イギリス人が大好きなデザートの一つ、トライフル。クリーミーなカスタードと涼やかなゼリーを一度に楽しめて、オーブンを使わずに作れる美味しい家庭菓子です。ガラスの大きな器で作れば存在感たっぷりで、パーティーの場を盛り上げる一品にもなります。エリザベス女王の即位70年記念の公式デザートとして選ばれたトライフルのエピソードを交えながら、イギリス菓子研究家でパティシエのTomoさんに作り方を教えて頂きます。
目次
トライフルは「つまらないもの」?
夏のイギリス菓子といえば、サマープディングとトライフル! サマープディングは以前ご紹介しましたが、トライフルってどんなもの? と思われる方も多いと思います。英語でトライフルとは「つまらないもの」という意味。ありあわせのものを重ねただけ、ということなのかなと思いますが、これがとっても美味しい!
一般的にトライフルとは、ガラスの器の中にフルーツ、スポンジ、カスタード、そして、泡立てた生クリームを重ねたもので、冷やしていただきます。バリエーションがいろいろあって、スポンジをシェリー酒に浸して大人用に作ることもあれば、子ども用にはフルーツジュースで代用することも。スポンジの上からゼリーを流して、冷やし固める場合もあります。
トライフルは私にとって、思い出深いデザートです。以前、パブロヴァの回でお伝えした、語学留学中のアルバイト先で出会った日本好きのイギリス人夫妻。私が和食を作る代わりにパブロヴァの作り方を教えてもらったのですが、その後も何回か自宅に招いていただき、一緒にイギリス菓子を作りました。トライフルもその一つで、バーズ社のトライフルキットを使って作りました。
バーズ社について、詳しくはブレッド&バタープディングの回で書いていますが、インスタントのカスタードパウダーで有名な会社です。トライフルはカスタードが欠かせないお菓子なので、キットが作られたのでしょう。キットは現在も販売されていますが、私が使ったものには、カスタードパウダーの他に、フィンガービスケット、ゼリーの素、ホイップクリームの素、飾り用チョコスプレーが入っていました。
私にとって、初めてのトライフルがフィンガービスケットにゼリー入りだったので、私はいつもフィンガービスケット&ゼリー入りで作ります。ですが、イギリス人の中にはゼリー入りが嫌いな人もいます。シンプルに、スポンジにフルーツ、カスタード、生クリームという組み合わせも美味しく、私はどちらも好きです。
私が働いていたイギリス、コッツウォルズのホテルでも、夏になるとトライフルを作りましたが、その時もフィンガービスケット&ゼリー、バーズ社のカスタードパウダーを使って作りました。このフィンガービスケット、ゼリー液の中に浸すと、液をどんどん吸って、最終的にはゼリーの中でなんだかグレープフルーツのような見かけに変身するのが不思議です。ビスケットと言われなければ、これは何のフルーツだろう? と思うくらい、元の姿がわからなくなります。その変化も面白くて、私は好きです。
女王に捧げるプディング
2022年、イギリスでは、今は亡きエリザベス女王の即位70年を記念する行事「プラチナジュビリー」が行われました。お祝いのイベントがいくつも催されましたが「女王に捧げるプディング(イギリスでデザートの意味)」を決めるコンテストも行われました。5,000通のレシピの中から選ばれ、優勝したのはトライフル。それは、レモンスイスロールとアマレッティのトライフルでした。
スイスロールというのはロールケーキのことで、レモンカード(レモンバター)を巻いたロールケーキに、オレンジのゼリー、カスタード、アマレッティ(アーモンドの軽いビスケット)などを重ねた、豪華なトライフルです。
このレシピは、エリザベス女王とフィリップ殿下の結婚式で振る舞われた、レモンポセットとアマレッティをモチーフに作られたそうです。結婚式の思い出を絡めたレシピとは、なんて素敵!
