ほったらかしでも鈴なり? 初心者におすすめの「最強柑橘」キンカンの育て方
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“のどの痛みにはキンカン”と昔から親しまれてきた万能果樹、キンカン。じつは、柑橘類のなかでも最も寒さに強く、ほったらかしでもよく実がなりやすい初心者向きの果樹です。皮ごと食べて風邪予防にもなる、冬の庭の強い味方「キンカン」の育て方から栽培向きの品種、活用法までを栽培のプロが解説します。
目次
キンカンの基本情報

植物名:キンカン
学名:Citrus japonica
英名:Kumquat、Cumquat
和名:金柑(きんかん)、金橘(キンキツ)
科名:ミカン科
属名:ミカン属
原産地:中国
形態:常緑低木
小さい果実を皮ごと食べるキンカンは、古くから親しまれてきた柑橘類です。受粉樹は必要なく、1本で実がなります。
樹高も2mほどとあまり大きくならないので、庭木として地植えにしたり、鉢植えにして楽しんだり、家庭で栽培するのにも向いています。また、適地に地植えすると放任気味の管理であってもよく育ち、たくさんの実を付けます。丈夫で剪定に強いので、実のなる生け垣として植えるのもおすすめです。
晩秋以降、色づいた果実から順に収穫をしましょう。果実は、ヨーロッパなどでよく栽培されるナガキンカン。Scarc/Shutterstock.com
キンカンの特徴
園芸分類:果樹
開花時期:7〜9月
収穫時期:2月中旬〜5月
樹高:約2m
耐寒性:普通
耐暑性:強い
花色:白
寒さには弱いとされる柑橘類の中で最も耐寒性が強く、耐寒温度の目安はマイナス5℃程度とされます。東北や北海道の寒冷地では屋外での越冬は難しいですが、東北の海沿いなど比較的温暖な地域や、関東地方以西では露地栽培できます。晩秋から黄色い実がたくさんなり、春まで実が落ちません。ただし遅くに収穫すると水分が抜けていたり、寒さなどで傷んでしまうことがあるので、収穫を先延ばしにしないほうがよいでしょう。
花は7~9月に3~4回、断続的に長期間開花します。そのため果実の大きさにバラツキがありますが、初期に実った果実のほうが大きくて高品質です。
キンカンには食用と観賞用品種がありますが、一般に流通している品種のほとんどは、ネイハキンカンです。果実の大きいオオミキンカンなども苗木がよく販売されますが、生食したい場合はネイハキンカンを育てるのがおすすめです。
皮ごと食べて食物繊維も摂れるキンカンの魅力
キンカンの果実は、年末〜2月に多く流通します。生産地は宮崎県が7割を占め、2割が鹿児島県です。また宮崎県のビニールハウスなどでは完熟したものを収穫し、甘味が強く高品質な果実が流通しています。
ビタミンCやEが多く含まれ、皮ごと食べられるので貴重な食物繊維もたくさん取り入れることができます。ほかにポリフェノール、クエン酸などが含まれ、栄養成分が豊富です。
キンカンの蜂蜜漬け

のどの傷みや咳、初期の風邪などに効果があるとして、キンカンは昔から薬用にも使われてきました。キンカンの蜂蜜漬けは、皮に含まれる成分のヘスペリジンが炎症を抑え、蜂蜜の抗菌作用も期待できます。
作り方は簡単で、キンカンをよく洗い、串などで穴を多くあけてから蜂蜜に漬けるだけで出来上がりです。果実は空気に触れないよう、たっぷりの蜂蜜で漬けてください。3~4日で食べ頃になります。冷蔵庫で保存すれば、1カ月程度持ちます。
キンカンの仲間6選
以前はキンカン属(Fortunella)とされていましたが、現在はミカン属に分類されています。キンカンとして入手可能な6種類の仲間をご紹介します。
ネイハキンカン Citrus japonica ( = Fortunella crassifolia )

ニンポウキンカン(寧波金柑)や、メイワキンカン(明和金柑)などの別名があります。果実は球形〜卵形で重さは11〜13gと大きく、酸味や苦みが少ないので生食に向きます。
種無しキンカン・プチマル
種子がほとんどない人気の品種で、苗木の流通も多いです。皮に苦みもなく甘味が強い、生食して美味しいキンカンです。ネイハキンカンとナガキンカンの交配種で、やや楕円形の果実は重さ8~11gです。
ナガキンカン Citrus japonica ( = Fortunella margarita )

高さ3mほどとやや大型になり、トゲはほとんどありません。楕円形の果実の重さは10〜12gで、果肉は酸味が強く、主に観賞用として育てられます。実が大きくたくさん収穫できるので、蜂蜜漬けやジャムにするとよいでしょう。
マルキンカン Citrus japonica ( = Fortunella japonica )

名前のとおり、丸く小さい果実で、重さは6~8g。果肉には酸味があります。
大実キンカン Citrus × obovata ( = Fortunella obovata )

福州キンカンという別名があります。果実が大きく、重さは30~40gで見栄えがします。酸味が強く、生食には適しません。
キンカンライム Citrofortunella ×floridana

