神奈川の庭でバラを育てながら、バラ文化と育成方法の研究を続ける。近著に『薔薇ごよみ365日 育てる、愛でる、語る』(誠文堂新光社)、『アフターガーデニングを楽しむバラ庭づくり』(家の光協会刊)、『ときめく薔薇図鑑』(山と渓谷社)著、『バラの物語 いにしえから続く花の女王の運命』、『ちいさな手のひら事典 バラ』(グラフィック社)監修など。TBSテレビ「マツコの知らない世界」で「美しく優雅~バラの世界」を紹介。
元木はるみ -「日本ローズライフコーディネーター協会」代表-

神奈川の庭でバラを育てながら、バラ文化と育成方法の研究を続ける。近著に『薔薇ごよみ365日 育てる、愛でる、語る』(誠文堂新光社)、『アフターガーデニングを楽しむバラ庭づくり』(家の光協会刊)、『ときめく薔薇図鑑』(山と渓谷社)著、『バラの物語 いにしえから続く花の女王の運命』、『ちいさな手のひら事典 バラ』(グラフィック社)監修など。TBSテレビ「マツコの知らない世界」で「美しく優雅~バラの世界」を紹介。
元木はるみ -「日本ローズライフコーディネーター協会」代表-の記事
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育て方
【バラの手入れ】開花時の景色を作る「バラのワイヤー誘引」
新芽や枝にダメージを与えない誘引テクニック バラの春の芽吹きが楽しみな季節になりました。もう冬のバラのお手入れはお済みでしょうか? 特に誘引は、枝が硬くなると麻紐などで引っ張ったり、結んだりしづらくなります。無理をすると枝が折れたり、新芽が取れてしまうこともよくあります。 もし、これから誘引をし直したり、新たに行う場合は、あまり強く曲げたりしないように注意しましょう。 そして、ワイヤーの力を借りて、結ばずに枝に絡めるなどの方法を取ってみてはいかがでしょうか? 私が試みている誘引テクニックをご紹介します。 バラの誘引にワイヤーを使う4つのメリット 愛用のワイヤー。 大創産業の皮膜処理されたサビにくいスチール製。最適な太さは1.6mm。ホームセンターや通販で入手可能。 ワイヤー誘引のメリット① ワイヤーを枝に絡めながら、好みの角度に優しく導くことができるので、紐で1カ所を縛りつけるよりも、枝に負担がかかりません。 我が家の場合は背景が白いので、このワイヤーは馴染んで目立ちません。 ワイヤー誘引のメリット② フェンスの隙間が狭い場合でも誘引がしやすいのもメリット。 ワイヤー誘引のメリット③ オベリスクなど、支柱の本数が限られていると、枝の収まる場所が見つからず、誘引に迷うこともおきます。せっかく伸びた枝を、とめつける場所が見つからないからと切り落とすのももったいないですよね。そこで、ご紹介のようにワイヤーを使用すれば、綺麗に誘引が仕上がります。 中央の短い枝を空中で支えることができます。 枝が短くて固定したい支柱に届かない場合でも、足りない部分をワイヤーで補うことができます。 この場合、ワイヤーをバラの枝に結びつけるのではなく、クルクルと枝に絡めて、その先端をポールに固定するだけです。新芽を落とさないように注意して行いましょう。 ワイヤー誘引のメリット④ フェンスやパーゴラなど、たとえ枝を誘引できる場所がなくても、長いワイヤーを張って、枝先をクルクルと固定すれば、バラが広がる風景を作ることができます。 大きく伸長するバラは、フェンスやパーゴラなど、枝を絡ませる場所がないと、枝が暴れて見苦しい場合があります。また、枝先を固定せず、そのまま空間に放置していると、風に吹かれて暴れ、棘で怪我をする危険もあります。もし、枝を絡ませる場所がない空間でも、ワイヤーで枝先を固定して、近くにある構造物や樹木を利用して誘引すれば、春にバラが一面に広がる風景を作ることができます。 写真は、庭で、枝1本1本にワイヤーを巻いて、そばにある木や低いフェンスに誘引・固定した例です。 満開時はワイヤーが隠れて花のスクリーンに 今は枝ばかりが目立つ時期ですが、新芽が展開してくるとワイヤーの位置も分からないほどになり、やがて花が咲き、バラの美しいスクリーンとなります。 上写真では、高い木の上から枝垂れるように枝を誘引した‘ポールズ・ヒマラヤン・ムスク’(R)が降るように咲き、下部の低いフェンスに誘引したバラ‘ボルティモア・ベル’(R)と見頃に共演しました。 今年の5月も、誘引したバラたちが、こちらの思惑通りの風景を見せてくれるか、ドキドキ、ワクワクしながら楽しみな毎日です。 ぜひ、皆さまもワイヤー誘引をお試しください。
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樹木
【私の推しバラ】35年の愛好歴から選び抜いた心酔Rose神5
元木はるみさんがバラを選ぶ基準とは バラをメインにした元木さんの庭。2020年の様子。 神奈川県の自宅の庭で多数のバラを育てながら、その喜びや栽培のコツなどを執筆、またカルチャースクールなどでも解説する元木はるみさん。最愛のバラを育てて約35年になるロザリアンです。 現在の庭に引っ越す前の元木さんの庭。2019年の様子。 元木さんがバラの苗を購入するに至るまでに確認することは、系統や樹高、樹形など、固有の性質です。次に、その情報をもとに、植えるのにふさわしい場所を考えます。日当たりや、構造物の支えが必要かなどを含め、庭のどこに植えたらよく育つか、鉢栽培の場合はどこに置くとよいかなど。そして、咲いている姿や香りを知るために、バラの専門店や庭園などで、なるべく実物を見ます。 実際に見て、心がときめくかも大きなポイントです。そんな元木さんが、自身のチェックポイントを満たし、実際に育ててきた経験から選んだ5種のバラをご紹介します。 マストバイ①20年間、ずっと心をときめかせてくれるバラ「クロッカス・ローズ(Crocus Rose)」 系統:シュラブローズ(S)/四季咲き性/2000年イギリス作出/作出者:David Austin このバラを初めて見たのは、以前開催された花イベント「国際バラとガーデニングショウ」の会場でした。バラの花々で埋め尽くされた会場のなかでも、特にこのバラがお披露目されたイングリッシュローズの新品種が植栽されたコーナーは、人気の的でした。ミレニアムイヤーに発表されたバラですが、「華やか」と表現するよりは、花が内包する‘秘められた美しさ’を強く感じました。 庭では、花色が褪せるまで咲くほど花もち良好。 会場内の室内灯では、花色はほとんど白っぽく見えましたが、グリーンアイを覗かせて、ほんのわずかに黄色~アプリコット色が見え隠れするニュアンスがあるその花色は、とても繊細で心奪われたことを覚えています。それからすぐに苗を入手して庭に植えてから、もう20年以上。今でも、最初の出会いの時に感じた ‘秘めた美しさ’に心ときめきます。 アプリコット色のつぼみから、カップ咲き、大輪ロゼット咲きと次第に花開き、アプリコットクリーム~クリーム色へと変化していきます。そのすべての花色と花姿を身近に眺めていたくて、束ねて室内に飾るのも楽しみの一つです。 優しい花色、優しい佇まいで、脇役にも主役にもなる大変エレガントなバラです。 マストバイ②花数たっぷりで他のバラとも相性がよい「スノー・グース(Snow Goose)」 系統:シュラブローズ(S)/四季咲き性/1996年イギリス作出/作出者:David Austin 花径3cmほどのセミダブルの小輪花が房状に咲いて、ナチュラル感があるバラです。長年、‘スノー・グース’を育ててきましたが、以前の庭ではこのバラのよさを生かしきれていなかったのではと反省しています。現在の庭では、しっかり日が当たる場所に植えたためか、すくすく元気に育ち、春は壁を覆い尽くすほどたくさんの花を咲かせてくれます。 イングリッシュローズでありながら、つるバラとして利用することができ、花壇の背景や庭の奥側に配置するのにも向くバラです。栽培には、壁面やフェンス、アーチなどの支えが必要です。 上写真では、先にご紹介した大輪のバラ‘クロッカス・ローズ’を囲むように添えているのが、小輪の‘スノー・グース’です。