・ホテルにてイギリス伝統菓子作りの腕を磨く。
〈The Pudding Party Tomoとイギリス菓子作り〉 https://youtube.com/channel/UCV1hGcG5t0SELBBiuJ1GqBA
The Pudding Party Tomo -イギリス菓子研究家/パティシエ-
イギリスのプディングの美味しさをもっと多くの人に知ってもらいたいと活動する、イギリス菓子研究家、パティシエ。ル・コルドン・ブルー横浜校にて菓子ディプロムを取得。英国コッツウォルズのスリーウェイズ・ハウス・ホテルにてイギリス伝統菓子作りの腕を磨く。
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The Pudding Party Tomo -イギリス菓子研究家/パティシエ-の記事
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レシピ・料理

バレンタインに! 手軽に手作り〈チョコレートファッジ〉
ハリポタにも登場する定番おやつ ファッジはイギリスでは定番の、なくてはならないお菓子です。見かけはキャラメルのようですが、歯にくっつく感じはなく、口の中でスッと溶けます。キャラメルが苦手な私も好きな、紅茶やコーヒーと一緒に出されると、ついつい、あと一つ! と、手が止まらなくなるイギリス菓子です。 バニラ味の伝統的なファッジ。 伝統的なファッジはキャラメルのようなバニラ味のものですが、今はチョコレート味や、マシュマロ入り、ナッツ入り、リキュール入りなど、いろいろなバリエーションがあります。ファッジは〈ハリー・ポッター〉のお話にも出てきますし、日本の人気テレビ番組でも紹介されているので、ご存じの方もいらっしゃるでしょう。私がかつてイギリス、コッツウォルズで働いていたホテルでは、このお菓子はデザートの後、コーヒーや紅茶と共に食事の最後に出すものでした。甘いデザートの後の、甘いファッジ…。イギリス人の甘いもの好きにはいつも驚かされます。 ちょっと寄り道 語学学校時代の思い出 イギリスのミントチョコ〈アフター・エイト〉。Only_NewPhoto/Shutterstock.com ファッジのように食後に出すお菓子といえば、私が語学留学時代にアルバイトをしていた中国人経営の和食レストランでは、〈アフター・エイト〉という、ミントクリームを挟んだ薄いチョコレートを出していました。イギリスでは有名なお菓子で、日本人はこの爽快なミントクリームに好き嫌いがあるかもしれませんが、私は大好き。日本でも手に入るので、ミント好きな方はぜひ試してみてください。 ちなみに、このアルバイトは語学の実地体験の場として本当によかったと思います。語学学校では先生たちは分かりやすい英語を話してくれるので、なかなか一般の人が話す、生の英語に触れることはありません。一方、このレストランに来るのは現地のイギリス人ばかり。生きた英語、特に若者の話す英語は、早口でスラングが混じって分かりづらいものでしたが、あー、そんな言い回しもするのね……と、自分で使いこなすまではいかなくても、学ぶことができました。予約など、顧客からの電話に出なくてはならないこともあり、最初は本当にドキドキしましたが、鍛えられて度胸がつきました。また、店では、日本語を教えてほしいというビジネスマンや、家に招いてイギリス菓子を教えてくれる方など、日本好きな方たちとの出会いもあり、貴重な体験をしました。 フランスのパティスリーに美しく並ぶお菓子。 わずかながらも収入を得ると、心の余裕もできました。どんどん減っていく貯金額に恐怖を感じて、節約に徹していた日々から脱し、そのお金でさらにティールーム巡りをしたり、イギリス国内やフランス、イタリアを旅したり。語学学校で出会ったフランス人の友達とはフランスへ、イタリア人の友達とはイタリアへ。出逢いに恵まれた、かけがえのない旅の思い出です。 イタリアのお菓子屋さんはおおらかで親しみやすい雰囲気。 どこを旅しても、お菓子屋さんばかり訪ねていました。店もお菓子も、その国によって個性があって、面白いなと思いました。フランス菓子はやはり美しい! それに比べてイタリアはおおらかな印象です。 苦戦したファッジ作り さて、ファッジに話を戻しましょう。これがまた、コッツウォルズのホテルでパティシエとして働いた際に、特に苦戦したお菓子の一つでした。見たことも、食べたことも、もちろん、作ったこともないお菓子。それを、とてつもなく大きな寸胴で大量に作らなくてはならない。なのに……以前の記事でもお話ししましたが、レシピは適当! ファッジ作りの手順は、生クリーム、砂糖、バター、バニラを寸胴に入れて火にかけ、鍋から目を離さずに、煮詰め具合の色とテクスチャー(質感)を確認しつつ、ちょうどよいタイミングになったら、目分量で粉糖を振り入れながら混ぜていく、というもの。レシピはあるようでなく、とにかく自分の感覚で作るのです。お客様に出すものなので、失敗は許されません。大量の材料を無駄にできないというプレッシャーもあって、最初は本当に気の重いミッションでした。仕上がりが固すぎたり、柔らかすぎたり……。もちろん、何度も何度も作るうちに、慣れて感覚を掴むことができましたが、失敗して落ち込むことも度々ありました。というわけで、ファッジは私にとって、思い出深いお菓子の一つです。 今回ご紹介するチョコレート入りのファッジは、伝統的なバニラ味のものより、ずっと簡単に作ることができます。チョコレート自体の固まる性質を利用したレシピで、バニラ味の場合のように煮詰めなくていいので、失敗が少ないと思います。ただ、チョコレートは高温になりすぎないよう注意。チョコレートが焦げるとボソボソになってしまうので、溶かすときは慎重に、ゆっくり弱火で。そこだけは注意が必要です。 それでは、作っていきましょう! チョコレートファッジの作り方 材料(18x18cmの型) 練乳……240gチョコレート……280gバター……40g塩……ひとつまみバニラエッセンス……少々 *チョコレートは高級なものを使えばもちろん美味しくなりますが、普通のチョコレートのほうが、こういったイギリス菓子には合う気がします。ミルクかビターかは、お好みでお選びください。甘いのがお好きな方はミルクで。ミルクのほうが、若干柔らかめに仕上がります。 作り方 1.練乳とチョコレートを鍋に入れて、弱火にかける。 とにかく弱火でゆっくりと。チョコレートを高温にしないように。チョコレートが溶けたらすぐに火から下ろす。 2.1の鍋にバターと塩、バニラエッセンスを入れ、しっかり混ぜる。 しっかり混ぜると、下写真のようなツヤが出る。 3. 型にオーブンペーパーを敷き、2を流し、平らに整える。 大体きれいにならす程度でよく、そのまま固める。冷蔵庫に入れるなら1時間、常温なら4時間以上おく。 仕上がりはこんな感じ。 4.好きな大きさにカットする。 常温で1週間ほど保存が可能。冷蔵庫に入れて保存してもよいが、食べるときは口どけをよくするため、常温に戻しておくのがおすすめ。 ラッピングは、生チョコの空箱に入れたり…… 袋に入れてシールで飾ったり。ポップにしてもかわいい! ただ混ぜて冷やし固めるだけで、美味しくなる魔法のファッジ。 ぜひ作ってみてください。
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レシピ・料理

【クリスマスレシピ】サクサクふわふわの華やかケーキ〈メレンゲルーラード〉
本で見つけた気になるお菓子 メレンゲルーラードって、どんなお菓子? この名前を初めて耳にする方もいらっしゃるかもしれませんね。一言でいうと、メレンゲで作るロールケーキ。ケーキ生地の代わりにふわふわのメレンゲをシート状に焼いて、クリームとフルーツを巻き込んでロールケーキにします。 私がこのお菓子を知ったのは、まだイギリスで働く前のこと。東京にあるイギリス風のティールームで働いていたときに、当時の先輩が「この本、絶対気に入るよ」と一冊の本を貸してくれました。イギリスの田舎にあるティールームを紹介したもので、その中にこのお菓子が載っていたのです。 今でこそイギリスが大好きな私ですが、じつは当時、初めて挑んだロンドンでの語学留学がうまくいかず、敗北感を抱いていたところでした。季節が冬だったとか、理由はいろいろありますが、とにかくイギリスなんて大嫌い! と思っていたのです。それなのに、なぜかイギリス風のティールームで働くことに。イギリスに行った後だったのと、その店が私の大好きな町にあったという、単純な理由からでしたが、思えば不思議な巡り合わせでした。このティールームのおかげで今の私があると言っても過言ではありません。大嫌いと思っていたイギリスに、再び導かれることになったのですから。 集めたイギリス本の数々。今も大切にしています。 店までの毎日の通勤は、片道1時間半。電車の中で、いつも本を読んでいました。先輩に借りた本に夢中になって、次第に読むのはイギリス関連の本ばかりになりました。本に出てくるイギリスの田園風景は美しく、お菓子も素朴でとっても美味しそう! 日本では見たこともないお菓子がたくさんある。これはもう行くしかない! 本が伝える景色に魅せられ、私はそう決めました。 大都市ロンドンに行ったのが間違いだった。