ヘメロカリスとは? 特徴や花言葉から育て方まで徹底解説!

Pawel Beres/Shutterstock.com
ガーデナーの皆さんにお尋ねです。ヘメロカリスという花をご存じでしょうか? 日本ではややマイナーな存在ですが、一度植え付ければ毎年豪華な花を咲かせてくれるので、ガーデニングにおすすめの植物です。丈夫で日本の気候に馴染みやすいので、手がかからないのも長所の一つ。この記事では、そんなヘメロカリスの特徴や歴史、花言葉から具体的な育て方まで、詳しく解説していきます。
目次
ヘメロカリスってどんな花?
「ヘメロカリス? なんだかギリシャ神話のキャラクターのような強そうな名前!」と、ガーデニングでよく見かける身近な植物とは違って、あまり馴染みのない花だと感じてしまう方も多いのではないでしょうか。じつはこのヘメロカリス、愛らしい花姿で育てやすいため、ぜひビギナーにおすすめしたい逸材です。ここでは、ヘメロカリスの基本情報について、詳しく解説していきます。
基本データ

ヘメロカリスは、ワスレグサ科ワスレグサ属(ヘメロカリス属)の多年草です。3月下旬頃から新芽を出して、茎葉を旺盛に伸ばす生育期に入ります。5月中旬〜8月に開花し、11月下旬頃になると地上部が枯れて休眠(品種の一部には常緑・半常緑で越冬するタイプもあります)。越年して3月下旬になるとまた新芽を出すので、枯れたと判断して抜き取ったりしないでください。一度植え付ければ、毎年開花してくれる、コストパフォーマンスの高い植物です。
ヘメロカリスの原産地は東アジアで、暑さや寒さに強く、丈夫で育てやすい性質です。草丈は30〜90cmほどで、花壇の中段〜後段に向いています。花姿はユリに似て、花茎を伸ばした頂部に開花。花色は赤、ピンク、オレンジ、黄色、白、複色などがあり、葉に斑が入る品種もあります。
別名「デイリリー」の由来

ヘメロカリスはユリの花によく似ており、開花したら1日でしぼんでしまう「一日花」のため、「デイリリー」という別名を持っています。このため、ユリ科に分類されることもあるようです。1つの花の命は1日限りと短いのですが、1本の花茎に10〜30個のつぼみをつけ、次から次へと咲くため、開花期が長いのが特徴。品種によって早咲きタイプや遅咲きタイプがあり、開花期にずれがあるので、ヘメロカリスで開花リレーをさせて、長く楽しむのも一案です。
ヘメロカリスは食べることもできる!

品種が多様に揃うヘメロカリスのうち、原生種の中には食べられるものもあるようです。ヘメロカリスの一種であるクワンソウは、眠りを誘う薬草として利用されてきた歴史があり、現在も「クワンソウ花茶」などが販売されています。オレンジ色の花を咲かせるクワンソウのつぼみを採取し、花弁を茹でてサラダや炒め物などにすると、彩りとして映えそうです。
ヘメロカリスの歴史
ヘメロカリスは、古くから人間の手によって栽培されてきた歴史を持っています。ここでは、人々に寄り添って生育してきたヘメロカリスの歴史についてご紹介しましょう。
欧米での歴史

東アジアが原産のヘメロカリスは、中国で古くから食用や薬用として栽培されてきました。それが16世紀のヨーロッパに渡って人気となり、園芸品種の作出に情熱を傾ける人々が登場。19〜20世紀に育種家として活躍したのは、ジョージ・イエルド氏やエイモス・ベリー氏などで、ヘメロカリスの発展に大きく寄与しました。さらにアメリカに渡るとアーロー・B・スタウト氏によって、ヘメロカリスの分類や育種が進められていきます。彼はヘメロカリスの聖典ともいえる『DAYLILIES』を著し、その特性や魅力を広く知らしめました。アメリカでは愛好家が多く品種改良が盛んで、毎年新品種が発表されています。
日本に来てからの歴史

日本にもヘメロカリスの原生種は分布していますが、園芸品種としてのヘメロカリスが伝わったのは、昭和初期頃とされています。しかし、日本では原生種に慣れ親しんできたために物珍しさを感じなかったのか、爆発的な人気を得ることはありませんでした。そんな中、育種家の平尾秀一氏はヘメロカリスの美しさに目をつけ、日本での品種改良を進めてきました。1988年に平尾氏が亡くなった後、交流のあった岡本守氏が遺志を引き継いで育種を続け、数百種にも及ぶ品種を維持して普及に努めています。
ヘメロカリスの主な品種