このアレンジメントでも分かるように、どんなバラとも相性がよく、ガーデンでもアレンジメントでも重宝します。 マストバイ③食べられる芳香豊かなバラ「食香バラ‘豊華’(ほうか)」 系統:不明/一季咲き性/作出年・作出国・作出者不明 ダマスク香にスパイシー香が微かに加わった強い香り。ワックス成分の少ない花びらは柔らかく、苦味やえぐみも少ないことから、中国では1,000年以上も前から、食用・薬用・香料として利用されてきた唯一無二のバラです。現在でも山東省平陰のバラの村では、このバラを多数栽培して出荷しています。このような歴史とロマン溢れるバラを自宅で身近に栽培できるのは、大変ありがたいことです。 左/花びらのビネガー漬け。右/樹高は、約1.2~1.5m。花は一季咲きですが、房咲きで次々と咲くため、長く楽しめます。 このバラが咲く時期は、毎朝花を摘み、花弁をさまざまな方法で暮らしに役立てています。例えば、花びらをビネガーに漬けたものを水や炭酸水で割ると、喉越しよく、バラの香りが口いっぱいに広がる夏にぴったりの飲み物に。また、砂糖やオリーブオイル、ハーブソルト、レモン汁を加えれば、バラ色のドレッシングが出来上がります。 ‘豊華’の柔らかく美味しい花弁は、生のまま食すこともできます。サラダやお菓子に生の花弁を散らせば、彩り豊かな一品に。病害虫にも強い性質で、私は完全無農薬でこのバラを育てています。 マストバイ④ゴージャスに咲く!「フランソワ・ジュランヴィル(François Juranville)」 系統:ランブラー(R)/一季咲き性/1906年フランス作出/作出者:Barbier Frères & Compagnie バラで風景を作りたい時に、大活躍してくれるつる性のバラです。暑さ・寒さに強く、枝は匍匐(ほふく)性でよく伸長し、パーゴラやアーチなどの構造物に誘引するのに向く性質です。我が家では、サンルームの開口部を縁取るように設置したパーゴラに絡めていますが、外から見ても室内から見てもバラの花々に囲まれるゴージャスな感覚が味わえます。 新しい庭に植え付けて、わずか2年で写真のようにアーチを覆うまでに成長しました。 引っ越し前の住まいでも、窓の周りを縁取るように誘引し、約10mを超す大木にまで成長しました。しかし、現在の住まいに移る際、掘り起こして移植するには大きすぎて断念。この庭では、新しく苗を購入しなおして植栽しました。 マストバイ⑤魅惑の花色と香りをまとう「ブルー・ムーン・ストーン(Blue Moon Stone)」 系統:シュラブ(S)/四季咲き性/2017年日本作出/作出者:河本純子 グリーンがかったつぼみから、薄紫色の中輪ロゼット咲きの花が開花する、その過程がなんともロマンチック! 花に顔を近づけると、ダマスク香に甘さが加わった心地よい香りを堪能できます。花色は徐々に退色していきますが、花もちがよいため、ひと房の中に紫~白のグラデーションを見ることができます。 美しいひと房の中の紫~白のグラデーション。ひと鉢でも存在感のあるバラ。 剪定することでコンパクトな樹形に仕立てられるシュラブローズなので、鉢植えで育てるのにも向いています。
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クラフト
12種の秋バラ&香りをとじ込める「自家製ポプリ」のレシピ公開
2022年の秋バラの感想 優しい色調のバラが咲く今年の秋の庭。 例年の秋は日に日に気温が下がり、朝晩の寒暖の差が大きくなって花色の色調に深みをもたらすことが多いものです。しかし今年の秋バラは、個人的な感想としては、例年に比べると、花色の深みがやや少ないように感じられました。12月上旬は気温がぐっと下がってきたので、色調に深みが増していくことを期待しています。 また、気温が高かったせいか、この時期になればいなくなるはずの害虫がまだいて、被害も多かったように思います。 つぼみや花びらに穴があいてしまった秋バラ。 バラのつぼみや花びらを食害するのは、オオタバコガの幼虫やホソオビアシブトクチバの幼虫の仕業です。 庭で咲いた秋色が楽しみなバラ ‘ディスタント・ドラムス’(FL) 作出国:アメリカ 作出年:1985年 作出者:Griffith J. Buck 例年は、もう少し色調のトーンが強くなりますが、この秋のバラは優しい花色で咲きました。 ‘エメラルド・アイル’(CL) 作出国:イギリス 作出年:2008年 作出者:Dickson グリーンがかったクリーム~アプリコットピンクの花色は、徐々にオレンジ色を帯びてベージュに近い花色へ。花もちが大変優れた品種です。 ‘アンナ・ユング’(T) 作出国:フランス 作出年:1903年 作出者:Gilbert Nabonnand 桜色の尖った花弁を幾重にも重ねた中輪の花は、秋、花色に濃淡が現れて、さらに美しさに磨きがかかります。 ‘ヴァンデ・グローブ’(HT) 少し返り咲いたキンギョソウやスイートアリッサムと。 作出国:フランス 作出年:2000年 作出者:Dorieux 純黄の花色は、キンギョソウなど秋色の植物たちとの相性もよく、周囲を明るく照らしてくれます。 ‘ナディーナ・エクセラリッシ’(FL) 作出国:フランス 作出年:2007年 作出者:Dominique Massad 繊細な花色が魅力の‘ナディーナ・エクセラリッシ’は、開ききるまでのどの瞬間も整った美しい花姿を見せてくれます。 ‘エクレール’(Pol) 作出国:日本 作出年:2007年 作出者:横田園芸 グリーンのつぼみが開くと、小さな白い花が現れて金色のしべを見せながら長く咲き続けます。 左/‘エクレール’を寄せ植えに。右/‘エクレール’は小鉢に植栽し、大きな鉢の中に置いています。 ‘エクレール’を主役にした寄せ植えには、グレイッシュケール‘ファントム’やビオラ‘ファルファリア’を左右対称に植え、両端にシルバーリーフのオレアリア‘アフィン’、中央手前にカロケファルス‘シルバーブッシュ’を合わせて、シックに仕上げました。 代表的な6つの香りのバラたち ‘ラ・フランス’(HT)=ダマスク香 作出国:フランス 作出年:1867年 作出者:Jean-Baptiste André Guillot(Fils) モダンローズ第1号の‘ラ・フランス’は、ダマスクの香りが強く香ります。また、春よりゆっくり開く秋の花は、剣弁がよりはっきりとして花形が整います。 ‘プロスペリティ’(HMsk)=スパイシー香 作出国:イギリス 作出年:1919年 作出者:Rev. Joseph Hardwick Pemberton. さらに気温が下がってくると、花色の中にさまざまな色合いが見え隠れし、繊細な美しさに。ツンとくるようなスパイシーな香りは、たくましい野バラを連想させます。 ‘サフラノ’(T)=ティー香 作出国:フランス 作出年:1839年 作出者:Beauregard 秋の光を受けて咲く花色は特に美しく、ティー香が微かに香ります。 ‘ローズ・ポンパドール’(S)=フルーティー香 作出国:フランス 作出年:2009年 作出者:Delbard カップ咲きからクォーターロゼットになる大輪の花からは、フルーティーな香りが強く香ります。 ‘ブルー・ムーン’(HT)=ブルー香 作出国:ドイツ 作出年:1964年 作出者:Tantau 初期のブルーローズの代表ともいえるこちらのバラは、ダマスク香にティー香が微かに混ざり合う、甘く爽やかな心地よい香りがします。 ‘セイント・セシリア’(S)=ミルラ香 作出国:イギリス 作出年:1987年 作出者:David Austin 我が家に来てから20年以上経つこちらのバラは、住宅の建て直しや引っ越しといった2回の移植を乗り越えて、この秋元気に復活しました。大輪のディープカップの花からは特徴的なミルラ香が強く香ります。 秋の香りをまとうバラとハーブで「花びらのドライ作り」 バラの花びらをドライにするには、自然乾燥をはじめいろいろな方法があります。今回は、仕上がりの色が綺麗で、3~5日という短い時間で完成する乾燥剤を使用したドライ作りをご紹介します。