田舎に行けばよかったんだ! 私は再びイギリスでの語学留学を計画しました。本で紹介されているコッツウォルズ地方の数々のティールームを訪ねられるよう、コッツウォルズの中心地、チェルトナムの語学学校を調査。斡旋業者に頼んだロンドン留学の失敗に懲りて(それから節約のためにも)、自力で見知らぬ町の学校を調べ、英語もろくにできないのに入学手続きをし、学生ビザを取得しました。お金の許す限り滞在することにしたのです。 コッツウォルズでついに遭遇 花々に囲まれた、コッツウォルズらしい石造りの家。 さて、無事コッツウォルズに乗り込んだ私。語学学校の生活はとっても楽しかったのですが、この留学の一番の目的は、休日にバスを乗り継いでいろいろな村に行き、お菓子を食べることでした。夏休みなどの長い休暇には電車も使って、イギリス各地の田舎に出向きました。英語が特に好きというわけでもなく、語学力は日本の学校で培った程度。でも、乏しい英語でも頑張って話せば伝わる! という精神です。自分でもすごい行動力だと思いますが、大抵のことはなんとかなる! ティールーム巡りでは、いつもクリームティーというスコーンと紅茶のセットを注文していましたが、コッツウォルズの小さな村のティールームで、ついに見つけたのです! あの本に出てきたメレンゲルーラードを。いつか食べてみたいと思っていた、よく分からないお菓子! いつものようにクリームティーを食べた後、待望のメレンゲルーラードを注文しました。その店のものは、ヘーゼルナッツ風味のふわふわサクサクのメレンゲでチョコレートクリームをロールしてあります。ワクワクしながら一口。しかし……率直な感想は「とてつもなく甘い……!」でした。それでも、これはどうやって作るのだろう? と、興味をそそられます。メレンゲをどんな風に焼いて、ロールケーキの生地にするのだろう? その謎は解けないままでしたが、食い倒れの旅、いえいえ、語学留学を無事終えて、私は帰国の途に就きました。 コッツウォルズ、チッピング・カムデンのよく通ったティールーム。 それから1年後、ラッキーなことに、私はワーキングホリデーで再びイギリスに向かうことになりました。パティシエとして働くことになったコッツウォルズのホテルでは、イギリス伝統のお菓子を作っていましたが、その中にあったのです。あのメレンゲルーラードが! やった! ついに作り方を学べる! それまでメレンゲといえば、フワフワの卵白を泡立てたものか、焼いたらサクサクのクッキーになるものの、2種類しか知らなかった私。初めて作るメレンゲ生地に、これで焼いて大丈夫なの? と心配になりましたが、焼き上がったものは、あのティールームで食べたサクサクふわふわのメレンゲ生地そのものでした。 そのホテルでは、メレンゲ生地に無糖の生クリームとフルーツを巻き込んで、ロールケーキにしていました。ティールームで初めて食べたルーラードはちょっと甘すぎると思ったけれど、このレシピはフルーツの酸味で意外とさっぱりしています。 今でもよく作るこのお菓子。初めて食べる人は必ず感動しますので、ぜひ作ってみてくださいね! 作り方は、以前ご紹介したパブロバとよく似ています。生地がメレンゲで軽いので、たくさん食べられてしまう危険なお菓子です。ご注意くださいね。 メレンゲルーラードの作り方 材料(ロールケーキ1本分) 〈メレンゲ〉天板1枚分 卵白……4個分グラニュー糖……200gコーンスターチ……小さじ1(片栗粉で代用可)バニラエッセンス……小さじ1モルトビネガー……小さじ1(白ワインビネガーやレモン果汁で代用可) 〈トッピング〉 生クリーム……200mlイチゴなど、好みのベリー類を好きなだけ粉糖……適量 右は英国サーソン社のモルトビネガー。左はバニラエッセンス。 作り方 1.オーブンを160℃に予熱する。 2.メレンゲを作る。卵白に、分量のグラニュー糖のうち、大さじ1をまず入れて、ふんわりするまで泡立てる。 3.ふわっとしたら、残りのグラニュー糖の1/3を入れ、またツノが立つまでしっかり混ぜる。 4.3と同じように、残りのグラニュー糖を2回に分けて加え、その都度ツノが立つまでしっかり混ぜる。 5.コーンスターチ、バニラ、モルトビネガーを入れ、混ぜる。 6.混ざったら、クッキングペーパーを敷いた天板にメレンゲを流す。 天板の四隅にメレンゲを少しつけて、クッキングペーパーを貼り付けると、メレンゲを平らにしやすい。 7.スパチュラなどで平らにならす。 それほど神経質になる必要はなく、このような感じで大丈夫。大体平らになったら、160℃のオーブンで約20分焼く。 8.焼き上がり。 9.焼き上がったらすぐに、茶こしを使って、粉糖をメレンゲの表面全体にたっぷりと振りかける。 10.もう1枚のクッキングペーパー(後でこのペーパーを使ってケーキを巻く)を上にかぶせ、メレンゲ生地をひっくり返す。 底に敷いていたクッキングペーパーをゆっくりと剥がす。 11.ペーパーを剥がしたら、底面にも粉糖をたっぷりと、茶こしを使って振りかける。 メレンゲはこのまま置いておく。 12.氷水を入れたボウルにもう一つボウルを重ね、生クリームを泡立てる。 13.メレンゲ生地に(底側が上)生クリームを塗っていく。 14.好みのフルーツを並べる。 このように横1列に並べると、どこを切ってもフルーツが均等にある状態になる。 15.クッキングペーパーを使いながら、ロールケーキを作る要領でメレンゲを巻く。 16.皿に置いて、フルーツを飾り付けたら完成! ハーブの緑を添えれば、ぐっとクリスマスらしくなりますよ。今年のケーキにぜひどうぞ。
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レシピ・料理

気軽に作れる英国のおやつ〈フラップジャック〉
みんな大好き! フラップジャック イギリスの伝統菓子、フラップジャックは、子供にも大人にも愛される国民的おやつ。スーパーはもちろん、小さな売店のようなところでも売っています。オートミールが主材のお菓子で、見た目はいま流行のグラノーラバーに似ています。グラノーラバーというとヘルシーなイメージですが、フラップジャックは作ってみると、砂糖とバターがたっぷり。ヘルシーとはちょっと言い難いのですが、でもオートミールだからヘルシー、と自分に言い聞かせて食べてしまいます。とっても甘いのですが、噛むたびに味わい深く、また、ミルクティーにぴったりで、お茶が進みます。さすが、王道のイギリス菓子! です。 作り方はシンプルで、基本は、オートミールとバター、砂糖、ゴールデンシロップ(黄金色の糖蜜)を混ぜて焼くだけ。そこに、レーズンやナッツ、チョコチップ、マシュマロなどを加えるレシピもあります。洗い物も少なく、簡単なので、お子様と一緒に作って楽しめますよ。 オートミールの食べ方いろいろ 英国の伝統的な朝食。オートミールのお粥、ポリッジ。 さて、レシピをご紹介する前に、イギリスでなくてはならない食材、オートミールについて少しお話ししましょう。以前、〈メルティングモーメント〉というビスケットもご紹介しましたが、イギリスでは、オートミールがお菓子作りによく使われます。それから、朝食に食べる、オートミールを使った〈ポリッジ〉も人気のメニューです。 皆さんはポリッジ、食べたことがありますか? 日本でいうお粥みたいなものでしょうか。私はイギリスでホームステイした際に初めて食べましたが、それ以来、ゴールデンシロップたっぷりのポリッジは、お気に入りの朝食となりました。特に、寒い秋や冬の朝にミルクティーと一緒にいただくと、ほっこり温まってよいものです。ポリッジの作り方は簡単で、鍋にオートミールと牛乳、もしくはお水を入れて、数分クツクツと火にかけ、温まって、ドロッとしたら完成です。そこに、さらに牛乳を回しかけて、ゴールデンシロップをたっぷりかけていただきます。 ポリッジは我が家の娘たちの大好物でもあります。栄養もあり、鍋を使わなくてもレンジで簡単にできて、インスタントオーツという砕けたオートミールを使えば、より短時間で作れます(スーパーで購入可能)。ちなみに、アメリカ人の夫はオートミールに、レーズンやくるみ、黒糖、そして、モラセス(少し苦味のある糖蜜)を加えて作りますが、これもコクがあって美味しいです。ポリッジのレシピは特になく、作り方はいつも適当。ココアやシナモンを加えたり、ジンジャーを加えたりしても美味しいですね。ポリッジの食べ方は無限大! ぜひ、寒くなってきたら作ってみてください。ほっこり温まりますよ。イギリス式のシンプルなゴールデンシロップだけの味付けも、ぜひ挑戦してみてくださいね。 安心で美味しい手作りグラノーラ。 我が家ではグラノーラも手作りしていて、本当にオートミールはなくてはならない食材です。ちなみに、市販のグラノーラは便利ですが添加物が入っていますし(子供が好きなのでたまに買いますが)、かといって、こだわりのお店で買うとかなり高価。手作りすれば、安心で安く済むのでおすすめですよ! グラノーラも、かつて勤めていたイギリスのホテルで作っていましたが、こんなに簡単に、すぐできるのかとびっくりしたものです。こちらも手作りすれば、アレンジ無限大です。 チューイー派? ザクザク派? さて、フラップジャックの話に戻りますが、イギリス人はわりとチューイーな食感(ちょっと柔らかくて、歯にくっつく感じ)を好む人が多い気がします。