【家庭菜園】ズッキーニってどんな野菜? 育て方のポイントやおすすめの食べ方を解説

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夏野菜の中でも人気の高いズッキーニは、じつはカボチャの仲間だとご存じでしたか? この記事では、ソテーやフリッター、ラタトゥイユなど多用途で美味しい野菜、ズッキーニの特徴や育て方、保存や調理の方法など、幅広くご紹介します。
目次
ズッキーニはどんな野菜?

ズッキーニは、ウリ科カボチャ属の夏野菜。キュウリに似た姿をしていますが、実際はカボチャの仲間です。原産地はアメリカ大陸で、生育適温は10〜23℃。寒さにも強いといわれていますが、苗を植え付ける場合は、遅霜の心配がなくなってからのほうが無難です。栽培されているズッキーニは細長い緑色のものが一般的ですが、中には黄色い実や、丸い実もあり、育てて味比べしてみてもよいでしょう。スーパーでは手に入らない、開花前の花を収穫して味わう「花ズッキーニ」も楽しめます。
ズッキーニの栽培方法
ズッキーニは、ビギナーでも比較的簡単に育てられる野菜で、菜園ではもちろん、鉢栽培も可能です。ここでは、ズッキーニの栽培方法について、詳しくご紹介します。
栽培環境

ズッキーニは、日当たりと風通しのよい場所を好みます。連作を嫌うため、以前にウリ科の植物を1〜2年は植えていない場所を選んで栽培しましょう。また茎葉を四方に大きく伸ばすため、余裕を持って1株当たり1m四方くらいのスペースを確保しておくのをおすすめします。庭などで栽培する場合は、種まきまたは苗の植え付けから4〜5カ月は占有することになるので、植え場所の吟味もポイントです。
土づくり

【地植え】
植え付ける場所に畝幅を約70cm取り、園芸用支柱や割りばしなどで畝幅の目印を四隅に立てておきます。畝の長さは、環境や作りたいズッキーニの量に合わせて決めてかまいません。
植え付けの2〜3週間前に、1㎡当たり100〜150gの苦土石灰を全体に散布し、よく耕して土に混ぜ込んでおきます。耕している際に、小石や木片などの異物があれば取り除き、全体にふかふかとした土壌を目指します。
植え付けの約1週間前に、畝の中央に深さ約30cmの溝を掘り、1㎡当たり堆肥約1.5kg、緩効性化成肥料(N-P-K=8-8-8)約50gを溝全体に均一にまきます。耕して土に馴染ませて、溝に土を埋め戻しましょう。さらに高さ10cmほどの畝を作り、畝の表土を平らにならしておきましょう。土に有機質資材や肥料などを混ぜ込んだ後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。
畝を立てた後は、黒マルチを畝の上にのせてピンと張り、四方に土を盛って固定しておきましょう。
種まき

ズッキーニは、ビギナーでも種まきから簡単に育てられますよ! 種まきからスタートするメリットは、輸送などによる苗への負担がかからず、環境に馴染みやすいことです。たくさんの苗を育てたい場合は、コストカットにもなります。
ただし、ズッキーニの苗は初夏から花苗店に出回り始めます。手軽にスタートしたいなら、苗の植え付けからがおすすめです。「1〜2株あれば十分だから、苗の植え付けから始めたい」という方は、次項に進んでください。
●種まき
ズッキーニの種まきの適期は4月頃です。
畝を立てて、黒マルチを張っていた中央に90cm間隔で穴をあけ、そこに直径4〜5cm、深さ1cmほどの植え穴を作ります。植え穴に、ズッキーニの種を4〜5粒ずつ播き、種子が隠れる程度に土をかぶせます。軽く手のひらで押さえて土に馴染まて、たっぷりと水やりをしておきましょう。まだ気温が低い時期なので、ホットキャップ(霜や寒さから苗を守る被覆資材)などをかぶせて防寒しておきます。
●間引き
ズッキーニは、種まきから3〜5日ほどで発芽します。1回目の間引きは、本葉が1〜2枚出た頃に行います。生育のよい株を2本残したら、株元に軽く土を寄せ、苗が倒れないようにしておきましょう。間引く際は、ヒョロヒョロと長く伸びて徒長しているもの、葉色が薄く傷んでいるもの、虫に食われているものなどを選んで抜き取りましょう。
2回目の間引きは、本葉が4〜5枚ついた頃に行います。生育のよい苗を1本残してほかは間引き、1本立ちにしてください。
苗の植え付け