ハーブも同様の方法でドライにします。 タッパーなどの密封容器と食品用の乾燥剤を用意します。 香りのよいバラを3~4輪摘んでほぐし、さっと水洗いします。水気をよく除いた花弁を、食品用の乾燥剤を入れたタッパーの中に、花弁同士が重ならないように並べます。そして、蓋をして3~5日程度そのままにして、よく乾燥させます。 *このとき、あまり多くの花弁を入れてしまうと、うまく乾燥できず、腐敗してしまうことがあります。花弁が重ならない程度の量で作ることがポイントです。 タッパーから取り出した花弁は、すぐに利用しない場合は、カビが発生しないよう、食品用の乾燥剤(小袋入り)と一緒に保存用の密封容器に入れておきましょう。 バラの花弁と同様に、枝ごと乾燥させた数種のハーブも、それぞれ保存用の密封容器に入れて保管します。こちらも、食品用の乾燥剤を入れておきましょう。 バラ&ハーブのポプリ材料 <材料> バラの花弁……大さじ4ミント……大さじ3ラべンダー……大さじ3レモングラス……大さじ2ローズマリー……大さじ1エッセンシャルオイル……3滴 使用するハーブの種類や量はお好みです。ハーブは使用する分をハサミで細かくカットします。 ドライポプリの作り方手順 左/約2週間熟成中。右/出来上がり。 密封できるビニール袋、エッセンシャルオイルを用意します。袋にバラとハーブのドライの材料を入れ、エッセンシャルオイルを3滴たらして密封します。5回ほど振ってなじませ、食品用の乾燥剤(小袋入り)を入れ、そのまま約2週間熟成させれば出来上がり。 モイストポプリの作り方手順 粗塩、ボール、スプーン、ガラスの密封容器、エッセンシャルオイルを用意します。バラとハーブのドライの材料は、バラ&ハーブのポプリ材料と同じ量です。 ボールに粗塩(ガラス瓶に収まる量)を入れ、エッセンシャルオイルを3滴たらし、スプーンでよく混ぜ合わせます(*作ったモイストポプリをバスソルトとして使用する場合は、肌に触れても大丈夫なエッセンシャルオイルを選びましょう)。 密封できるガラス瓶に、エッセンシャルオイルを混ぜた粗塩、ドライのバラとハーブの順に、隙間ができないように詰めていきます。リラックスして、ゆっくり香りを楽しみながら作りましょう。 詰め終わったら蓋をして、約3週間ほど熟成させれば出来上がりです(乾燥剤は不要)。 約3週間したら、器に取り出して室内で芳香を楽しんだり(上写真右)、布袋に入れてバスソルトとして楽しみます。 いよいよ年末も間近。バラも冬支度の準備を始める時期ですね。今のうちに、咲いたバラの花をよく観察したり、香りを確かめたり、花弁をドライにして保管するなど、花が咲かない冬の時期に備えましょう。
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ストーリー
英国王室に受け継がれる「ロイヤルマートル」と森の治療薬レモンマートル活用法
イギリス王室で育てられている植物たち Benjamin McMillan/Shutterstock.com 今年、2022年9月8日に御年96歳で崩御されたエリザベスⅡ世女王陛下、そのご葬儀(国葬)の際、棺に飾られた植物について、花好きの方々の間でも注目されました。ニュースでも報じられていた通り、これらの植物は、バッキンガム宮殿、クラレンスハウス、ハイグローヴハウスの庭園から摘まれたものが使われたそうです。 Kelly Chow/Shutterstock.com ダークレッドのダリア、スカビオサ、アジサイ、3~4品種のバラ、イングリッシュオークの葉、ローズマリー、ギンバイカ(マートル)の枝などが、テレビの中継画面からも見て取れました。中でも中央の頂点にあしらわれていたギンバイカ(マートル)は、じつはイギリス王室にとって、とても大切な植物だったのです。 縁起物の植物「ギンバイカ(マートル)」 Gherzak/Shutterstock.com 学名/Myrtus communis和名/ギンバイカ(銀梅花) 別名/マートル、ミルタス、イワイノキ科名・属名/フトモモ科ギンバイカ属原産地/主に地中海沿岸 常緑低木 日当たりのよい、温暖な場所を好む常緑低木。花が終わった頃、すぐに剪定すれば翌年の花を楽しむことができます。 和名の「銀梅花(ぎんばいか)」は、5~7月に咲く5弁の白い花が、梅に似ていることから付けられました。美しい糸のような細いオシベが特徴です。 S.Zykov/Shutterstock.com 古くは、古代エジプトで繁栄・豊穣の象徴とされ、愛と美の女神ヴィーナスに捧げるご神木とされました。キリスト教では、聖ヨハネが葉からオイルを作り、イエスの洗礼に使用したともいわれています。 ハーブとしては「マートル」と呼ばれ、花や葉にユーカリに似た香りがあります。料理の香り付けや結婚式の飾りに使ったり、お酒に浸けて香りを移したものを「祝い酒」として利用したことから「イワイノキ」(祝いの木)の別名があります。 Ivan Semenovych/Shutterstock.com 「繁栄」「豊穣」「平和」「美」「愛」「結婚」「純潔」「忠誠」「貞節」「幸運」などの象徴とされ、誕生から結婚式、葬儀まで幅広く利用される縁起物の植物です。 レモンマートル KarenHBlack/Shutterstock.com 葉に斑が入る斑入り銀梅花(バリエガータ)もあり、花のない時期でも観賞価値があります。 また、シナモンの香りのシナモンマートル、レモンの香りのレモンマートルは、オーストラリア原産のフトモモ科バクホウシア属の常緑低木です。 イギリス王室に受け継がれるマートル 常緑樹のマートルが、なぜ王室で育てられ、どのように使われてきたのか、エピソードをご紹介します。 ヴィクトリア女王と「ロイヤルマートル」 Abel Brata Susilo/Shutterstock.com 18歳の若さで女王となったヴィクトリア女王(1819年5月24日 - 1901年1月22日、在位:1837年6月20日 - 1901年1月22日)は、1840年、21歳の時に、アルバート王子(ザクセン=コーブルク=ゴータ公子)と結婚しました。 ヴィクトリア女王は、アルバート公の祖母から贈られたブーケの中に入っていたマートルを挿し木し、ワイト島にある別邸「オズボーンハウス」の庭園に植えたとのことです。 CoolJosh/Shutterstock.com その木は今も健在で、国の繁栄に貢献し、幸せな家庭を築いたヴィクトリア女王とアルバート公を称え、繁栄と幸せな結婚の象徴として「ロイヤルマートル」と呼ばれています。以来、英国王室の花嫁のウェディングブーケには、この「ロイヤルマートル」の小枝を入れることが習わしとなっているそうです。 エリザベスⅡ世女王、キャサリン妃はじめロイヤルウェディングブーケには、その「ロイヤルマートル」が入れられました。 葬儀の棺に添えられたマートルの小枝 Turgut Cetinkaya/Shutterstock.com 再び、エリザベスⅡ世女王のご葬儀の話に戻りますが、棺に添えられた花々の中のマートルの枝は、1947年のエリザベスⅡ世女王とフィリップ殿下の結婚式のウェディングブーケに使われた枝を挿し木して育てられたものと伝えられています。 つまり、ヴィクトリア女王が夫アルバート公の祖母から贈られたマートルの小枝を挿し木して育て、その成長したマートルの小枝を、エリザベスⅡ世女王がご自身の結婚式のブーケに使用。そのブーケのマートルが再び挿し木で育てられ、今回のご葬儀に使用されたという訳です。 このことからも、イギリス王室にとって受け継がれる「ロイヤルマートル」は、大切で特別な植物だということが分かります。 「森の治療薬」といわれるレモンマートル活用法 レモンマートル(科名・属名/フトモモ科バクホウシア属)の葉には、香りの成分であるシトラールがレモンの約20倍も含まれており、含有率は世界一とされています。 シトラールには、抗菌・抗ウイルス・鎮痛・鎮静作用があり、免疫力の低下が原因で引き起こされる病気を予防する効果があるとされています。