“小春日和”の暖かい日が多かった2022年の10~11月。四季咲きのバラを育てているお庭では、秋バラは順調に開花したでしょうか。ここでは、神奈川県在住で「日本ローズライフコーディネーター協会」の代表を務める元木はるみさんの庭で開花した今年の秋バラ6種と香りのよいバラ6種をご紹介。また、ドライにした秋バラとハーブを使ってポプリ作りを楽しむなど、バラを暮らしに活用する方法も教えていただきます。
目次
2022年の秋バラの感想

例年の秋は日に日に気温が下がり、朝晩の寒暖の差が大きくなって花色の色調に深みをもたらすことが多いものです。しかし今年の秋バラは、個人的な感想としては、例年に比べると、花色の深みがやや少ないように感じられました。12月上旬は気温がぐっと下がってきたので、色調に深みが増していくことを期待しています。
また、気温が高かったせいか、この時期になればいなくなるはずの害虫がまだいて、被害も多かったように思います。

バラのつぼみや花びらを食害するのは、オオタバコガの幼虫やホソオビアシブトクチバの幼虫の仕業です。
庭で咲いた秋色が楽しみなバラ
‘ディスタント・ドラムス’(FL)

作出国:アメリカ 作出年:1985年 作出者:Griffith J. Buck
例年は、もう少し色調のトーンが強くなりますが、この秋のバラは優しい花色で咲きました。
‘エメラルド・アイル’(CL)

作出国:イギリス 作出年:2008年 作出者:Dickson
グリーンがかったクリーム~アプリコットピンクの花色は、徐々にオレンジ色を帯びてベージュに近い花色へ。花もちが大変優れた品種です。
‘アンナ・ユング’(T)

作出国:フランス 作出年:1903年 作出者:Gilbert Nabonnand
桜色の尖った花弁を幾重にも重ねた中輪の花は、秋、花色に濃淡が現れて、さらに美しさに磨きがかかります。
‘ヴァンデ・グローブ’(HT)

作出国:フランス 作出年:2000年 作出者:Dorieux
純黄の花色は、キンギョソウなど秋色の植物たちとの相性もよく、周囲を明るく照らしてくれます。
‘ナディーナ・エクセラリッシ’(FL)

作出国:フランス 作出年:2007年 作出者:Dominique Massad
繊細な花色が魅力の‘ナディーナ・エクセラリッシ’は、開ききるまでのどの瞬間も整った美しい花姿を見せてくれます。
‘エクレール’(Pol)

作出国:日本 作出年:2007年 作出者:横田園芸
グリーンのつぼみが開くと、小さな白い花が現れて金色のしべを見せながら長く咲き続けます。

‘エクレール’を主役にした寄せ植えには、グレイッシュケール‘ファントム’やビオラ‘ファルファリア’を左右対称に植え、両端にシルバーリーフのオレアリア‘アフィン’、中央手前にカロケファルス‘シルバーブッシュ’を合わせて、シックに仕上げました。
代表的な6つの香りのバラたち
‘ラ・フランス’(HT)=ダマスク香

作出国:フランス 作出年:1867年 作出者:Jean-Baptiste André Guillot(Fils)
モダンローズ第1号の‘ラ・フランス’は、ダマスクの香りが強く香ります。また、春よりゆっくり開く秋の花は、剣弁がよりはっきりとして花形が整います。
‘プロスペリティ’(HMsk)=スパイシー香

作出国:イギリス 作出年:1919年 作出者:Rev. Joseph Hardwick Pemberton.
さらに気温が下がってくると、花色の中にさまざまな色合いが見え隠れし、繊細な美しさに。ツンとくるようなスパイシーな香りは、たくましい野バラを連想させます。
‘サフラノ’(T)=ティー香

作出国:フランス 作出年:1839年 作出者:Beauregard
秋の光を受けて咲く花色は特に美しく、ティー香が微かに香ります。
‘ローズ・ポンパドール’(S)=フルーティー香

作出国:フランス 作出年:2009年 作出者:Delbard
カップ咲きからクォーターロゼットになる大輪の花からは、フルーティーな香りが強く香ります。
‘ブルー・ムーン’(HT)=ブルー香