が、私は断然サクサクザクザク派。歯にくっつく感じが苦手なので、ざっくりとした硬めのものが好きです。今回ご紹介するレシピはザクザクなものになりますが、ちょっと歯にくっつく感じが好き、という方は、焼き時間を少し短めにするか、もしくは、オーブンの温度を下げて焼いてみてください。 オーブンについても話すと長くなりますが、180℃といっても、オーブンによってちょっと違ったりします。え? と思うかもしれませんが、本当です。私のオーブンは火力が弱めなので、ご自分のオーブンが強めだと思う方は、指定された温度より下げて焼いてみてください。レシピを完成させる際、決めるのが一番難しいのは焼き時間だといつも思うのですが、ご自身が美味しい! と感じるのが一番。なので、焼いてみて、あれ? と思った方は、ちょっとずつ調整してみてくださいね。 イギリス伝統のゴールデンシロップ(糖蜜)については、ジンジャーブレッドの記事などで少し触れましたが、輸入食品店や製菓材料店で購入できます。入手が難しい場合はハチミツで代用も可能ですが、フラップジャックの場合、テクスチャー(質感)は同じでも味が全然違うので、ゴールデンシロップを使うことをおすすめします。 では、作っていきましょう。今回は秋らしくペカンナッツ(ピーカンナッツ)入りでご紹介します。 フラップジャックの作り方 材料(18cmx18cmの型) 有塩バター……100gきび砂糖……25g*マスカバド糖……25g*(*マスカバド糖はコクがあり美味しく仕上がるのでおすすめ。なければ代わりに、きび砂糖を50gでもよい)オートミール……180gペカンナッツ……30g(適当な大きさに刻む)ゴールデンシロップ……75g 作り方 1.オーブンを200℃に予熱する。 2.バターと砂糖を火にかけ、溶かす。 3.溶けたら火からおろし、オートミール、刻んだペカンナッツ、ゴールデンシロップを加え、ざっくり混ぜる。 オートミール全てにバターがコーティングされたらOK! 4.オーブンペーパーを敷いた型に入れる。 5.スプーンなどを使い、表面を平らにしながら、ぎゅっぎゅっと押す。 6.予熱したオーブンで約20分焼く。焼けたら、そのまま5分ほどおく。 7.5分くらい経ったら、切れ込みを入れる。ここで切っておかないと、硬くて切れなくなります! タイマーをセットしておくといいですよ。 8.完全に冷めたら、完成です。 こういうお菓子が美味しい季節になってきましたね。 たっぷりの紅茶と召し上がれ! ●グラノーラ作りにご興味のある方は、こちらをご参照ください。混ぜて焼くだけ!簡単ヘルシー!手作りグラノーラ Homemade granola! - YouTube
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レシピ・料理

英国のティールームの人気者 ビクトリアスポンジ
ビクトリア女王が好んだケーキ イギリス伝統のビクトリアスポンジは、近頃、日本でも少しずつ見かけるようになってきました。バラの庭でのアフタヌーンティーをご紹介した前回の記事でこのケーキを取り上げましたが、今回は作り方をお教えしますね。 日本ではビクトリアケーキともいわれていますが、イギリスでは、ビクトリアスポンジ、もしくは、ビクトリアサンドイッチと呼ばれます。ビクトリア、といえば、思い浮かぶのは19世紀にイギリスを治めたビクトリア女王。このケーキはその名のとおり、大英帝国の発展を支えた偉大な女王が好んだものといわれています。 その素敵な名前とは裏腹に、ビクトリアスポンジはなんともシンプルなケーキです。スポンジケーキを2枚焼いて、その2枚でラズベリージャムを挟むだけという、信じられないほどのシンプルさ。ですが、とっても人気のあるケーキで、私もおもてなしの際に何度もお出ししていますが、なぜか特に男性受けがとてもいいのですよ。 ちなみに、スポンジといっても、日本のふわふわしたショートケーキのスポンジとは別物で、生地はしっかりとしています。ビクトリアスポンジのスポンジ部分は、焼き菓子の定番であるバターケーキと同じく、バター、砂糖、卵、粉、が同量、というレシピ。作り方も、泡立て器で卵を泡立てることはせず、木べらで混ぜるだけです。イギリスのケーキにふわふわしたものはほとんどない、といってもよいでしょう。イギリスのケーキはとにかくどっしりしていて食べ応えがあり、そして、紅茶によく合うものばかりです。 日本のショートケーキは、ふわふわで口溶けのよいスポンジに、スッととろける生クリームが美味しさの魅力だと思いますが、イギリス人にしてみたらふわふわすぎて、何だこれは? と戸惑うのではないでしょうか。とはいえ、最近、イギリスでもふわふわした食パンも出てきましたし(それでも日本の軽さとは比較にならないですが)、軽い食感も人気になってきたのかもしれません。イギリスの一般的な食パンはドライで硬く、トースターでカリカリにして食べるのが美味しく、私もそのカリカリが大好きです。私の食感の好みはどうもイギリス人に近いようで、例えば、日本で人気のシフォンケーキは食べた気にならないので、あまり好みではありません。 大切な3つのルール さて、ビクトリアスポンジを作る上で、シンプルなケーキだからこそ私が大事にしている3つのルールがあります。まずは、スポンジについて。ビクトリアスポンジはスポンジ2枚でジャムを挟むと言いましたが、このスポンジは2枚焼きます。どういうこと? と思われる方もいるかもしれません。日本では一つのケーキを焼いて半分に切ってサンドするのが一般的ですが、イギリスではサンドイッチティンという2枚セットの浅いケーキ型があって、これを使います。この型は、じつに優れもの。このセットを使って2枚同時に焼けば、ケーキをカットする手間が省けるし、焼き時間も短くできます。合理的なイギリス人らしさが表れている焼き型です。 2枚セットの浅い焼き型、サンドイッチティン。Amanda J Jackson/Shutterstock.com そして、何よりサンドイッチティンの素晴らしいところは、焼けてカリッとした面が、スポンジ2枚の上下で、合わせて4面もできること。これによって、1枚の高さのあるスポンジを半分に切る場合より、食感がよりしっかりとしたものになります。というわけで、私のビクトリアスポンジ、1つ目のルールは〈スポンジを2枚焼く!〉。しっかりと焼けている食感のほうが、絶対に美味しいからです。サンドイッチティンは日本にはありませんが、普通の型を2つ用意すれば大丈夫です(今回は100円均一の店で購入したものを使用しました)。 Jiri Hera/Shutterstock.com 2つ目のルールは〈ラズベリージャムだけをサンドする!〉です。バタークリームや生クリームを一緒に挟むレシピもあって人気ですし、最近ではレモンカードを挟むレシピもあるようです。要は好みの問題ですが、私はとにかく、ラズベリージャムだけ、というのがシンプルで好きです。 そして最後、3つ目のルールは〈上にかけるのはグラニュー糖!〉です。表面に粉糖をかけるレシピもあるのですが、私は断然グラニュー糖派。シンプルなケーキに、ちょっとジャリッとした食感が加わって、アクセントになります。 さあ、あとはミルクティーがあれば、幸せなティータイムが待っています。それでは、作っていきましょう。 ビクトリアスポンジの作り方 材料(直径12cmのケーキ型 2つ分) 無塩バター……65gきび砂糖……65g卵……1個薄力粉……65gベーキングパウダー……小さじ1/2 ラズベリージャム……適量グラニュー糖……適量 作り方 1.オーブンを170℃に予熱する。ケーキ型にオーブンペーパーを敷く。バターを木べらで柔らかくする。木べらがなければスパチュラを使ってもOK。 2.砂糖を加えて白っぽくなるまで混ぜる。 3.溶いた卵を少しずつ加え、その都度しっかりよく混ぜる。 卵が全部入ったところ。 4.薄力粉とベーキングパウダーをふるい入れる。 5.木べらでさっくりと混ぜる。 6.用意しておいた2つの型に均等に入れ、170℃のオーブンで20~30分焼く。 7.焼けたらそのまま冷ましておく。 8.冷めたら型から外し、1枚のスポンジの表面にジャムを塗る。 9.もう1枚のスポンジをのせ、表面にグラニュー糖を振りかける。 出来上がり! お好きな茶器に紅茶をたっぷり入れて、ティータイム。 ぜひ皆さんも、このシンプルなレシピ、マスターしてくださいね。
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レシピ・料理

【花咲く庭のおもてなし】イギリス仕込みのアフタヌーンティー