また、そのレモンのような香りをかぐことで、リラックス効果、癒やし効能があり、心と体の両方に効果が期待できるハーブです。 オーストラリアの先住民アボリジニは、古くからこのレモンマートルを「森の治療薬」と呼び、薬草として活用してきました。 お茶として楽しむ 耐熱性のポットに、8~10枚ほどの水洗いした葉を入れ、熱湯を注ぎ、5分間蓋をしてよく蒸らします。お茶の味が濃くなったら、また熱湯を注いで繰り返しいただくことができます(*但し、子宮収縮作用促進効果もあるといわれているので、妊婦さんの服用はご注意ください)。 また、香りのよいバラの花弁とブレンドしていただくのも美味しく、おすすめです。 ブレンドしたバラの花弁は‘ローズ・ポンパドール’で、甘く爽やかなフルーティー香が強く香ります。レモンマートルをドライにして保存する際は、写真のようにレモンマートルの葉を小さくカットしておくと、抽出しやすく美味しくいただけます。 飾って楽しむ 香りのブーケ(タッジー・マッジー)を作って室内に飾ります。逆さにして飾りながらドライにすれば、室内で長く香りを楽しめます。 *タッジー・マッジーは、ヨーロッパの中世の時代、抗菌作用などの効能のある香草を小さく束ねて、伝染病予防や魔除けとして持ち歩いたのが由来といわれています。 プレゼントとして贈る レモンマートルの花言葉は、ギンバイカ(マートル)と同様に、「愛」や「幸運」ですので、プレゼントにも最適です。 ブーケ材料/レモンマートル、ローズマリー、ラベンダー、カルーナ、バラ(‘ヴィウーローズ’ ’アンナ・ユング’ ‘ローズ・ポンパドール’) マートルに実った果実ごとリースにしても絵になります。Katinkah/Shutterstock.com エリザベスⅡ世女王のご葬儀を通して、「マートル」という植物へのイギリス王室の想いを強く感じ取り、知ることができました。そして、私も庭で育てているマートルには、さまざまな効能が期待できることも再認識しました。マートルは、今までもこれからも庭木としての役目を担いながら、付加価値をさらに広げ、人々の生活の中で存在感を増していくのではないでしょうか。
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ガーデン&ショップ
自然との調和が美しい秋の庭 栃木「コピスガーデン」を訪ねて
雑木の庭がつくられて約10年になる「コピスガーデン」 9月下旬、栃木県那須町にある「Coppice GARDEN (コピスガーデン)」を訪れました。 「コピス」とは、「雑木林」のこと。那須の雑木林を、まるで魔法をかけたかのように素敵なガーデンにつくり替えたのは、「大森プランツ」の代表、佐々木清志郎さん。 「大森プランツ」は、フランス、ギヨー社のバラをはじめ、樹木や宿根草、クレマチス、クリスマスローズなど、苗の卸販売、造園工事の設計施工、各種イベントの企画立案を、長年手掛けています。じつは、2011年の東日本大震災によって、本社のある福島県南相馬市から、ここ那須町に避難され、新たにこの地に美しいガーデンをつくられたという経緯があります。広大な那須の土地に「コピスガーデン」が生まれたのは、2013年春のことでした。 秋の草花が咲き競うガーデンをご案内 雑貨ショップとカフェの間を通って入場すると、初秋のガーデンではすでに咲き始めた秋の草花が元気に出迎えてくれました。 「季節のガーデン」のエリアでは、夏の名残の宿根フロックスと、残しておいてくださったバラの花が彩りを添えていました。 季節毎の宿根草が次々花咲くこちらのエリアでは、秋の七草の一つオミナエシやアスター、シュウメイギクなどの宿根草が、タイミングを待っていたかのように生き生きと花を咲かせていました。 池の鏡に映る木々や空の青さに癒やされて 池の周囲の木々も、早くも紅葉が始まりつつあり、秋ならではの景色を見せてくれていました。 池の周囲には、時間を忘れてのんびりと腰かけていたいベンチや、癒やしをふりまく愛らしいアヒルの姿も見られて、寛ぎの時間を過ごすことができました。また、芝生広場では、ゆったりと空を流れる雲や風を感じながら、爽やかな秋の空気に身を置くことができました。 こちらでは、アスター‘パープルドーム’やルドベキア‘リトルヘンリー’、クジャクアスター(白孔雀)、コレオプシス‘ムーンビーム’などの宿根草が満開に咲き誇り、秋の光を浴びて美しく輝いていました。 グラスも、秋の空に向かって穂を上げ始めていました。 これから見頃の秋バラもお見逃しなく ここまでは、初秋の「コピスガーデン」の表情をご紹介しましたが、これから秋も深まる10月中旬に近づくと、秋バラが満開のシーズンを迎えます。 背景の植物も秋色が増し、秋の光をまとったバラの姿は、なんとも言えない美しさです。 春とは全く異なる秋ならではのバラの風景…この世界を、ぜひ多くの皆様に見ていただき、感動を分かち合いたい瞬間です。 ガーデン散策のあとは、苗や雑貨のお買い物ができるのも魅力の一つです。「コピスガーデン」の広い苗売り場では、バラはもちろん宿根草やクレマチス、クリスマスローズなど、年間を通して2,000点を超える商品が並び、苗選びも楽しむことができます。 また、庭や植物にちなんだ雑貨が並ぶショップや、テラス席を備えたカフェもありますので、お買い物はもちろん、旬の料理やお菓子も味わうことができます。 秋が深まると、写真のような美しい紅葉をガーデンのいたるところで目にできるようになります。 実りの秋を「コピスガーデン」で過ごしませんか? 2022年10月8日(土)、9日(日)は、多数のマルシェが出店する「収穫祭」が開催されます。開催時間は、10:00〜16:00(最終入場:15:30)。 「食」と「芸術」をテーマに、美味しいものを販売するお店や、ハンドメイド作品を販売するお店が大集合。また、楽しいワークショップも企画されています。ぜひ、この機会に秋の風が心地よい「コピスガーデン」を訪れてみてはいかがでしょうか? ウィリアム・モリスの言葉を借りれば、「美しくよいものは自然と調和している」。 まさに、「コピスガーデン」にぴったりな言葉ではないでしょうか。 見事に自然とマッチしたナチュラル感溢れる、美しく心地よいガーデンを、ぜひ、訪れていただきたいと思います。 Information GREEN&CAFE Coppice GARDEN コピスガーデン 所在地/栃木県那須郡那須町高久甲4453-27 TEL/0120-377-228 http://coppicegarden.info/ 車でのアクセス/東北自動車道 那須ICより約10分。「コピスガーデン」看板左折。 営業時間/10:00~17:30(最終入場時間17:00) (営業時間は季節により変動。詳しくは上記HPをご確認ください) ガーデン入園料/一般500~800円、中学生以下300円、就学前・乳幼児/無料、ペット200円(2匹目から100円)※料金は季節により変動します 年間パスポート一般2,000円 ※苗販売・雑貨販売の売店とカフェは、 通年入場料無料。 ※障害者手帳・ミライロID画面をご提示の方は、ご本人様のみ入園料無料。 (ペット入場の際の詳細は、ホームページよりご確認ください。) 写真協力/大森プランツ(*)
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ライフスタイル
陶磁器に描かれる優美なバラ「オールドノリタケとバラ模様」
