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【唯一無二のアジサイ作り】吉岡麗子さんが生み出すアジサイの魅力

【唯一無二のアジサイ作り】吉岡麗子さんが生み出すアジサイの魅力

春の終わりから初夏にかけて、私たちの目を楽しませてくれるアジサイ。その鉢植えがもっとも多く市場に出回るのは、毎年4月後半から5月中旬にかけてです 。今回は、数あるアジサイ生産者のなかでも、ひときわ魅力的な品種を生み出し続ける、埼玉県深谷市の吉岡麗子さんを紹介します。母の日に向けてお届けする数量限定の開花鉢のギフトのご案内もお見逃しなく!

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花への愛情が生み出す、特別なブランド

アジサイ苗
吉岡さんの美しい温室内のアジサイ。色づいてから出荷します。

吉岡麗子さんは、ポインセチア作りで輝かしい実績をもつ生産者です。2001年の「オールジャパンポインセチアフェア」での大賞受賞をはじめ、農林水産大臣賞を受賞するなど、その実力は折り紙付きです。

吉岡麗子さんの原点は花農家の家庭にあります。ユリなどの鉢花を生産する父の背中を見て育ち、自然と植物への興味を深めていきました。テクノ・ホルティ園芸専門学校で専門知識を学んだあと、花店での勤務経験を通して、消費者のニーズや花の魅せ方を肌で感じます。

その後、埼玉県内の著名なポインセチア生産者の元で研修を積み、その美しさと奥深さに魅了され、自身も生産者の道を歩むことを決意します。吉岡さんの作るポインセチアは、その品質の高さはもちろん、一つひとつの株に愛情を込めて向き合う真摯な姿勢が評価され、瞬く間に人気を博しました。「吉岡麗子ブランド」として、その地位を確固たるものにしています。

麗子さんを力強く支えるのが、妹の真美子さんです。当初は一般企業に勤め、生産に携わるつもりはなかったそうですが、退職後に実家に戻り、姉を手伝うようになりました。今では、麗子さんだけでは手が回りきらなかったPR用のカタログ制作やラベルデザインなどを担当。生産現場にも深く関わり、アジサイの育種も担っています。姉妹の二人三脚で、より魅力的な花作りに挑戦するようになって、10年以上の月日が経ちました。

控えめな美しさに惹かれたヤマアジサイの花

アジサイ‘伊予獅子てまり’
色づきはじめの‘伊予獅子てまり’。淡いピンクが徐々に色づく。

「もし西洋アジサイしかなかったら、アジサイの生産は始めていなかったかもしれません」。

吉岡さんは、アジサイ作りを始めたきっかけをそう振り返ります。運命的な出会いは、とある山野草専門店。そこで見かけたヤマアジサイ‘伊予獅子てまり’の、小さく丸みを帯びた可憐な花房に、心を奪われたのでした。

今でこそ、鉢花として広く流通するようになったヤマアジサイ‘伊予獅子てまり’ですが、吉岡さんが生産を始めた当時はまだ珍しい存在でした。吉岡さんは、その魅力をいち早く見出し、世に広めたパイオニアです。

ヤマアジサイ‘伊予獅子てまり’
‘伊予獅子てまり’。写真は5号サイズ。

ヤマアジサイは、その名の通り、古くから日本の山々に自生していたアジサイの一種です。西洋アジサイのような大輪で圧倒的な存在感や華やかさとは異なり、どこか控えめで、楚々とした風情を漂わせるのが最大の魅力 。派手さはないけれど、心にそっと寄り添うような、奥ゆかしい美しさをもっています。  

アジサイの花は、基本的に年に一度しか咲きません。花が終わったあと、今年伸びた枝に来年の花芽が形成されます。そのため、今年の花を長く咲かせすぎると、翌年の花付きが悪くなる可能性があるのです。

「ヤマアジサイは花が小さいので、剪定した花を気軽に切り花として飾れるのもよいところです。鉢植えを楽しみながら、剪定した花を部屋に飾る…そんなふうに、二度楽しんでもらえたら嬉しいですね」と吉岡さんは語ります。

1年という年月をかけるアジサイ作りの舞台裏

美しいアジサイの鉢植えが私たちの元に届くまでには、1年近くもの時間と、大変な手間がかかります。これは、夏に植えて晩秋から初冬に出荷されるポインセチア(生産期間は約3~4カ月)と比べると、非常に長い期間です。アジサイ作りは、1年がかりの大仕事なのです。  