自宅の庭で開く特別なお茶会 テーブルセッティングも特別に。 みなさん、こんにちは。先日、とっても素敵なお庭でアフタヌーンティーをする機会をいただいたので、その様子をご紹介します。 ホテルでのアフタヌーンティーも素敵ですが、自宅でわいわい、友達を呼んで楽しむお茶が、私は大好きです。今回、私はサンドイッチと焼き菓子をたくさん用意して、集まってくれた友人に、イギリス仕込みの本格的なアフタヌーンティーを楽しんでもらうことにしました。とはいえ、スコーンをはじめ、お菓子は私がこれまでご紹介してきたものがほとんど。ご家庭で気軽に焼いていただけるものばかりです。イギリスののどかな田園地帯のホテルやティールームで出されるような、伝統的なアフタヌーンティーです。 バラの見頃はまだ先でしたが、‘ジャクリーヌ・デュ・プレ’(左)や‘マダム・ポンパドール’(右)がお客様をお出迎え。写真/萩尾昌美 アフタヌーンティーに出されるものの基本は、サンドイッチ、スコーン、それからお菓子を数品です。今回は贅沢に、9品を準備。たくさんのお菓子を用意するのはちょっと大変ですが、段取りを組んで準備すれば、当日は案外スムーズに進められます。そのコツをお教えしますね。 準備した9品 〈サンドイッチ 3品〉きゅうりサンド・卵サンド・サーモンサンド 1762年に発明されたという、サンドイッチ。カードを楽しんでいた第4代サンドイッチ伯爵が、プレイしながらその場で食べられるように、パンに肉を挟んで出すよう頼んだことから生まれたといわれています。今回のサンドイッチは基本的な3種。ハーブを挟むなど味にアクセントをつけると、ぐっと美味しくなりますよ。サンドイッチの作り方のコツは、この後、ご紹介します。 〈焼き菓子 6品〉 焼き菓子は、これまでガーデンストーリーでご紹介したレシピ、もしくは、ちょっとアレンジを加えたレシピで作れるものばかりです。まだご紹介していないものは、今後レシピを公開しますので、乞うご期待! スコーン&チーズスコーン プレーンのスコーンにはイチゴジャムとクロテッドクリームを添えて。 イギリスでお茶といったら、スコーンは外せません。今回はプレーンなスコーンと、甘くない食事感覚のチーズスコーンを用意しました。スコーンのレシピはこちら。中はふわっ、外はカリッ、のスコーンが楽しめますよ。 ●イギリスのお菓子代表、スコーン!【The Pudding Party Tomoのイギリス菓子便り】 チーズスコーンのレシピは、近いうちに公開しますので、お楽しみに。 コーヒー&ウォルナットケーキ イギリスではティールームの定番として人気の高いケーキ。コーヒーとクルミのこっくりした味わいが魅力です。バターと粉糖を使ったアイシングに、イギリスらしさを感じます。 ●紅茶党のイギリス人も大好き コーヒー&ウォルナットケーキ【The Pudding Party Tomoのイギリス菓子便り】 ラベンダーショートブレッド 日本でも大人気のショートブレッド。今回は、下記の基本レシピを少しアレンジして、ラベンダーがほのかに香るものにしてみました。日本ではあまり馴染みがないと思いますが、イギリスではラベンダーを使ったビスケットやケーキが結構あります。このラベンダーショートブレッドは基本のレシピにラベンダー2gを加えたものですが、ラベンダーは好みが分かれるので、心配な方は基本レシピでどうぞ。 ●自分へのご褒美に、贈り物に、大人気のショートブレッド【The Pudding Party Tomoのイギリス菓子便り】 キャラウェイシードケーキ こちらもイギリスらしい一品。ヨーロッパでよく使われるスパイス、キャラウェイシードの風味が珍しいかなと思い、ラインナップに加えてみました。 ●キャラウェイシードの香りを楽しむシードケーキ【The Pudding Party Tomoのイギリス菓子便り】 ビクトリアスポンジ こちらもイギリスのティールームの定番ケーキ。スポンジ生地にラズベリージャムを挟んだシンプルなケーキですが、その素朴さが魅力です。こちらも、近いうちにレシピを公開しますので、お楽しみに! これ以外にも、いままでにご紹介したお菓子をお好きに組み合わせていただければ嬉しいです。例えば、イチゴが美味しい季節のお茶会なら、パブロヴァもおすすめ。ふわふわのメレンゲと真っ赤なイチゴが目を引き、テーブルが華やぎますよ。 ●真っ赤なイチゴが輝くパブロヴァ 【The Pudding Party Tomoのイギリス菓子便り】 お茶会準備の秘策 さて、美味しそうなお菓子のラインナップですが、こんなに作るの? と圧倒されてしまう方も多いかもしれません。でも、大丈夫です。これらを1日で作るとなると大変ですが、じつは、私が当日に作ったのはサンドイッチだけ。ほかは、数日前に徐々に作って、冷凍してしまいます。あまり知られていないと思いますが、お菓子屋さんも、毎日毎日、フレッシュなものを、あんなにたくさん用意しているわけではありません。冷凍をうまく活用しているのです。焼き菓子はもちろん、ムースなどもある程度のところまで作って、朝は仕上げをしてカットする、といった感じ。ですので、皆さんもお菓子を冷凍してみましょう。もちろん、よりフレッシュなものを用意したいということなら、品数を減らして、前日や当日に焼いて準備するのもよいですね。 準備の手順 今回どのように準備をしたか、手順をお教えします。 1.スコーン、チーズスコーンを焼く。冷めたらジッパーバッグに入れて冷凍(1週間〜10日くらい保存可能)。 2.ビクトリアスポンジを作る。ラップでくるみ、ジッパーバッグに入れ、冷凍(1週間〜10日くらい保存可能)。 3.2〜3日前にショートブレッドを焼き、密閉容器に入れ保存(シリカゲルを入れれば2週間は保存可能)。 4.2日前に、キャラウェイシードケーキ、コーヒー&ウォルナットケーキを焼く。どちらもラップをして、常温保存(暑い時期は冷蔵)。 5.前日に、コーヒー&ウォルナットケーキのアイシングを仕上げて、カバーをかけて常温保存(暑い時期は冷蔵)。 冷凍している菓子をすべて、常温で解凍する。 6.当日の朝、サンドイッチを作って冷蔵保存する。 ケーキ類をカットしてラップしておく。スコーンは少し焼き直してからお出しする。 私にとっては、集中すれば2日くらいですべて焼き上げられる量ですが、今回は普段の家事や仕事、子どもの世話と並行しながら、少しずつコツコツ焼きました。みなさんもご自分のペースで取り組んでみてくださいね。 サンドイッチは、朝のうちに仕上げておけばバッチリ。しかし、お出しするまでの、冷蔵保存のコツがあるので、準備の様子を交えながらご紹介しますね。 サンドイッチの作り方のコツ きゅうりは薄くスライスが鉄則。 まずは、きゅうりのサンドイッチ。アフタヌーンティーに、きゅうりのサンドイッチは外せません。アフタヌーンティーは1840年、第7代ベッドフォード公爵夫人によって始められたといわれますが、当時のきゅうりは温室で栽培するため、とても貴重なものだったようです。きゅうりサンドは最高のおもてなしだったのかもしれませんね。 私の作り方は、薄くスライスしたきゅうりを、マヨネーズを塗ったパンに重ね、塩胡椒をする、というもの。それだけなのですが、あのシャキシャキ感がたまらなく、私の中ではサンドイッチといえばきゅうり! ちなみに、きゅうりを薄くスライスするにはスライサーが一番。今はスライサーをお持ちの方も多いと思うのですが、私は昔、仕事中にバッサリ……という流血事件がトラウマなので、包丁で薄く切っています。スライサーをお持ちの方は、ぜひスライサーを使ってくださいね。 最初に仕上げたきゅうりのサンドに、水で濡らしてキュッと絞ったキッチンペーパーを被せ、重ねます。次に作った2つ目のサンドをその上に乗せ、その2つ目にも、濡らしたキッチンペーパーを被せておきます。 さて、次はサーモン。サーモンといえばディル! そしてコショウを少々…。今回はこんな感じに仕上げましたが、ピンクペッパーを使っても美味しいですね。 サーモンサンドもきゅうりサンドの上に積み重ね、同じように濡らして固く絞ったキッチンペーパーを被せておきます。 最後は、卵サンド。今回は卵サンドにチャービルを一緒に挟みました。でも、ディルを使ったり、きゅうりを一緒に挟んでしまったり、わたしはその時々で、いろいろ変えて楽しんでいます。自宅でお茶をするときは、好きなものを作って楽しむのが一番! 皆様も、お好きなサンドイッチを作ってくださいね。でも、きゅうりはマストです! さて、すべて仕上がったら、きゅうりサンドからカットしていきます。 出来上がったサンドイッチを重ねておいたのには、理由があります。重さでしっかりとくっついて、切りやすくなるのです。 三角にカットしたら、また先ほどかけておいた、濡れたキッチンペーパーを被せ、その上からラップをしておきましょう。あとは、サーブする時まで冷蔵保存です。 テーブルセッティングは美しく 高さのあるケーキスタンドは重宝します。 さて、食べ物の準備はこれでOK。当日は、お客様がいらっしゃる前にテーブルセッティングをします。 まず、お菓子やサンドイッチを置く場所を決めておきます。カラスなどの心配がなければ、お菓子を盛り付けて、ラップをしておくのもいいかもしれません。お菓子は出した瞬間から乾燥していくので、ラップを外すのは直前にしましょう。 もし、揃いのティーセットがあれば、ぜひこの機会に使ってみてください。とっておきのティーセットを使えば、優雅な気分になりますよ。ホテルでは、アフタヌーンティーはよく3段のケーキスタンドでサーブされますが、お家のお茶会はそこまで凝らなくても大丈夫。大皿に形よく盛り付けてみてくださいね。 庭の花も飾って、これで完璧! 素敵なティーパーティーの始まりです! さあ、お客様がいらっしゃったら、お茶を入れ、スコーンを温め、サンドイッチを並べましょう。お茶は、ぜひミルクティーをお試しください。 お腹いっぱい、幸せいっぱい! 楽しいおしゃべりはエンドレス。 アフタヌーンティー、大成功でした!
