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知りたい!シャクヤクの種類や品種、それぞれの特徴と見分け方

知りたい!シャクヤクの種類や品種、それぞれの特徴と見分け方

優雅に香りながら、ふくよかに花開くシャクヤク。初夏の花のなかで、とりわけ贅沢感をもたらす花ではないでしょうか。この時期、シャクヤクを愛でに名所へ出かける方も多いはず。そこではきっと、珍しい品種の花に出合い、ますます興味を深めていたりしそうですね。そこで、シャクヤクの種類について、紹介しましょう。実際にいけたくなったときのために、大切な下準備についても、ここでしっかりマスターしませんか?

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シャクヤクの花の、特徴と種類が知りたい!

シャクヤクは華やかな姿と芳しさで、年々、人気が高まっています。美人のたとえ、「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」と、古くから慣れ親しまれている花でもありますね。まずは、シャクヤクについて、基本的なことを知っておきましょう。

■シャクヤクの基本データ
学名:Paeonia lactiflora
科名:ボタン科
属名:ボタン属
原産地:中国、朝鮮半島など
和名:芍薬(シャクヤク)
英名:chinese peony
開花期:5~6月
切り花の出回り時期:4~6月
花色:ピンク、赤、オレンジ、黄色、白
花もち:5~7日

私たちが切り花や園芸で慣れ親しんでいるシャクヤクは、大別すると、ふたつのグループがあります。それは、日本生まれの「和シャクヤク(和シャク)」と、フランスを中心としたヨーロッパで誕生した「洋シャクヤク(洋シャク)」です。

おおもとをたどると、いずれもアジア大陸北東部に行きつきます。原産地とされるのは、中国東北部から朝鮮半島、シベリアにかけた一帯です。中国では紀元前から薬草や観賞用として栽培されていたそう。

和シャクヤクの歴史と特徴

そんなシャクヤクが渡来したのは、平安時代以前とする説があります。ただ、当時は漢方薬の材料としての渡来だったのかもしれません。シャクヤクの根は今でも、葛根湯などの材料になっています。中国原産のシャクヤクが観賞用として盛んに栽培され始めたのは安土桃山時代。その後、戦乱の世を経て、さまざまな文化が花開いた江戸時代。園芸の技術がさらに進み、茶席に飾る茶花として、100を超える品種が生まれました。なかでも、肥後藩(今の熊本県)では武士のたしなみとして園芸を推奨し、シャクヤクの品種改良に力を注いだとか。それが肥後芍薬。後世、ツバキやキク、朝顔と並び、「肥後六花」とうたわれるようになりました。

参考までに、肥後芍薬はこんな花↓。江戸時代から明治時代にかけて、数多くの品種が生まれました。

育種が本格的に行われるようになったのは、明治時代以降。神奈川県の農事試験場で育種が進められ、昭和初期には、なんと700種もの新たなシャクヤクが発表されたそうです! 美しいシャクヤクを作り出そうとする熱意が伝わりますね。

前述の「肥後芍薬」を合わせ、こうして誕生した日本生まれのシャクヤクは「和シャクヤク(和シャク)」と呼ばれ、ひと重咲きや、内側に小さな花弁をぎっしりと抱える翁(おきな)咲きなど、風情のある花形のものが多く見受けられます。このほか、日本には以下の野生種があります。

ヤマシャクヤク

本州、四国、九州および朝鮮半島に分布し、山地や深い山に。白い五弁の花びらの内側に、黄色い葯(やく)を抱えているのが特徴です。花後には、結実すると中の種子がザクロのようにはぜるそう。山野草専門店でも入手可能。

ベニバナヤマシャクヤク

北海道から九州まで広く分布しています。花色はピンク。ヤマシャクヤクと花形はよく似ていますが、別種のようです。こちらも山野草として流通。

洋シャクヤクの歴史と特徴

ヨーロッパでは、フランスやオランダなどに原種のシャクヤクがありましたが、本格的に普及したのは中国のシャクヤクが18世紀にもたらされて以降。英国の王立植物園「キューガーデン」にコレクションされ、19世紀には精力的に品種改良が進められたそうです。当時のシャクヤクの様子は、モネやルノワールらが残した絵画からもうかがい知ることができます。

和シャクヤクと洋シャクヤク、それぞれの特徴は?

