花時間編集部
『花時間』は、花やグリーンから始まる、ボタニカルライフを提案しています。フラワーアレンジ、ガーデニング、クラフト、インテリア、イベント…暮らしの中に咲く花や癒やしのグリーンを、雑誌やムック本、書籍、SNSなどで発信中です。雑誌は1991年創刊。生産者や花市場との交流が深く、美しく役に立つ情報を厳選してお届け。
花時間

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『花時間』は、花やグリーンから始まる、ボタニカルライフを提案しています。フラワーアレンジ、ガーデニング、クラフト、インテリア、イベント…暮らしの中に咲く花や癒やしのグリーンを、雑誌やムック本、書籍、SNSなどで発信中です。雑誌は1991年創刊。生産者や花市場との交流が深く、美しく役に立つ情報を厳選してお届け。
花時間の記事
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育て方
失敗しない秋の植え替え「8つの鉄則」 もう花苗をダメにしない! 完全ガイド
なぜ、買ってきた花苗や鉢花は、植え替えが必要なのか Lapa Smile/shutterstock.com 園芸店で販売されている鉢花は、価格も手頃でガーデニングを手軽に始めやすいのが魅力です。しかし、購入した鉢をよく見てみると、鉢底の穴から根がびっしりと見えていることはありませんか? これは、根が鉢の中でいっぱいに広がり、それ以上伸びるスペースがなくなった根詰まりの状態です。お店に並んでいる鉢花は、根が鉢いっぱいに回っているものがほとんどです。このままでは根が新しい水を吸うことができず、植物は元気に育ちません。そのため、買ってきた鉢花は、より大きな鉢へ植え替えることが元気に育てるための第一歩となるのです。 鉢花は、たいていプラスチック鉢に植えられています。植え替えの際は、草花の色などに合った素敵な鉢に衣替えしてあげましょう。 また、お店で売られているのは、見栄えのする鉢花だけではありません。ポリポットに入った花つきの苗も、植え替えが必要です。ぐんぐん生育する品種なら、植え替えてからすぐにひと回りもふた回りも大きくなり、大型の鉢花に負けないほどたくさんの花を咲かせてくれます。大きな鉢に植えてボリューム感を出したい場合は、数株を一緒に植えてもいいでしょう。 成功の鍵は植物の根! 植え替え前に知っておきたい根鉢のこと 鉢植えの草花は、土から上の目に見える「株」の部分と、鉢の中の土に隠れた「根鉢(ねばち)」の部分に分かれます。 根鉢の処理の仕方は人それぞれで、軽く根を崩す人もいれば、まったく崩さない人もいます。しかし、この処理を間違えたために、植物がうまく育たないケースは意外と多いのです。多年草であれば、やがて根が回復することも期待できますが、生育期間が短い一年草の場合、根の処理の失敗は致命的になることもあります。 DDiana/shutterstock.com 根鉢の正しい処理法は、根の張り方や太さ、そして植え付ける季節によって変わってきます。 特に注意したいのが、ゴボウやニンジンのように、太い根がまっすぐ伸びる「直根(ちょっこん)タイプ」の植物です。草花では主根が細く、直根タイプかどうか見分けにくいのですが、セリ科の草花などによく見られます。植えつけの際にこの根を切ってしまうと、その後の生育が極端に悪くなります。 逆に、パンジー&ビオラのように細い「ひげ根」がたくさん張るタイプは、根の先端を少し切ることで、新しい根の発達を促すことができます。ただし、根を切ってよいかは季節によっても変わるため、その都度の判断が必要です。 これだけは押さえて! 植え替えを成功に導く「8つの鉄則」 ここからは、植え替え作業を失敗なく行うための具体的な8つの鉄則を紹介します。一つひとつの手順を丁寧に行うことで、植物は新しい環境にスムーズに適応し、ぐんぐん元気に育ち始めます。 1.秋に植えるなら花期の長い花を選ぶ まず大切なのが、植物選びです。 鉢花には多年草(宿根草)の草花が多くあります。花後にちょっとした手入れをすれば、次の花期にも花を咲かせます。一方で花期が短く、株を育てる期間のほうが長いものでは楽しみも半減。鉢花を買うなら、長く花を楽しめるものを選ぶのが賢明です。 秋に買って長く楽しめる花の代表的なものは、マーガレット、ユリオプスデージー、ゼラニウム、ブルーデージー。咲き終わった花(花がら)をこまめに摘み取ることで、長く花を咲かせ続けてくれます。 2.植え替え前は乾かし気味が基本 植え替え作業の前には、水やりを控えて土を乾き気味にしておきましょう。土が乾いているほうが、鉢から株を抜きやすく、根鉢を扱いやすくなります。ただし、植物がしおれるくらい弱っているときに植え替えると、株がショックを受けて枯れることもあります。 3.根鉢は崩さず、根詰まりは見逃さない 買ってきたポット苗や鉢花を植え替える場合、大切なのは健康な根鉢を崩さずにそのまま植え付けることです。これは、根から雑菌が入る心配を減らし、植物が新しい環境に順応しやすくなるためです。 ポットの底穴から、白くて勢いのある根が少し見えているくらいなら、根が元気に成長している証拠。このような健康な苗は、根鉢を崩さずにそのまま植え付けて問題ありません。 ① ポットの底から、勢いのよい白根が少し飛び出しています。このような状態ならそのまま植え付けできます。 ② 根鉢を崩さずにそのまま植えます。 ただし、ポットの中で根がぐるぐると回り、固まってしまったルートバンド状態になっていたら、少し手を加える必要があります。多少根をカットして、下向きに伸ばせる根を作りましょう。この作業をせずに植えると、根がまったく伸びていかないことがあります。 根が鉢の底で固まっている(根詰まりしている)場合はハサミで、底の部分を5~10mmほどカットします。こうすることで、新しい根が下向きに伸びやすくなります。 4.植え替え3ステップをマスターする 根の状態を確認したら、いよいよ植え替え作業に入ります。この基本の3ステップをしっかり覚えましょう。 ① 根を鉢から抜く 根を傷つけないよう、ポットを軽く押しながら、そっと株を抜き取ります。 ② 根鉢の状態を確認する 鉄則3に従って、根鉢を確認。根詰まりしている場合は、根の先端をカットします。 ③ 新しい鉢に植え替え 元の株よりひと回り大きな鉢を用意し、Ⓐの部分に用土を入れます。その上に株を置き、Ⓑの部分に用土を詰めます。植え替えが終わったら、鉢底から水が流れ出るくらいたっぷりと水を与えます。 植え替えすると、根の張るスペースを得て、株はさらに大きく育ちます。根が底から飛び出すくらい育てば、さらにもう一度ひと回り大きな鉢に植え替えます。 5.季節に合わせた根鉢の処理を知る 根鉢の処理は、季節によって変わります。特に秋は植物の生育期なので、多少根を整理しても元気に回復します。 春と秋の植え替え(生育期) 根が固まっている場合、鉢底の1cmほどの根を軽くほぐしながらカットします。根の先端部を少しカットすることで、新しい根の成長が促されます。ただし、根を切りすぎると、種類によってはその後の生育に影響するので、ほどほどに。 春や秋の生育期なら、鉢底1cmほどの根を軽くほぐしながらカット。 冬の植え替え(休眠期) 冬は生育が非常に緩やかになるため、根を切ると回復に時間がかかります。根が完全に回っている場合でも、底の部分をハサミで軽くカットして、新しい根が下に向かって伸びるのを助ける程度にとどめましょう。 根鉢の底の外側を中心に細い根を軽くハサミでカットして、下向きに伸ばせる根を作ります。 夏の植え替え 真夏の暑さで株が弱っているときに根を切ると、吸水がうまくいきません。なるべく根を切らないようにしましょう。また、切った根の部分から雑菌が入り、枯れることもあります。この季節は成長も旺盛なので、根が回っていない、株の老化の進んでいないポット苗を買うことが大切です。 6.植物の根のタイプを見極める より効果的な植え替えをするには、植物の根の張り方を知ることが重要です。根のタイプは、大きく分けて4種類あります。 太い根が粗く張るタイプ 根が太いので、たくさん切ると吸水が追いつかなくなり、一時的にしおれることもあります。根を切りすぎないことがポイント。サクラソウなど丈夫な草花が多いので、吸水さえ追いつけば、やがて回復します。 直根(ゴボウ根)タイプ ポピーやセリ科の植物などは、中心の太い根(直根)を切ってしまうと、生育不良になります。一年草タイプでは植え替えも禁物。 ごく細い根が浅く張るタイプ ベゴニアなどごく細い根の草花は、根を切られることを嫌います。根の張りも浅いので、根詰まりしているときも、土を軽くほぐす程度に。 ひげ根がたくさん張るタイプ パンジーなど多くの草花がこのタイプです。根が多少切れても、そこから根が分枝して伸びます。 7.根を切ってはいけない植物を覚える 根のタイプのなかでも特に注意が必要なのが直根タイプや、根が細いタイプの植物です。ヒユ科、ケシ科、セリ科の植物などの直根タイプに加え、アスター、アリッサム、アルケミラ・モリス、イベリス、ブルースター、クレオメ、ケイトウ、ハツユキソウ、コスモス、サンビタリア、スカビオサ、ニチニチソウ、ハゲイトウ、ハボタンなどは、植え替えの際に根を切られると生育不良になりやすいので特に注意しましょう。 8.鉢は、大きすぎないサイズを選ぶ 草花を鉢植えにするときは、根のサイズに合った鉢を選ぶのが基本です。根の量に対して、大きすぎる鉢に植えるのは避けましょう。大きめの鉢に植えると、土が深く、土に保持される水分量も多くなり、なかなか乾きません。土が常に湿った状態だと、根が水を求めて伸びる必要がなくなるので生育が緩慢になったり、土の中の酸素が不足して根腐れの原因になったりすることがあります。 一方、根のサイズに合った鉢では、土の水分量も限られるため、根は水を求めてどんどん伸びていきます。土が乾湿を繰り返し、水分のメリハリがつくと生育によいといわれるのもこうした事情によります。 寄せ植えのために、根鉢をサイズダウンさせるには ハンギングバスケットや寄せ植えを作るとき、買ってきた苗の根鉢が大きすぎてスペースに入らないことがあります。 その場合は、根鉢をサイズダウンさせる必要があります。 作業の際は、まず土を乾き気味にしておき、根をなるべく傷めないようにやさしく土をほぐします。 必要であれば、根を切り落とします。 ただし、根の伸びるスペースが少なければ、苗の寿命もそれだけ短くなることは避けられません。 あくまで一時的に楽しむためのテクニックと心得ておきましょう。 もっと詳しく知りたいあなたへ! 新刊書籍30冊プレゼント 10月1日に発売された新刊書籍『新版 イラストで学ぶ、はじめてのガーデニング 花を育てて暮らす、豊かな時間』(KADOKAWA刊) 監修・文/三橋理恵子 イラスト/阿部真由美 AB版144ページ 失敗しない秋の植え替え「8つの鉄則」は、いかがでしたか? この記事で紹介した内容は、『新版はじめてのガーデニング 花を育てて暮らす、豊かな時間』(KADOKAWA刊)に掲載されている情報のほんの一部です。 本書は、美しい植物のイラストと共に、日々のガーデニング作業の基本とコツを丁寧に解説しています。知りたい項目を見開きで確認できる構成や、巻末の150語の園芸用語集など、初心者からベテランまで役立つ情報が満載です。 まるで絵本のように美しいこの1冊を、抽選で30名様にプレゼントいたします! ご希望の方は、以下の応募フォームからお申し込みください。ご応募の締め切りは、10月13日(月曜・祝日)。当選された方には、発行元のKADOKAWAより書籍を直接お贈りいたします(10月中旬発送予定)。 さらに、お手元に届いた本書のご感想をご自身のSNSやブログまたはAmazonなどに投稿してくださった方には、書籍のイラストを使ったオリジナル壁紙をプレゼントする特典もご用意しています。*所定の期間での投稿と、投稿後にご連絡を入れていただく必要がございます。 多くの方のご応募をお待ちしております。