この項目は、購入苗の植え付けからスタートする場合の解説です。種まきからスタートする方は次項へ進んでください。
苗の植え付け適期は、4月中旬〜5月中旬です。
苗は花苗店やホームセンターなどで入手できます。苗を選ぶ際は、ヒョロヒョロと頼りなく伸びているものや、虫食い跡があるものなどを避け、節間が短くがっしりと締まって勢いのあるものを選びましょう。
畝に張った黒マルチの中央に約90cm間隔で穴をあけて植え穴を作り、水をたっぷりと注いだ後に苗を植え付けます。ポットから苗を出したら、根鉢をくずさずにそのまま植え付けてください。株元を押さえてぐらつかないようにし、さらに竹ひごなどを仮支柱として立てて、苗が安定するようにしておきます。ズッキーニの苗は折れやすいので、防風のために、植え付け後にトンネル支柱を設置して防虫ネットを張っておくのも一案です。1カ月ほど経ったら撤去してかまいません。
水やり

根付いた後は、地植えの場合は下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らない日が続くようなら水やりをして補います。
水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために茎葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。また、真夏は、気温の高い昼間に水やりすると、すぐに水がぬるま湯のようになり株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に行うことが大切です。
肥料

植え付けから約1カ月経ったら、2〜3週間おきに追肥します。黒マルチの裾をはがし、畝の周囲に1㎡当たり40〜50gの緩効性化成肥料(N-P-K=8-8-8)を均一にばらまき、クワなどで軽く耕して土に馴染ませます。株元ではなく畝の周囲に肥料をまくのは、根の先端がそこまで伸びてきているからです。
日頃の手入れ

大きな葉がたくさんつくので、枯れ葉があれば取り去って株まわりをきれいにしておきます。込み合っている下葉があれば刈り取って風通しをよくし、病気や蒸れを防ぎましょう。また、受粉できずに肥大しない果実があれば、早めに切り取っておきます。
人工授粉

6月頃までは受粉を媒介する虫が活動的ではないため、人工授粉をすると実つきがよくなります。花粉の質がよい午前中に行うのがポイントです。ちなみに、ズッキーニは雌花と雄花があるのをご存じですか? 見分け方は簡単です。花の付け根を見てみると、雌花は膨らんでおり、雄花は膨らんでいません。人工授粉の際は、雄花を切り取って花弁を取り除き、花粉を雌花のめしべに軽くこすりつけて受粉させます。
受粉がうまくいくと、実が大きくなっていきます。花弁がそのままついていると、腐ってしまう原因になるので、いつまでもつけておかずに、早めに摘み取るようにしましょう。
収穫

実の長さが20〜30cmくらいになったら、付け根で切り取って収穫します。
病害虫

【病気】
ズッキーニに発生しやすい病気は、うどんこ病です。
うどんこ病は、カビによる伝染性の病気です。葉、新梢、つぼみに発生しやすく、表面が白く粉を吹いたような状態になり、放任するとどんどん広がるので注意。対処せずにそのままにしておくと光合成ができなくなり、やがて枯死してしまいます。窒素肥料を施しすぎたり、枝葉が繁茂しすぎて風通しが悪くなったりしていると、発病しやすくなります。うどんこ病が出たら病気の葉を摘み取って処分し、適用のある殺菌剤を葉の表と裏に散布して、蔓延するのを防ぎましょう。
【害虫】
ズッキーニに発生しやすい害虫は、アブラムシ、ヨトウムシなどです。
アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mm程度の小さな虫で繁殖力が大変強く、発生すると茎葉にびっしりとついて吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目も悪いので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、シャワーではじいたりして防除しましょう。
ヨトウムシは蛾の幼虫で、漢字で「夜盗虫」と書くように、主に夜に姿を現して茎葉を食害します。大きくなった幼虫は食欲が旺盛で、一晩で株を丸裸にしてしまうほどです。葉から食害し始めるので、できれば幼虫がまだ若いうちに駆除しましょう。発生しやすい時期は4〜6月、9〜10月です。食害の跡が認められたら夜にパトロールして捕殺するか、適用のある薬剤を散布して防除します。
鉢栽培の方法

