実録! バラがメインの庭づくり第18回「バラが満開 移植して3年目の5月の庭」
バラを育てる人にとって、一年で一番喜びの多い季節ですね。皆さんはどう過ごされたでしょうか。2020年の冬に多くのバラを移植して、3度目のバラの開花シーズンを迎えた神奈川県在住「日本ローズライフコーディネーター協会」の代表を務める元木はるみさんの庭。今年のバラの最盛期の様子とお客様を迎えたお茶会の様子もご紹介します。
目次
天候にハラハラした開花シーズン
関東地方ではバラの一番花のシーズンは終わりを迎え、花がら摘みに忙しい時期ですね。今年の庭のバラはいかがだったでしょうか? 開花シーズンは、まるで梅雨のような天気が続いたかと思えば、急に真夏のような高温になったりと、バラも、お世話をする人間も、決して楽ではなかったように思えます。
そんな自然環境の中でも、以前の庭から移植した我が家のバラたちは、無事に3回目の春を迎えることができました。
バラの組み合わせ例1
南側の公道に面したフェンスに咲く5品種のバラ
公道に面していることを考慮して、花弁が小さな品種や、花もちのよい品種を選んでいます。また、フェンスと公道の間には植栽花壇を設け、そこにローズマリーやラベンダーを植えています。バラの花弁が落ちても、多くはこの花壇の中に留まり、道路に広がらないようにという工夫をしています。
向かって一番右奥の端に植栽した遅咲きのつるバラ‘ジャスミーナ’です。花付き、花もちともによく、ピンクの愛らしい中輪の花をたわわに咲かせてくれました。
その隣のランブラーローズ‘ボルティモア・ベル’。このバラも遅咲きで、小さな花弁の小~中輪の花をフェンスいっぱい咲かせてくれました。
ヤマボウシの木を覆うように咲く‘ポールズ・ヒマラヤン・ムスク’と、その下方で、枝をフェンスに沿わせて横に誘引した‘ボルティモア・ベル’。
‘ポールズ・ヒマラヤン・ムスク’は、ヤマボウシの木に沿わせて枝を上に持っていき、そこから昨年長く伸びたシュートを下に向けてフェンスに針金で誘引してあります。
その間に、早咲きの花もちのよい‘ローズ・ポンパドゥール’(S)が2株植わっています。
向かって一番左の角に植栽してある‘メイ・クイーン’(R)は、一つひとつの花もちはあまりよくありませんが、つぼみを次々と開いて咲き継ぐため、株全体の観賞期間は長い品種です。
バラの組み合わせ例2
駐車場と門から玄関にかけて
フェンスの角に咲く‘メイ・クイーン’から、駐車場越しに門を望む風景です。
隣地と接する駐車場の西側フェンスには、アプリコットや、黄色~退色して白になる‘ギスレーヌ・ドゥ・フェリゴンド’(R)を誘引。たくさんの花が美しいスクリーンとなりました。
門柱の石材と色を合わせた‘ギスレーヌ・ドゥ・フェリゴンド’や、オレンジ色のイングリッシュローズ‘レディ・オブ・シャーロット’。そしてその背景には、‘ゴールデン・ボーダー’(FL)、‘スノー・グース’(S)、反対側の奥には、‘ザ・ピルグリム’(S)などが彩りを添えてくれています。白~クリーム~黄色~アプリコット~オレンジの明るい花色でまとめたコーナーです。
バラの組み合わせ例3
門を入って右手のガーデンの入り口
次は、庭の入り口付近から奥を望む場所をご紹介します。門と玄関付近の黄色やオレンジ、アプリコットの花色のコーナーから、自然と奥に視線が向かうように意識した配色になっています。手前に、‘ゴールデン・ボーダー’(FL)、反対側に‘アブラハム・ダービー’(S)や‘クロッカス・ローズ’(S)、バラの間には、オルレアなどの白い小花を混植して、淡いピンク色のバラへと繋がるように植栽してあります。
ガーデンを少し進むと、右手に‘アブラハム・ダービー’(S)、‘クロッカス・ローズ’(S)。その対極の奥に、白花の‘ウィンチェスター・キャシードラル’(S)などのさまざまな木立性のバラを植栽した、バラが主役の花壇が見えます。
バラの組み合わせ例4
バラが主役の花壇
手前には、‘ボレロ’(FL),‘アジュール’(FL)、‘マサコ’(S)、‘バレリーナ’(HMsk)などを。奥には、アーチに ‘フランソワ・ジュランヴィル’(R)を誘引しています。