東アジア原産のユウスゲやカンゾウ類を親として交配した園芸品種を、主にヘメロカリスと呼んでいます。しかし、現在ではヘメロカリス属に属する植物全般を指すこともあるようです。ヨーロッパやアメリカを中心に品種改良が盛んに行われたことから、その品種は2万種にも及ぶといわれています。
花形はとがったような剣弁咲き、丸みを帯びた丸弁咲きなどのほか、花びらにフリルが入るものや、弁先がカールしたり、ねじれたりするもの、多数の花弁が重なる八重咲きなどがあります。花色も、複色咲きでは花弁の中央に目が入るもの、花弁とガクで色が異なるバイカラー、縁取りが入る覆輪咲き、ぼかしが入るものなど多様です。
クリムゾンレッドのスパイダー咲きが目を引く‘クリムゾンパイレーツ’、愛らしいピンクの八重咲き‘レイシードイリー’、長期間にわたって輝くような黄色い花が咲く‘エクセレントステラ’、黄色い花が咲いて葉に白い斑がストライプ状に入る‘ゴールデンゼブラ’などに人気があります。
ヘメロカリスの美しい花言葉

ヘメロカリスの花言葉は、「宣言」「とりとめのない空想」「苦しみからの解放」「微笑」「一夜の恋」「愛の忘却」「憂鬱が去る」「憂いを忘れる」など。「一夜の恋」や「愛の忘却」は、花が一日で終わってしまう様子を表現しているのでしょう。
ガーデニング初心者におすすめな理由

ヘメロカリスは、日本の気候と相性がよく、暑さ寒さに強い性質をもっています。土壌を選ばず乾燥や多湿にも適応し、生命力旺盛で一度植え付ければメンテナンスの手間がかかりません。そのため、特にガーデニングのビギナーにおすすめの植物です。成功体験が積み重なれば、ガーデニングがもっと楽しくなりますから、まずは育てやすく毎年花を咲かせてくれるヘメロカリスの栽培にチャレンジするのがおすすめです。
ヘメロカリスの育て方
これまで、ヘメロカリスを、その特性や歴史、品種、花言葉などさまざまな視点から解説してきました。さあ、ここからは実践編として、ヘメロカリスの上手な育て方についてご紹介します。それほど手のかかる植物ではありませんが、初心者でも管理のポイントがイメージできるように、詳しく解説していきます。
植え付け

ヘメロカリスの植え付けは、3〜4月か10〜11月が適期です。花苗店などで開花株を買い求めた場合は、植えたい場所へ早めに定植します。品種名が分かるようにネームプレートを挿しておくと便利です。
【地植え】
日当たり、風通しのよい場所を選び、水はけ、水もちのよい土づくりをします。植え場所に、直径、深さともに30cm程度の穴を掘りましょう。掘り上げた土に腐葉土や堆肥、緩効性肥料などをよく混ぜ込んで、再び植え穴に戻しておきます。
土づくりをしておいた場所に、入手した苗の根鉢より1〜2回り大きな穴を掘って、植え付けましょう。複数株を植え付ける場合は、40〜50cmの間隔を取ります。最後に、たっぷりと水やりをしておきましょう。
【鉢植え】
鉢の大きさは、6〜7号鉢に1株を目安にするとよいでしょう。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから培養土を半分くらいまで入れましょう。ヘメロカリスの苗をポットから取り出して鉢に仮置きし、高さを決めます。水やりの際にすぐあふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら用土を足していきます。最後に、鉢底からたっぷりと流れ出すまで、十分に水を与えましょう。寄せ植えの素材として、大鉢にほかの植物と一緒に植え付けてもOKです。
日当たりのよい場所を好みますが、真夏の酷暑の時期には半日陰の場所に移動するのが無難。暑さ寒さに強いので、一年を通して戸外に置いて越年できます。
水やり