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育て方
秋こそベストシーズン! 翌春の花壇が見違える「11の庭仕事」リスト
秋はガーデニングのゴールデンタイム Julie julie/Shutterstock.com 「暑さ、寒さも彼岸まで」という言葉がある通り、あれほど厳しかった記録的な猛暑もようやく落ち着きを見せ始めました。朝晩の涼しい風や、日中の柔らかな日差しは、庭仕事をする私たちにとっても、そして夏の暑さに耐えてきた植物たちにとっても、まさに恵みの時間です。過ごしやすい穏やかな気候の秋は、ガーデニングのゴールデンタイムと呼ばれています。 では、なぜ秋がそれほど特別な季節なのでしょうか。その理由は、この時期の庭仕事が「夏のダメージからの回復」「厳しい冬への備え」「輝かしい春への仕込み」という3つの重要な役割を担っているからです。 ABO PHOTOGRAPHY/Shutterstock.com まずは、春から夏にかけて花を咲かせ続けた多年草などを植え替えたり、切り戻したりして、疲れた株をリフレッシュさせる絶好の機会です。同時に、これから訪れる冬の寒さを乗り切れるよう、植物自体の耐寒性を高めるための管理を始める大切な時期でもあります。 そして何より、ガーデナーの心をワクワクさせるのが、翌年の春に向けた準備です。秋に行う作業は、来年の春の庭の景色に大きく影響し、まさに「翌春に差がつく」ものばかり。パンジーやビオラの苗を選んだり、チューリップやスイセンの球根を植え付けたりしながら、春の庭を想像するのは、この季節ならではの大きな楽しみと言えるでしょう。 このように、開花中の花の世話から冬支度、来シーズンの準備まで、秋の庭はやるべきことが目白押しです。だからこそ、必要な作業をリストアップして、計画的に進めていくことが大切になります。 次の項からは、具体的にどんな作業をすればよいのか、詳しく見ていきましょう。 春の景色は秋で決まる!差がつく「11のガーデニング作業」 さっそく、この秋にやっておきたい具体的な作業を11個のリストにしました。一つひとつこなしていくことで、来年の庭の美しさが大きく変わってきます。 1.多年草を植え替えて、来年の成長を促す 春から夏に人気のペチュニアやバーベナなど、栄養系タイプの草花は、秋のうちに植え替えておくと、翌年の株張りに大きく差が出ます。整理して切り戻した茎は、挿し芽をしておくと、簡単に根づいて株を増やせます。 2.株分けでお気に入りの植物を増やす 花が終わって夏越しが成功した多年草は、地際から株が広がり、株分けできるほど生育しています。このままでは窮屈なので、株分けしましょう。あまり細かく分けすぎないのがポイントです。 3.用土や肥料は、シーズン前にまとめて購入 ガーデニングをしていて、一番買いに行く回数が多いのは、用土です。いざ使いたいときにないと困るので、事前に必要な土を買いそろえておくと安心できます。一緒に肥料や薬剤など、基本的なものも買っておきましょう。 4.来シーズンに向けた土づくり 花壇では、夏の花が終わったら、さっそく土を掘り起こして耕します。土がぱさぱさしているようなら、腐葉土や堆肥などの有機質分をすき込んで土づくりして、秋花壇の準備をします。 5.意外と見落としがち? 庭やコンテナの大掃除 ガーデニングの土台である花壇やベランダが、整理整頓されていなければ、花も映えません。 とくに忘れがちなのが、コンテナの掃除です。雨のはね返りなどでコンテナの側面は汚れやすいもの。使い終わったコンテナやポリポットは、中性洗剤できれいに洗って、干してからしまいましょう。病原菌を防ぐ意味もありますが、用具の管理は、ガーデニングの基本でもあります。 6.まだまだ咲く花へ、追肥を忘れずに 秋のコンテナや花壇は、最近の暖冬傾向で、開花期間が伸びて、12月になっても勢いよく咲いているものもあります。花期が長いので、とくに注意したいのは肥料切れ。お手入れ不足がないかどうか、チェックしてみましょう。 7.越冬する害虫は、今のうちに駆除 注意したいのが、越冬アブラムシ。冬の間、植物の株元などで越冬するアブラムシは、春になると一気に増えてしまいます。見つけにくい厄介な害虫なので、浸透移行性殺虫剤を数回散布して、根絶しましょう。 8.使った土は捨てないで! 古土の再生 プランターで育てた花が終わったあと、残った土をどうしていますか? そのまま捨ててしまうのは、もったいない! 古い根やゴミを取り除き、ビニール袋に入れて日光に当てるなどして消毒すれば、再び使えるようになります。 9.冬の寒さから守るマルチングと切り戻し 戸外で越冬させる株の寒さ保護には、軒下に取り込むほか、表土をバークチップなどで覆うマルチングが効果的です。一方、株は体積が大きいと寒さを受ける部分が増えるので、半分程度まで切り戻します。切り戻しは、わき芽の成長を促進する効果もあって、一挙両得です。 10. 秋の挿し芽で苗作りを楽しむ 多年草草花などは、挿し芽で簡単に増やせます。秋のうちに挿し芽をして、苗をたくさん作っておけば、冬の育苗の楽しみも味わえます。温暖地なら、たいていの種類は戸外の軒下などで管理できます。 11.枯れた一年草の片づけは慎重に 枯れた一年草は片づけますが、タネがこぼれる草花では、土をそのままにしておくと、早春になってこぼれダネから発芽することもあります。どこかの庭から飛んできたタネから、草花が育つことも。あるいはペチュニアのように、一年草といっても、暖かい場所なら冬を越して、大きな株になって翌年花を咲かせるものも多くあります。片づけの見極めは慎重に。 【プロの技】冬越し成功率が上がる、植物の耐寒性をつける秋の花育て 晩秋から初冬は、植物の冬越し準備をする大切な時期。冬咲き草花、春の開花を待つ草花、寒さに弱い鉢花などがよりスムーズに冬を乗り切るために、今できること。それは、植物が耐寒性をより増すように管理することです。 耐寒性は、大きくは植物の原産地の環境に左右されますが、育て方しだいで、寒さにより耐えるよう慣らすことができます。実際、世界各地の植物が行き来し、外来植物を育てる機会が多くなった今、耐寒性を増す管理法は、欠かせないテクニックの一つです。 耐寒性向上の鍵は秋の管理です。具体的には、水やりがいちばんのポイント。水を与える間隔をだんだんあけていき、植物の体内の水分量を徐々に減らします。こうすると葉の糖分量が増え、葉はごわごわしますが、より寒さに耐えられるようになります。 「水を減らす」というと、与える量を減らすと考えがちですが、これは間違い。水やりの間隔はあけるものの、鉢底からたっぷり流れるほど水やりします。寒さに弱い植物は、寒さがくると成長を止めて休眠状態に。これらは水やりの間隔をぐっとあけます。 植物に耐寒性をつけるには、強い寒さがくるまでに植物を丈夫に、栄養たっぷりに育てておくことも大切。それには日光に当て、バランスよく肥料を与え、株をコンパクトに育てておきます。強健に育った株は、冬越しもスムーズです。 耐寒性って何だろう? 耐寒性とは、植物が寒さに耐えられる指標のようなもの。寒さの厳しい場所が原産地なら耐寒性が強く、熱帯・亜熱帯地方の植物には、寒さに耐える力はありません。 一般的な園芸植物では耐寒性、半耐寒性、非耐寒性の区別があります。ただし耐寒性草花といっても、強い寒さがきたときなどは生育が止まったり、株が傷んだり、ひどいときは枯れることもあります。 とくに品種改良の進む園芸草花では、品種によっても耐寒性は違います。同じ家でも東西南北の向きや日当たり、風の強さなど条件は異なります。植物の様子を確認しながら、寒さ対策を考えるのが一番です。 耐寒性アップの鍵は水やりにあり もっとも重要なポイントは、水やりの方法です。水を与える間隔をだんだんあけていきます。こうすることで、植物は体内の水分量を減らし、代わりに糖分濃度を高めて、寒さに強い体質に変化していきます。 process 1 秋までの水やりの間隔を、だいたい把握しておきます。 process 2 水やりの間隔を、だんだんあけていきます。最初1日おきであれば、次は2日おきに。それに慣れれば3日おきに。土の表面が乾いても、葉先がしおれていなければ、水やりしなくて大丈夫。気温の下がる晩秋から冬の水やりは、午前中がベスト。夕方以降の水やりは避けます。 process 3 最終的に何日水やりの間隔をあけるかは、鉢の大きさ、植える植物、土の性質、置き場所などによってまちまち。植物の様子を見ながら見極めます。 process 4 水を制限していくと、茎葉はごわごわして堅くなり、緑もより色濃く。株自体の成長は遅くなりますが、よりしっかりしまった株になります。 耐寒性を高める3つのポイント 水やり 寒さで葉が傷みやすいので、夏のように葉の上から水を与えないようにします。株元の土めがけて、ジョウロのハス口をつけずに水を与えます。 肥料 チッソ肥料は植物のからだを作ります。ただしこの時季(秋)、必要以上に葉茎を伸ばすことは、耐寒性をつける妨げになるので、控えめに。根を育てるカリウム肥料は、耐寒性に貢献します。 置き場所 日当たりの悪い場所で日光を好む植物を育てると、貧弱に育ち、寒さに耐える力も弱くなります。場所が限られている場合は、こまめに鉢を移動して、日に当てる工夫を。また冬に風が強く吹く地域では、植物を上手に冬越しさせるうえで大切です。 植物の種類別、秋からの管理法 冬咲き草花 パンジーやストック、リナリアなど、冬にも戸外で花を咲かせる草花は、寒さに強いもの。水やりの間隔をだんだんあけながら、より耐寒性がつくよう、寒さに慣らしながら育てましょう。 室内で管理する冬咲き植物 ベゴニアやポインセチア、プリムラ・オブコニカなどは、冬咲きといっても寒さに弱いもの。暖かい室内で管理します。室内の温度が平均して高い場合は、土の表面が乾いたら水をたっぷり与えます。昼夜の温度差が大きい場合は、夜間窓際から鉢を離すなどして、温度差を少なくする工夫を。 戸外で管理している春咲き草花 カレンデュラやジギタリス、スイートピーなど、春咲き草花のほとんどは耐寒性が強いので、秋のうちに定植すれば、冬越しはわりと簡単。ただし風が強い場所では、風よけの工夫を。寒さで葉が傷むなら、べたがけシートをかぶせましょう。 冬に保護が必要な熱帯植物 ハイビスカスやランタナ、ルリマツリなどの熱帯植物は、寒くなったからといって、早めに室内で保護するのはタブー。耐えられるうちは戸外の日当たりのよい場所に置き、寒さに十分慣らしましょう。株の体積が多いと、寒害も受けやすいので、半分くらいまで切り戻すと、冬を越しやすくなります。また必要以上の保護をせず、だんだん寒さに慣らしていくと、温暖地では戸外で越冬できるようになります。ただし、慣らすのは徐々に。 もっと詳しく知りたいあなたへ! 新刊書籍30冊プレゼント 10月1日発売の新刊書籍『新版 イラストで学ぶ、はじめてのガーデニング 花を育てて暮らす、豊かな時間』(KADOKAWA刊) 監修・文/三橋理恵子 イラスト/阿部真由美 AB版144ページ 翌春の花壇が見違える「11の庭仕事」リストは、いかがでしたか? この記事で紹介した内容は、『新版はじめてのガーデニング 花を育てて暮らす、豊かな時間』(KADOKAWA刊)に掲載されている情報のほんの一部です。 本書は、美しい植物のイラストと共に、日々のガーデニング作業の基本とコツを丁寧に解説しています。知りたい項目を見開きで確認できる構成や、巻末の150語の園芸用語集など、初心者からベテランまで役立つ情報が満載です。 まるで絵本のように美しいこの1冊を、抽選で30名様にプレゼントいたします! ご希望の方は、以下の応募フォームからお申し込みください。ご応募の締め切りは、10月13日(月曜・祝日)。当選された方には、発行元のKADOKAWAより書籍を直接お贈りいたします(10月中旬発送予定)。 さらに、お手元に届いた本書のご感想をご自身のSNSやブログまたはAmazonなどに投稿してくださった方には、書籍のイラストを使ったオリジナル壁紙をプレゼントする特典もご用意しています。*所定の期間での投稿と、投稿後にご連絡を入れていただく必要がございます。 多くの方のご応募をお待ちしております。