オールドノリタケとは 「オールドノリタケ」とは、明治中期から第二次世界大戦期にかけて、森村組と日本陶器(現・株式会社ノリタケカンパニーリミテド)が製造販売した陶磁器です。アメリカの現地販売拠点であったモリムラブラザーズは、当時の欧米の顧客ニーズ情報をいち早く取り入れ、新しいデザインの陶磁器を次々と生み出していきました。そして1970年代になると、これらの陶磁器はアメリカの収集家たちによって「オールドノリタケ」と呼ばれるようになりました。 私とオールドノリタケとの出会い 十数年前にアンティークショップで出会った、とあるティーセット。手に取り、どこの洋食器かと思いバックスタンプ(裏印)を見ると、自宅でいつも愛用しているNoritakeの文字が。 小ぶりなカップに細やかなバラや草花の繊細な絵が描かれ、洋食器ではあるもののどこか優し気な雰囲気に惹かれて購入したこのティーセットが、今思えばオールドノリタケとの初めての出会いでした。 こちらは、かつてイギリスに輸出され、その後、理由は不明ですが、日本に戻ってきたもので、「里帰り品」と呼ばれているものです。 オールドノリタケのバックスタンプは、その歴史を物語るように、さまざまなものが存在します。日本陶器の元副社長・渡辺勝彦氏によって始められたそうです。 こちらのティーセットのバックスタンプは、「マルキ印」と呼ばれ、1911~1941年(明治44年~昭和16年)頃に、日本で商標登録されたイギリス向け輸出品に付けられました。 中央の「マルキ印」は、明治維新後の外国との商いが困難だった時代、「その困難を打破する」という思いが込められ、中央に矢が刺さったような絵柄になっています。そして「最後には無事に丸くおさまりますように」という願いが込められ、丸で囲まれているといいます。 このような、戦前の日本における近代産業の興隆と海外貿易を志した当時の人々の思いを知り、また海を渡った日本産の食器が、海外の食卓に彩りを添えていたかと思うと、とても興味が湧きました。それ以来、オールドノリタケについて学びながら、少しずつですが、気に入ったもの、特にバラが描かれているものを中心に集めていくようになりました。 バラが描かれたオールドノリタケのコレクション 少数ですが、コレクションの一部をご紹介したいと思います。 (*アンティークの性質上、本物と聞いて購入しておりますが、偽物が含まれている可能性もあることはご容赦ください) 「金彩小窓薔薇図両手付きクッキー入れ」 美しい金彩盛りが施されています。器のちょうど中央にロココ調の窓があり、その中にバラの枝が上方から枝垂れるように描かれています。アメリカからの里帰り品とのことです。 バックスタンプは、「M-NIPPON印」と呼ばれる、1911~1921年頃のアメリカ向け輸出品に付けられたものだそうです。 JAPANと書くものを、誤ってNIPPONとローマ字で書いてしまったとのこと。1921年以降は、JAPANに訂正されました。森村家の家紋「下がり藤」が、事業の発展の思いを込めて、上向きに描かれています。 「金彩小窓薔薇図花瓶」 最近、インターネットで、先にご紹介したクッキー入れとまるでお揃いのような花瓶を見つけました。 バックスタンプも、クッキー入れと同じものでしたので、同じ頃に製造されたものではないかと推測できます。 花瓶の口(写真左)は、複雑に折れ曲がった意匠です。実際にバラを活けてみると、花瓶の口の複雑な意匠が花茎を固定し、とっても活けやすいことに感動しました。 「金彩薔薇図飾り大皿」 自然に咲いているバラの姿を切り取ったような、上品な絵柄が美しい大皿です。葉の部分は、ぼかし技法が用いられています。アメリカからの里帰り品とのことです。 縁側には、金彩による細かなバラが無数に描かれています。 バックスタンプは、「サクラ印」と呼ばれるもので、1924~1935年頃のアメリカ向け輸出品に付けられたもののようです。 白地に金彩、バラ図のもので統一したオールドノリタケとバラを部屋に飾って。いつもは、キャビネットなどにしまいがちなオールドノリタケですが、時には花器として、バラを活けて活用しています。 「金彩薔薇図チョコレートカップ」 名称にあるように、チョコレート(ココア)を入れて飲むには憚られる美しいカップは、イギリスからの里帰り品とのことです。細やかな手作業で作られた金彩やバラの絵が、当時の技術力を物語っています。 バックスタンプは、「マルキ印」の中でも初期のもので、1900~1910年頃のイギリス向け輸出品に付けられました。蜘蛛に形が似ていることから、税関や船会社の間では「スパイダー・マーク」という愛称で呼ばれていたそうです。 花瓶代わりに、よく一輪のバラや小ぶりのバラを活けて飾っています。 「金彩薔薇図リーフ型ナッツディッシュ」 葉を思わせるフォルムのナッツディッシュ(おつまみ入れ)は、アメリカからの里帰り品とのことで、グリーンに金彩が映え、愛らしいバラが描かれています。 バックスタンプは、「ロイヤル・クロッキー印」と呼ばれ、1906~1921年頃のアメリカ向け輸出品に付けられました。 「RC」は、「Royal Crockey」の略で、高級磁器という意味。ヨーロッパからアメリカに輸入されていた焼き物の高級品のほとんどに、王室の許可を得てRoyalが付けられていたので、日本陶器も採用したとのことです。 水を張ったナッツディッシュには、バラを浮かべて活用しています。 「金彩薔薇ジュールグレイビーソース入れ&ディッシュ」 金彩のバラがいくつもあしらわれ、縁側には、ビーディング(金点盛り)、ジュール(エナメル盛り)も施されています。欧米では、ジュールは「まるで宝石のよう」と讃えられ好評を博したようです。 バラを浮かべたり、活けたり、花器として大活躍してくれています。 「金彩薔薇図ジュール花瓶」 濃いピンクの大輪剣弁咲きの美しいバラの絵に惹かれて購入を決めました。横浜の開港を機に、海外から入ってきた当時のモダンローズのような気品と優雅さを感じます。 花瓶の形も、当時欧米を中心に流行していたアールヌーヴォーの、流れるような曲線です。バラの絵も写実的で、その上に金彩が施され、色とりどりのジュールが散りばめられて、とても美しい逸品です。 バックスタンプは、「メープルリーフ印」と呼ばれ、1891~1915年頃の最も古いものといわれています。アメリカ向け輸出品に付けられたそうです。 「ラスター彩薔薇図両手付き花器&ディッシュ」 こちらは、これまでご覧いただいたオールドノリタケの雰囲気とはガラリと違い、デザインが抽象的、かつ直線的になっています。アールヌーヴォーに続いて流行したアールデコ様式で表現されています。このように、当時、欧米を中心に流行していたものを、いち早く商品開発に取り入れ、尽力なさった姿勢が見て取れます。 「ラスター彩」とは、アールデコの作品に多く採用された彩色の方法で、真珠状の虹彩や金属状の光沢などが表面に現れます。 バックスタンプは、1921~1941年頃の「M-JAPAN印」で、アメリカ向け輸出品に付けられました。 「アールヌーヴォーからアールデコに咲いたデザイン オールドノリタケ×若林コレクション」展 さて、ご紹介しましたようなオールドノリタケの実物を観ることができる展覧会が、この秋(2022年9月10日~10月16日)に横浜の「そごう美術館」にて開催されます。この機会に、ぜひ、お近くでご覧いただきたいと思います。 本展では、オールドノリタケの陶磁器やデザイン画などが展示されます。アールヌーヴォーの華麗な絵付けを施された作品や、アールデコの可憐なモチーフが儚く咲いた作品など、欧米に学びながらも独創性を開花させた意匠、技法、器種を網羅する若林コレクションから、オールドノリタケのさまざまに咲いた色彩とデザインをお楽しみください。 展覧会の見どころポイント ◆ オールドノリタケの優れた技巧をご覧いただけます 明治工芸の細密描写は、近年大きな注目を集めています。明治輸出工芸の流れをくむオールドノリタケの職人たちは、欧米に学びながら、さまざまな技法を探求・駆使し、陶磁器を生み出していきました。本展では、オールドノリタケを構成する優れた技巧を、解説と共にご覧いただけます。 ◆ オールドノリタケを4 つの観点から読み解きます 本展では、制作技法はじめ、作品に描かれたモチーフ、デザインの様式、陶磁器の器種と、4 つの観点(モチーフ/スタイル/テクニック/ファンクション)からオールドノリタケが紹介・解説されます。 ◆ 華やかなオールドノリタケのテーブルセッティング オールドノリタケの作品をコーディネートし、展示室内に華やかなアフタヌーンティーのテーブルが再現されます。