庭は3年経ち、茂ったバラでだいぶ狭くなってきましたが、バラを眺めるための椅子を置き、風に揺れる姿に目を細めたり、香りを楽しんだりして、バラと過ごす時間を満喫することができました。
バラの組み合わせ例5
コンサバトリーの周り
コンサバトリーの前には、昨年よりもボリュームを増した遅咲きの‘フランソワ・ジュランヴィル’(R)が、たくさんの花を咲かせて豪華な額縁のようになりました。足元には、強香の‘フラゴナール’(S)、反対側の柱には、‘ピエール・ドゥ・ロンサール’(CL)、‘ブーケ・パルフェ’(CL)を誘引して、その株元には、‘アシュリー’(S)が彩りを添えています。
隣地との境になるコンサバトリーの東面のフェンスには、‘コーネリア’(HMsk)、‘プロスペリティ’(HMsk)などが咲いています。コンサバトリーの3方面をバラに囲まれるように植栽しました。
バラの組み合わせ例6
室内からの眺め
今年は、梅雨のようなお天気が続いたので、部屋の窓から庭を眺めて楽しむ重要性をつくづく感じました。庭からの眺めも大切ですが、部屋の中から庭がどう見えるかも、今後もっと研究していきたいと思いました。
無農薬で育てた、香り豊かで花弁が柔らかい食香バラの‘豊華’は、毎朝、花摘みをして、ローズティーやジャム、ドレッシングほか、花弁をさまざまに暮らしの中に活用することができました。
食香バラ‘豊華‘で作ったローズゼリーです。口に含めば、バラの香りがいっぱいに広がります。
4年ぶりに開催
新居では初めての「バラのお茶会」
区画整理で引越しを余儀なくされ、約100品種のバラと共に移ってきた現在の庭で、なんとか今年は、バラの株もそれぞれ充実し、たくさんの花が咲きました。その喜びと、平和の大切さを共有できるひとときを大切にしたいという想いから、今年は、少人数ではありますが、私の講座をご受講くださっている方々や、長年、コラボさせていただいているお菓子やおもてなしのスペシャルな先生方と共に、「バラのお茶会」を開かせていただきました。会ごとにテーブルに特徴があり、華やかな気分を楽しませていただきました。
お菓子教室「Sakura bloom sweets」を主宰する長嶋清美先生とのパーティーの様子。バラをモチーフにしたカップケーキがテーブルに花を添えてくれました。
洋菓子教室「サロンドマリー」を主宰する横井満里代先生とのパーティーの様子。ローズカラーのロールケーキとティースタンドを並べた、アフタヌーンティースタイルのお茶会に。
「紅茶で‘おもてなし’教室TEA MIE」を主宰する坂井みさき先生とのパーティーの様子。バラモチーフのケーキを囲み、数種類の貴重な紅茶を味わいました。
ザ・ナショナル・トラストサポートセンター理事である徳野千鶴子先生とのパーティーでは、「プラチナ・ジュビリー・プディング」を囲んでの会となりました。
「プラチナ・ジュビリー・プディング」とは、エリザベス女王在位70周年を祝う記念イベントとして英国王室がレシピを募集し、見事そのコンテストで優勝したレシピ。それを再現していただきました。
バラの花を見ていると、日々の悲しいできごとも不思議と忘れることができ、元気をもらえます。そして、バラは散ってしまいますが、また、新たに、つぼみやシュートを出し、元気を与えてくれるのです。これからも、バラが元気に育つように、しっかりと手入れを行い、庭の改善に心を配り、よりよいバラのある心豊かな暮らしを続けていきたいと気持ちも新たに思います。
Credit
写真&文 / 元木はるみ - 「日本ローズライフコーディネーター協会」代表 -
神奈川の庭でバラを育てながら、バラ文化と育成方法の研究を続ける。近著に『薔薇ごよみ365日 育てる、愛でる、語る』(誠文堂新光社)、『アフターガーデニングを楽しむバラ庭づくり』(家の光協会刊)、『ときめく薔薇図鑑』(山と渓谷社)著、『バラの物語 いにしえから続く花の女王の運命』、『ちいさな手のひら事典 バラ』(グラフィック社)監修など。TBSテレビ「マツコの知らない世界」で「美しく優雅~バラの世界」を紹介。
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