ガーデニング愛好家にテレワークインタビュー①「庭づくりをスタートしたきっかけを知りたい!」
これまでガーデニング雑誌で幾度も紹介されてきた庭を持つ千葉県在住の橋本景子さんは、自宅を囲む敷地を生かしてDIYでパーゴラを備えたテラスを作り、斜面地には階段を設けて両脇を植栽スペースにするなど、暮らしの一部にいつも庭があります。今回は、そんな橋本さんが庭づくりをスタートしたきっかけについて、ガーデンストーリー編集部から橋本さんへ、メールでテレワークインタビューを実施。ガーデニングの楽しみ方のヒントが隠れていますよ。
目次
Q1 庭づくり歴は20年という橋本さん。植物を育てるようになったきっかけを教えてください。
今から30年前、子どもが生まれてから会社勤めを辞めて専業主婦になり、今でいうところのワンオペの子育てに疲れを感じ始めた頃でした。母が花や野菜を育てていたことを思い出して、息抜きや癒やしになればいいなぁと、狭い社宅のベランダで、パンジーやペチュニアなどの一年草をプランターで育て始めました。
そして、ベランダの手すりから溢れるように花が咲き始めると、隣近所の人たちが「とてもきれいね〜」と褒めてくださるので、それが嬉しくて、毎年プランターが増えていきました。
子どもが5歳の頃、ニューヨークに転勤しましたが、住まいは戸建てで、一面芝生の庭がありました。植物を植えるようなスペースがなかったので、大家さんに許可をもらい、芝生の端っこに遠慮気味に、近くのナーセリーで買ってきた一年草をほんの少しだけ植えたり、すでに植わっていた桜の花やバラが咲くのを楽しみにしたりしていました。
そこでは、専属のガーデナーが週に1回芝生を刈りに来てくれていたので、芝生の手入れは楽だったのですが、お友達にいただいてきて庭の隅っこに植え込んでおいた植物までも芝生と一緒に刈り込まれてしまったり、病気になって咲かないバラがあっても消毒もしてくれなかったり…。今思えば、芝生のメンテナンスをするだけの契約だったのかもしれません。
私のたどたどしい英語では、どうしてほしいという思いを確実に伝えることもできず……。作業をしていた人はメキシコ系の移民が多かったので、スペイン語での意思疎通はなおさら無理でした(笑)。
そんな中、娘のアメリカ人のお友達のお母さんが、とってもガーデニングが好きで、おしゃれで素敵な住宅に住んでいたので、ときどき遊びにいっては庭のことを教えてもらっていました。
ある日、たくさん植わっていたシャクヤクのつぼみに、アリが群がっていたので取ろうとしたら、「シャクヤクは甘い蜜を出すからアリがくるけど、開花には問題ないのよ」と教えてくれました。庭の大きな木にブランコがかけてあって、娘と友達が揺られて遊んでいる側でお茶をしたりと、庭をリビングのように楽しむことを教えてくれたのも彼女でした。
5年の駐在のあと帰国し、2年後に戸建て住宅を購入して引っ越すことになるのですが、庭がある安心感で植物をたくさん買い込み、たくさんの鉢を並べるガーデニングが始まりました。そしてある時、市のオープンガーデンを見学に行き、誘われて入会。そこで先輩方にいろいろと教えていただきました。
うちの庭を見に来てくださった時、あまりの鉢の多さに「みっともないから全部地植えにするよ!」と厳しいアドバイスも(笑)。でも、そこからは手伝ってもらっての怒涛のような庭づくりが始まって…。そうして毎年オープンガーデンをするようになって、20年後には、こうして庭に関する記事を書いたりしているのですから、きっとこれが大きな人生の転換期だったのでしょうね。
●橋本さんの自宅の庭づくりはじめの一歩はこちら。
Q2 橋本さんの現在の10坪の庭では、たくさんの植物が育っていますね。これまで育てた植物について教えてください。
これまでに育てたことのある植物は、バラや宿根草、山野草、一年草、つる植物、球根類、それに、果樹、樹木、野菜、ハーブ、観葉植物……。そうですね、盆栽を除いて、すべて育てたことがあります。
まず最初の頃は、イングリッシュ・ローズを植えたくて庭をつくり始めたのですが、我が家の場合、バラを育てるのに重要な条件の一つである“朝日が当たるかどうか”については、ほんの少しのスペースしかなく、それ以外は南側だけど隣の家が迫っていて日陰になる階段庭か、まともに西日が当たるテラスしかなくて。なので、日陰でも育つバラを選んだり、超長尺苗を買って少しでも日当たりが確保できるようにしたり、パーゴラやフェンスを作って高さを出す工夫をしたりと、試行錯誤を重ねました。
もともと、バラの株元には、宿根草を植えようと思っていました。狭い庭ですから、最初は高さが60cm以下の植物を厳選したり、花の色も白とブルーに色数を抑えたりと言っていましたが…。今では何色にでも挑戦していますよ。
狭くて日当たりのよくない階段庭でちゃんと育つ植物は、シダやギボウシ、山アジサイなどに限定されます。高さは出るけどスリムな植物をフェンスに誘引して育てるスペシャルなテクニックも身につけました。今では、何でも誘引して垂直の面を活用して植物を育てています。
野菜も、サラダ用にと期待してポットで育てた経験がありますが、消毒するのは嫌なので、虫のお食事用になってしまい、人間の口には入らずじまい。それ以来、観賞用に育てることはあっても、食用としては植えていません。
Q3 樹木はどんな種類を育てていますか?