テーブルセッティングは、横浜市在住のテーブルコーディネーター・竹内薫氏が担当。 ◆「横浜」とオールドノリタケ オールドノリタケには、横浜にゆかりある2人の人物が関わっています。森村市左衛門と大倉孫兵衛です。横浜で商売を行っていた2人は意気投合し、やがて義兄弟となりました。 2人の出会いと活躍は、オールドノリタケの発展に大きく貢献していくこととなります。 森村市左衛門(1839-1919)/森村組・日本陶器の創始者です。武具商に生まれましたが貿易商を志し、横浜において、舶来品を仕入れ、武家に販売する商いを始めます。こののち、アメリカに渡った弟・豊と共に、陶磁器の製造・輸出・販売を行っていくこととなります。 大倉孫兵衛(1843-1921)/江戸・日本橋の絵草子屋に生まれます。横浜では、外国人を相手に錦絵の販売などを行っていました。美術に関する優れた感性を生かして、主にデザインの面で手腕をふるいました。のちに、息子・和親とともに大倉陶園を創始します。 開催概要 会期:2022年9月10日(土)〜2022年10月16日(日) 会場:そごう美術館 住所:神奈川県横浜市西区高島2-18-1 そごう横浜店 6階 Google Map 時間:10:00〜20:00 【 事前予約不要 】 ※入館は閉館の 30 分前まで。 ※そごう横浜店の営業時間に準じ、変更になる場合がございます。 休館日:会期中無休 観覧料:一般1,200(1,000)円、大学・高校生1,000(800)円、中学生以下無料 ※消費税含む。 ※( )内は、前売および以下をご提示の方の料金です。[クラブ・オン/ミレニアムカード、クラブ・オン/ミレニアム アプリ、セブンカード・プラス、セブンカード] ※障がい者手帳各種をお持ちの方、およびご同伴者1名さまは無料でご入館いただけます。 ※前売券は、9月9日(金)まで、そごう美術館またはセブンチケット、ローソンチケット、イープラス、チケットぴあにてお取り扱いしております。 TEL:045-465-5515 【そごう美術館 公式サイト|展覧会情報ページ】 https://www.sogo-seibu.jp/common/museum/archives/22/noritake/ 主催:そごう美術館、東京新聞 後援:神奈川県教育委員会、横浜市教育委員会 協賛:株式会社そごう・西武
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暮らし
真夏のバラを切って飾って花遊び<サマーローズの活用法>
盛夏のガーデンで健気に咲くバラ この時期は、猛暑と害虫による被害などがあり、バラにとっても過酷な季節です。 それでも、毎日水やりをしていると、小さなつぼみを上げてくるバラたちに、生きた植物の力強さを感じさせられます。 今回は、そんな健気で愛らしい夏のバラ「サマーローズ」の楽しみ方をご紹介します。 食害を受ける前に「摘蕾」を 夏のバラは、目を離すとたちまち上写真のようにカナブンやコガネムシ、マメコガネなどに花や葉を食害され、無残な姿になってしまいます。 食害されないためには、予防方法として「摘蕾(てきらい)」を行うとよいでしょう。 特に効果があるバラは、以下のような株です。 植えて間もないまだ小さな苗 古くて弱った苗 夏の暑さに弱い苗(葉が黄色くなったり、葉を落としてしまう症状が出ている) これらのバラの体力を温存するためにも、つぼみができていたら手で摘み取ります。 夏も元気な株につぼみを見つけた場合 葉が茂った元気な株の場合は、摘蕾せずに室内で咲かせることができます。このバラを私は、「サマーローズ」と呼んで楽しんでいます。 室内飾りにできそうなバラは、上写真のようにつぼみが少し色付いたタイミングで、下方の枝も少し付けた状態(株に残る枝があまり短くならないように)で剪定します。 サマーローズを楽しむためのポイント ポイント① まず日頃からバラの面倒をよくみて、株を弱らせないようにすること。 注意:暑さに強い品種であっても、水やりをしなければ、弱ってしまいます。 ポイント② つぼみができたら、外で咲く前に剪定して室内で咲かせること。 注意:鉢植えのバラを、鉢ごと急に冷房の効いた室内に持ち込むと、環境の変化にうまく適応できない場合があります。 サマーローズを楽しむ手順 手順① つぼみが付いた枝は、剪定したらすぐに水につけます。 手順② 要らない葉を取り除きます。 手順③ 枝先にハサミを斜めに入れて、水の中でカットします(水切り)。 手順④ 水に挿しておくと、日に日につぼみが膨らんできました。 害虫たちに食害される心配もなく、テーブルなどに飾って室内で花開くサマーローズを楽しみます。 また、花が害虫の食害にあっても(写真左)、外側の花弁を取り除けば、楽しめることもあります。 三番花や四番花のサマーローズは、春に比べて小ぶりなので、花器も小さいものが似合います。ミルクピッチャー(上写真右)は形も綺麗で、花器としておすすめです。 また、枝を短くしか剪定できない場合は、オアシスに挿したり、小さなお猪口などを花器代わりにしたり、水を張ったお皿に浮かべるのも素敵なアイデアです。 夏は夏らしくバラと付き合う 以前は「夏のバラは、小さくて汚らしい」と、私自身も思っていた一人でしたが、今では、「サマーローズ」と呼んで、その大切な命の恵みを、大事に楽しんでいます。今年の夏もサマーローズに元気をもらって乗り越えたいものです。
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ガーデン&ショップ
音楽にまつわるバラ咲く庭 山梨「河口湖 音楽と森の美術館」を訪ねて
約720品種、1,200株ものバラが育つ6月の庭 関東のバラから少し時間をおいて、2022年6月に満開を迎える「河口湖 音楽と森の美術館」を訪ねてきました。 訪れたのは6月3日。まだ七分咲きの頃でしたが、すでに一番花が終わった自宅の庭を離れて、初々しいバラたちとの再会は、まるで時が戻ったような感動を味わうひとときとなりました。 1999年、「オルゴールの森美術館」として開館され、2003年から、オールドローズを中心としたローズガーデンがつくられました。そして、近年、返り咲き性や四季咲き性のモダンローズの植栽を増やし、一年を通してバラが楽しめる庭園となりました。 23,176㎡の敷地に、四季折々の花々と共に、約720品種、1,200株ものバラが植栽されています。コンセプトは、「王侯貴族が愛した庭園」、まるで海外の風景のような非日常の世界観、雄大で美しい庭園を、さっそくご案内いたしましょう。 有料エリア入場前から始まる庭 写真左のエントランスをくぐると、緑豊かな手入れの行き届いたガーデンが待っています。連なるバラのアーチ(写真右)を抜けると、左側にチケットオフィス、そして、アーチから直進した先には、オールドローズや野生種などのローズガーデンが続きます。 なんとこの3枚の写真に写っているオールドローズ中心のバラが咲くエリアまでは、無料で見学できるということに、まず驚かされます。有料エリアは、チケットオフィスから入場して、その奥に広がるガーデンです。 有料エリアから富士山を望む絶景 バラの先に、まるで外国に来たかのような立派な建物と湖、そして雄大な富士山…目の前に広がる絶景に魅了されました。 ドア周りの壁を這う鮮やかなサーモンアプリコット色の大輪のバラは、‘エマニエル’(CL)です。イングリッシュローズの‘エマニュエル’(S)とは別品種とのこと。 こちらの‘エマニエル’は、花弁がしっかりと厚く、花もちに優れた品種のようです。 壁面の角には、優し気な花色でガーデンに誘うバラ‘サリー・ホームズ’(HMsk)(1976年 英 R.Holmes作出)が美しく咲き誇っていました。 トトロなどのグッズが販売されている「どんぐりのいえ」では、壁面を覆う赤いつるバラが覆っていました。雄大な富士山とのコントラストがとても美しく、晴れた日には、テラス席でこの素晴らしい景色を眺めながら、美味しいお食事やティータイムを楽しめます。 