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樹木
【唯一無二のアジサイ作り】吉岡麗子さんが生み出すアジサイの魅力
花への愛情が生み出す、特別なブランド 吉岡さんの美しい温室内のアジサイ。色づいてから出荷します。 吉岡麗子さんは、ポインセチア作りで輝かしい実績をもつ生産者です。2001年の「オールジャパンポインセチアフェア」での大賞受賞をはじめ、農林水産大臣賞を受賞するなど、その実力は折り紙付きです。 吉岡麗子さんの原点は花農家の家庭にあります。ユリなどの鉢花を生産する父の背中を見て育ち、自然と植物への興味を深めていきました。テクノ・ホルティ園芸専門学校で専門知識を学んだあと、花店での勤務経験を通して、消費者のニーズや花の魅せ方を肌で感じます。 その後、埼玉県内の著名なポインセチア生産者の元で研修を積み、その美しさと奥深さに魅了され、自身も生産者の道を歩むことを決意します。吉岡さんの作るポインセチアは、その品質の高さはもちろん、一つひとつの株に愛情を込めて向き合う真摯な姿勢が評価され、瞬く間に人気を博しました。「吉岡麗子ブランド」として、その地位を確固たるものにしています。 麗子さんを力強く支えるのが、妹の真美子さんです。当初は一般企業に勤め、生産に携わるつもりはなかったそうですが、退職後に実家に戻り、姉を手伝うようになりました。今では、麗子さんだけでは手が回りきらなかったPR用のカタログ制作やラベルデザインなどを担当。生産現場にも深く関わり、アジサイの育種も担っています。姉妹の二人三脚で、より魅力的な花作りに挑戦するようになって、10年以上の月日が経ちました。 控えめな美しさに惹かれたヤマアジサイの花 色づきはじめの‘伊予獅子てまり’。淡いピンクが徐々に色づく。 「もし西洋アジサイしかなかったら、アジサイの生産は始めていなかったかもしれません」。 吉岡さんは、アジサイ作りを始めたきっかけをそう振り返ります。運命的な出会いは、とある山野草専門店。そこで見かけたヤマアジサイ‘伊予獅子てまり’の、小さく丸みを帯びた可憐な花房に、心を奪われたのでした。 今でこそ、鉢花として広く流通するようになったヤマアジサイ‘伊予獅子てまり’ですが、吉岡さんが生産を始めた当時はまだ珍しい存在でした。吉岡さんは、その魅力をいち早く見出し、世に広めたパイオニアです。 ‘伊予獅子てまり’。写真は5号サイズ。 ヤマアジサイは、その名の通り、古くから日本の山々に自生していたアジサイの一種です。西洋アジサイのような大輪で圧倒的な存在感や華やかさとは異なり、どこか控えめで、楚々とした風情を漂わせるのが最大の魅力 。派手さはないけれど、心にそっと寄り添うような、奥ゆかしい美しさをもっています。 アジサイの花は、基本的に年に一度しか咲きません。花が終わったあと、今年伸びた枝に来年の花芽が形成されます。そのため、今年の花を長く咲かせすぎると、翌年の花付きが悪くなる可能性があるのです。 「ヤマアジサイは花が小さいので、剪定した花を気軽に切り花として飾れるのもよいところです。鉢植えを楽しみながら、剪定した花を部屋に飾る…そんなふうに、二度楽しんでもらえたら嬉しいですね」と吉岡さんは語ります。 1年という年月をかけるアジサイ作りの舞台裏 美しいアジサイの鉢植えが私たちの元に届くまでには、1年近くもの時間と、大変な手間がかかります。これは、夏に植えて晩秋から初冬に出荷されるポインセチア(生産期間は約3~4カ月)と比べると、非常に長い期間です。アジサイ作りは、1年がかりの大仕事なのです。 アジサイ生産の年間スケジュール 5月上旬(ゴールデンウィーク頃): 来シーズンに向けた準備がスタート。親株から健康な枝を選んで切り取り、小さな苗用のポットに挿し木をします。 5~11月頃: 挿し木をした苗を、屋外の管理しやすい場所で育てます。夏の暑さや病害虫から守りながら、じっくりと根を張らせ、株を充実させます。 年内(11~12月頃): 寒さから苗を守るため、ハウス(温室)の中へ移動させます。春に美しい葉が育てるために、残っている葉を手で一枚ずつ取ります。 1月: 育った苗を、いよいよ出荷用の鉢へと植え替えます。ここから、春の開花に向けて本格的な管理が始まります。 1月~春(開花期): ハウスの中で、温度や湿度、日照などを適切に管理しながら、一つひとつの鉢に丁寧に水やりを行います。美しい花を咲かせるための、もっとも重要な時期です。 「こんなに長い期間をかけて育てているので、無事に美しい花を咲かせてお客さまにお届けできるか、途中で病気になったり枯れたりしないか、本当にひやひやしながら見守っています」と吉岡さんは語ります。 圃場で水やりをする真美子さん。日焼け対策万全です。 特に、吉岡さんが拠点を置く深谷市は、夏の猛暑で知られる熊谷市の隣に位置し、アジサイにとっては非常に過酷な環境です。夏の暑さで株が弱らないよう、ダメージを受けないよう、細心の注意を払いながら、ひと鉢ひと鉢の状態を日々確認し、最適な管理を心がけています。 そして、吉岡さんのアジサイ作りにおける大きなこだわりの一つが、ひと鉢ずつの水やり。アジサイ栽培では、効率化のために底面給水(トレーなどに水を溜めて鉢底から吸わせる方法)を採用する生産者も多いなか、吉岡さんはあえて手間のかかる水やりにこだわります。「効率よりも、一つひとつの花としっかり向き合い、コミュニケーションを取りたいんです」。 その言葉通り、日々の水やりを通して、アジサイのわずかな変化も見逃さず、異常があればすぐに対応できるように、常に気を配っています。ゴミひとつ落ちていない、美しく整えられた温室の様子からも、吉岡さんの丁寧で几帳面な仕事ぶり、そして花への深い愛情がひしひしと伝わってきます。 色のグラデーションが楽しめる‘てててまり’ すずしげな色が魅力の‘てててまりブルー’。 吉岡さんのオリジナル品種のなかでも、特に高い人気を誇るのが‘てててまり’です。その独創性と美しさが評価され、「ジャパンフラワーセレクション2019-2020」では、栄えあるベスト・フラワー(優秀賞)とカラークリエイト特別賞をダブル受賞。この品種は、妹の真美子さんが育種を手がけ、長い年月をかけて生み出した自信作です。 花色はブルーとピンク。咲きはじめの淡い色から徐々に色づき、ひとつの花がグラデーションになる様は美しく、見る人の心を強く惹きつけます。 この‘てててまり’は、ヤマアジサイと西洋アジサイを交配したもの。ヤマアジサイのもつコンパクトな樹形と、西洋アジサイの花付きのよさや育てやすさ、両方の優れた性質を、見事に受け継いでいるのが特徴です。管理方法は、基本的には西洋アジサイに準じるため、比較的育てやすいとも言えます。 愛らしいピンクの‘てててまりピンク’。 アジサイの花色は、土壌の酸度(pH)によって変化することが知られています。酸性の土壌では青色が、アルカリ性の土壌ではピンクが強く現れます。‘てててまり’も例外ではなく、美しいブルーとピンクをそれぞれ出すために、土の種類や肥料の種類を変え、管理方法も分けて生産しています。そのため、ブルーとピンクでは、ボリューム感や咲き姿にも少し違いが見られるのも、ユニークな点です。 そして、品種名の「ててて」は、吉岡さんの地元、埼玉県北部の方言で、驚きや感動を表す言葉だそう。 花店での勤務経験がある吉岡さんだからこそ、「一般の消費者が本当に欲しい、飾りたいと思うのはどんな花か」という視点を常にもち、多くの人の心に響くアジサイを提案し続けているのでしょう。 ヤマアジサイの魅力を最大限に生かすシリーズ 吉岡さんが生み出すオリジナル品種は‘てててまり’だけではありません。情熱的な赤紫色が印象的な‘十六夜’や、‘伊予獅子てまり’から生まれたやさしい色合いの枝変わり品種‘うるは’などがあります。どちらも、吉岡さんならではの感性が光る、愛らしさ満点の花々です。生産量は決して多くはありませんが、その質の高さから徐々にファンを増やし、注目度が高まっています。 新品種の開発だけでなく、既存品種の魅力を新たな形で提案する企画商品にも、吉岡さん姉妹は積極的に取り組んでいます。その代表が「ぽじさい」シリーズです。 ‘伊予獅子てまり’の「ぽじさい」。 ヤマアジサイは、西洋アジサイに比べて花房が小さく、その分、たくさんの花を咲かせるのが特徴です。この個性を最大限に活かそうと考えられたのが「ぽじさい」。通常よりも小さな3寸(直径約9cm)のポットに、まるで花がこぼれ落ちるように、たくさんの花を咲かせて仕立てています。 この「ぽじさい」は、他の植物と組み合わせて楽しむ寄せ植えの材料として使いやすいのはもちろん、「小さな鉢で気軽にアジサイを楽しむ」という、これまであまりなかった新しいスタイルを提案しています。限られたスペースでも飾りやすく、かわいらしい姿は、アジサイの楽しみ方を大きく広げました。既存の品種がもつ本来の魅力を引き出しながら、現代のライフスタイルに合った美しい形で見せる「ぽじさい」は、まさに吉岡さん姉妹のセンスとアイデアが詰まったシリーズと言えます。 2025年デビュー! 室内で楽しむ「こじさい」 2025年に本格デビューしたシリーズが、「こじさい」です。さまざまなアジサイを育て、多くの人に愛される「ぽじさい」を手がけるなかで、吉岡さん姉妹のなかに「もっともっと小さなアジサイがあったら、気軽に楽しめるのではないか」という思いが芽生えました 。その思いを結実させたのが、この「こじさい」シリーズです。 今回紹介する品種は‘ちっちゃ’。花色はブルーとピンクの2色、とはいえ、単に1色ではなく、グリーンや花色の濃淡が混じり合ったような、深みのあるニュアンスカラーが特徴です 。この絶妙な色合いは、「さすが吉岡さんのアジサイ!」と唸らされる、洗練された仕上がりです。 「こじさい」の最大の特徴は、そのコンパクトさ。3号(直径約9cm)という小さな鉢を、さらにかわいらしいバスケットに入れています 。花の大きさ自体は「ぽじさい」と同程度ですが、バスケットアレンジによって、より飾りやすく、ギフトにもぴったりの装いとなりました。 こじさい‘ちっちゃ’ バスケットに入っている理由は、「買ってきたら、そのまますぐに家の中に飾って楽しんでほしい」という、吉岡さん姉妹の強い願いから。バスケットの中には、水やりの際に水がこぼれないよう、受け皿代わりになるプラスチック製のインナーがセットされているため、特別な準備は不要。そのままお気に入りの場所に置くだけで、空間が華やかになります。 「明るい窓辺など光が入る場所に置いて、インテリアの一部として楽しんでもらえるようにと考えました」と吉岡さん姉妹は語ります。アジサイというと、どうしても庭やベランダなど屋外で育てるイメージが強いですが、「こじさい」の登場によって、ひとり暮らしの部屋やマンションの限られたスペースでも、気軽にアジサイの美しさを楽しめるようになりました。これは、アジサイの楽しみ方を大きく変える、画期的な提案と言えるでしょう。 圃場のなかでの「こじさい」。 「ぽじさい」「こじさい」「ちっちゃ」。覚えやすく、どこか愛嬌のあるネーミングも、吉岡さん姉妹のセンスを感じさせます 。 「こんな花があったら、かわいいよね」「こんな風に飾れたら嬉しいよね」。常に買う人の気持ちに寄り添いながら、自由な発想で新しいアジサイの魅力を提案し続ける吉岡さん姉妹。彼女たちの手によって、アジサイの世界は、これからもますます豊かに、そして美しく広がっていくことでしょう。これから先の未来に咲く吉岡さんのアジサイも、どうぞお楽しみに。 吉岡さん姉妹のアジサイを数量限定で販売中! 吉岡さん姉妹の人気アジサイ‘てててまり’を、『花時間マルシェ』では数量限定で販売しています。お届けは、5月1日(木)から 5月7日(水)。自分用にベランダやお庭で育てて楽しむほか、母の日へのギフトとして贈るのもおすすめです。 花のある暮らしを提唱して30年以上の歴史をもつ花の総合メディア『花時間』が運営するネットショップ『花時間マルシェ』で吉岡さん姉妹の紫陽花をチェック!