アジサイ生産の年間スケジュール

5月上旬(ゴールデンウィーク頃): 来シーズンに向けた準備がスタート。親株から健康な枝を選んで切り取り、小さな苗用のポットに挿し木をします。  

5~11月頃: 挿し木をした苗を、屋外の管理しやすい場所で育てます。夏の暑さや病害虫から守りながら、じっくりと根を張らせ、株を充実させます。  

年内(11~12月頃): 寒さから苗を守るため、ハウス(温室)の中へ移動させます。春に美しい葉が育てるために、残っている葉を手で一枚ずつ取ります。

1月: 育った苗を、いよいよ出荷用の鉢へと植え替えます。ここから、春の開花に向けて本格的な管理が始まります。  

1月~春(開花期): ハウスの中で、温度や湿度、日照などを適切に管理しながら、一つひとつの鉢に丁寧に水やりを行います。美しい花を咲かせるための、もっとも重要な時期です。  

「こんなに長い期間をかけて育てているので、無事に美しい花を咲かせてお客さまにお届けできるか、途中で病気になったり枯れたりしないか、本当にひやひやしながら見守っています」と吉岡さんは語ります。

アジサイの水やり
圃場で水やりをする真美子さん。日焼け対策万全です。

特に、吉岡さんが拠点を置く深谷市は、夏の猛暑で知られる熊谷市の隣に位置し、アジサイにとっては非常に過酷な環境です。夏の暑さで株が弱らないよう、ダメージを受けないよう、細心の注意を払いながら、ひと鉢ひと鉢の状態を日々確認し、最適な管理を心がけています。  

そして、吉岡さんのアジサイ作りにおける大きなこだわりの一つが、ひと鉢ずつの水やり。アジサイ栽培では、効率化のために底面給水(トレーなどに水を溜めて鉢底から吸わせる方法)を採用する生産者も多いなか、吉岡さんはあえて手間のかかる水やりにこだわります。「効率よりも、一つひとつの花としっかり向き合い、コミュニケーションを取りたいんです」。

その言葉通り、日々の水やりを通して、アジサイのわずかな変化も見逃さず、異常があればすぐに対応できるように、常に気を配っています。ゴミひとつ落ちていない、美しく整えられた温室の様子からも、吉岡さんの丁寧で几帳面な仕事ぶり、そして花への深い愛情がひしひしと伝わってきます。  

色のグラデーションが楽しめる‘てててまり’

アジサイ‘てててまり’
すずしげな色が魅力の‘てててまりブルー’。

吉岡さんのオリジナル品種のなかでも、特に高い人気を誇るのが‘てててまり’です。その独創性と美しさが評価され、「ジャパンフラワーセレクション2019-2020」では、栄えあるベスト・フラワー(優秀賞)とカラークリエイト特別賞をダブル受賞。この品種は、妹の真美子さんが育種を手がけ、長い年月をかけて生み出した自信作です。

花色はブルーとピンク。咲きはじめの淡い色から徐々に色づき、ひとつの花がグラデーションになる様は美しく、見る人の心を強く惹きつけます。

この‘てててまり’は、ヤマアジサイと西洋アジサイを交配したもの。ヤマアジサイのもつコンパクトな樹形と、西洋アジサイの花付きのよさや育てやすさ、両方の優れた性質を、見事に受け継いでいるのが特徴です。管理方法は、基本的には西洋アジサイに準じるため、比較的育てやすいとも言えます。  

アジサイ‘てててまり’
愛らしいピンクの‘てててまりピンク’。

アジサイの花色は、土壌の酸度(pH)によって変化することが知られています。酸性の土壌では青色が、アルカリ性の土壌ではピンクが強く現れます。‘てててまり’も例外ではなく、美しいブルーとピンクをそれぞれ出すために、土の種類や肥料の種類を変え、管理方法も分けて生産しています。そのため、ブルーとピンクでは、ボリューム感や咲き姿にも少し違いが見られるのも、ユニークな点です。  そして、品種名の「ててて」は、吉岡さんの地元、埼玉県北部の方言で、驚きや感動を表す言葉だそう。

花店での勤務経験がある吉岡さんだからこそ、「一般の消費者が本当に欲しい、飾りたいと思うのはどんな花か」という視点を常にもち、多くの人の心に響くアジサイを提案し続けているのでしょう。  

ヤマアジサイの魅力を最大限に生かすシリーズ

吉岡さんが生み出すオリジナル品種は‘てててまり’だけではありません。情熱的な赤紫色が印象的な‘十六夜’や、‘伊予獅子てまり’から生まれたやさしい色合いの枝変わり品種‘うるは’などがあります。どちらも、吉岡さんならではの感性が光る、愛らしさ満点の花々です。生産量は決して多くはありませんが、その質の高さから徐々にファンを増やし、注目度が高まっています。  