また、このエリアでは、ピアノやフルートなどの楽器演奏によるランチタイムコンサートも楽しむことができます(要開催日時確認)。 音楽にまつわるバラが咲くエリア 「ミュージアムショップ」では、富士山をモチーフにしたくまのぬいぐるみのオルゴールをはじめ、さまざまなオルゴールや、地元の甲州ワイン、チョコレートなどのお菓子、アクセサリーも販売されています。 「ミュージアムショップ」の2Fには、貴重なストラディヴァリウスが展示されています。こちらでは、ヴァイオリンの販売ショップや工房もあります(現在はお休み中)。 ミュージアムショップから見て、ちょうど正面に立つ「どんぐりのいえ」では、入り口ドア横の壁面に‘ジャクリーヌ・デュ・プレ’(1988年 英 ハークネス作出)が、赤いしべを見せながら、美しく咲いていました。 このバラは、実存したイギリス人女性チェロ奏者ジャクリーヌ・デュ・プレ(1945/1/26~1987/10/19)に捧げられたものです。彼女は、その実力から、ストラディヴァリが制作したチェロの中でも指折りの名器といわれる1713年製ストラディヴァリウス “ダヴィドフ”を贈られ、その後の生涯を通してダヴィドフを用いて演奏を行いました。しかし、多発性硬化症の病で42歳の若さでこの世を去りました。 また、「どんぐりのいえ」と「オルガンホール」を繋ぐ小道には、音楽に関係する名前が付けられたバラが植栽されています。 オーストリアの音楽家モーツァルト(1756/1/27~1791/12/5)に捧げられたバラ‘モーツァルト’(HMsk)(1937年 独 ランバート作出)や、モーツァルトの妻コンスタンチェ・モーツァルト(1762/1/5~1842/3/6)に捧げられた‘コンスタンチェ・モーツァルト’(S)(2012年 独 コルデス作出)が咲いていました。 整った花形で鮮やかな真紅のバラは、20世紀を代表するオペラ歌手マリア・カラス(1923/12/2~1977/9/16)に捧げられた‘マリア・カラス’(HT)(1965年 仏 メイアン作出)。 パープルの半八重花は、アメリカの作曲家、ジョージ・ガーシュウィンが1924年に作曲し、ファーディ・グローフェが編曲したピアノ独奏と管弦楽のための音楽作品に因んで命名された‘ラプソディ・イン・ブルー’(S)(1999年 英 ワーナー発表)。 純白の花びらが重なり、優雅な姿のこのバラは、フランスの作曲家、モーリス・ラヴェルが1928年に作曲したバレエ曲に因んで命名された‘ボレロ’(FL)(2004年 仏 メイアン作出)。 音楽とバラと雄大な景色のすべてがアート空間 コンサートホールのオルゴールサロンには、世界的にも貴重な年代物のオルゴールや、自動演奏楽器が展示されています。 実際にオルゴールや自動演奏楽器の演奏を見せていただきました。特にオルガンホールでの全長20mもの巨大な楽器であるダンスオルガンのコンサートは必見です(要開催日時確認)。 また、1時間毎に1回、カリオン広場で行われるカラクリ人形の指揮者の動きに合わせた噴水ショーも目に涼しい演出です。 約2時間の滞在でしたが、音楽という芸術にも触れることができ、雄大な景色を背景に、どこにレンズを向けても、美しい写真を撮ることができる庭園。そこに咲く美しい花々、美味しい食事、すっかり心が満たされた滞在となりました。 ぜひ、「河口湖 音楽と森の美術館」を訪ねてみてはいかがでしょうか。 Information 河口湖 音楽と森の美術館 住所:〒401-0304山梨県南都留郡富士河口湖町河口3077-20 TEL: 0555-20-4111 https://kawaguchikomusicforest.jp/ 開館時間:午前10時~午後5時(最終入館午後4時) 休館日:火曜・水曜休館日あり(祝日除く)*季節によって変更あり。 駐車場:乗用車300台、大型バス20台 入館料: 一般料金大人1,800円、大高生1,300円、小中生1,000円 団体割引大人1,500円、大高生1,100円、小中生800円 年間パスポート:7,000円(1枚で2名様までご利用可能)購入特典は入館料無料(1年間有効)他。
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育て方
実録! バラがメインの庭づくり第18回「バラが満開 移植して3年目の5月の庭」
天候にハラハラした開花シーズン 関東地方ではバラの一番花のシーズンは終わりを迎え、花がら摘みに忙しい時期ですね。今年の庭のバラはいかがだったでしょうか? 開花シーズンは、まるで梅雨のような天気が続いたかと思えば、急に真夏のような高温になったりと、バラも、お世話をする人間も、決して楽ではなかったように思えます。 そんな自然環境の中でも、以前の庭から移植した我が家のバラたちは、無事に3回目の春を迎えることができました。 バラの組み合わせ例1 南側の公道に面したフェンスに咲く5品種のバラ 公道に面していることを考慮して、花弁が小さな品種や、花もちのよい品種を選んでいます。また、フェンスと公道の間には植栽花壇を設け、そこにローズマリーやラベンダーを植えています。バラの花弁が落ちても、多くはこの花壇の中に留まり、道路に広がらないようにという工夫をしています。 向かって一番右奥の端に植栽した遅咲きのつるバラ‘ジャスミーナ’です。花付き、花もちともによく、ピンクの愛らしい中輪の花をたわわに咲かせてくれました。 その隣のランブラーローズ‘ボルティモア・ベル’。このバラも遅咲きで、小さな花弁の小~中輪の花をフェンスいっぱい咲かせてくれました。 ヤマボウシの木を覆うように咲く‘ポールズ・ヒマラヤン・ムスク’と、その下方で、枝をフェンスに沿わせて横に誘引した‘ボルティモア・ベル’。 ‘ポールズ・ヒマラヤン・ムスク’は、ヤマボウシの木に沿わせて枝を上に持っていき、そこから昨年長く伸びたシュートを下に向けてフェンスに針金で誘引してあります。 その間に、早咲きの花もちのよい‘ローズ・ポンパドゥール’(S)が2株植わっています。 向かって一番左の角に植栽してある‘メイ・クイーン’(R)は、一つひとつの花もちはあまりよくありませんが、つぼみを次々と開いて咲き継ぐため、株全体の観賞期間は長い品種です。 バラの組み合わせ例2 駐車場と門から玄関にかけて フェンスの角に咲く‘メイ・クイーン’から、駐車場越しに門を望む風景です。 隣地と接する駐車場の西側フェンスには、アプリコットや、黄色~退色して白になる‘ギスレーヌ・ドゥ・フェリゴンド’(R)を誘引。たくさんの花が美しいスクリーンとなりました。 門柱の石材と色を合わせた‘ギスレーヌ・ドゥ・フェリゴンド’や、オレンジ色のイングリッシュローズ‘レディ・オブ・シャーロット’。そしてその背景には、‘ゴールデン・ボーダー’(FL)、‘スノー・グース’(S)、反対側の奥には、‘ザ・ピルグリム’(S)などが彩りを添えてくれています。白~クリーム~黄色~アプリコット~オレンジの明るい花色でまとめたコーナーです。 バラの組み合わせ例3 門を入って右手のガーデンの入り口 次は、庭の入り口付近から奥を望む場所をご紹介します。門と玄関付近の黄色やオレンジ、アプリコットの花色のコーナーから、自然と奥に視線が向かうように意識した配色になっています。手前に、‘ゴールデン・ボーダー’(FL)、反対側に‘アブラハム・ダービー’(S)や‘クロッカス・ローズ’(S)、バラの間には、オルレアなどの白い小花を混植して、淡いピンク色のバラへと繋がるように植栽してあります。 ガーデンを少し進むと、右手に‘アブラハム・ダービー’(S)、‘クロッカス・ローズ’(S)。その対極の奥に、白花の‘ウィンチェスター・キャシードラル’(S)などのさまざまな木立性のバラを植栽した、バラが主役の花壇が見えます。 バラの組み合わせ例4 バラが主役の花壇 手前には、‘ボレロ’(FL),‘アジュール’(FL)、‘マサコ’(S)、‘バレリーナ’(HMsk)などを。奥には、アーチに ‘フランソワ・ジュランヴィル’(R)を誘引しています。 