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レシピ・料理

しっとりどっしり、味わい深いジンジャーブレッドケーキ【The Pudding Party Tomoのイギリス菓子便り】
じつはスパイス好きなイギリス人 ジンジャーブレッドと聞くと、クリスマスのクッキーを思い浮かべる方が多いかもしれません。私も毎年クリスマスの時期になると焼きますが、ジンジャーを使った、クッキー以外のお菓子も大好きです。ちょっとピリッとくる、ジンジャーならではの風味を存分に楽しめるお菓子の一つが、このジンジャーブレッドケーキ。硬めに焼くジンジャークッキーとは違って、しっとり、そして、どっしりとした、いかにもイギリスらしいケーキで、見た目は素朴だけれど、スパイス使いの奥深さを感じる美味しさです。 ジンジャーはよく使われるポピュラーなスパイス。mama_mia/Shutterstock.com イギリス人はスパイス好きな人が多い気がします。お菓子作りにはシナモンはもちろんのこと、ミックススパイス(mixed spice)もよく使われます。ミックススパイスとは、名前の通り、いろいろなスパイスを混ぜ合わせたもので、クリスマスプディングやジンジャーブレッド、りんごのケーキなど、さまざまなお菓子に使われています。イギリスで売られているミックススパイスの多くは、シナモン、コリアンダー、キャラウェイシード、ナツメグ、ジンジャー、クローブのブレンドですが、私はよく自分で適当にブレンドして使っています。それぞれの粉末状スパイスをただ混ぜればいいだけなので、難しいことはありません。私のブレンドは、シナモンを全体の半量、あとは、カルダモン、ナツメグ、クローブをそれぞれ少々、といった具合です。なお、日本でもミックススパイスという名の商品が売られていますが、それらはクミンなどもブレンドされた、中華料理やインド料理用のもので、イギリスの製菓用とは異なりますのでご注意ください。 甘くてスパイシーなステムジンジャー(ショウガのシロップ漬け)。Sarah Marchant/Shutterstock.com 今回注目するジンジャーも、イギリス人がよく使うスパイスの一つです。イギリス人はジンジャーの風味をお菓子や料理にうまく取り入れ、使いこなしていると思います。お菓子作りにはステムジンジャーという、ショウガのシロップ漬けもよく使われますが、これは瓶詰めのものがスーパーで一般的に売られています。例えば、フレッシュなルバーブやプラムなど、酸味のあるフルーツにこのステムジンジャーを加えてお菓子を焼いたり、ジャムを作る時に加えたり。ジンジャーの辛みのある風味によって味がしまり、美味しさがアップします。 ジンジャーブレッドケーキがくれたご縁 誕生会のケーキ。上にステムジンジャーとチョコレートがたっぷり。 さて、私がイギリスに語学留学していた頃のこと。ある友達が、ステイしていたお家にたくさんの友人を招いて、私の誕生会を開いてくれました。その時、そのステイ先のママが私のために焼いてくれたバースデーケーキが、チョコレートとジンジャーのケーキでした。チョコレートケーキにステムジンジャーがたっぷりとのっていて、私にとっては初めて目にする、驚きの組み合わせ。ねっとりと甘くてピリリと辛いステムジンジャーは、ケーキ生地にももちろん入っていて、味のアクセントとなってとても美味しかったのを覚えています。 じつは、そのお宅に初めて遊びに行った時に、ママお手製のジンジャーブレッドケーキをいただいて、ひどく感動し、興奮したことがありました。そのときママはご不在でしたが、後で友達から私の喜びようを聞くと、そのレシピをプレゼントしてくれました。そんなことがあったので、ママは私の誕生会にもジンジャーのケーキを焼いてくれたのです。 そのときのレシピは、今も大切にしまってあります。ママとはいまだに交流していて、時折「これ、美味しかったわよ!」と、レシピを送ってくれたりします。とてもアクティブで明るいママで、昔、ティールームを開いていたことがあると話していました。お家で本当によくお菓子作りをされていて、私のイギリス菓子へのパッションは、彼女の影響もあります。 イングランド南東部、美しいライの町並み。Helen Hotson/Shutterstock.com ジンジャーブレッドケーキとそんな幸せな出合い方をした私は、それからというもの、ティールームめぐりでジンジャーブレッドを見つけるたびに食べていました。中でも、ライという小さな村のパブで食べたものはとっても美味しくて、よく覚えています。私が働いていたホテルで出していたジンジャーブレッドも、パンチが効いていて気に入っていました。 イギリス菓子に欠かせない糖蜜 アメリカのモラセス(左)と、イギリスのブラックトリークル(右)。 ジンジャーブレッドケーキにはさまざまなタイプがありますが、私が好きなのは、とってもしっとり、どっしりしていて、ジンジャーがしっかり効いているものです。これは昔ながらのタイプのジンジャーブレッドで、糖蜜(トリークル、treacle)が大量に入っています。 今回のレシピには、イギリスのブラックトリークル(black treacle/右の缶)という、どろりとしていて黒っぽい色の、少し苦味のある糖蜜と、ゴールデンシロップという、イギリスのお菓子作りに欠かせない、さらりとした黄金色の糖蜜の2つを使います。 イギリスのブラックトリークルは個人輸入しないと日本では手に入らないのですが、それに似た、アメリカのモラセス(molasses/左の瓶)は、輸入食品店やネット通販で購入できます。ゴールデンシロップも同様に、輸入食品店やネット通販で入手可能です。 砂糖はブラウンシュガーを使います。きび砂糖などでも代用できますが、私はマスコバド糖というものを使っています。よりコクがあって、美味しく仕上がるので、もし手に入るようならこちらをおすすめします。 今回ご紹介するレシピは、しっとりとした食感を出すために、何度も試作を重ねた末に完成したレシピです。焼く前は、大丈夫かな? と心配してしまうくらい、ダラダラの水のような生地ですが、それで大丈夫です。低めの温度でじっくり焼くのがポイントです。 このジンジャーブレッドケーキは、いつもご紹介しているイギリス菓子と同様、見た目の華やかさはありません。でも、食べたら味わい深くて、また食べたい! と思うお菓子ですよ。 ジンジャーブレッドケーキの作り方 材料(21cm x 8cm x 6cmの焼き型) 〈ケーキ〉 バター……50gモラセス……100gゴールデンシロップ……50g(蜂蜜で代用可)マスカバド糖……50g(きび砂糖で代用可)牛乳……120ml卵……1個薄力粉……100gシナモン……小さじ1/2コリアンダー……少々ナツメグ……少々クローブ……少々ジンジャー……小さじ1重曹……1g 〈アイシング〉 o 粉糖……50go レモン汁……小さじ2 作り方 1.オーブンを170℃に予熱する。 2.バター、モラセス、ゴールデンシロップ、マスカバド糖を鍋に入れ、弱火にかけて溶かす。溶けたらすぐ火から下ろして、冷ましておく。 3.2が人肌くらいに冷めたら、別のボウルに移して牛乳を入れ、混ぜる。 4.溶いた卵を入れて、混ぜる。 5.粉類(薄力粉、スパイス、重曹)をふるい入れ、さっくりと全体によく混ぜる。このとき、少し粉がダマのように残っていても大丈夫。 6.型に入れ、170℃のオーブンで約1時間焼く。 7.中心に串を刺してみて、何もついてこなければ完成。型に入れたまま、十分に冷ます。 8.アイシングを作る。粉糖とレモン汁をスプーンでよく混ぜる。 9.ケーキが冷めたら、アイシングをかけて完成。 完成といっても、じつはケーキの食べ頃は数日後! 待てない我が家ではあっという間に無くなりますが、数日間かけて、味わい深くなる様子を観察するのもおすすめです。秋から春にかけては、ラップをして常温で保存。2、3日後が食べ頃です。夏は冷蔵庫で保存しましょう。スパイスを使った焼き菓子は、時間をおくと味がなじんで美味しくなるので、ぜひお試しください。 紅茶と一緒にいただくと美味しい、味わい深いお菓子です。 気に入っていただけたら嬉しいです。