マルキンカンとキーライム(メキシカンライム)の交配種で、耐寒性は両種の中間くらいです。ライムクアット(Limequat)という英名があります。木が小さくても実つきがよく、四季咲き性が強い性質です。
キンカンライムは寒さに弱いので、冬は鉢植えを室内に置いたり、ビニールハウス内で育てたほうがよいでしょう。木が小さい場合は特に保温に配慮してください。
実が青いうちはライムのような味ですが、黄色く熟すとレモンのような味に。完熟すると甘い品種もあります。
キンカンの栽培12カ月カレンダー
開花時期:7〜9月
植え付け・植え替え:3月下旬〜5月上旬
肥料:2~3月、6~7月、9月
剪定:3~5月
収穫時期:2月中旬〜5月
キンカンの栽培環境

適した環境・置き場所
1日中日光が当たる日なたの水はけのよい場所が適します。雨が降ると水が溜まるような水はけの悪い場所は避けてください。水はけがよければ、あまり土壌を選ばず育ちます。
また強風がよく当たる場所は嫌いますが、風通しのよい環境を好みます。風通しが悪いと、病害虫の発生が多くなります。
生育温度
15℃以上の温暖な気候が適し、5~10月が生育期の目安です。暑さにも強く、日本の夏でも弱ることはほとんどありません。
キンカンの植え付け・植え替え

用土
比較的用土を選びません。多くの植物に使える一般的な培養土でよいでしょう。
植え付け(地植え)
植え付けの適期は、3月下旬~5月上旬です。植え付け1~2週間前に、直径・深さ共に50cmくらいの植え穴を掘ります。掘った土に化成肥料200g、掘った土の3割くらいの量の堆肥か腐葉土を加えてよく混ぜ、埋め戻します。
苗木は根を軽くほぐし、接ぎ木部分が埋まらないよう、やや浅めに植え付けてください。また、水やりすると埋め戻した土が沈むので、やや高めに植えるようにします。水をたっぷり与え、支柱を立てて完成です。
鉢植えの植え替え
生育が旺盛なので、1~2年に1回、3月下旬~5月上旬に植え替えをしてください。根鉢の底の部分を軽くくずし、1回り大きな鉢に植えます。
キンカンの育て方・日常の手入れ

水やり
鉢植えは、表土が乾いたら水やりしてください。
地植えの場合は、根付けば水やりはほとんど不要です。ただし夏に雨が長期間降らず、土を5cmほど掘り返しても乾いている場合は水やりしてください。夏に乾燥しやすい場所では、敷き藁などのマルチングをするとよいでしょう。
肥料
果実が多くなるので、木を弱らせないように肥料を与えてください。
鉢植えで育てている場合は、芽が出る前の寒肥として2~3月に、また開花前から開花初期の6~7月と、果実が肥大を始める9月に、3要素が等量の緩効性化成肥料や、骨粉入り油かすを与えてください。
地植えしている場合は、2~3月と9月に肥料を与えればよいでしょう。
注意する病害虫
適地で育て剪定を適切に行えば、病害虫の発生は非常に少ないです。
日当たり・風通しの悪い場所で管理したり、枝葉が密生するとカイガラムシやアブラムシが発生しやすいです。カイガラムシは、見つけ次第早めに水を強く当てるなどして落とします。アブラムシは、オーガニック栽培で使用できる薬剤で比較的防除しやすいです。
よく日光に当て、周囲に密集して植物を置くのは避けてください。また剪定なども適切に行い、予防に努めることが大切です。
キンカンの手入れ作業

剪定
自然に樹形が整いますが、枝が密集して付きます。そのまま放っておくとカイガラムシなどの害虫が発生しやすく、果実の品質も悪くなりがちです。3~5月に、木の内部まで日光が当たるように間引き剪定するとよいでしょう。
摘果
9月以降に全体の半分くらいを摘果すると、実が大きくなります。また摘果しないと、翌年実がつかない場合もあります。小さな実から摘果して大きな実を残し、実が密集しすぎている部分も多めに摘果してください。目安として10~15cmの枝に2~3個の果実が付くようにします。
キンカンの収穫
果実が黄色くなれば、収穫できます。できるだけ樹上で完熟させると甘味が強くなります。ただし霜にあたると果実も傷むので、寒い地域は早めに収穫するか、鉢植えは室内の日当たりのよい場所に移動するとよいでしょう。
花も実も、健康効果も。キンカンを育てて楽しむ「実り」のある暮らし

キンカンは丈夫でよく実がなり、初心者にもおすすめの柑橘です。鉢植えでもよく育つので、ベランダなどで栽培を楽しむことができます。
夏頃に咲く白い花は長期間咲き続け、たくさんの黄色い果実は、暗くなりがちな秋から冬の庭を明るく彩ります。果実は栄養豊富で、樹上で完熟させたものは甘く、育てているからこその味わいです。また蜂蜜漬けは、初期の風邪やのどによい効果が期待できる飲み物としても美味しく味わうことができます。
ぜひキンカンを自宅で育てて、暮らしを楽しんでください。
Credit
文 / 小川恭弘 - 園芸研究家 -

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