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育て方
キンモクセイの正しい剪定方法。時期やコツ、初心者が注意したいポイントとは?
キンモクセイの基本情報と育てる前に知っておきたいこと キンモクセイは初心者にも育てやすい庭木ですが、栽培を始める前に、上手に育てるための基本情報を知っておきましょう。 キンモクセイの基本データ学名:Osmanthus fragrans var.aurantiacus科名:モクセイ科属名:モクセイ属原産地:中国(詳細は不明)和名:キンモクセイ(金木犀)英名:fragrant orange-colored olive開花期:9〜10月花色:オレンジ植え付け時期:3〜4月耐寒気温:−10℃ キンモクセイは樹高5〜8mになる常緑小高木です。9月下旬から10月中旬に、オレンジ色で強い芳香のある5mm程度の小花を枝に密につけて咲かせます。近年では開花が年々早まっている傾向があります。その香りは、低温、多湿になると特に強く香ります。日本では芳香剤としてよく知られる香りですが、中国では花(日本と同一かは不明)を使い、桂花陳酒や桂花茶などで香りが楽しまれています。葉は、オレンジ色の花が映える濃い緑で、光沢があります。庭木や生垣によく利用されています。日本では雄株しか知られておらず、そのため実をつけることはありません。 キンモクセイは、花が白色のギンモクセイ(O.fragrans)の変種とされています。属名のOsmanthusは、ギリシャ語でにおいを意味する「osme」と、花を意味する「anthos」に由来しています。 キンモクセイに剪定は必要なの? キンモクセイは枝葉が対になって出てくる常緑樹です。このため、枝葉が茂りやすく、放っておくと全体に広がりすぎてしまいます。キンモクセイも多くの樹木と同じように、毎年剪定をして庭木として利用できる大きさに仕立てます。また、多くは刈り込みなどで仕立てられます。 キンモクセイを剪定する目的・メリットは? 剪定とは、木の枝を切り、樹形を整えることをいいます。その目的やメリットは主に6つあります。 ①木が大きくなりすぎないように枝の広がりを抑え、コンパクトに育てる。②枯れた枝や病害虫の被害を受けた枝を取り除く。③木のなかの日あたりと風通しをよくし、病気や害虫の発生を予防して木を健全に育てる。④樹形を美しく整える。⑤花や実のつきをよくする。⑥古い枝を新しい枝に更新する。 樹木を健康に美しく保つ剪定は、欠かせないお手入れのひとつなのです。 剪定業者に頼むこともできる? キンモクセイの剪定は、庭師や造園業者などの専門家に頼むこともできます。キンモクセイの剪定を自力で行うことが難しいと感じたら、剪定を得意とするプロへの依頼がおすすめです。 業者に剪定を頼むメリットは、専門知識をもとに剪定してもらえることです。キンモクセイの剪定に適した時期や、樹形や枝葉の状態に合わせた剪定がかなうでしょう。 ただし、庭木の剪定を依頼すると、自分で行うよりもコストがかかる点がデメリットです。 費用を抑えたいなら、十分に下調べをした上で、自力で剪定を行うのがおすすめです。植物を自らの手で世話することは、園芸における大きな楽しみの一つだといえるでしょう。 キンモクセイは小さく仕立てられる? 人が見上げるほどの樹高になるキンモクセイですが、小さく仕立てる方法もあります。 【地植え】 樹高をおさえたい場合は、維持したい高さで主幹を切ります。この際、最低でも樹高2~3mは残しましょう。また、横枝のすぐ上で切ることで、横枝がよく育ち花もたくさん咲きます。直径5cm以上の太い幹は切り方が難しく、木が弱る恐れがあるので、プロに相談するのがおすすめです。なお、木の負担が大きくなりがちな夏時期は避けて剪定しましょう。 【鉢植え】 鉢植えに苗を植えると、50~150cmほどの小さな仕立てが可能です。鉢の大きさは8号を目安にしましょう。地植えのキンモクセイから枝をとる場合は、幹を傷つけて初根させてから切り取る高取り法を行います。 キンモクセイの剪定に適した時期はいつ? 樹木の種類による剪定の適期 剪定には、樹木の種類によって適期があります。常緑針葉樹ならば厳冬期を除いた冬から早春に、常緑広葉樹ならば春から梅雨期の前半、そして秋に、落葉広葉樹ならば冬から早春に、花木は花後のなるべく早い時期が適期です(樹木によっては例外もあります)。 花後から翌春の4月がキンモクセイの剪定の適期 常緑広葉樹であるキンモクセイは3月から4月上旬が剪定の最適期です。ただし、夏に花芽を形成して秋に開花する花木のため、花後すぐから冬の間も軽い剪定や刈り込みであれば可能です。キンモクセイは花後すぐの時期はまだ光合成を活発にしており、翌年の成長や開花のための栄養分の貯蔵量を増しています。また、冬の時期に剪定すると、寒さにやや弱いため樹勢が弱ってしまうので、大幅に刈り込むのは避けるようにしましょう。 年に1度行う刈り込みと間引き剪定 キンモクセイはとても生育旺盛です。放っておくとかなり大きくなってしまいます。年に1回、秋の花が終わった直後から翌年の4月上旬までに一回り小さく刈り込みます。このとき、あまり強く切りつめないようにしてください。強剪定(枝を深く切ること)は枝枯れを生じやすく、元の状態に戻るのに数年かかってしまいます。ただし、数年に1度、木を活性化させるためであれば強剪定してもよいでしょう。その翌年は、花は期待できないので、花を楽しみたいのであれば避けてください。 また、不要な枝は間引き剪定します。間引き剪定とは、生育期に混み合ってきた枝や枯れ込んできた枝を根元から取り除く剪定のことです。これも、花の咲き終わりから4月上旬までの間に行うようにしましょう。 キンモクセイの剪定方法が知りたい キンモクセイを剪定するための具体的な方法を紹介します。 剪定の方法 ①高さを抑える幹が高く伸びていたら樹形を維持するために、枝先から50cm程度まで切り戻します。切り戻すときは、枝の付け根(枝分かれした部分)まで切ります。 ②不要な枝を間引く枝葉が茂り株の内側が混み合ってくると、日あたりや風通しが悪くなり、木が弱ったり、病害虫の発生が増えたりします。そこで、太く長い枝や混み合った枝、交差する枝などをつけ根から切り取って間引き、枝数を減らして株内の日当たりや風通しを図るようにします。 ③枝先を2〜3節残して切り詰める株をコンパクトに維持し、また枝を充実させるために、花の咲いた枝を先端から2〜3節残した位置まで切り詰めます。4月以降に新梢が伸び、これに花芽がつくられます。 刈り込みの方法 ①不要な枝を切るはじめに樹形を乱すような長く飛び出た枝は、樹冠の内側からハサミで付け根から切り取ります。 ②刈り込む側面と天面を刈り込んでいきます。前年に刈り込んだ部分を目安に、刈りバサミで剪定します。このとき刈り込みバサミは片側の刃のみ動かします。 ③仕上げるある程度刈り込んだら少し離れて見て、形が悪い部分を整えていきます。形が決まれば、枝についた、引っかかった枝葉を払ってきれいにします。 キンモクセイの剪定に必要なものは? キンモクセイの剪定に必要なものには、主に以下のようなものがあります。 剪定用手袋 木のトゲや樹液から手を守ります。手のひらに滑り止め加工がされていると使いやすいでしょう。 剪定バサミ 直径1~2cmの枝の剪定に適しています。切れ味がよく、たくさんの枝を剪定したいときにもっとも活躍する道具の一つです。 庭木バサミ 直径約1cmまでの、細い枝の剪定に適しています。剪定の仕上げに使うことが多いハサミです。 刈り込みバサミ 主に葉の刈り込みに使うハサミです。刃渡りが長く刃が厚いものが使いやすいでしょう。樹高が高いキンモクセイなら柄が長めのものがおすすめです。片手を固定し、反対側の手をリズミカルに動かすと効率よく切れます。 剪定ノコギリ 直径2cm以上の太い枝を切る際に使います。さまざまなサイズがあるので、枝の太さに合わせて使いましょう。片手で枝を押さえ、反対側の手でノコギリを引くように切ると切り口ががたつきにくいです。 脚立 樹高の高いキンモクセイの剪定で活躍します。一番上の段に立たない、乗っている間は上を見上げて作業をしないなど、安全上の注意点を守りましょう。 癒合材 枝の切断面に塗布し、樹液の流出や細菌の侵入を防ぎます。 キンモクセイの剪定する枝を知りたい 剪定で大切なのは、切るべき枝を知ることです。ここでは、切ってもよい枝の特徴を解説します。 邪魔な枝 高く伸びた枝、横に広がる枝、混み合っている枝は、伸びて葉が茂ると株の内側の日あたりや風通しを悪くします。枝の付け根から切り取ります。 不要な枝(不要枝、忌み枝) 枯れた枝、折れた枝、病害虫の被害を受けた枝などの不要な枝を紹介します。 からみ枝、交差枝:ほかの枝と交差して伸びる枝ふところ枝(内向枝):内向きに伸びる枝立枝:真っすぐ立ち上がって伸びる枝平行枝:隣接して同じ方向に伸びる枝下り枝:下向きに伸びる枝車枝:一カ所から放射状にたくさん出る枝。 その他、胴吹き、ひこばえ、細く貧弱な枝など。 これら不要枝は樹形を乱し、葉が混み合う原因となります。付け根から間引くように切り取ります。 先端のみ葉がついた細く弱い枝は剪定する 古くなった主枝 その木の骨格をつくる枝を主枝といいます。5年以上たって古くなった主枝はもとの部分から切り取って新しい主枝に更新しましょう。その際に、切り取った部分に将来的に主枝になりうる程度の太さの枝が残るようにします。 徒長枝 節間が間延びして樹冠からはみ出すほど勢いよく伸びる枝です。切ってよい場合がほとんどですが、必要ならば途中まで切り戻して一部残し、後に不要になったら元から切る場合もあります。キンモクセイでは、樹冠から出ている枝を付け根から間引くか、切り詰めるようにしてください。徒長枝を剪定することで樹冠を整えます。 下枝 樹木の下部に生えた枝です。下枝を残しておくと茂り過ぎてしまい、風通しが悪くなります。付け根から間引くようにします。ただし、下枝を残した樹形にしたい場合はそのままでも問題ありません。 キンモクセイを剪定するときのコツ・注意点は? 上枝は深めに、下枝は軽めに キンモクセイは上部ほどよく伸びます。よって剪定するときは、上枝は深めに、下枝は軽めに刈り込むようにするとバランスのよい樹形を保てます。また、日光の当たる外側の部分は成長が早いため、枝の数を減らし、短くするとよいでしょう。 強剪定は枝枯れを起こす キンモクセイは強く刈り込むと、枝枯れを起こしてしまいます。元の状態に戻るのに数年かかることがあるので、強剪定は避けましょう。また、一度に強く刈り込まず、毎年少しずつ剪定して、樹形を整えるようにします。 枝は切っても葉は残す キンモクセイは一つの枝に葉を残さずに切り戻すとその枝は枯れてしまいます。剪定するときには、枝は切っても葉は残すようにしましょう。葉がきちんとついていれば、枝分かれした付け根から花を咲かせることができます。 剪定する位置は対生する葉の上 キンモクセイは枝から葉が対生(左右対称に葉や枝がつく)してつきます。このため、対生している部分のすぐ枝先で切ると、切り口が目立たず、枝先が枯れ込むこともありません。 剪定というと難しく感じてしまいますが、何度か行ううちにコツやポイントがつかめてきます。適期に剪定を行い、樹形を保ち、きれいな花を咲かせましょう。 キンモクセイの剪定でよくある失敗例 キンモクセイの剪定でよくある失敗例をご紹介します。 必要な枝を切ってしまう 花芽や新芽のついた枝は、基本的には残しておくべき枝です。切ってしまうと葉や花がつかず、寂しい見た目になってしまうことも。葉が少なくなりすぎると光合成が十分に行われず、木が弱るので注意しましょう。 強剪定をして枯れてしまう キンモクセイは枝枯れを起こしやすいため、強剪定には向かないとする見方もあります。強剪定とは、樹高や全体のシルエットを調節するために、枝葉を大幅に切り込むことです。枝枯れが進むと木が枯れてしまう恐れもあるので、安易に強剪定は行わないようにしましょう。 間引きをせず枝葉が過密になってしまう 鉢植えや盆栽でキンモクセイを育てる場合に起きがちな失敗例です。キンモクセイは、その性質から枝葉が交差するように伸びます。枝葉が過密になるとキンモクセイの成長に悪影響を与える恐れがあるので、定期的に間引き剪定を行いましょう。 キンモクセイの育て方 キンモクセイの育て方には、いくつかのポイントがあります。 用土 キンモクセイの用土は、水はけがよく、栄養豊富なものが適しています。鉢植えで育てるなら、赤玉土7、腐葉土3の配合で土を作っておきましょう。 育てる場所 温度管理にもコツがあります。キンモクセイは寒さに少し弱いので、地植えの際は北風が当たる場所や霜が下りる場所を避けましょう。日陰でも育ちますが、日なたや半日陰のほうが花つきがよくなります。 病害虫 キンモクセイはカイガラムシやハダニなどの害虫や、褐斑病、先葉枯病などの病気にかかる可能性があります。 病害虫を予防するためには、日当たりや風通しのよい場所に植えることが大切です。剪定の際には、枝葉の風通しにも留意しましょう。 また、根の生育も病害虫の予防と関係します。根詰まりを防ぐために、鉢の大きさや植え付ける際に掘る穴の大きさは十分にとることが大切です。 構成と文・さいとうりょうこ
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樹木
【注目のバラ】切り花で人気のバラが鉢もので登場!