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手軽で美味しさ抜群 スコットランド発祥の「チョコレートティフィン」
チョコレート大好きの英国人 ヨークの有名ティールーム〈ベティーズ〉にて。素敵な特製チョコレートがたくさん! チョコレートが街に溢れるこの季節。チョコレート好きとしては嬉しい限りです。イギリス人はチョコレートが大好き、というのは以前にもお伝えしましたが、私がかつて働いていた、イギリス、コッツウォルズのホテルでは、この時期になると〈チョコホリック(チョコレート中毒)〉というイベントが行われていました。コース料理のすべてにチョコレートを使うというイベントで、もちろん、数種類のデザートもすべてチョコレート! チョコレートアイスクリーム、チョコレートムース、チョコレートタルト、温かいチョコレートプディングなどチョコレート三昧の盛り合わせという、なんとも夢のような(でも想像すると、ちょっとくどいような)イベントです。 チョコレートトリュフやチョコレートタルト、お家で〈チョコホリック〉パーティはいかが? 私はデザート担当だったので、あいにく料理のすべてを見る機会はありませんでしたが、ステーキなどの肉料理にチョコレートソースは意外に合うので、皆さまにもぜひ挑戦していただきたいなと思います。それから、イギリスではキャセロールという、さまざまなタイプの煮込み料理があるのですが、そういったものにもチョコレートが使われていました。コッツウォルズの冬はとても寒いので、お客様の数は夏のハイシーズンの半分以下になります。だから、集客のためにこういったイベントが催されたのだと思いますが、なかなか面白く、人気のあるイベントでした。 英国王室でも人気のチョコレートティフィン ビスケットのサクサクが美味しいチョコレートティフィン。 さて、今回ご紹介するチョコレートティフィン。なんだか可愛らしい名前のお菓子ですが、オーブンで焼く必要もなく、冷蔵庫で固めるだけなので、フリッジケーキ(冷蔵庫ケーキ)とも呼ばれています。このチョコレートティフィンはスコットランド発祥といわれています。英国王室のウィリアム王子もお好きなようで、ロイヤルウエディングでも振る舞われたとか。 でも、作り方はいたって簡単。砕いた全粒粉のビスケットとレーズンに、バターとチョコレートを溶かしたものを混ぜて、型に入れ、さらに上から溶かしたチョコレートをかけて、冷蔵庫で冷やし固めるだけ。子どもでも気軽に作れる、失敗のないお菓子です。 表面のチョコレートはパリッとして、その下で、ビスケットのサクサクと、レーズンのほんのりした酸味や甘味、それから、ビスケットの軽い塩気が一体となって、素晴らしいハーモニーを奏でるというこのお菓子。ついつい止まらなくなりそうですが、かなりボリュームがあります。紅茶やコーヒーのお供に、ぜひどうぞ。 全粒粉ビスケットといえば、やっぱりマクビティ。Stephen Plaster/Shutterstock.com 今回使った全粒粉ビスケットは、マクビティ社の、イギリスでもとっても人気のものです。私もイギリスでよく同社の、チョコレートコーティングされたダイジェスティブビスケット(全粒粉ビスケット)を買っていました。程よい塩気とザクザク感が最高なのです。ちなみにマクビティ社はスコットランドで創立された会社で、英国王室御用達となっています。 日本で売っている個包装されたパッケージはイギリスでは見たことがなく、あちらでは大容量のビスケットが一つのパックにぎゅっと収まっているスタイルが一般的。多分、日本だと湿気てしまうから、そのパッケージはできないのだろうなと思います。 もしもマクビティ社のビスケットが見つからなくても、全粒粉ビスケットは製菓材料店などで販売されているので、そちらで大丈夫です。チョコレートも高級なものを使う必要はありません。イギリスでもティフィンは家庭で作るお菓子なので、お好きなチョコレートで気軽に作りましょう。ここではイギリスの定番チョコレート〈カドバリー〉のミルクチョコレートを使いましたが、こちらもお好きなものをお使いください! 今回は子どもと一緒に作れる簡単なお菓子なので、我が家の子どもたちにも手伝ってもらいました。では作っていきましょう! チョコレートティフィンの作り方 材料(18x18cmのバット) *容器のサイズは目安です。器が小さければチョコレートが厚く、大きければ薄くなるだけなので、大体のサイズでOKです。 全粒粉ビスケット……200gレーズン……70g (お好みでクランベリーなど、ほかのドライフルーツに変えてもよい)無塩バター……180gミルクチョコレート……100gゴールデンシロップ……大さじ2ココア……大さじ2 *ゴールデンシロップはイギリスではお菓子作りに欠かせない、サトウキビから作られた糖蜜で、輸入食品店や製菓材料店で購入できます。蜂蜜で代用可能。 〈コーティング用〉 ミルクチョコレート……200gホワイトチョコレート……40g(飾り用なので、なくてもよい) 作り方 1.全粒粉ビスケットをジッパーバッグなどに入れ、麺棒で叩く。あまり砕きすぎず、塊が残っているくらいのほうがいい。 2.無塩バター、ミルクチョコレート、ゴールデンシロップ、ココアを湯煎で溶かす(耐熱性のガラスか陶製のボウルに入れて、電子レンジにかけてもOK。様子を見ながら数秒ずつ加熱する)。 3.2のチョコレートにレーズンとビスケットを入れ、全体を混ぜる。ビスケット全体にチョコレートがかかればよい。 4.オーブンペーパーを敷いた型に3のビスケットを入れ、スプーンの背などでぎゅっと押さえて平らにし、冷蔵庫に入れておく。 5.コーティング用のチョコレートを湯煎で溶かす(電子レンジでもOK)。ホワイトチョコレートも使う場合は、別々に溶かす。 6.4の型を冷蔵庫から出し、上から5の溶かしたミルクチョコレートを流し、平らにする。 7.その上に5の溶かしたホワイトチョコレートを、スプーンを使いながら適当に流す。 爪楊枝でくるくるしながら、適当に模様をつけて、 冷蔵庫で2時間ほど冷やし固めて完成。 8.カットする際はナイフをお湯や火で温めて、ゆっくりと押しながら切ると切りやすい。 出来上がり! せっかくなので、表面が見えるようにラッピング。 大人な感じも素敵ですが、ポップにたくさんのハートのスパンコールと一緒に袋に入れても。 今年のバレンタインにぜひ作ってみてください!
