バラが咲き始めて、庭が華やぐ季節がやってきました。今年の春は、あっという間に桜が散り、バラもかつてないほど開花が早まりました。いつもとは違う気候変化は、バラの生育にも影響しています。高温続きの春のバラに合わせた今行いたい手入れについて、神奈川県在住で「日本ローズライフコーディネーター協会」の代表を務める元木はるみさんに教えていただきます。
目次
2023年の春のバラ開花は2週間も早い!

2023年の春は、気温が高めの日が多く、バラもさまざまな影響を受けているようです。
例年より約2週間以上早く、4月上旬からキモッコウバラが咲き始めました。こんなに早い開花は人生史上初! そして、4月20日時点では、全国374の地点で夏日が観測され、5地点では30℃を超え、東京でも最高気温が26℃となりました。
こんななかで庭のバラたちはというと、すでに開花が始まった早咲きのバラに続けてさまざまなバラが、いっせいに開花の準備をしているかのようです。
今年もバラの花々との再会を嬉しく思いますが、嬉しいことばかりではないようです。
4月中旬以降のバラに見られる困った症状と対処法
【症状1】葉が黄色くなった。

対処方法……高温の日が多かったことも関係しているかもしれません。
黄色くなった葉や不要な枝を取り除き、蒸れを防いで通気性をよくしておきましょう。
生育期ですので、水分不足にならぬよう、雨天以外は水をしっかり与えます。
特に、軒下に置いてある鉢植えのバラは、雨が降っても水分不足になりますので、水やりを忘れずに、気を配りましょう。
【症状2】徒長した枝が強風などで倒れかかっている

対処方法……この春の高温続きで、徒長した枝が多く見受けられます。
つぼみが付いてしまっている枝は、支柱を立てて結束しておきましょう。
つぼみの無い枝は、ほかのつぼみの付いた枝と同じくらいの高さに剪定しておきましょう。
ただし、つる性バラなどで、枝を長く伸ばしたい場合は、長いままでも倒れないよう結束しておきましょう。
【症状3】花が例年と比べて一回り小さい

対処方法……この症状も、この春の気候が大きく影響しているかと思います。
例年通り、大輪の一番花を期待して待っていたのに、夏花のような花が咲いてしまうと、がっかりではあります。ですが、水やりを怠らないように。気温が低くなれば、例年通りゆっくり開花しながら大きな花となります。どうしても花を大きくしたい場合は摘蕾してつぼみの量を減らします。
【症状4】花芽が付かない

対処方法……毎年よく見られることですが、いつまで待っても花芽の付かない葉だけが茂る枝があります。これは、「ブラインド」と呼ばれる症状です。枝はしっかりしているのに花芽がない枝は、上から1段、または2段目の本葉の上でカットしておきます。カットしたところから新芽が伸びて、つぼみが付くかもしれません。

【症状5】葉が透けるような箇所があり汚い

対処方法……上写真のような症状が見られたら、それは「ハダニ」による被害です。ハダニの被害は、高温時に発生するものですが、やはり今年は例年より早く発生しました。
被害が少ないうちに、被害にあった葉を取り除き、その葉の周囲に、ハダニに有効な薬剤を散布しておきましょう。
【症状6】新芽が黒く、つぼみも元気がない

対処方法……3月に引き続き、バラの害虫である「ゾウムシ」はまだ庭に潜んでいます。とても小さな虫で、手で取るのもなかなか大変。限界を感じたら、ゾウムシに有効な薬剤を散布しておきましょう。
*病害虫に対応する薬剤は多種多様です。ご自分のバラへの向き合い方を決めて薬剤を選びましょう。
病害虫対策の薬剤を使うか使わないかの判断目安
バラへの向き合い方として、どのような目的で育てたいのかをあらかじめ決めておくと、育て方の方向性が見えます。また、目的に合わせてバラの育て方の方針が決まってくるかと思います。
【タイプA】観賞が主な目的
→化学殺虫成分が入った薬剤を使用して、しっかり害虫や病気を防除。
この場合のデメリットは、病気や害虫による被害は少なくなりますが、花弁などの飲食はできません。
【タイプB】観賞も楽しみながら暮らしに取り入れ活用するのが目的
→無農薬、または、化学殺虫成分を含まない食品成分等でできた薬剤を使用する。
この場合のデメリットは、飲食に利用したり、ポプリにしたり、暮らしの楽しみは広がりますが、害虫や病気の防除の効果が、化学殺虫成分が入った薬剤を使用した場合よりも少なくなります。
無農薬を心がける私のバラづくり

私のバラ作りは、長年【タイプB】でやってきました。無農薬栽培または、化学殺虫成分を含まない製品をこれまでも試してきましたが、今年は、化学殺虫成分を含まない進化した新製品「ベニカナチュラル スプレー」と「ピュアベニカ」(発売元/住友化学園芸)を使用しています。

「ベニカナチュラル スプレー」は、3つの天然力「有用菌(B.t.菌)」、「植物油」、「水あめ」が原料で、それらの有効成分が独自ブレンドされています。
また、「ピュアベニカ」は、100%お酢から誕生したスプレーです。どちらの製品も、散布したあとのバラを飲食用に利用することが可能です。
この2つの新しい薬剤が、今までのナチュラル系成分の薬剤と違うのは、何といっても効き目がよくなったことです。
私の庭では、たった1回の散布で、アブラムシはほとんど見かけなくなりました。
薬剤を必要としない病害虫に強いバラの品種を選ぶことも大切ですが、特に今年のような高温続きで、病害虫が前倒しで現れるようなときには、ナチュラル系の成分でできた効き目が確かな薬剤はとっても重宝します。
とはいえ、効き目が確かといっても、必ず全てに効果が現れるとは限りません。また何度も同じ薬剤を使用していると、耐性ができてしまい効果が薄れることもあります。そういった場合は、別な薬剤を試してみましょう。
高温が続く春に行うその他の作業

バラの周囲の環境を整えるのも有効です。
気温が高いため、バラ以外の植物も生育が早く、徒長している姿を目にします。そのままにしておくと、バラを覆ってしまい、通気性や日照が悪くなり、バラが育ちにくい環境になってしまいますので、今のうちに適度な高さにカットしておきましょう。

これからも、また気温が上がったり下がったりしながら季節は進むことでしょう。きっとバラたちもこの環境に対応しながら生きているのだと思います。そんなバラたちを、そっと支えながら寄り添って、バラ咲く季節を楽しみたいと思います。
Credit
写真&文 / 元木はるみ - 「日本ローズライフコーディネーター協会」代表 -

神奈川の庭でバラを育てながら、バラ文化と育成方法の研究を続ける。近著に『薔薇ごよみ365日 育てる、愛でる、語る』(誠文堂新光社)、『アフターガーデニングを楽しむバラ庭づくり』(家の光協会刊)、『ときめく薔薇図鑑』(山と渓谷社)著、『バラの物語 いにしえから続く花の女王の運命』、『ちいさな手のひら事典 バラ』(グラフィック社)監修など。TBSテレビ「マツコの知らない世界」で「美しく優雅~バラの世界」を紹介。
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