オーブンを使わず、手軽にできて美味しい最高のイギリスの家庭菓子、トライフル。基本の形に加えて、チョコレート入りだったり、マンゴーなどのフルーツを使ったり、バリエーションは本当にいろいろあります。
私としては、酸味のあるフルーツを使うのがおすすめ。写真は小さな器に盛ったルバーブのトライフルで、ゼリーは使わず、ルバーブのコンポートにスポンジ、カスタード、生クリームを合わせたものです。フルーツはいろいろなものに代えられますよ。
トライフルは、じつはイギリスでは季節に関わらず人気です。今回ご紹介するように大きなボウルで作れば華やかなので、家族や友人が集まるクリスマスなどにもぴったりです。
今回はゼリー入りのレシピ。10人分くらいの、大きな器で作るパーティー用です。普段のデザート用には量が多いので、レシピを半量(5人分くらい)にして、小さなカップなどに1人分ずつ作ってもよいでしょう。1人分の器に盛るのも、とっても可愛いです。
サマートライフルの作り方
材料(4リットルの器1個分)
〈ゼリー〉
- フィンガービスケット 適量
- 板ゼラチン 16g
- 白ワイン 500ml
- 水 240ml
- グラニュー糖 265g
- 冷凍ベリー 350g(今回はラズベリーとブルーベリーを合わせて)
〈カスタード〉
- 牛乳 500ml
- バニラビーンズ 1/2本
- 卵黄 6個
- グラニュー糖 130g
- 薄力粉 25g
- コーンスターチ 25g
- 生クリーム 200ml
〈生クリーム〉
- 生クリーム 400ml
- グラニュー糖 大さじ2
〈オプション〉
- アーモンドスライス(ロースト) 適量
作り方
1.板ゼラチンを氷水につけて戻す。
2.白ワイン、水、グラニュー糖を鍋に入れ、火にかけて、砂糖を溶かす。
アルコールが苦手な方はアルコールが飛ぶまで沸騰させ続けます。3分くらいでアルコールは抜けます。それでも心配な場合は、リンゴジュースなどで作ってもよいでしょう。
3.ゼラチンの水気を切って鍋に入れ、溶かす。よく溶けたら、濾しながらボウルに注ぐ。
4.ボウルの底を氷水に当て、冷凍ベリーを入れて、一気に冷ます。
5.ガラスの器の底にフィンガービスケットを敷き詰める。
6.その上に冷めたゼリー液を流し、冷蔵庫で冷やし固める。最低でも1時間は冷やす。
7.カスタードを作る。バニラを半分に切り、さやからビーンズをナイフで出し、さやと一緒に鍋に牛乳と共に入れ、火にかける。
8.卵黄とグラニュー糖をボウルに入れ、白っぽくなるまでホイッパーでよく混ぜる。
9.薄力粉とコーンスターチをふるい入れ、よく混ぜる。
10. 沸騰した7の牛乳を少しずつボウルに入れながら、ホイッパーでよく混ぜる。
牛乳は少しずつ加えます。一気に熱い牛乳を入れると卵に火が入ってしまうので注意。
11.10を漉しながら7の鍋に戻す。
12.11を強火にかける。焦げやすいので常にホイッパーで混ぜる。
だんだん重くなってきて、もったりしてきます。沸騰して気泡が湧き出てくるようになったら、ゆっくりと混ぜましょう。重くもったりしていたのが少しサラサラと軽くなり、ボコボコと沸騰してきたら完成。
13. すぐにラップを敷いたボウルやバットに入れ、表面にもラップをする。
上からも、下からも、保冷剤などで冷やします。
14.冷ましている間にボウルの底を氷水に当て、生クリームを泡立てる。
15. 冷めたカスタードをボウルに入れ、ゴムベラを使い柔らかく戻す。
16. 14の生クリームを、15のカスタードに2回に分けて混ぜ入れる。
17. 固まったゼリーの上にカスタードを平らに流し入れ、冷蔵庫で冷やす。
18. 生クリームと砂糖をしっかり泡立て、カスタードの上に重ねる。
アーモンドをのせる場合は、散らして完成!
大きなスプーンで取り分けたらパーティースタートです!
さっぱりしていますが、食べ過ぎ注意です。
ぜひ作ってみてくださいね!
Credit
文&写真(クレジット記載以外) / The Pudding Party Tomo - イギリス菓子研究家/パティシエ -
イギリスのプディングの美味しさをもっと多くの人に知ってもらいたいと活動する、イギリス菓子研究家、パティシエ。ル・コルドン・ブルー横浜校にて菓子ディプロムを取得。英国コッツウォルズのスリーウェイズ・ハウス・ホテルにてイギリス伝統菓子作りの腕を磨く。
〈The Pudding Party Tomoとイギリス菓子作り〉 https://youtube.com/channel/UCV1hGcG5t0SELBBiuJ1GqBA
記事をシェアする
新着記事
-
ガーデン
都立公園を新たな花の魅力で彩る「第2回 東京パークガーデンアワード 神代植物公園」1年の取り組み
新しい発想を生かした花壇デザインを競うコンテスト「東京パークガーデンアワード」。第2回のコンテストは、都立神代植物公園(調布市深大寺)が舞台となり、2023年12月からコンテストガーデンが一般公開され、日…
-
園芸用品
【冬のうちに庭の悩みを一挙解決】生育、花つき、実つきを変える土壌資材とは⁈PR
庭づくりで最も多い「花が咲かない」、「実がつかない」といった生育不良。花であふれる景色や収穫を夢見て、時間をかけ、愛情もかけて手入れをしているのに、それが叶わないときは本当にガッカリするもの。でも大…
-
レシピ・料理
冬はこれでポカポカ! 自家製チリオイルで食べる、生姜たっぷり餃子
冬の到来と共に身体をあたためてくれる物が食べたくなりますね。温まる食材の代名詞と言えば「唐辛子」と「生姜」。香りが良く薬味としても大活躍で、薬効もある身体に嬉しいスパイスです。今回は採りたてのフレッ…