【地植え】
植え付け後にしっかり根づいて茎葉をぐんぐん伸ばすようになるまでは、乾いたら水やりをしましょう。根づいた後は、地植えの場合は下から水が上がってくるので、ほとんど不要です。ただし、真夏に晴天が続いて乾燥しすぎる場合は水やりをして補いましょう。真夏は昼間に水やりすると水の温度が上がり株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に与えることが大切です。
【鉢植え】
日頃から水やりを忘れずに管理します。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。茎葉がややだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。開花期に乾燥させるとつぼみが落ちてしまうことがあるので、注意しましょう。
また、真夏は高温によって乾燥しやすくなるため、直射日光が当たらない半日陰の場所で管理し、朝夕2回の水やりを欠かさないようにします。真夏は気温が上がっている昼間に水やりすると、水の温度が上がり株が弱ってしまうので、朝夕の涼しい時間帯に行うことが大切です。冬は水やりを控えめにして管理します。
施肥(せひ)について

施肥とは、植物に肥料を与えることをいいます。ヘメロカリスは、一度植え付ければ毎年花を咲かせる息の長い植物なので、肥料を補って株の勢いを保ちましょう。施肥の適したタイミングは、3月上旬か10月上旬です。新芽が動き始める春頃にエネルギーを与えるためと、開花が終わって株が消耗した秋頃に養分を与えて回復を促すため、と覚えておくとよいでしょう。
【地植え】
施肥の適期に緩効性化成肥料を株周りに均一にばらまきます。スコップなどで軽く耕して土になじませ、その後の生育を促します。
【鉢植え】
施肥の適期に緩効性化成肥料を均一にばらまいて、株の勢いを保ちます。開花期の少し前から、10日に1度を目安に、液体肥料を水やり代わりに与えると花つきがよくなります。
病害虫について

害虫は、アブラムシやスリップス(アザミウマ)が新芽やつぼみに発生しやすくなります。見つけ次第捕殺して広がるのを防ぎましょう。植え付け時に適応する粒剤を土壌にまいておくと発生を防ぐことが可能です。また、新芽や葉を食い荒らすヨトウムシや地中の根を食害するコガネムシの幼虫も発生しがち。ヨトウムシは適応する薬剤をスプレーして退治するとよいでしょう。コガネムシの幼虫には、表土にまいて退治する薬剤を利用するのがおすすめです。
病気は、秋にさび病が発生することがあります。それで枯れることはほぼありませんが、周囲に蔓延するのを防ぐため、適応する殺菌剤を散布して防除しましょう。
花がら摘み

ヘメロカリスは、1の花は1日で終わってしまいます。そのまま放っておくと汚らしくなってしまうので、終わった花は早めに摘み取りましょう。つぼみがつかなくなった花茎は、付け根から切り取ります。
花がらをまめに取り、株まわりを清潔に保つことで、病害虫発生の抑制につながります。また、いつまでも終わった花を残しておくと、種をつけようとして株が消耗し、老化が早まって花数が少なくなってしまうので注意。花がらをまめに摘み取ると、次世代を残そうとして次から次につぼみがつき、長く咲き続けてくれます。
植え替え・株分け

【地植え】
一度植え付けたら、5〜6年は植えっぱなしにしてもかまいません。しかし、大株に育って地下茎が込んでくると生育が衰えるので、掘り上げて植え替えましょう。掘り上げた際に4〜5芽つけて株を切り分ける「株分け」をし、植え直します。株の若返りにもつながり、切り分けた分だけ株を増やすことができます。株分けするメリットは、同じ花が見られるクローンが増えることです。
【鉢植え】
鉢栽培の場合は、根が鉢底からはみ出して根詰まりし、生育が鈍くなっているようなら、植え替えましょう。鉢から株を出して根をほぐし、1〜2回り大きな鉢に植え替えます。大株にしたくない場合は、4~5芽つけて株を切り分ける「株分け」をし、数鉢に植え直すとよいでしょう。
パーフェクトプランツのヘメロカリスでガーデニングを楽しもう!

この記事では、ヘメロカリスの基本情報から、その品種改良の歴史、花言葉、詳しい育て方まで、網羅してきました。ヘメロカリスはとても丈夫で育てやすく、品種の多彩さもあって、「パーフェクトプランツ」と呼ばれるほど評価の高い植物です。ぜひ庭やコンテナ栽培に取り入れて、美しい花姿を楽しんではいかがでしょうか?
Credit
文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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