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特別なおもてなしに クイーン・オブ・プディングス【The Pudding Party Tomoのイギリス菓子便り】
偉大なるエリザベス女王 2022年6月のロンドン。エリザベス女王の誕生日パレードに集まった人々。Watcharisma/Shutterstock.com クイーンといえば、エリザベス女王。今年は〈プラチナジュビリー〉と呼ばれる、女王の在位70周年を祝う記念の年で、英国は大盛り上がり。イギリス国内だけでなく、日本でも各地のホテルでお祝いの特別なアフタヌーンティーメニューが楽しまれていました。しかし、そんな中、女王が亡くなられるというニュースが。とてつもないショックで、日本にいる私も少し落ち込んでしまいました。イギリスはきっと、今までのイギリスではなくなってしまうと……。 ロンドンのレストランで開かれたプラチナジュビリーを祝うアフタヌーンティー。女王モチーフのお菓子が可愛い。Kelly Chow/Shutterstock.com 国民から愛されていた偉大なエリザベス女王を偲びつつ、今回は「クイーン」という名がついたプディング、クリーン・オブ・プディングス(Queen of Puddings)をご紹介します。といっても、このお菓子はエリザベス女王と何の関係もありませんが。「プディングの女王」という名前の由来は分かっていませんが、その華やかな見た目からついたのでは、といわれています。 パン粉を使った伝統のプディング 一見すると、作るのが大変なように思われるかもしれませんが、材料はいたってシンプルです。パン粉を使ったカスタードプディングのような生地の上に、ラズベリーやストロベリーなどベリー系のジャムを塗り、その上にメレンゲをのせて焼きます。 ちょっと待って! パン粉? と驚いた方も多いかもしれませんが、イギリスではパンを使うお菓子がいくつかあります。以前にブレッド&バタープディングをご紹介しましたが、その昔、パンは高級品でした。貴重なパンの残りも美味しく食べたいと、作られたお菓子なのでしょうね。ちなみにこのレシピ、焼いてしまうと、パン粉の感じは全くなくなるのでご安心を! 今回、久しぶりに作ったこのプディング。久しぶりすぎて、食べてみるまで、どんな食感になるのだっけ? とワクワクが止まりませんでした。 修行の日々を送ったコッツウォルズの〈スリーウェイズ・ハウス・ホテル〉。 このプディングに出合ったのは、コッツウォルズのホテルでパティシエとして働いていたときのことです。普段のメニューにはないけれど、イベント用に提供されることになり、忙しいヘッドシェフが自ら作りながら、私に教えてくれたのです。イギリス修行時代、いろいろあってとても大変な毎日を送っていましたが、ヘッドシェフは寡黙で一番の働き者。忙しくても取り乱して怒り出すこともなく、本当に尊敬できるシェフでした。私にとってこのプディングは、そんな思い出がよみがえるお菓子です。 コッツウォルズに暮らしていた頃、近所で見かけたイルミネーション。 さて、パン粉を使うこのプディングですが、イギリスのパン粉は、日本のパン粉とかなり質が異なります。日本のものより粒子が細かく、サラサラの粉のような質感です。日本風のパン粉は、イギリスでは〈PANKO〉という名で売られていたのを見たことがあります。 イギリスで働いていたときは、いつも余り物の堅くなったパンを取っておいて、必要になるとフードプロセッサーで粉砕し、サラサラの粉状のパン粉を作っていました。日本のパン粉も、フードプロセッサーにかければ同様の粉状になりますが、そのまま使っても大丈夫です。今回は、日本のパン粉をそのまま使い、作ってみましょう! クイーン・オブ・プディングスの作り方 材料(1.4リットル入るオーブン皿1つ分) 〈生地〉 牛乳……600mlバター……50gレモンの皮……2個分卵黄……4個分グラニュー糖……30gパン粉……150g 〈ジャム〉 ラズベリージャム……140g 〈メレンゲ〉 卵白……4個分グラニュー糖……150g 作り方 1.鍋に牛乳、バター、レモンの皮を入れ、ふつふつとするまで温め、バターを溶かす。 2.ボウルに卵黄を入れ、グラニュー糖を加えて泡だて器でよく混ぜる。 3.2の卵黄のボウルに、1の鍋で温めた牛乳を加える。このとき、泡立て器で絶えずかき混ぜながら加えていく。 4.型にバター(分量外)を薄く塗り、パン粉を広げて入れる。 5.4の型に、3の牛乳液を漉しながら入れる。そのまま15分ほどおいて、パン粉に水分を吸わせる。その間にオーブンを170℃に予熱する。 6.15分経ったら、予熱したオーブンで20分焼く。 7.生地を焼いている間にメレンゲを作る。ボウルに卵白を入れ、ふんわりするまで泡立てる。 8.ふんわりとしたら、150gのグラニュー糖のうち、ひとつかみくらいをまず入れ、また泡立てる。 9.またふんわりとしたら、残りのグラニュー糖の約1/3の量を入れ、泡立てる。この作業をあと2回ほど繰り返す。 10.砂糖の全量が混ざり、しっかりとしたメレンゲになったところ。 11.生地の焼き上がり。焼き色はついていないが、中心部分まで火が入っている。真ん中を押してみて、ふんわりとしていれば大丈夫。 12.ラズベリージャムを全体に塗る。次に、オーブンを今度は180℃に予熱する。 13.メレンゲをのせていく。 14.全体に広げたら、スプーンの背やフォークなどで、ツンツンと角を立てると可愛い仕上がりに(絞り袋に入れて、絞ってもよし)。予熱したオーブンで18分ほど焼く。 15.メレンゲ全体に色がついたら完成!(焼き時間は目安) 熱々で食べても、冷めてから食べても! 私は熱々よりも、冷めてから生クリームをかけて食べるのが好きです。 ふわっとしたメレンゲに、プリンのようなスポンジ。きっと病みつきになること、間違いなし! クリスマスはもちろん、人が集まる年末年始のデザートにもぴったりですので、ぜひ作ってみてくださいね。
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紅茶党のイギリス人も大好き コーヒー&ウォルナットケーキ【The Pudding Party Tomoのイギリス菓子便り】
コーヒーとクルミの素朴なケーキ コッツウォルズにある私のお気に入りのティールーム。美味しそうなケーキが並びます。 寒くなってきて、温かいミルクティーが美味しい季節になりましたね。今回は、そんなミルクティーにぴったりの、クルミをたっぷり使ったイギリス菓子をご紹介します。 イギリスでは、クルミを使ったお菓子や料理はとても身近なものです。バナナケーキに入れたり、リンゴのケーキやクランブルに入れたり、それから、チーズなどと合わせて料理にも使われます。そんなクルミを使ったお菓子の中でも代表的なのが、このコーヒー&ウォルナットケーキです。 コーヒー味と聞くと、コーヒーのほうが合うのでは? と思いますが、コーヒー風味のバターアイシングと香ばしいクルミの風味が、紅茶によく合います。このバターアイシングというのは、いわゆるバタークリームですが、メレンゲを使って作る舌触り滑らかな洗練されたバタークリームではなく、粉糖とバター、そして、濃く入れたコーヒーやコーヒーエッセンスを混ぜ合わせた、シンプルなものです。溶けきらない粉糖による、その少しざらざらとした舌触りも、このちょっと田舎くさいケーキの魅力の一つです。 英国ティールームの三大定番ケーキ 左がヴィクトリアスポンジ、右がレモンドリズルケーキ。 コーヒー&ウォルナットケーキはイギリスで人気が高く、スーパーマーケットでも売られていますし、もちろん、ティールームでも定番のケーキです。以前にもお話ししましたが、イギリス人は定番が好き。どこに行ってもあるケーキといえば、まず、スポンジ生地にラズベリージャムを挟んだヴィクトリアスポンジで、ヴィクトリアサンドイッチと呼ばれることもあります。基本はシンプルにジャムだけを挟みますが、一緒にバターアイシングや生クリームを挟む場合もあります。次に、レモン汁と砂糖を合わせたレモンシロップを生地の上から染み込ませる、レモンドリズルケーキ。爽やかなレモンの風味がたっぷりのケーキです。そして、コーヒー&ウォルナットケーキ。この3つは英国のティールームで欠かせないケーキです。 もっとも、イギリス人だけでなく、日本人も定番が好きかもしれませんね。私がかつて働いていたケーキ屋でも、圧倒的人気はショートケーキとモンブランでした。私は仕事柄、日本にいると定番よりも、ちょっと変わった組み合わせのものを選びがちですが、イギリスにいた頃は、イギリス人のようにいつも、この定番のケーキたちかスコーン! という感じでした。 手前右側がコーヒーのアイシングにクルミをトッピングしたコーヒー&ウォルナットケーキ。 さて、このコーヒー&ウォルナットケーキですが、大抵は2段重ねの丸いホールケーキの形で作られます。コーヒー風味のスポンジの上にコーヒー風味のバターアイシング、さらにスポンジを重ね、一番上にもたっぷりとバターアイシングをのせて、クルミを飾って完成、という形。このケーキを焼く時に使うのが、サンドイッチティンという、高さのない焼き型です。日本では通常、こういった、何かを挟んでスポンジを重ねるケーキは、高さのあるスポンジを焼いてから横半分に切りますが、イギリスでは、このサンドイッチティンを使って薄いケーキを2枚焼いて、重ねます。この焼き型を使えば半分に切る手間もなく、さらに、1枚1枚が薄いので、焼き時間も短くて済みます。なんて効率のいい焼き型! ですが、このサンドイッチティンを持っているのは、おそらくかなりのイギリス菓子マニアだけと思うので、今回はトレイベイクという、もっと手軽に焼けるスタイルでご紹介します。もし、通常の丸い型で厚く焼く場合は、焼き時間を調整してくださいね。 切り分けやすいトレイベイクはパーティーにぴったりのスタイル。 今回ご紹介するトレイベイクは、バットなどのトレイで1枚に大きく焼いた生地の上に、アイシングやクリームを塗って仕上げるスタイルです。生地を半分にスライスする手間もなく、生地を重ねる手間もなく、切り分けやすいので、私はよく作ります。イギリスでも、イベントやパーティーなど、人が集まる場でよく作られます。ご家庭でも手軽に作れるので人気です。それでは、作っていきましょう! 材料(29x23cmのトレイ1枚分。同じようなサイズのトレイなら大丈夫です) 〈ケーキ生地〉 無塩バター……225g(常温で柔らかくしておく)粉末の黒糖……75gきび砂糖……150g卵……4個コーヒーエッセンス……大さじ2(インスタントコーヒー大さじ3と、お湯大さじ2を混ぜたもので代用可)薄力粉……210gベーキングパウダー……小さじ2クルミ……80g(ざっくりと刻んでおく) 〈アイシング〉 無塩バター……80g(常温で柔らかくしておく)粉糖……200g牛乳……小さじ1コーヒーエッセンス……小さじ2(インスタントコーヒー小さじ3と、お湯小さじ2を混ぜたもので代用可) 飾り用クルミ……適量 コーヒーエッセンスはコーヒーの香りづけに使われるもので、製菓材料店で入手できますが、代わりにインスタントコーヒーとお湯を混ぜたものを使用しても大丈夫です。写真は、私が使ったコーヒーエッセンス。イギリスにいた頃はCAMP社のエッセンスを使っていました。 作り方 1.オーブンを180℃に予熱する。型にオーブンシートを敷く。 2.バターをボウルに入れ、砂糖を入れて、木べらで白っぽくなるまでしっかり混ぜる。 3.溶いた卵を少しずつ入れ、その都度しっかり混ぜる。 4.コーヒーエッセンスを入れ、しっかり混ぜる。 5.薄力粉とベーキングパウダーを合わせて、ふるい入れ、さっくり混ぜる。 6.薄力粉が混ざりきる前に、刻んだクルミを入れ、さっくり混ぜる。 7.できた生地を用意したトレイに流し入れ、180℃のオーブンで約40分焼く。 8.焼き上がり。冷ましておく。 9.アイシングを作る。ボウルに柔らかくしておいたバター、ふるった粉糖、コーヒーエッセンス、牛乳を入れ、混ぜる。コーヒーの味は、味見をしながら好みに仕上げてもOK。 10.ケーキが冷めたら型から外し、アイシングを上に塗る。スプーンの後ろやパレットなどで塗って模様をつけても素敵。 11.飾り用のクルミをお好みでのせて完成。 ミルクたっぷりの温かい紅茶と召し上がれ!