名前に「カメレオン」とつく、切り花のかわいいバラたち 同じバラでも、ガーデンで育てるバラと花店に出回る切り花のバラでは、枝ぶりが違うことをご存じですよね。本来、バラは旺盛に分岐しながら育つのに対し、切り花では、枝分かれするスプレータイプのほか、1本の茎に花が1輪だけというスタンダードタイプがあります。花の美しさをより堪能できるように、1本につくつぼみに栄養を集中させるという切り花ならではの栽培法で育てられます。そして、土に根を下ろすバラと異なり、切り花が吸収できるのは水だけ。そんな状況でも、より長く楽しめるようにと、さまざまに改良され、花店に並んでいます。 (左)‘ベイビーカメレオン’。(右)‘ストロベリーカメレオン’。 そんな切り花のバラのなかから今回紹介するのは、人気品種「ベイビーカメレオン(写真左)」と「ストロベリーカメレオン(写真右)」。2022年の新品種として種苗会社「ロゼティークジャパン」から発表された品種です。 2品種とも、スタンダードとスプレーの2タイプ。切り花で、一般的な大輪のバラ品種はスプレーに仕立てると花が中輪程度と小ぶりになるのが通常です。そんななか、カメレオンシリーズのこの2品種は、スプレータイプでも大輪のまま。素敵な容姿に加え、ボリュームたっぷりに楽しめることも大きな魅力です。 (左)‘ベイビーカメレオン’の色の変化。(右)‘ストロベリーカメレオン’の色の変化。 でも、かわいいバラなのに、なぜ、品種名に「カメレオン」とつくのかと不思議に思いませんか? そう、色が変わるバラなんです。‘ベイビーカメレオン’は淡いピンクからグリーンへ、‘ストロベリーカメレオン’は艶やかなピンクから、しだいに白みを帯び、同じ花とは思えないほど、やわらかな表情へと変化。切り花では、とても珍しい特徴を持ったバラたちです。やさしい色みのベイビーと、ビビッドなストロベリー。ユニークな持ち味が鉢ものでは、さらにはっきりと、長く楽しめます。 花色の変化がより細やかに楽しめる「ベイビーカメレオン」 ‘ベイビーカメレオン’は花びらが厚く、鉢ものでは、一度咲かせると1カ月近く咲き続けるという特徴があります。そのため、色の変化は、より細やか。淡いピンクからクリーム、そして最後には美しいグリーンに。こんなふうに楽しめるバラは、なかなかありません。 花もちがよく、花形もとても愛らしい丸みを帯びたカップ咲きです。ティー香の微香もあり、花形・色・香りどれも楽しめる新しいバラです。 豊かな香りでトゲも少ない「ストロベリーカメレオン」 さて、もうひとつの‘ストロベリーカメレオン’とは、どんなバラでしょう。 ‘ベイビーカメレオン’と同じく花形はカップ咲き。名前のとおり、愛らしいピンクの花色を持ち、つぼみが開いたときにはハッピーな気持ちになれそうです。佇まいだけでも魅力的ですが、うれしいことに香り(ティー香)も楽しめる品種です。 香りが豊かなバラというと、花の寿命が短く、日持ちの点では目をつぶらないといけないことも多くありました。ですが、この‘ストロベリーカメレオン’は、従来の思い込みを覆すほど、花を長く楽しめます。そして、トゲが少ないことも、育てるうえでは大きな魅力の一つといえそうです。 切り花と鉢ものの2大看板がタッグを組んで 切り花のバラの種苗が中心の「ロゼティークジャパン」が魅力あるこの2品種を鉢ものとして商品化させるために、タッグを組んだのは岐阜県の「セントラルローズ」です。ミニバラ鉢において、国内シェア№1の生産者。ガーデニング好きの方には、よく知られていますね。 ‘ベイビーカメレオン’と‘ストロベリーカメレオン’は鉢ものになって、さらにたくさんのつぼみをつけるバラになりました。健康のバロメーターである葉も厚く、生き生きとしています。 上の写真は出荷を待つバラたちの様子。バラの旬の時期には、こんなふうに、花びらが色づいてから市場へ送り出されます。 しっかりと丁寧に育てられたバラに、リサイクルプラスチックを使用した高級感のある鉢を合わせることで、胡蝶蘭のように、ギフトとしても満足できるクオリティを完成させました。鉢のサイズは6号、7号、8号のバリエーションで、2024年12月に、本格的な流通がスタートします。 花時間マルシェで先行販売中! 本格的な販売前に、この春、少量のみ先行販売されることになりました。花のある暮らしを提唱して30年以上の歴史をもつ花の総合メディア『花時間』が運営する「花時間マルシェ」では、5月9日(木)から5月23日(木)の期間のお届けで、「ベイビーカメレオン」「ストロベリーカメレオン」の6号鉢を数量限定で販売中です。自分用にベランダやお庭で育てて楽しむほか、母の日やバラ好きの人へのギフトとして贈るのもおすすめです。
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アレンジ
100均の手芸用品で作る「オリジナルのエッグスタンド」 プチプラ花コーデVol.110
身近にあるもので楽しみたい、イースターの花飾り 毎年、イースターの時期にはイースターをテーマにした花飾りを楽しんでいます。 イースターは、イエス・キリストの復活と春の訪れをお祝いする行事です。卵やうさぎのモチーフはかわいらしく、パステルカラーやポップな色使いは明るく楽しい気持ちになることから、日本での認知度も年々上がっています。 2023年のイースターは4月9日。ちょうど長い冬が終わり、さまざまな花が咲き始める頃です。切り花を飾ることやベランダのガーデニングがますます楽しみになる時期でもあります。 今回はイースターにちなんで、花苗と家にある卵を活用して楽しんでみました。 手芸用品コーナーで、エッグスタンドの材料を発見 ダイソーで購入したのは、手芸コーナーにあったミシン糸、それからウッドボウルです。ウッドボウルは「ピンクッションや木工クラフトに」と書かれていました。このウッドボウルは、卵を入れるのにちょうどいいサイズ! ダイソーで見つけた瞬間にそう思い、手に取りました。 他にリボン、生卵は家にあったものです。卵は10個入りで200円でした。 リボンはサテンで水色から白のグラデーション。少量なので、ちょっとした時に使いやすくていいですね。 ウッドボウルは2つ購入です。 1つはそのまま使い、もう1つはエッグスタンドにしてみます。 花色に合わせる、エッグスタンド作りのポイント ①ミシン糸は青系がなかったので、水色のリボンを糸の上に巻いて、セロハンテープで留めました。 少し前に購入した青色のワスレナグサの花苗を、イースターのアレンジに使いたかったので、リボンは青系をチョイスしました。 ②木工用接着剤を用意し、ミシン糸に付けます。 その上にウッドボウルを乗せてしばらく置き、接着させてエッグスタンドにします。 ③卵は上のほうを割り、中身を取り出してから水でしっかりとすすぎました。中のぬめりも洗って取り除きます。 取り出した中身は、夜ご飯のおかずになりました。 きれいになった卵の殻の中に水を入れて、作ったエッグスタンドに乗せます。 ウッドボウルと卵が、ジャストサイズでした! プチプラが嬉しい! 花苗のアレンジ活用術 ベランダの小さなスペースで楽しんでいるガーデニング。1つ鉢があいていたので、近くの園芸店でワスレナグサの花苗を買いました。1ポット100円です。 白、ピンク、青の花苗が売られていて、青を選びました。 ワスレナグサの苗の状態を確認しながら、花の茎がなるべく長くなるようにカットしていきます。 密集していた花苗は、花をカットしてもまだまだモリモリしていました。このあとすぐに、鉢に植え替えました。これから花を咲かせてくれるのが楽しみです。 飾るためにカットしたワスレナグサは、茎の下についている葉を落とします。 葉を落としたら、エッグスタンドの卵の中に入れました♪ 卵の中に小さなワスレナグサの花が入ると、かわいさが倍増しますね! バランスも卵にぴったり。 切り花でも出回るワスレナグサ。卵に飾るなら花苗の長さでちょうどよかったです。何よりプチプラなのが嬉しいですね。 カラーシールで、もっとポップにかわいらしく アレンジが終わったものの、なんとなく何か物足りない…と思い、以前セリアで買った丸いカラーシールを用意しました。 これを卵の殻に貼っていきます。 花色に合わせた水色と、ヒヨコの色の黄色を使い、全体的にポップに仕上げました。 完成です♪ ワスレナグサの小さな花にキュンとします。 私はいつも玄関に、季節の花を飾ってお客さまをお迎えしています。イースターの時期は生卵を使って花を飾ることが多く、お客さまに「本物の卵ですか⁈」と聞かれ、会話が弾みます。 今回の材料をご紹介 ワスレナグサ(苗)…100円生卵…20円×2ウッドボウル…100円×2*ダイソーミシン糸…100円*ダイソーリボン…100円*ダイソーカラーシール…100円*セリア 合計640円(税抜き) ほかに、ハサミと木工用接着剤を用意。 イースターエッグとビオラの相性も抜群! 今年もベランダで、パンジーやビオラを育てては花を摘んで、部屋に飾って楽しんでいます。 イースターエッグのアレンジにもパンジーやビオラは相性抜群♪ 今年植えたばかりのビオラも、一緒に合わせてみました。 小さな卵にビオラもサイズがぴったり。華やかになりますね! しばらくの間はワスレナグサやビオラを卵の殻に飾って楽しもうと思います。
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おすすめ植物(その他)
知りたい! バラの種類や品種、それぞれの特徴と見分け方
バラってどんな花? まずは、バラについて基本的なことをチェックしておきましょう。 バラの基本データ学名:Rosa科名:バラ科属名:バラ属原産地:ヨーロッパ、北アメリカ、アジア和名:バラ(バラ、ソウビ、ショウビ)英名:Rose開花期:5~11月切り花の出回り時期:周年花色:赤、ピンク、オレンジ、黄、白、紫、緑、茶、複色 原種バラの生まれ故郷と、バラの歴史 ふだん何気なく使っているバラという名前。これはバラ科バラ属の総称。「イバラ」の「い」が抜けた言葉。古くは万葉集にバラを指す「うまら」が登場。「うばら」「むばら」、また、「薔薇(そうび)」いう言葉も使われました。つまり「バラ」とは、日本古来または中国から渡来したバラを指す言葉。日本にはノバラ、ハマナスをはじめ、もともと原種のバラがあります。 ノバラ(ノイバラ) 学名はRosa(ロサ)、英語ではRose(ローズ)。バラの原種はヨーロッパからアジアにかけて広く分布しています。このバラの世界に多大な貢献をしたのが、18世紀末から19世紀初めに活躍した、皇帝ナポレオンの妻・皇后ジョゼフィーヌ。バラを愛し、世界のバラをパリ郊外のマルメゾン宮殿の庭に集めます。中国や日本のバラも含め、その数は300種に及んだといいます。 ジョゼフィーヌのバラ好きは収集に収まらず、さらに、収集したバラを使って、専門の園芸家に交配育種を行わせます。宮殿内にバラ園を造り、つぎつぎに新しい品種を作り出しました。ジョゼフィーヌの没後も新しいバラの作出は続き、19世紀半ばまでに3000種を超えたといわれています。この大きな功績から、ジョゼフィーヌは「バラのパトロン」と称賛されています。 1867年フランスで、大輪の四季咲きの性質をもつ画期的なバラ、ラ・フランスが誕生します。このバラ以降に誕生したバラはモダンローズ(現代バラ)と呼ばれ、それ以前の園芸品種はオールドローズと呼ばれます。四季咲き性をもつモダンローズが誕生すると、バラは1年に何度も楽しめる花になります。庭に咲いたバラを、摘み取って部屋のなかで楽しむ人たちも増えたことでしょう。バラは多くの人たちに愛され、新しい品種がつぎつぎに誕生するような人気の花になっていきました。 