口の中にふわりと広がる、ニンジンの香りと甘味。素朴ながら風味豊かなキャロットケーキは、イギリス人が家庭で作る定番のお菓子です。野菜が苦手なお子さんも手が伸びる美味しいケーキの作り方を、イギリス菓子研究家でパティシエのTomoさんに教えていただきます。
目次
砂糖の代わりにニンジンを
日本でもカフェメニューで大人気のキャロットケーキ。イギリス生まれのこのお菓子、始まりは、砂糖の代わりに甘いニンジンを使って作られたプディング(蒸したスポンジケーキ)だったといいます。砂糖が手に入りにくかった第二次世界大戦中、イギリス政府が大々的に、ニンジンを使って作るお菓子を流行らせました。その一つが、このキャロットケーキだったとか。
キャロットケーキは一般にバターではなく植物油を使うので、ケーキ生地に軽さがあり、それでいて、しっとりとしています。味わい深いお菓子で、私も大好きです。
イギリス生まれのキャロットケーキは、アメリカに渡ると、現在のようなクリームチーズフロスティングをたっぷり塗るスタイルに変化しました。フロスティングをのせるスタイルは、今や日本でもイギリスでも人気ですが、イギリスでは、昔ながらのバターに粉糖を混ぜただけのアイシングを施すスタイルもあります。アメリカ人はヘルシーなものが大好きといいますが、このフロスティングには砂糖がたっぷり。全然ヘルシーではないなと、作っているとついつい笑ってしまいます。
野菜たっぷりのケーキ
イギリスでは、ニンジンのほかにもズッキーニケーキやパースニップケーキなど、野菜を使ったお菓子が人気です。白いニンジンのようなパースニップは、欧州ではよく見る野菜ですが、日本では手に入りにくいもの。寒さに当てて甘味を増してから収穫するそうで、加熱調理するとホクホクして、イモ類のような甘味があります。よくポタージュスープにもされますが、甘味の中に、ニンジンと同じセリ科の植物らしい独特な香りが感じられます。
一方、ズッキーニは日本でもポピュラーな存在で、我が家でもよくズッキーニケーキを作ります。ケーキの味を想像できないかもしれませんが、ズッキーニの味は全くしません! とてもしっとりとしていて美味しいです。ズッキーニ嫌いの私の子どもたちも大好きでよく食べてくれるので、夏になるとマフィン型で焼いてよく朝ごはんに出します。
ファーマーズマーケットの楽しみ
イギリスで暮らしていた頃は、キャロットケーキにはそんなに興味のなかった私。あの頃たくさん食べておかなかったのを、今は後悔しています! キャロットケーキはファーマーズマーケット(農家の市)でもよく見かけました。イギリスでは、よく週末などに地元の朝市としてファーマーズマーケットが開かれますが、新鮮な地場産の野菜や肉類、チーズなどの酪農品が並び、そぞろ歩くだけでも楽しいものです。私が住んでいたコッツウォルズ地方の村の朝市は、とってものんびりした雰囲気でした。たまにはバスを乗り継いで、この地方で有名な、ストラウド村のファーマーズマーケットに行くこともありました。地場産のオーガニック野菜やチーズ、卵といった食品のほかに、陶器や衣料も売られ、なかなかの賑わいでした。ロンドンでも、多くのファーマーズマーケットが開催されていますが、こちらはさすが、都会の朝市! とっても活気があって人も多く、ロンドンならではの洗練された雰囲気も楽しいものです。
ファーマーズマーケットの雰囲気にぴったりのキャロットケーキですが、イギリスではお店で買うより、家庭で作ることのほうが多いでしょう。イギリス菓子はもともと家で簡単に作れるものが多いのですが、本当に、ごく普通にみんな自宅で作ります。キャロットケーキはその代表格。誰でも簡単に、美味しく作れるのも、このお菓子の魅力です。では、作ってみましょう!
キャロットケーキの作り方
材料(直径20cmのケーキ型)
- 薄力粉……120g
- ミックススパイス……大さじ1/2(シナモンだけでもよい)*下記参照
- ベーキングパウダー……小さじ1
- クルミ……50g
- レーズン……50g
- サラダ油……100ml
- マスコバド糖……120g(きび砂糖でもよい)
- 卵……2個
- ニンジン……120g
〈フロスティングの材料〉
- クリームチーズ……200g(室温に戻す)
- 無塩バター……50g(室温に戻す)
- 粉糖……80g
*ミックススパイスについて
英国で売られている一般的な製菓用ミックススパイス(Mixed Spice)は、日本では入手が困難。手に入るものの中では、米国製の「パンプキンパイ・スパイス」がいちばん近いように思います。ミックススパイスは、文字通りスパイスを混ぜて、自分で作ることもできます。おすすめの配合は次のとおりですが、好きなようにアレンジしても結構です。
〈お手製ミックススパイス〉
- シナモン、コリアンダー……各大さじ1
- ジンジャー、クローブ……各小さじ1
- キャラウェイシード、ナツメグ……各小さじ1/2
作り方
1.オーブンを180℃に予熱し、型にオーブンペーパーをセットしておく。
2.薄力粉、ミックススパイス、ベーキングパウダーをボウルにふるい入れ、そこに刻んだクルミとレーズンを加えて、軽く混ぜておく。
3.別のボウルにサラダ油とマスコバド糖を入れ、木べらでよく混ぜる。
4.卵を割り入れ、しっかりと混ぜる。
5.混ざったら、2の粉類を入れてさっくりと混ぜる。
6.ニンジンをチーズグレーター(なければ普通のおろし金)ですりおろして加え、さっくり混ぜる。
*ニンジンの水分が出てしまうと、水っぽくなり、生地がべたっとしてしまいます。ニンジンをすりおろして、もし水気が出てしまった場合は、水気を切ってから使用するとよいでしょう。
7.できた生地を型に流し入れ、180℃のオーブンで約40分焼く。
焼き上がったら、冷ましておく。
8.フロスティングを作っていく。クリームチーズとバターは同じくらいの柔らかさになっているのがベスト。
ボウルにクリームチーズとバターを入れ、スパチュラでしっかりと混ぜていく。
9.粉糖をふるい入れ、よく混ぜれば完成。
10.ケーキが冷めたら半分にスライスする。
11.カットした下半分の表面に、全体の半量のフロスティングを塗る。
12.上半分を重ね、その上にもフロスティングを塗る。
13. お好みでシナモンをふりかけて、完成!
密閉容器に入れて冷蔵庫で1日置くと、味わい深くなるのでおすすめです。我が家では待ちきれず、できた瞬間から食べてしまいますが、 翌日や翌々日まで残っているときは、そのほうが美味しいと、いつも思います。翌日でも美味しいし、翌々日はもっと美味しいお菓子です! ぜひ作ってみてくださいね。
Credit
写真&文 / The Pudding Party Tomo - イギリス菓子研究家/パティシエ -
イギリスのプディングの美味しさをもっと多くの人に知ってもらいたいと活動する、イギリス菓子研究家、パティシエ。ル・コルドン・ブルー横浜校にて菓子ディプロムを取得。英国コッツウォルズのスリーウェイズ・ハウス・ホテルにてイギリス伝統菓子作りの腕を磨く。
〈The Pudding Party Tomoとイギリス菓子作り〉 https://youtube.com/channel/UCV1hGcG5t0SELBBiuJ1GqBA
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