鉢栽培する場合は、10号以上の大鉢と市販の野菜用にブレンドされた培養土を準備し、苗の植え付けからスタートすると手軽です。
●植え付け
用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから培養土を鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安に入れます。中央に穴をあけ、苗の根鉢をくずさずに植え付けます。最後にたっぷりと水を与えます。ズッキーニの苗は折れやすいので、竹ひごなどを仮支柱として立てて、苗がぐらつかないようにしておきましょう。幼苗のうちは日当たりがよく、強風が吹き付けない場所で管理します。
●水やり
鉢栽培では、日頃の水やりを忘れずに管理することがポイントです。ただし、いつもジメジメした状態にしておくと、根腐れの原因になってしまうので注意。土の表面がしっかり乾いたら、鉢底から水が流れ出すまでたっぷりと与えてください。茎葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。
水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために茎葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。また、真夏は、気温の高い昼間に水やりすると、すぐに水の温度が上がり株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に行うことが大切です。
●肥料
収穫を始めたら、10日に1度を目安に液肥を与えます。
※お手入れや人工授粉、収穫は地植えの作業と同様です。
ズッキーニに含まれる栄養素

ズッキーニに含まれる栄養素は、β-カロテン、カリウム、カルシウムなど。100gに含まれるエネルギーは約16キロカロリーで、低カロリーかつヘルシーな野菜です。β-カロテンの吸収率をよくするには、油で調理するのがおすすめです。
ズッキーニの選び方と保存方法

ズッキーニを青果店やスーパーなどで購入する際の選び方や、収穫したズッキーニの保存の仕方などについてご紹介します。
美味しいズッキーニの選び方
ズッキーニは切り口がみずみずしく、皮がつややかでハリがあるものを選びましょう。切り口が乾燥していたり、持ってみてふかふかしているものは避けたほうが無難です。太さが均一で、長さが20cmくらいのサイズがベターです。
常温保存
夏野菜に分類されるズッキーニは、常温で保存するのが最も適しています。そのまま置いておくよりは、古紙などで1本ずつ包むと果実内の水分が失われにくく、長もちします。風通しがよく直射日光の当たらない場所に置いて1週間ほど保存できますが、時間とともに果実の水分が減ってふかふかしてくるので、早めに消費しましょう。
冷蔵保存
冷蔵保存する場合は、空気に触れないようにラップで隙間なく包んで野菜室に入れます。カットしたズッキーニも同様にし、4〜5日で食べ切りましょう。
冷凍保存
ズッキーニは、冷凍して保存することもできます。流水で洗ってしっかり水分を拭き取り、1本ずつラップで空気が入らないように包みます。さらにジッパー付きの保存袋に入れて冷凍庫に。冷凍庫では3週間ほど保存できます。使用する際は2〜3分流水にさらし、半解凍くらいの状態でカットして調理しましょう。
また、カットしてから冷凍することも可能です。よく洗って十分に水分を拭き取り、好みの大きさにカットしてジッパー付きの保存袋に入れて冷凍します。この場合は、冷凍したまま加熱調理が可能です。
ズッキーニの美味しい食べ方

ズッキーニは油で調理すると、果実に含まれるβ-カロテンの吸収率がよくなるので、ソテーやフリッターなどに利用するのがおすすめです。刻んだニンニクとベーコン、薄くスライスしたズッキーニを塩炒めするだけでおかずの一品になります。定番のラタトゥイユや煮込み料理のほか、スライスしてチーズをのせ、オーブンで焼いてアツアツを食べるのも美味ですよ!
ズッキーニを育てて料理に取り入れてみよう

炒めてもフライにしても、煮込んでも美味しいズッキーニは、夏の定番野菜の一つです。実つきがよいため、庭に1株植えるだけで次々に収穫を楽しめます。初夏からの収穫を目指して、ズッキーニの栽培にチャレンジしてみませんか?
参考文献/
『別冊やさい畑 野菜づくり名人 虎の巻』発行/家の光協会 2009年2月1日発行
『やさしい家庭菜園』 監修者/藤田智、加藤義松 発行/家の光協会 2006年3月1日第1刷
『わが家の片隅でおいしい野菜をつくる』監修/藤田智 発行/日本放送出版協会 2008年2月10日第5刷発行
Credit
文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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