ラ・フランス 切り花のバラと、ガーデン用のバラ。違いと特徴が知りたい 現在、バラ園やガーデンセンター、花屋さんなどで、多種多彩なバラを見ること、買うことができます。ただし、バラ園で見たお気に入りのバラを、すぐに切り花で買い求めることができません。なぜなら、さまざまなバラはその性質によって、ガーデン用と切り花用に分けられているのです。 ガーデン用のバラ ガーデン用のバラは、おもに庭や鉢植えで楽しむ一般の愛好者向けのバラ。バラ初心者が育てやすい丈夫な品種も、放っておくときれいなバラが咲かないテクニックが必要な上級者向けの品種もあります。 切り花の生産目的ではないため、春しか咲かない一季咲き、春以外はあまり咲かない返り咲きなども含まれています。つまり、原種のバラやオールドローズの系統も含まれています。花数は少ないけれど、花色や花形がとても美しく、香りが深いバラならば、それはまた魅力的なバラのひとつです。ただし、そういう品種はガーデン用。切り花で出回ることは、おそらくありません。 切り花用のバラ いっぽう、切り花用のバラは、プロの生産者向け。つまり、切り花生産者のためのバラ。一般には出回りません。ハウス栽培で加温すれば、1年中花を咲かせる四季咲き性の生産性のいいバラです。 真夏は日差しが強く、気温も高いので、そんな時期にも花色が変わりにくく、花の大きさが変わりにくい性質が求められ、丈夫で病気になりにくいことはいうまでもありません。ただし、生産のプロが手がけるバラですから、なかには少々育てにくい性質でも、花が魅力的ということで切り花用になったバラもあるそうです。 切り花で出回るバラのタイプ その切り花で出回るバラには、1本に大きな1輪が咲くスタンダードタイプと、小輪がたくさんつくスプレータイプがあります。スタンダードタイプには、巨大輪から、大輪、中大輪、中輪までサイズがあります。スプレーバラにはスタンダードバラの中輪ぐらいの大きさの花をいくつもつける品種もあり、花の大きさはさまざまです。 チェリーアヴァランチェ+ 1本の茎に1輪ずつ咲くスタンダードタイプ。 バンビーナスポット たくさんの花がつくスプレータイプ。 日本で生産される切り花のベスト3は、キク、ユリ、そしてバラ 今、店先にバラが並んでいない花屋さんは珍しいかもしれません。花屋さんにギフトを買い求める人は、バラも加えて、バラは必ず入れてほしい、バラを中心に、バラと季節の花を合わせて…など、バラをギフトとして贈りたいと注文する人がとても多いそうです。選ばれるからこそ、花屋さんに多種多彩なバラが並んでいるわけです。 そういわれているバラですが、実際にどれほど人気があるのか、政府統計の平成28年(2016年)産花きの生産状況を調べてみました。 それによると、日本の切り花の産出(出荷)額は2152億円です。そのうち1位のキクは680億円、2位のユリは217億円、バラは3位で180億円にのぼります。ちなみに、4位のトルコギキョウは120億円、5位のカーネーションは117億円と続きます。 キクは葬儀需要、仏花としての需要が非常に高い花です。ユリも同様の需要が多い花ですから、ギフト用、家庭用のバラの人気の高さがうかがえます。 バラの多彩な花色と花形。人気品種の画像一覧 切り花用の品種、ガーデン用の品種。バラにはふたつのタイプがあることを紹介しました。それぞれ特徴がありますが、ここからは切り花のバラについて詳しくお話します。 ◆バラのカラーバリエーション◆ ピンク系 切り花のバラのうち、圧倒的に多いのがこの色です。ひとことでピンクといっても、品種が多いだけに色幅がとても広く、淡い色から濃いものまでさまざま。バラを表現するのにもっともふさわしいローズ色もピンク系のひとつです。 アートリークローズ プライムチャーム+ みさきなでしこ 赤系 ベルベットのような光沢をもつものから、朱色がかったものまであり、上品で華やかな印象の色。愛の告白やクリスマスにと、スペシャルな日、フォーマルなシーンに欠かせません。 ガーネットジェム ブリランテ ルージュリアン オレンジ系・アプリコット系 はつらつとしたビタミンカラーは夏に、また、実りや紅葉を連想させる秋にもふさわしい色。アプリコット系はロマンティックな雰囲気があり、四季を通じて人気は上昇中です。 カラルナ 杏 黄系 夏は花色が薄くなる品種が多かったため、鮮明な黄色できりっと咲くバラが追求されてきましたが、最近では、やさしく淡い黄色の品種が人気を得ています。 ルミナス 風月 白系 冠婚葬祭に使われるため、特に春と秋のブライダルシーズンには引っ張りだこ。流通量も多い花色です。特に咲き始めは、緑色やクリーム色を含んでいることが多いようです。 ジョリフィーユ ピースオブマイハート 紫系 上品な色が人気です。シルバー系と呼ばれる赤みの抜けた薄い花色、藤色、濃色の赤紫などのバリエーションがあります。バイオテクノロジーの技術で青色の開発も実現しました。 ガブリエル ヤギパープル 茶系 ニュアンスがある色合いが多く、落ち着いた印象。品種数は多くはありませんが、秋にはハロウィンなどのイベント用、紅葉をイメージするアレンジなどによく使われます。 ジュリア ルールマジク 複色系 花びらに縁取りがあるもの、絞り模様が入るものなどです。花の中に2つ以上の色があるのが特徴です。 センテッドジュエル ◆人気の花形◆ 切り花のバラは、2000年代にイングリッシュローズの人気が沸騰するまで、長い間剣弁高芯咲きの整った花形が主流でした。イングリッシュローズとは、イギリス人育種家デビッド・オースチン氏が手がけたこのブランドバラ。四季咲き性が強く、大輪で芳香の花を咲かせながら、花形はまるでオールドローズのようなカップ咲きやロゼット咲き。アンブリッジローズなどのやさしい花形に魅了された人たちが、切り花にも求めたため、日本のバラ生産者や育種家もカップ咲き、ロゼット咲きのバラを作り出すようになり、現在、多種多様な花形のバラが楽しめるようになりました。 アンブリッジローズ また、最近では花びら全体にフリルが入るタイプ、花の中心に緑色のしべが目立つ斬新な花形も人気を呼んでいます。 キャロットオレンジ+ ラロック シュエルヴァーズ 以下は2015年の東京の大田市場の卸業者と仲卸業者、世田谷市場の仲卸業者における人気品種トップ5です。 大田市場 人気品種トップ5 1位 アヴァランチェ+ 2位 サムライ08 3位 イブピアッチェ 4位 スウィートアヴァランチェ+ 5位 カルピディーム+ 世田谷市場 人気品種トップ5 1位 アヴァランチェ+ 2位 サムライ08 3位 アマダ+ 4位 スウィートアヴァランチェ+ と カルピディーム+ バラといえば香り。香りのいい切り花品種 もともとバラといえば香りのいい花の代名詞。ローズガーデンで出合うバラは香り高い品種が多いのに、なぜか切り花のバラは香りでは劣る…。そう感じる人は少なくないでしょう。なぜなら、摘み取ってから花が長くもつバラは、長い間咲き続けることに力を注ぎ、香りにエネルギーを使うことができません。花もちのよさを長い間追求した品種改良によって、切り花には香りのあるバラが少なくなっていったのです。とはいっても、やはりバラには香りがほしいものですね。花もちがよくて、香りも高いバラがあったら…。さらに品種改良を重ねることで、そんな贅沢な要望が実現。香りのよさと、花もちのよさを兼ね備えた品種が数多く出回っています。 トワパルファム 切り花でも、ガーデンでも楽しめる品種 多様化した切り花のバラ。切り花で活躍するガーデン用の品種もあります。 ガーデン用から切り花用になったバラもあります。代表ともいえるひとつがイブピアッチェ。もともとガーデン用のバラでしたが、魅力的な青みがかった濃いピンクの花色、深い香りのバラは、切り花で人気が沸騰。もっとも人気の高いバラのひとつになりました。 そのほか、古くはマダムヴィオレがあり、ルージュロワイヤル、ラ・マリエ、ガブリエル、KIZUNA、最近人気のパリスなどは、切り花、ガーデンの両方で楽しめるバラです。 マダムヴィオレ ラ・マリエ KIZUNA パリス また、イングリッシュローズは、ガーデン用のバラ。散り落ちる姿まで楽しむための、一気に花びらを散らす性質があり、花もちのよさは兼ね備えていませんでした。そこで、デビッド・オースチン・ロージズ社は、花もちのいい切り花専用のバラを発表します。それが、ジュリエット、テス、ダーシー、キーラ、シンベリン、キャリー、エディスなど。どれも花もちがよく、香りも深い大輪ばかりです。 キャリー エディス ジュリエット
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宿根草・多年草
ユリの種類や品種、それぞれの特徴と見分け方
ユリってどんな花? すらりとした茎に、つんと横を向いたり、上を向いたりして咲く大輪。まずは、ユリについて、基本的なことを知っておきましょう。 ユリの基本データ学名:Lilium科名:ユリ科属名:ユリ属原産地:北半球の亜熱帯~亜寒帯和名:百合(ユリ)英名:Lily開花期:5~8月花色:赤、ピンク、オレンジ、黄、白、緑、茶、複色花言葉:威厳、純潔、無垢 ユリの原種は北半球に約100種類が分布します。そのうち15種が日本に自生。ヤマユリ、ササユリ、オトメユリ、テッポウユリなど、美しい花が多いことが世界に知られています。 ヨーロッパにも十数種の原種が分布し、代表的なニワシロユリは、別名マドンナリリーと呼ばれ、キリスト教の宗教絵画によく登場しました(のちに、日本のテッポウユリがマドンナリリーの名を冠されることになります)。白ユリは聖母マリアの純潔の象徴として描かれてきました。 日本では、ユリは本来、初夏~夏にかけて咲く球根の花。そのため、オトメユリ、ササユリなどの原種は、自然開花する夏のいっときだけ切り花用の花材として出回ります。いっぽう、夏以外にも出回るのは、品種改良された園芸品種。花色も種類も豊富です。 花のつくり ひときわ大きな花を咲かせるユリ。はっきりしている花のつくりを、確かめてみましょう。 花花びらは6枚あるように見えますが、外側にある3枚はがくで、外花被と呼びます。内側の3枚が本来の花びらで、内花被です。花は上向き、横向き、下向きがあります。 中央にはめしべは1本、その周りに雄しべが6本。雄しべの先にある葯のなかから、花粉が出ます。 1本に複数花がつくものは、下から上へ、または外側から内側へ咲き進みます。 花びらは厚みがあり、しっかりしていますが、傷がつきやすいので扱いには注意しましょう。 葉葉は互生、または輪生します。 茎真っすぐに伸びます。しっかりしていますが、折れやすいので扱いには注意が必要です。 ユリを購入するとき、扱うときの注意点 開花したユリを購入すると、花粉を取り除いてあります。花粉は花びらを汚すため、つぼみが開いたら、その都度取り除きましょう。洋服についてもと落ちにくいので、注意が必要ですね。 ユリは本来夏に咲く花なので、初夏に近づくと出回る品種の数、量ともに多くなり、価格的にも手に取りやすくなります。一般的な花の持ちが悪くなる夏場に花もちがいいため、特に夏のあしらいに重宝します。ただし、暑い場所は早く咲き進むので、長く楽しむことを考えると、やはり涼しい場所に飾った方がいいですね。また、寒い時期に飾ると、夏ほどの花もちは望めません。 つぼみの状態で出回ることもあるので、開花したときの花色を確認してから購入するといいでしょう。色づいたつぼみはほとんど咲きますが、色づく前の緑色の堅く閉じたつぼみは開きません。咲くつぼみに栄養を回すために、いける前に摘んでおくといいですね。 