新品種の開発だけでなく、既存品種の魅力を新たな形で提案する企画商品にも、吉岡さん姉妹は積極的に取り組んでいます。その代表が「ぽじさい」シリーズです。  

伊予獅子てまりの「ぽじさい」
‘伊予獅子てまり’の「ぽじさい」。

ヤマアジサイは、西洋アジサイに比べて花房が小さく、その分、たくさんの花を咲かせるのが特徴です。この個性を最大限に活かそうと考えられたのが「ぽじさい」。通常よりも小さな3寸(直径約9cm)のポットに、まるで花がこぼれ落ちるように、たくさんの花を咲かせて仕立てています。  

この「ぽじさい」は、他の植物と組み合わせて楽しむ寄せ植えの材料として使いやすいのはもちろん、「小さな鉢で気軽にアジサイを楽しむ」という、これまであまりなかった新しいスタイルを提案しています。限られたスペースでも飾りやすく、かわいらしい姿は、アジサイの楽しみ方を大きく広げました。既存の品種がもつ本来の魅力を引き出しながら、現代のライフスタイルに合った美しい形で見せる「ぽじさい」は、まさに吉岡さん姉妹のセンスとアイデアが詰まったシリーズと言えます。  

2025年デビュー! 室内で楽しむ「こじさい」

2025年に本格デビューしたシリーズが、「こじさい」です。さまざまなアジサイを育て、多くの人に愛される「ぽじさい」を手がけるなかで、吉岡さん姉妹のなかに「もっともっと小さなアジサイがあったら、気軽に楽しめるのではないか」という思いが芽生えました 。その思いを結実させたのが、この「こじさい」シリーズです。  

今回紹介する品種は‘ちっちゃ’。花色はブルーとピンクの2色、とはいえ、単に1色ではなく、グリーンや花色の濃淡が混じり合ったような、深みのあるニュアンスカラーが特徴です 。この絶妙な色合いは、「さすが吉岡さんのアジサイ!」と唸らされる、洗練された仕上がりです。

「こじさい」の最大の特徴は、そのコンパクトさ。3号(直径約9cm)という小さな鉢を、さらにかわいらしいバスケットに入れています 。花の大きさ自体は「ぽじさい」と同程度ですが、バスケットアレンジによって、より飾りやすく、ギフトにもぴったりの装いとなりました。

こじさい‘ちっちゃ‘
こじさい‘ちっちゃ’

バスケットに入っている理由は、「買ってきたら、そのまますぐに家の中に飾って楽しんでほしい」という、吉岡さん姉妹の強い願いから。バスケットの中には、水やりの際に水がこぼれないよう、受け皿代わりになるプラスチック製のインナーがセットされているため、特別な準備は不要。そのままお気に入りの場所に置くだけで、空間が華やかになります。

「明るい窓辺など光が入る場所に置いて、インテリアの一部として楽しんでもらえるようにと考えました」と吉岡さん姉妹は語ります。アジサイというと、どうしても庭やベランダなど屋外で育てるイメージが強いですが、「こじさい」の登場によって、ひとり暮らしの部屋やマンションの限られたスペースでも、気軽にアジサイの美しさを楽しめるようになりました。これは、アジサイの楽しみ方を大きく変える、画期的な提案と言えるでしょう。

こじさい
圃場のなかでの「こじさい」。

「ぽじさい」「こじさい」「ちっちゃ」。覚えやすく、どこか愛嬌のあるネーミングも、吉岡さん姉妹のセンスを感じさせます 。  

「こんな花があったら、かわいいよね」「こんな風に飾れたら嬉しいよね」。常に買う人の気持ちに寄り添いながら、自由な発想で新しいアジサイの魅力を提案し続ける吉岡さん姉妹。彼女たちの手によって、アジサイの世界は、これからもますます豊かに、そして美しく広がっていくことでしょう。これから先の未来に咲く吉岡さんのアジサイも、どうぞお楽しみに。

吉岡さん姉妹のアジサイを数量限定で販売中!

吉岡さんのアジサイを販売

吉岡さん姉妹の人気アジサイ‘てててまり’を、『花時間マルシェ』では数量限定で販売しています。お届けは、5月1日(木)から 5月7日(水)。自分用にベランダやお庭で育てて楽しむほか、母の日へのギフトとして贈るのもおすすめです。

花のある暮らしを提唱して30年以上の歴史をもつ花の総合メディア『花時間』が運営するネットショップ『花時間マルシェ』で吉岡さん姉妹の紫陽花をチェック!

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