作出国:ドイツ 作出年:1964年 作出者:Tantau
初期のブルーローズの代表ともいえるこちらのバラは、ダマスク香にティー香が微かに混ざり合う、甘く爽やかな心地よい香りがします。
‘セイント・セシリア’(S)=ミルラ香

作出国:イギリス 作出年:1987年 作出者:David Austin
我が家に来てから20年以上経つこちらのバラは、住宅の建て直しや引っ越しといった2回の移植を乗り越えて、この秋元気に復活しました。大輪のディープカップの花からは特徴的なミルラ香が強く香ります。
秋の香りをまとうバラとハーブで「花びらのドライ作り」

バラの花びらをドライにするには、自然乾燥をはじめいろいろな方法があります。今回は、仕上がりの色が綺麗で、3~5日という短い時間で完成する乾燥剤を使用したドライ作りをご紹介します。ハーブも同様の方法でドライにします。

香りのよいバラを3~4輪摘んでほぐし、さっと水洗いします。水気をよく除いた花弁を、食品用の乾燥剤を入れたタッパーの中に、花弁同士が重ならないように並べます。そして、蓋をして3~5日程度そのままにして、よく乾燥させます。
*このとき、あまり多くの花弁を入れてしまうと、うまく乾燥できず、腐敗してしまうことがあります。花弁が重ならない程度の量で作ることがポイントです。
タッパーから取り出した花弁は、すぐに利用しない場合は、カビが発生しないよう、食品用の乾燥剤(小袋入り)と一緒に保存用の密封容器に入れておきましょう。

バラの花弁と同様に、枝ごと乾燥させた数種のハーブも、それぞれ保存用の密封容器に入れて保管します。こちらも、食品用の乾燥剤を入れておきましょう。
バラ&ハーブのポプリ材料

<材料>
- バラの花弁……大さじ4
- ミント……大さじ3
- ラべンダー……大さじ3
- レモングラス……大さじ2
- ローズマリー……大さじ1
- エッセンシャルオイル……3滴
使用するハーブの種類や量はお好みです。ハーブは使用する分をハサミで細かくカットします。
ドライポプリの作り方手順

密封できるビニール袋、エッセンシャルオイルを用意します。袋にバラとハーブのドライの材料を入れ、エッセンシャルオイルを3滴たらして密封します。5回ほど振ってなじませ、食品用の乾燥剤(小袋入り)を入れ、そのまま約2週間熟成させれば出来上がり。
モイストポプリの作り方手順

粗塩、ボール、スプーン、ガラスの密封容器、エッセンシャルオイルを用意します。バラとハーブのドライの材料は、バラ&ハーブのポプリ材料と同じ量です。

ボールに粗塩(ガラス瓶に収まる量)を入れ、エッセンシャルオイルを3滴たらし、スプーンでよく混ぜ合わせます(*作ったモイストポプリをバスソルトとして使用する場合は、肌に触れても大丈夫なエッセンシャルオイルを選びましょう)。

密封できるガラス瓶に、エッセンシャルオイルを混ぜた粗塩、ドライのバラとハーブの順に、隙間ができないように詰めていきます。リラックスして、ゆっくり香りを楽しみながら作りましょう。

詰め終わったら蓋をして、約3週間ほど熟成させれば出来上がりです(乾燥剤は不要)。
約3週間したら、器に取り出して室内で芳香を楽しんだり(上写真右)、布袋に入れてバスソルトとして楽しみます。

いよいよ年末も間近。バラも冬支度の準備を始める時期ですね。今のうちに、咲いたバラの花をよく観察したり、香りを確かめたり、花弁をドライにして保管するなど、花が咲かない冬の時期に備えましょう。
Credit
写真&文 / 元木はるみ - 「日本ローズライフコーディネーター協会」代表 -

神奈川の庭でバラを育てながら、バラ文化と育成方法の研究を続ける。近著に『薔薇ごよみ365日 育てる、愛でる、語る』(誠文堂新光社)、『アフターガーデニングを楽しむバラ庭づくり』(家の光協会刊)、『ときめく薔薇図鑑』(山と渓谷社)著、『バラの物語 いにしえから続く花の女王の運命』、『ちいさな手のひら事典 バラ』(グラフィック社)監修など。TBSテレビ「マツコの知らない世界」で「美しく優雅~バラの世界」を紹介。
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