【クリスマスレシピ】サクサクふわふわの華やかケーキ〈メレンゲルーラード〉
雪のようなメレンゲの上に、イチゴやラズベリーの赤が映えるメレンゲルーラード。スペシャル感たっぷりの見た目と、サクサクふわふわの新食感が楽しいメレンゲケーキは、みんなが喜ぶ、クリスマスにもぴったりの一品です。イギリス菓子研究家でパティシエのThe Pudding Party Tomoさんに、このお菓子との出合いと作り方について教えていただきましょう。
目次
本で見つけた気になるお菓子
メレンゲルーラードって、どんなお菓子? この名前を初めて耳にする方もいらっしゃるかもしれませんね。一言でいうと、メレンゲで作るロールケーキ。ケーキ生地の代わりにふわふわのメレンゲをシート状に焼いて、クリームとフルーツを巻き込んでロールケーキにします。
私がこのお菓子を知ったのは、まだイギリスで働く前のこと。東京にあるイギリス風のティールームで働いていたときに、当時の先輩が「この本、絶対気に入るよ」と一冊の本を貸してくれました。イギリスの田舎にあるティールームを紹介したもので、その中にこのお菓子が載っていたのです。
今でこそイギリスが大好きな私ですが、じつは当時、初めて挑んだロンドンでの語学留学がうまくいかず、敗北感を抱いていたところでした。季節が冬だったとか、理由はいろいろありますが、とにかくイギリスなんて大嫌い! と思っていたのです。それなのに、なぜかイギリス風のティールームで働くことに。イギリスに行った後だったのと、その店が私の大好きな町にあったという、単純な理由からでしたが、思えば不思議な巡り合わせでした。このティールームのおかげで今の私があると言っても過言ではありません。大嫌いと思っていたイギリスに、再び導かれることになったのですから。
店までの毎日の通勤は、片道1時間半。電車の中で、いつも本を読んでいました。先輩に借りた本に夢中になって、次第に読むのはイギリス関連の本ばかりになりました。本に出てくるイギリスの田園風景は美しく、お菓子も素朴でとっても美味しそう! 日本では見たこともないお菓子がたくさんある。これはもう行くしかない! 本が伝える景色に魅せられ、私はそう決めました。
大都市ロンドンに行ったのが間違いだった。田舎に行けばよかったんだ! 私は再びイギリスでの語学留学を計画しました。本で紹介されているコッツウォルズ地方の数々のティールームを訪ねられるよう、コッツウォルズの中心地、チェルトナムの語学学校を調査。斡旋業者に頼んだロンドン留学の失敗に懲りて(それから節約のためにも)、自力で見知らぬ町の学校を調べ、英語もろくにできないのに入学手続きをし、学生ビザを取得しました。お金の許す限り滞在することにしたのです。
コッツウォルズでついに遭遇
さて、無事コッツウォルズに乗り込んだ私。語学学校の生活はとっても楽しかったのですが、この留学の一番の目的は、休日にバスを乗り継いでいろいろな村に行き、お菓子を食べることでした。夏休みなどの長い休暇には電車も使って、イギリス各地の田舎に出向きました。英語が特に好きというわけでもなく、語学力は日本の学校で培った程度。でも、乏しい英語でも頑張って話せば伝わる! という精神です。自分でもすごい行動力だと思いますが、大抵のことはなんとかなる!
ティールーム巡りでは、いつもクリームティーというスコーンと紅茶のセットを注文していましたが、コッツウォルズの小さな村のティールームで、ついに見つけたのです! あの本に出てきたメレンゲルーラードを。いつか食べてみたいと思っていた、よく分からないお菓子!
いつものようにクリームティーを食べた後、待望のメレンゲルーラードを注文しました。その店のものは、ヘーゼルナッツ風味のふわふわサクサクのメレンゲでチョコレートクリームをロールしてあります。ワクワクしながら一口。しかし……率直な感想は「とてつもなく甘い……!」でした。それでも、これはどうやって作るのだろう? と、興味をそそられます。メレンゲをどんな風に焼いて、ロールケーキの生地にするのだろう? その謎は解けないままでしたが、食い倒れの旅、いえいえ、語学留学を無事終えて、私は帰国の途に就きました。
それから1年後、ラッキーなことに、私はワーキングホリデーで再びイギリスに向かうことになりました。パティシエとして働くことになったコッツウォルズのホテルでは、イギリス伝統のお菓子を作っていましたが、その中にあったのです。あのメレンゲルーラードが!