庭は3年経ち、茂ったバラでだいぶ狭くなってきましたが、バラを眺めるための椅子を置き、風に揺れる姿に目を細めたり、香りを楽しんだりして、バラと過ごす時間を満喫することができました。 バラの組み合わせ例5 コンサバトリーの周り コンサバトリーの前には、昨年よりもボリュームを増した遅咲きの‘フランソワ・ジュランヴィル’(R)が、たくさんの花を咲かせて豪華な額縁のようになりました。足元には、強香の‘フラゴナール’(S)、反対側の柱には、‘ピエール・ドゥ・ロンサール’(CL)、‘ブーケ・パルフェ’(CL)を誘引して、その株元には、‘アシュリー’(S)が彩りを添えています。 隣地との境になるコンサバトリーの東面のフェンスには、‘コーネリア’(HMsk)、‘プロスペリティ’(HMsk)などが咲いています。コンサバトリーの3方面をバラに囲まれるように植栽しました。 バラの組み合わせ例6 室内からの眺め 今年は、梅雨のようなお天気が続いたので、部屋の窓から庭を眺めて楽しむ重要性をつくづく感じました。庭からの眺めも大切ですが、部屋の中から庭がどう見えるかも、今後もっと研究していきたいと思いました。 無農薬で育てた、香り豊かで花弁が柔らかい食香バラの‘豊華’は、毎朝、花摘みをして、ローズティーやジャム、ドレッシングほか、花弁をさまざまに暮らしの中に活用することができました。 食香バラ‘豊華‘で作ったローズゼリーです。口に含めば、バラの香りがいっぱいに広がります。 4年ぶりに開催 新居では初めての「バラのお茶会」 区画整理で引越しを余儀なくされ、約100品種のバラと共に移ってきた現在の庭で、なんとか今年は、バラの株もそれぞれ充実し、たくさんの花が咲きました。その喜びと、平和の大切さを共有できるひとときを大切にしたいという想いから、今年は、少人数ではありますが、私の講座をご受講くださっている方々や、長年、コラボさせていただいているお菓子やおもてなしのスペシャルな先生方と共に、「バラのお茶会」を開かせていただきました。会ごとにテーブルに特徴があり、華やかな気分を楽しませていただきました。 お菓子教室「Sakura bloom sweets」を主宰する長嶋清美先生とのパーティーの様子。バラをモチーフにしたカップケーキがテーブルに花を添えてくれました。 洋菓子教室「サロンドマリー」を主宰する横井満里代先生とのパーティーの様子。ローズカラーのロールケーキとティースタンドを並べた、アフタヌーンティースタイルのお茶会に。 「紅茶で‘おもてなし’教室TEA MIE」を主宰する坂井みさき先生とのパーティーの様子。バラモチーフのケーキを囲み、数種類の貴重な紅茶を味わいました。 ザ・ナショナル・トラストサポートセンター理事である徳野千鶴子先生とのパーティーでは、「プラチナ・ジュビリー・プディング」を囲んでの会となりました。 「プラチナ・ジュビリー・プディング」とは、エリザベス女王在位70周年を祝う記念イベントとして英国王室がレシピを募集し、見事そのコンテストで優勝したレシピ。それを再現していただきました。 バラの花を見ていると、日々の悲しいできごとも不思議と忘れることができ、元気をもらえます。そして、バラは散ってしまいますが、また、新たに、つぼみやシュートを出し、元気を与えてくれるのです。これからも、バラが元気に育つように、しっかりと手入れを行い、庭の改善に心を配り、よりよいバラのある心豊かな暮らしを続けていきたいと気持ちも新たに思います。
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ガーデニング
まるでコンパニオンプランツ⁉︎ 鉢植えのバラを生かした健やか栽培アイデア
バラのコンパニオンプランツとは? みなさんは「コンパニオンプランツ」という言葉をご存じでしょうか? 「コンパニオンプランツ」とは、近くに植えることで、植物の生育がよくなったり、病害虫の被害が少なくなったり、また野菜や果物の栽培では味や風味が増すなど、さまざまなよい影響をもたらしてくれるプランツ(植物)のことで、「共栄作物」や「共存作物」ともいわれます。 今回は、元肥や追肥など、肥料を与えながら育てるバラの鉢植えを近くに置くことによって、鉢底から流れ出る栄養分を周囲の植物が吸収し、生育がよくなった事例をご紹介。鉢植えのバラが、まるでコンパニオンプランツのような役割を果たしているわけですが、とくにガーデンやテラス、ベランダなどでバラを鉢植えで育てている方には役立つ方法ですので、ぜひお試しください。 庭でのコンパニオンプランツ的事例<桜> 3年前に、以前の庭から現在の庭に移植した枝垂れ桜が、今年はたくさん花を咲かせました。 左の写真は、移植した当時の桜の様子です。根をたくさん切ったため、枝も1/3ほど詰めて移植しました。 その結果、枝ぶりも悪くなり、樹形も無惨な姿に。 移植後2年目は、花は数える程度でしたが、3年経った今年は(上写真右)、見違えるほどに花がたくさん咲きました! 移植で弱っていた桜の株元にバラの鉢植えを置く この急激な生育回復について考えてみると、経年による生育にプラスして、枝垂れ桜の株元近くに、オベリスク仕立てにしたバラの鉢植えを置いたことが、その理由かと思われます。 昨年の3月から、この場所に置いたバラの大きな鉢。この鉢の中にはバラの用土として、たっぷりの元肥がまず入っています。そして、3月の芽出し肥、花後のお礼肥、夏の元肥と、追肥を与え続けてバラを管理してきました。このバラに与えた肥料の栄養分が水やりや雨水などによって鉢底の穴から流れ出て地中に染み込み、枝垂れ桜の生育を助けたのではないかと考えられます。 庭でのコンパニオンプランツ的事例<夏ミカン> こちらは、夏ミカンの木の株元に置いたバラのオベリスク仕立ての鉢植えです。 夏ミカンの木も枝垂れ桜と同様に、3年前に移植しました。昨年は、ほとんど実らなかったのですが、今年は上写真の通り、だいぶ実の数が増えました。 夏ミカンの木の株元に、昨年の3月からバラの鉢を置き、同様に元肥や追肥をしっかり与えて管理してきました。そして5月には、夏ミカンの花も以前よりだいぶ多く咲くようになり、その結果、実の数も増えました。 もちろん、バラ自身も元気に育っています(上写真右)。 バラ栽培でよくある質問 「地植えしているバラの近くにほかの植物を植えてはだめでしょうか?」という質問を受けることがあります。 その際、私がお答えしているのは、「栄養分たっぷりの用土で育てるバラを地植えにして、その近くに他の植物を植栽すると、他の植物の根がバラの用土の中に入り込んで栄養を奪い、大体のバラは他の植物に負けてしまいます」ということ。ですので、近くに植える際はバラを鉢植えにするか、他の植物を鉢植えにするか、また両方を鉢植えにするなど、鉢を利用することをおすすめします。 バラをほかの植物の株元に鉢植えにして置く場合、その植物の茂りすぎた葉が日陰を作り、バラに日光が当たらなくなってしまうことがあります。それを防ぐ意味でも、バラの周りの植物の枝葉は、いつも整理しておきましょう。 テラスやベランダでのコンパニオンプランツ的事例 鉢植えにしたバラと、その下に置く鉢を用意し、下にする鉢には用土を半量ほど入れておきます。 そして、下の鉢の用土の上にバラが植わる鉢を乗せて2段重ねにします。 下の鉢のすき間に植物を植栽します。今回は、ペチュニアとハーブのサントリーナを植栽しました。サントリーナには、防虫効果があるとされています。 栽培を続けていると、上段のバラに施した肥料が下段の植物たちにも効いてきて、2段の鉢植えがともに元気に育ちます。 こちらの鉢植えの下段には、殺菌効果があるといわれるハーブのオレガノ・バリエガータと、バラの花色に合わせて、ピンクのネメシアを植栽しました。 上段の鉢にはバラの新苗、下段には虫除け効果や抗菌作用があるといわれるアロマティカスを植えました。 上段のバラの鉢植えの鉢底から流れる栄養分で元気に育つ下段の植物。また、上段のバラがより元気に育ってくれることを願って、下段にハーブを植えた2段仕立ての鉢植えの成功例です。 これから新しいバラの苗をお迎えした際にはぜひ、お試しください。