葉の処理は、水に浸かって水を汚すものは取り除きます。花の近くにつく葉も取り除いてあげると、花がはっきりして引き立ちます。 日本は野生ユリの宝庫、そのユリたちがたどった道のり 今やさまざまな花色や種類の園芸品種が揃うユリ。堂々と咲く花は、豪華なアレンジに欠かせませんが、かつてユリは日本の野山の風景に溶け込んで咲いていた、野性味漂う花でした。日本の野生ユリが歩んできた道をたどってみましょう。 江戸末期、日本の野生ユリがヨーロッパへ 世界にユリの原種は約100種ありますが、15種類が日本の自生種です。しかも、日本は美しい野生ユリの宝庫。ヤマユリ、カノコユリ、オトメユリ、ササユリ、テッポウユリなど、野生種とは思えない美しさです。 古くは『古事記』『日本書紀』にも登場し、奈良時代には歌にも多く詠まれました。園芸が大流行した江戸時代には、園芸品種のスカシユリが百数十品種も誕生。ユリは日本人に愛されてきました。 そんなユリを江戸時代の末期、アジサイなどの植物と一緒にヨーロッパに持ち帰ったのが、かのドイツ人医師シーボルトでした。カノコユリ、テッポウユリ、スカシユリなどの球根が海を渡りました。チューリップの球根1球が高級邸宅の価格に匹敵した、17世紀前半のチューリップ狂時代には及びませんが、カノコユリは宝石のルビーに例えられ、同じ重さの銀と同等の価格で取引されたとか。 ‟日本のユリは際立って美しい”と言われ、人気を呼びました。 日本の経済を支えたヤマユリ、テッポウユリ 江戸末期には、早くも外国人商館によるユリの球根貿易が始まります。横浜や静岡周辺の山で採取されたヤマユリ、ササユリ、オニユリなどが、横浜港から輸出されました。 明治に入ると日本人による貿易会社が誕生。ユリを描いた海外向けのカタログを制作し、種類豊富な日本のユリを紹介しました。明治時代の末、輸出球根の筆頭はヤマユリからテッポウユリに代わり1937年にピークを迎えます。全種類で4千万球以上を輸出し、世界のユリ需要の90%を日本のユリが占めたほど。ユリは生糸に迫る外貨獲得の花形になり、“ユリで軍艦を造った”といわれるほど日本の経済力、国力に影響を及ぼす存在となりました。 品種改良のもとになった日本の野生ユリ 日本の野生種で品種改良 ヨーロッパに分布していた十数種のユリのうち、聖母マリアの純潔の象徴だったニワシロユリ、別名マドンナリリーさえ、日本のテッポウユリに取って代わられます。アメリカでも、日本のテッポウユリがイースターリリーと称されるようになるのです。 ヨーロッパで代表的なユリ、ニワシロユリの園芸品種。 こうして日本の美しいユリが世界を席巻。やがて日本の原種は品種改良に使われていくわけです。 19世紀後半から、中国のユリを加え、育種が始まります。日本のヤマユリとカノコユリを交配し、1864年にはオリエンタルハイブリッド第1号が誕生。品種改良は近縁の種同士でないと難しいため、結局ヨーロッパのユリは使われず、アジアのユリ同士が親に選ばれ、品種改良が進んでいくことになりました。 日本の原種ユリの種類と特徴、見分け方 日本の原種のなかには、初夏~夏のそれぞれ開花時期に、希少ですが切り花で出回るものもあります。日本の代表的な原種ユリの特徴をご紹介しましょう。 オリエンタルユリ(O) アジアンテックユリ(A) ロンギフローラムユリ(L) 日本の原種は以上の3系統に分けられます。 オリエンタルユリ(O) 本州原産のユリ。大輪で反り返った花びら、長いしべが特徴。うつむいて咲くエレガントな雰囲気。花色は白~ピンクで、芳香があります。 ヤマユリ 白い花びらに黄色の筋と赤い斑点が入る大輪。強い芳香があります。 ササユリ 色はピンク~白。名前は葉の形が笹に似ていることに由来。 カノコユリ 花色は紅、ピンク、白。鹿の子絞りのような斑点模様と、反り返る花形が特徴。 オトメユリ 別名ヒメサユリ。横向きに咲く可憐な花はピンク~白。山形、福島、新潟に自生。 アジアンティックユリ(A) 反り返るように花びらが開き、黄色、オレンジ系が中心。香りはありません。 エゾスカシユリ 花名は花びらの間から向こうが見える花形に由来。北海道、中国、樺太などに自生。 ヒメユリ 朱色の小輪で、上を向いて開花。黄色いキヒメユリもあります。 オニユリ 花色は朱赤で、暗紫色の斑点があります。花びらが反り返り、下を向いて咲きます。1本にたくさんの花がつきます。 ロンギフローラムユリ(L) テッポウユリ、タカサゴユリなど。筒形またはラッパ形の純白の花。 テッポウユリ 沖縄県・伊江島の海岸線付近に咲く野生のテッポウユリ。協力:沖縄県伊江村 横向きや斜め上に向く純白の花。奄美、沖縄地方に自生。やさしい芳香が特徴。 画像一覧つき! ユリの系統と人気の園芸品種 現在、オランダを中心にアメリカ、ニュージーランド、日本などで品種改良が進むユリ。それらは交配に使ったユリの系統と、その組み合わせで分類されています。1970年代後半に登場したカサブランカは、ユリを和から洋へイメージチェンジさせた画期的な大輪でした。以来変わらず人気を誇り、今でもカサブランカと品種名で呼ばれる唯一のユリです。 ユリの園芸品種のうち、切り花がよく出回るのはおもにつぎの5系統。花屋さんによく出回る系統なので、出合ったらぜひ、手に取ってみてください。 オリエンタルハイブリッド(OH) アジアンティックハイブリッド(AH) ロンギフローラムハイブリッド(LH) ロンギフローラム・アジアンティックハイブリッド(LA) オリエンタル・トランペットハイブリッド(OT) オリエンタルハイブリッド(OH) オリエンタルユリ(O)同士を交配した品種。大輪で香りが強いものが多く、花色はおもに白、ピンク。ここ10年でボリュームのある八重咲き品種が出回るようになりました。 マルコポーロ 長く愛されている品種。弁端にフリルが入り、淡いピンクの花びらには赤い斑点があります。上を向いて咲く大輪。 イザベラ ピンクの花びらには赤い斑点があるイザベラ。花びらはしっかりしていてよく開いて咲き、とても豪華。 シアラ 濃いピンク色の迫力がある八重咲き。 アジアンティックハイブリッド(AH) アジアンティックユリ(A)同士を交配した品種。小ぶりで花色も品種も豊富。香りはありません。花店ではスカシと呼ばれています。 ランディーニ 赤黒いシックな花色の代表的な品種。長く親しまれています。 ロンギフローラムハイブリッド(LH) テッポウユリや台湾のタカサゴユリを交配した品種。上品な花形、やさしい芳香は冠婚葬祭でもっともよく使われます。 自生地、沖縄県伊江島のリリーフィールド公園のテッポウユリ(ジョージア)。4月末~5月初旬、毎年伊江島ゆり祭りが開催されます。協力:沖縄県国頭群伊江村 ロンギフローラム・アジアンティックハイブリッド(LA) アジアンティックハイブリッドとロンギフローラムハイブリッドを交配した品種。花は大きめで花色が多彩。今この系統がもっと多く出回っています。 クーリエ 白または淡いクリーム色に、焦げ茶色の葯がシックなクーリエ。上を向いて咲きます。 オリエンタル・トランペットハイブリッド(OT) ヤマユリと中国のリーガルリリー(トランペットユリ)を交配した品種。大輪で、オリエンタルハイブリッドにない黄色系が多い。 リーガルリリー トランペット系に分類される中国の原種。美しい花形と栽培しやすさで、交配の親に使われました。 コンカドール 大輪のコンカドールは、中心は明るいレモンイエロー~黄色。弁端は白くなるグラデーション。雌しべも雄しべも黒っぽい。 イエローウィン クリアな黄色のイエローウィン。大輪ですが、つぼみからの開花が早いのが特徴。数輪ずつつぼみはつきます。
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宿根草・多年草
知りたい!シャクヤクの種類や品種、それぞれの特徴と見分け方
シャクヤクの花の、特徴と種類が知りたい! シャクヤクは華やかな姿と芳しさで、年々、人気が高まっています。美人のたとえ、「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」と、古くから慣れ親しまれている花でもありますね。まずは、シャクヤクについて、基本的なことを知っておきましょう。 ■シャクヤクの基本データ 学名:Paeonia lactiflora 科名:ボタン科 属名:ボタン属 原産地:中国、朝鮮半島など 和名:芍薬(シャクヤク) 英名:chinese peony 開花期:5~6月 切り花の出回り時期:4~6月 花色:ピンク、赤、オレンジ、黄色、白 花もち:5~7日 私たちが切り花や園芸で慣れ親しんでいるシャクヤクは、大別すると、ふたつのグループがあります。それは、日本生まれの「和シャクヤク(和シャク)」と、フランスを中心としたヨーロッパで誕生した「洋シャクヤク(洋シャク)」です。 おおもとをたどると、いずれもアジア大陸北東部に行きつきます。原産地とされるのは、中国東北部から朝鮮半島、シベリアにかけた一帯です。中国では紀元前から薬草や観賞用として栽培されていたそう。 和シャクヤクの歴史と特徴 そんなシャクヤクが渡来したのは、平安時代以前とする説があります。ただ、当時は漢方薬の材料としての渡来だったのかもしれません。シャクヤクの根は今でも、葛根湯などの材料になっています。中国原産のシャクヤクが観賞用として盛んに栽培され始めたのは安土桃山時代。その後、戦乱の世を経て、さまざまな文化が花開いた江戸時代。園芸の技術がさらに進み、茶席に飾る茶花として、100を超える品種が生まれました。なかでも、肥後藩(今の熊本県)では武士のたしなみとして園芸を推奨し、シャクヤクの品種改良に力を注いだとか。それが肥後芍薬。後世、ツバキやキク、朝顔と並び、「肥後六花」とうたわれるようになりました。 参考までに、肥後芍薬はこんな花↓。江戸時代から明治時代にかけて、数多くの品種が生まれました。 育種が本格的に行われるようになったのは、明治時代以降。神奈川県の農事試験場で育種が進められ、昭和初期には、なんと700種もの新たなシャクヤクが発表されたそうです! 美しいシャクヤクを作り出そうとする熱意が伝わりますね。 前述の「肥後芍薬」を合わせ、こうして誕生した日本生まれのシャクヤクは「和シャクヤク(和シャク)」と呼ばれ、ひと重咲きや、内側に小さな花弁をぎっしりと抱える翁(おきな)咲きなど、風情のある花形のものが多く見受けられます。このほか、日本には以下の野生種があります。 ヤマシャクヤク 本州、四国、九州および朝鮮半島に分布し、山地や深い山に。白い五弁の花びらの内側に、黄色い葯(やく)を抱えているのが特徴です。花後には、結実すると中の種子がザクロのようにはぜるそう。山野草専門店でも入手可能。 ベニバナヤマシャクヤク 北海道から九州まで広く分布しています。花色はピンク。ヤマシャクヤクと花形はよく似ていますが、別種のようです。こちらも山野草として流通。 洋シャクヤクの歴史と特徴 ヨーロッパでは、フランスやオランダなどに原種のシャクヤクがありましたが、本格的に普及したのは中国のシャクヤクが18世紀にもたらされて以降。英国の王立植物園「キューガーデン」にコレクションされ、19世紀には精力的に品種改良が進められたそうです。当時のシャクヤクの様子は、モネやルノワールらが残した絵画からもうかがい知ることができます。 和シャクヤクと洋シャクヤク、それぞれの特徴は? では、咲き方に違いはあるものでしょうか? 日本生まれの「和シャクヤク」は、ひと重咲きや、内側に小さな花弁をぎっしりと抱える翁(おきな)咲きなど、風情のある花形のものが多く見受けられます。