やった! ついに作り方を学べる! それまでメレンゲといえば、フワフワの卵白を泡立てたものか、焼いたらサクサクのクッキーになるものの、2種類しか知らなかった私。初めて作るメレンゲ生地に、これで焼いて大丈夫なの? と心配になりましたが、焼き上がったものは、あのティールームで食べたサクサクふわふわのメレンゲ生地そのものでした。
そのホテルでは、メレンゲ生地に無糖の生クリームとフルーツを巻き込んで、ロールケーキにしていました。ティールームで初めて食べたルーラードはちょっと甘すぎると思ったけれど、このレシピはフルーツの酸味で意外とさっぱりしています。
今でもよく作るこのお菓子。初めて食べる人は必ず感動しますので、ぜひ作ってみてくださいね! 作り方は、以前ご紹介したパブロバとよく似ています。生地がメレンゲで軽いので、たくさん食べられてしまう危険なお菓子です。ご注意くださいね。
メレンゲルーラードの作り方
材料(ロールケーキ1本分)
〈メレンゲ〉天板1枚分
- 卵白……4個分
- グラニュー糖……200g
- コーンスターチ……小さじ1(片栗粉で代用可)
- バニラエッセンス……小さじ1
- モルトビネガー……小さじ1(白ワインビネガーやレモン果汁で代用可)
〈トッピング〉
- 生クリーム……200ml
- イチゴなど、好みのベリー類を好きなだけ
- 粉糖……適量
作り方
1.オーブンを160℃に予熱する。
2.メレンゲを作る。卵白に、分量のグラニュー糖のうち、大さじ1をまず入れて、ふんわりするまで泡立てる。
3.ふわっとしたら、残りのグラニュー糖の1/3を入れ、またツノが立つまでしっかり混ぜる。
4.3と同じように、残りのグラニュー糖を2回に分けて加え、その都度ツノが立つまでしっかり混ぜる。
5.コーンスターチ、バニラ、モルトビネガーを入れ、混ぜる。
6.混ざったら、クッキングペーパーを敷いた天板にメレンゲを流す。
天板の四隅にメレンゲを少しつけて、クッキングペーパーを貼り付けると、メレンゲを平らにしやすい。
7.スパチュラなどで平らにならす。
それほど神経質になる必要はなく、このような感じで大丈夫。
大体平らになったら、160℃のオーブンで約20分焼く。
8.焼き上がり。
9.焼き上がったらすぐに、茶こしを使って、粉糖をメレンゲの表面全体にたっぷりと振りかける。
10.もう1枚のクッキングペーパー(後でこのペーパーを使ってケーキを巻く)を上にかぶせ、メレンゲ生地をひっくり返す。
底に敷いていたクッキングペーパーをゆっくりと剥がす。
11.ペーパーを剥がしたら、底面にも粉糖をたっぷりと、茶こしを使って振りかける。
メレンゲはこのまま置いておく。
12.氷水を入れたボウルにもう一つボウルを重ね、生クリームを泡立てる。
13.メレンゲ生地に(底側が上)生クリームを塗っていく。
14.好みのフルーツを並べる。
このように横1列に並べると、どこを切ってもフルーツが均等にある状態になる。
15.クッキングペーパーを使いながら、ロールケーキを作る要領でメレンゲを巻く。
16.皿に置いて、フルーツを飾り付けたら完成!
ハーブの緑を添えれば、ぐっとクリスマスらしくなりますよ。今年のケーキにぜひどうぞ。
Credit
制作・レシピ・写真・文 / The Pudding Party Tomo - イギリス菓子研究家/パティシエ -
イギリスのプディングの美味しさをもっと多くの人に知ってもらいたいと活動する、イギリス菓子研究家、パティシエ。ル・コルドン・ブルー横浜校にて菓子ディプロムを取得。英国コッツウォルズのスリーウェイズ・ハウス・ホテルにてイギリス伝統菓子作りの腕を磨く。
〈The Pudding Party Tomoとイギリス菓子作り〉 https://youtube.com/channel/UCV1hGcG5t0SELBBiuJ1GqBA
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