入居時に業者が植栽していたシンボルツリーが「ユリノキ」でした。
「こんな狭い庭の排水管の近くにユリノキなんてありえないよ! 公園のような広い場所に植えるほど大きくなる木だから」という義兄の忠告を受けて、すぐに植え替えたのがオリーブでした。でも、これもまたすぐに大きく育って、毎年の剪定が大変で。でも一昨年オリーブゾウムシに入られてしまい枯れました。
実がなるジューンベリーに憧れて植えた時期もありましたが、スペースのない庭に樹木は無理です。植えるとしても、できるだけ低木のものを選び、ポットのままで植え込んでいます。ホザキナナカマドは、毎年根本近くまで剪定して樹高40cm程度にキープしています。もし大きくなりすぎて危険を感じたら、ポットのまま掘り上げることができるので、楽ですよ。ただし、水切れには細心の注意をはらって。
そうそう、植えて困る植物、ハーブ類のミント系には気をつけてください。お隣は地植えにしてしまい、手に負えなくなって抜いたのですが、うちにも種子が飛んできて。抜いても抜いても出てくるミントを3年くらいかかって退治したなんてことがありました。
Q4 では、この植物は植えなきゃよかった〜「私を困らせた植物」を教えてください。
ワーストランキング3つは、プミラ、ワイヤープランツ、ホップです。
ガーデンの一部である無粋な雰囲気のコンクリートの基礎部分を、なんとかして隠したくて、プミラを這わせて覆うことを考えました。プミラは最初の2年程はなかなか成長しないのですが、いつしか壁を覆い始め、ぺったりと張り付くようにどこにでも増えていくので油断できません。隠したい部分だけでなく、壁面などもあっというまに覆ってしまうので、気がつけばカットしてこまめに制御する必要があります。その分、地下の根っこもどんどん成長するらしく、完全に撤去するのにユンボで掘ったという話も聞いたことがあるほどです。プミラ、恐るべしですね。
ワイヤープランツも、寄せ植えなどに使って気軽に地面に下ろすと大変なことになります。
壁に張り付くことはないので、壁面を汚すわけではありませんが、どんどん四方に広がって、全てのものを呑み込んでいくんです。できるならポットのままで育ててください。もし地植えをしている人は、どんどん引き抜くか、こまめなカットが必要です。
ホップは、爽やかなライム色の葉とかわいい毬花(きゅうか)に憧れて、お友達に分けていただきました。通路の隅っこに植えてそれなりに楽しんだのですが、いざ地面を掘り起こしてみると、ゴボウのような根を長く伸ばしていることに驚きました。すべてを掘り上げるのは大変な作業でした。
Q5 Stay Homeの今、庭ではどんな作業をしていますか?
誰にも文句を言われないので、早朝から夕暮れまで庭にいます(笑)。
時間がたっぷりあるので、早く目が覚めたら、すっぴんで庭に出て、散歩を兼ねた朝のチェックです。そう、カメラは忘れずに。毎日のように200枚くらいは撮ってしまいます。
うちの庭はナメクジが多いので、シダの柔らかい新芽についているナメクジをチェックし、バラのウドンコ病や害虫の発生なども注意深く確認します。
今は常緑樹の葉の入れ替わりの時期でもあるので、ビバーナムやコバノズイナなどの古い葉を取ったり、通路を塞ぐように倒れて成長してくる植物をフェンスに誘引したり。また、どんどん伸びて勝手に好きなほうにいってしまうクレマチスをバランスよく誘引したり、クリスマスローズの鉢植えを植え替えたりと、いくらでも作業はあります。
それと、今手掛けている大きな庭の植栽用に、種子から植物を育ててみたいとも思っています。
Stay Homeの今だからこそ、これまでできなかった作業をていねいにやって、たくさんの記録を残したいと思っています。
●インタビューはまだまだ続きます。次回は、お気に入りの植物について伺います。お楽しみに。
Credit
写真・回答/橋本景子
千葉県流山市在住。ガーデングユニットNoraの一人として毎年5月にオープンガーデンを開催中。趣味は、そこに庭があると聞くと北海道から沖縄まで足を運び、自分の目で素敵な庭を発見すること。アメブロ公式ブロガーであり、雑誌『Garden Diary』にて連載中。インスタグラムでのフォロワーも3.
Noraレポート https://ameblo.jp/kay1219/
インスタグラム kay_hashimoto
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