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秋のリンゴを楽しむイブズ・プディング
料理用リンゴ〈ブラムリーアップル〉 私の秋はリンゴで始まります。毎年インターネットで注文している〈ブラムリーアップル〉というイギリス生まれのクッキングアップル(料理用のリンゴ)が届くと、秋が来たなと思うのです。ブラムリーアップル(または、ブラムリー)の話をすると長くなりますが、少しご紹介したいと思います。 イギリスには、生食用のリンゴのほかに、加熱して使う料理用のリンゴというものが存在します。その代表がブラムリー。見た目は大きな青リンゴのような感じですが、一番の特徴は、生では食べられないくらいの強い酸味と、火にかけるとなめらかに煮溶ける、ということでしょう。イギリスでは、私が暮らしていた田舎の村の小さなお店でも手に入るくらい、一般的なリンゴです。 ブラムリーアップルの花。長野県小布施町では4月末から5月初めに開花します。写真提供:ブラムリーファンクラブ そのブラムリーを日本で手に入れることができるということを知ったのは、10年ほど前、私がイギリスから帰国してまもなくのことでした。友人が、長野県の小布施町で作られていると教えてくれたのです。今では日本でもだいぶ知られてきましたが、当時、ブラムリーの存在はほとんど知られていませんでした。 そんな頃に出会ったのが、ブラムリーを広めようとブログで発信する、ブラムリーファンクラブの皆さんです。ブラムリーとはどんなリンゴなのか、歴史や産地を紹介したり、イベントを開催したり、とにかく熱量がすごい方たちで、彼女たちの活動があったからこそ、こんなに広まったのではないかなと思っています。ご興味のある方は、ぜひブログをご覧になってくださいね。 ブラムリー誕生の物語 小布施町の〈小布施屋〉前で栽培されているブラムリーの木。青い実がいっぱい。写真提供:ブラムリーファンクラブ イギリスでブラムリーが生まれたのは200年ほど前のこと。1809年、ノッティンガムシャー州のサウスウェルという町で、メアリーアンという少女が庭にリンコの種を播いたことに端を発します。その実生の一つが、のちに素晴らしい実をつけ、そのことに気づいた地元ガーデナーのメリーウェザー氏が品種登録をしたことから、次第に広まっていきました。ブラムリーという名前は、その時に、このリンゴのある家を所有していたブラムリー氏に由来します。正式名称は〈Bramley’s Seedling(ブラムリー氏の実生)〉というのだそうです。 一人の少女が庭に播いた種から生まれたという、このブラムリー誕生の話を聞くだけでワクワクしてしまいます。ブラムリーは、庭用の植物として優れた品種に与えられる、英国王立園芸協会のガーデンメリット賞を受けた、とても育てやすいリンゴで、今ではイギリス中の庭で作られています。自分の庭にブラムリーがあるなんて、私には夢のような話ですが、日本では、気候の合う長野県や北海道で栽培されています。 料理のアクセントにも 信州サーモンの押し寿司。薄切りのブラムリーが甘酢ショウガのような感じで酢飯の間に挟まれています。写真提供:ブラムリーファンクラブ ブラムリーファンクラブの方が、ブラムリーの魅力を教えてくれました。 「イギリスに200年の物語のあるリンゴ、ブラムリーは、日本のリンゴ産業にクッキングアップルという新たなジャンルを開きました。私たちは〈リンゴスイッチ〉と呼ぶのですが、ブラムリーを知ることで興味のスイッチが入り、日本で入手可能な珍しい品種を探したり、新たな調理方法を探したりと、皆がリンゴに夢中になってしまいます。ブラムリーは、人と人をつなぐ不思議なリンゴなのです」 帆立貝のソテー、ブラムリーのピクルス添え。ブラムリーの爽やかな酸味を楽しみます。写真提供:ブラムリーファンクラブ ブラムリーは、クッキングアップルという名の通り、イギリスではスイーツのほかにも肉料理のソースなど、幅広い料理によく使われていますが、日本のブラムリーの産地でも、その酸味を生かした料理が開発されています。ブラムリーは、シェフが思わず研究したくなる、面白い素材のようです。 リンゴがとろけるイブズ・プディング さて、今回はこのブラムリーを使ったイブズ・プディング〈Eve‘s pudding〉をご紹介したいと思います。アダムとイブの、イブの名前が付いているのは、リンゴを使う美味しいデザートだからでしょうか。温かくてほっこりとする、イギリスらしいプディングです。カリッとした表面の下は、ふわふわのスポンジ。スポンジの下のほうはリンゴで少しトロッとしていて、一番下には煮溶けたリンゴが待っています。一つで何層もの異なる食感が楽しめるプディングです。 19世紀、ヴィクトリア朝のデザートについて記した “A YEAR OF VICTORIAN PUDDINGS”という本にも、同じ名のプディングのレシピがあるのですが、この頃はオーブンがなかった時代で、今とはだいぶ様子が違います。「パン粉、スエット(牛脂)、カレンツ、卵、砂糖、ナツメグを混ぜ、プディング型に入れて2時間ボイルする。甘いソースと一緒に召し上がれ」とあり、蒸して作るクリスマスプディングに似ているのかな、と思います。 今回は、オーブンで焼く、現代版のイブズ・プディングを作ります。ブラムリーアップルがなければ、紅玉やグラニースミスなど、酸味のある品種のリンゴで代用するとよいでしょう。その場合は、リンゴを先に鍋で少し煮てから型に入れましょう。 イブズ・プディングの作り方 材料(容量1.5リットルの型) ブラムリーアップル……約450g きび砂糖(グラニュー糖でも可)……70g 〈ケーキ生地〉 無塩バター……100g きび砂糖(グラニュー糖でも可)……100g 卵……2個 薄力粉……100g ベーキングパウダー……小さじ1 レモンの皮……1個分 〈仕上げのオプション〉 アーモンドスライス……適量 グラニュー糖……適量 作り方 型にバターを薄く塗り、オーブンは180℃に予熱しておく。 リンゴの皮をむき、スライスする。 スライスしたリンゴを型に入れ、70gのきび砂糖を入れ、全体にまぶしておく。 常温に戻したバターを柔らかくし、木べらを使って100gの砂糖をしっかりと混ぜる。 溶いた卵を少しずつ入れ、その都度、しっかり混ぜていく。 薄力粉とベーキングパウダーを振るい入れ、さっくりと混ぜる。 レモンの皮をすりおろして入れ、さっくりと混ぜる。 ③のリンゴの上に、できたケーキ生地をのせて平らにならす。 お好みでアーモンドスライスを上に散らし、予熱したオーブンで約40分焼く。 焼き上がり。お好みでグラニュー糖を適量ふりかける。 私はたっぷり生クリームをかけていただくのが好きです。ギリシャヨーグルトを添えるのも、さっぱりとしておすすめです。





