では、咲き方に違いはあるものでしょうか? 日本生まれの「和シャクヤク」は、ひと重咲きや、内側に小さな花弁をぎっしりと抱える翁(おきな)咲きなど、風情のある花形のものが多く見受けられます。それに対して、ヨーロッパで改良された「洋シャクヤク」には、バラ咲きなどの、花弁数が多く、とても豪華な咲き方が多いようです。洋シャクヤクは香りも華やか。

写真を見くらべてみましょう。日本とヨーロッパ、それぞれに好みを姿に反映しての違いでしょうか。

和シャクヤク・ひと重咲き(コーラルキング)

和シャクヤク・翁咲き(富士)

洋シャクヤク・バラ咲き(サラベルナール)

画像一覧つき! シャクヤクの人気品種

基礎知識をマスターしたところで、切り花として花屋さんに並ぶシャクヤクの種類について紹介しましょう。切り花シャクヤクの代表的な産地は、長野県と新潟県の山間部。本来の旬よりも早く咲くハウス栽培の花と、5月中旬から6月中旬までの露地栽培の花を組み合わせ、4~6月に渡って出荷できる体制にあるそうです。洋シャクヤクが導入されたことで、品種数も増加。近年では、ボタンとの交配種や珍しい黄色系の品種も生まれています。

ひと重咲き

アメリカ

コーラルキング

翁咲き

レッドチャーム

富士

バラ咲き

ルーズベルト

深山の雪

コーラルチャーム

滝の粧

サラベルナール

ぱっと広げた、手のひらよりも大きな超大輪品種もあります! それは以下のシャクヤク姫。豪雪地、新潟・魚沼で生まれる花たちです。

白雪姫

かぐや姫

最近では、絞り模様のバラ咲き品種などフォトジェニックなシャクヤクも登場しています。ますます目の離せない花、シャクヤクですね!

シャクヤクとボタンの見分け方は、葉に注目です

ところで、シャクヤクとボタンは、あまりに似ていて、紛らわしいと思っていたはずです。それもそのはず、同じ「ボタン科ボタン属」。花びらの形や質感、ボリューム感たっぷりに重なる様子までよく似通う花同士です。

でもね、大きな違いがあるんです。シャクヤクは「草」で、ボタンが「木」だということ。それを踏まえると、以下のような違いがあります。シャクヤクは「宿根草」のため、冬には、根だけを残してすべて枯れます。新芽が生まれるのは春。余談ですが、木にならない草本植物のため、別名を「草牡丹」。ボタンは落葉低木。冬には茎だけの状態で越冬し、春になるとその茎に新芽が生まれます。幹は年々、太くなります。

そして、このふたつの花は、葉の様子がまるで異なります!

上の写真を見て。シャクヤクの葉は、枝先に三枚の葉がつく複葉。丸みを帯びて、つやつやと光沢があります。触ってみると、厚みもあります。

一方、ボタンの葉は同じ複葉でも、1枚ずつに切れ込みがあり、光沢はありません。色は白く曇った緑色です。シャクヤクと比べると、厚さもありません。

開花の時期も少し前後します。先に咲くのはボタンで、4月下旬~5月初め。シャクヤクは、5月初旬~5月下旬です。気候変動の激しい昨今ですから、思いのほか早く咲いた、なんてこともありますが…。咲きたてのみずみずしさを愛でたいなら、こまめに花屋さんをチェックしたいものですね。

きれいなシャクヤクの切り花を楽しむために

さて、最後に、切り花シャクヤクの上手な選び方も覚えておきましょう。肝心なのは「少しでも、花びらが開いたシャクヤク」を選ぶこと!

花はつぼみを開くとき、とても多くのエネルギーを消費します。その段階で体力を使っては、咲いたあと、息切れ状態に…。当然、花のもちは短くなります。シャクヤクも例外ではありませんよ! 硬いつぼみで買うと、開かずに終わったり、咲いても日もちがよくなかったりと残念なこともあるようです。花びらが黒ずんでいたり、縮れていたりするつぼみは、すでに弱っていて、花が開かない可能性があるので、ご注意を。

もしも、つぼみで買った場合は、水切りをする前に、水につぼみを入れて、やさしく洗ってあげましょう。花びらについている蜜がとれ、花びらが開きやすくなります。

シャクヤクの季節をおおいに楽しみましょうね!

Credit

記事協力

花・深野俊幸(カントリーハーベスト) 撮影・中野博安 構成と文・鈴木清子

 

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