それに対して、ヨーロッパで改良された「洋シャクヤク」には、バラ咲きなどの、花弁数が多く、とても豪華な咲き方が多いようです。洋シャクヤクは香りも華やか。 写真を見くらべてみましょう。日本とヨーロッパ、それぞれに好みを姿に反映しての違いでしょうか。 和シャクヤク・ひと重咲き(コーラルキング) 和シャクヤク・翁咲き(富士) 洋シャクヤク・バラ咲き(サラベルナール) 画像一覧つき! シャクヤクの人気品種 基礎知識をマスターしたところで、切り花として花屋さんに並ぶシャクヤクの種類について紹介しましょう。切り花シャクヤクの代表的な産地は、長野県と新潟県の山間部。本来の旬よりも早く咲くハウス栽培の花と、5月中旬から6月中旬までの露地栽培の花を組み合わせ、4~6月に渡って出荷できる体制にあるそうです。洋シャクヤクが導入されたことで、品種数も増加。近年では、ボタンとの交配種や珍しい黄色系の品種も生まれています。 ひと重咲き アメリカ コーラルキング 翁咲き レッドチャーム 富士 バラ咲き ルーズベルト 深山の雪 コーラルチャーム 滝の粧 サラベルナール ぱっと広げた、手のひらよりも大きな超大輪品種もあります! それは以下のシャクヤク姫。豪雪地、新潟・魚沼で生まれる花たちです。 白雪姫 かぐや姫 最近では、絞り模様のバラ咲き品種などフォトジェニックなシャクヤクも登場しています。ますます目の離せない花、シャクヤクですね! シャクヤクとボタンの見分け方は、葉に注目です ところで、シャクヤクとボタンは、あまりに似ていて、紛らわしいと思っていたはずです。それもそのはず、同じ「ボタン科ボタン属」。花びらの形や質感、ボリューム感たっぷりに重なる様子までよく似通う花同士です。 でもね、大きな違いがあるんです。シャクヤクは「草」で、ボタンが「木」だということ。それを踏まえると、以下のような違いがあります。シャクヤクは「宿根草」のため、冬には、根だけを残してすべて枯れます。新芽が生まれるのは春。余談ですが、木にならない草本植物のため、別名を「草牡丹」。ボタンは落葉低木。冬には茎だけの状態で越冬し、春になるとその茎に新芽が生まれます。幹は年々、太くなります。 そして、このふたつの花は、葉の様子がまるで異なります! 上の写真を見て。シャクヤクの葉は、枝先に三枚の葉がつく複葉。丸みを帯びて、つやつやと光沢があります。触ってみると、厚みもあります。 一方、ボタンの葉は同じ複葉でも、1枚ずつに切れ込みがあり、光沢はありません。色は白く曇った緑色です。シャクヤクと比べると、厚さもありません。 開花の時期も少し前後します。先に咲くのはボタンで、4月下旬~5月初め。シャクヤクは、5月初旬~5月下旬です。気候変動の激しい昨今ですから、思いのほか早く咲いた、なんてこともありますが…。咲きたてのみずみずしさを愛でたいなら、こまめに花屋さんをチェックしたいものですね。 きれいなシャクヤクの切り花を楽しむために さて、最後に、切り花シャクヤクの上手な選び方も覚えておきましょう。肝心なのは「少しでも、花びらが開いたシャクヤク」を選ぶこと! 花はつぼみを開くとき、とても多くのエネルギーを消費します。その段階で体力を使っては、咲いたあと、息切れ状態に…。当然、花のもちは短くなります。シャクヤクも例外ではありませんよ! 硬いつぼみで買うと、開かずに終わったり、咲いても日もちがよくなかったりと残念なこともあるようです。花びらが黒ずんでいたり、縮れていたりするつぼみは、すでに弱っていて、花が開かない可能性があるので、ご注意を。 もしも、つぼみで買った場合は、水切りをする前に、水につぼみを入れて、やさしく洗ってあげましょう。花びらについている蜜がとれ、花びらが開きやすくなります。 シャクヤクの季節をおおいに楽しみましょうね! Credit 記事協力 花・深野俊幸(カントリーハーベスト) 撮影・中野博安 構成と文・鈴木清子
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樹木
マーガレットに託したメッセージ! 花言葉や花名の由来、英語名を紹介
マーガレットの花言葉について知りたい! 最初に、マーガレットという花のことを、簡単に説明します。 マーガレットの基本データ 学名:Argyranthemum frutescens 科名:キク科 属名:キク属 原産地:カナリア諸島 和名:木春菊(モクシュンギク) 英名:Marguerite、Paris daisy 開花期:3~4月 切り花の出回り時期:12~4月 花色:赤、ピンク、オレンジ、黄、白、複色 花もち:5~10日 マーガレットは「誠実」、「貞節」、「慈悲」、「安らぎ」などのシンボルとされています。代表的な清らかな純白の花びらが、純潔や純粋な愛を思わせるからかもしれません。 18世紀のフランス王妃マリー・アントワネットにも愛されていたといわれる、マーガレット。彼女が好んだプチ・トリアノン宮殿の庭には、マーガレットが植えられていました。華麗な宮廷生活でさまざまな苦労を味わってきた彼女にとって、イギリスの田舎風にしつらえられたプチ・トリアノンの庭園は、心安らげる場所。素朴なたたずまいのマーガレットは、きっと彼女の心に憩いと慰めを与えてくれたことでしょう。 日本でのマーガレット全般の花言葉は下記です。 「心に秘めた愛」 「真実の友情」 その意味など詳しい解説は「3.マーガレットの花名や花言葉の由来は?」で紹介します。 花言葉は、花の色によっても変わります マーガレットの花言葉は、色によっても違います。色ごとの花言葉は下記です。 ピンク…真実の愛 黄・オレンジ…美しい容姿 白…秘めた愛、恋占い、信頼 ※花言葉はその花の特質などに合わせて象徴的な意味をもたせたもので、明確な根拠があるものではありません。前述したように、監修する人や国、文化などによって、選ばれる言葉が違うこともよくあります。 マーガレットの花名や花言葉の由来は? マーガレット(Marguerite)という名前は、「真珠」を意味するギリシア語の「Margarites(マルガリテス)」からきています。花びらが純白で丸く咲く清楚な花姿が、宝石でいうと真珠をイメージさせるからでしょう。 和名の木春菊(モクシュンギク)とは、葉の形がキクに似ていること、そして年数が経つと、緑色の茎が変化して茶色くゴツゴツした木のようになることから来ています。ただし、日本には明治初期に渡来し、マーガレットの名前が一般的に広まっているので、この名で表記されることはあまりありません。 マーガレットの花言葉の由来は、いくつかあります。 「心に秘めた愛」というもっとも代表的な花言葉は、マーガレットがよく恋占いに使われる花であることから来ています。恋占いとは、花びらを1枚ずつちぎって「好き、嫌い、好き、嫌い」と繰り返し、最後の1枚が「好き」であれば、自分の想い人も自分のことを想ってくれている、という占いです。ちなみに、ヨーロッパなどでは「愛している、少し愛している、とても愛している、まったく愛していない」と、4択にして占いの言葉を繰り返すそう。 もっとも、この占いには秘密があります。マーガレットの花びらは、基本的には奇数です。ですから、「好き」から始めれば「好き」で終わることがほとんど。本当は「恋を占う」というより、「恋(の告白)を応援してくれる」花なのかもしれませんね。 もうひとつ、この花がギリシア神話の月の女神、アルテミスに捧げられたことに由来する、という説もあります。狩猟の神アルテミスは、太陽神アポロンの双子の妹で、清らかで高潔な処女神とされています。ところが、巨人で腕の立つ狩人であったオリオンと一緒に狩りをするうち、アルテミスとオリオンは互いに惹かれ合うようになりました。これをよく思わない兄・アポロンは、頭だけ出して海を渡るオリオンを指しながら、妹に「お前はあの小さな島に矢を命中させることができるかな?」と語りかけ、島に向かって矢を射るようにそそのかします。「もちろんです」と答えて矢を放ったアルテミスは、知らずにオリオンを射てしまうのです。嘆き悲しむ女神アルテミスのために、父・ゼウスはオリオンを夜空の星に変えました。この永遠の処女であるアルテミスとオリオンの恋が、「秘めた恋」の由来というわけです。 一方で、アルテミスは自分が夫をもたない処女神となる誓いを立てたとき、従者たちにもそれを求めました。ただし、従者たちが愛する者と結ばれたときには、快く送り出したといいます。このためアルテミスは、「真実の友情」という花言葉の由来にもなっている、という説があるそうです。 マーガレットの英語名と、海外での花言葉 マーガレットの英語名は「Marguerite」もしくは「Paris daisy」。後者の名前は、マーガレットがかつて、フランスで園芸用に品種改良されたことに由来します。英語でのマーガレットの花言葉は「secret love(秘密の恋)」「faith(信頼)」などとされています。 フランス語ではマーガレットは「Marguerite(マルグリット)」で、花言葉は「 innocence (純粋さ・無邪気)」、「estime(尊敬)」、「 confiance (信頼 )」、「amour timide(内気な愛)」となります。ところが、フランス語のマーガレット(Marguerite)は本来、日本のフランスギクを指し、日本でいうマーガレットとは別の花なのです。日本のマーガレットはフランスでは、「木のマーガレット」と呼ばれます。このふたつの花は、見た目はそっくりなのですが、葉の形が違います。フランスギクは突起のあるヘラのような形の葉、マーガレットは羽根のように切れ込みのある葉をしています。もっとも、フランスではどちらもひっくるめて「マーガレット」と呼ぶ場合が多いようなので、区別はあまり厳密ではありません。 フランスギク マーガレット ドイツ語ではマーガレットは「Margarete(マルガレーテ)」、イタリア語では「Margherita(マルゲリータ)」となります。 欧米では、マーガレットは女性の名前としてもよく使われます。直接的にはキリスト教の聖人「アンティオキアの聖マルガリタ」に由来するものですが、愛らしくて清楚な花のイメージも好まれているようです。語源の「真珠」や清楚な気品のある花姿から、女王・皇后・王妃や、高貴な婦人の名にもよく使われます。 この名の女性のなかでは、19世紀イタリアの第2代国王、ウンベルト1世の王妃マルゲリータの逸話が有名です。彼女は慈悲深く、慈善事業や芸術の発展に尽くしたことから、国民に非常に敬愛されていました。このため、彼女の名前を冠したマーガレットはかつて、イタリアの国花とされていたそうです(現在はイタリアの国花は、特に指定されていません)。ベーシックなピザとして世界中で愛されている「ピッツァ マルゲリータ」もまた、彼女の名前が由来で、彼女の愛したピッツァのレシピなのです。 デンマークでは非公式ながら、マーガレットが国花とされています。これもまた現女王マルグレーテ2世の名前にちなむものです。 花言葉の世界はいかがでしたか? 花言葉にはさまざまな物語が隠れていますね。ただし、花言葉は明確な根拠があるものではないので、あまりこだわりすぎないことも大切です。花を買うときには、自分の好きな色、そのときにビビッと来た色の花を選ぶのが、いちばんよいのではないでしょうか。 マーガレットを主役にした、ギフトの紹介はこちらへ。⇒「マーガレットのフラワーギフト、選び方とおすすめ10選」 マーガレットの扱い方、飾り方は「マーガレットのおしゃれな生け方・飾り方。 フラワーアレンジで長もちさせるコツ」、種類を知りたいときは「知りたい! マーガレットの種類や品種、それぞれの特徴と見分け方」をご覧ください。 Credit 記事協力 構成と文・高梨奈々