【初心者向け】チャービルの育て方|料理映え&香り抜群の「美食家のハーブ」を家庭菜園で楽しもう!

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料理の見た目も香りもワンランクアップ! フランス料理に欠かせないチャービルは、繊細でやわらかな葉とほんのり甘い香りが魅力のハーブです。冷涼な気候を好み、プランターでも手軽に育てられるので、ガーデニング初心者にもおすすめ。葉も花も可愛らしいので、ナチュラルガーデンの彩りにもぴったりです。本記事では、秋と春の種まきで2カ月で収穫できるチャービルの特徴や育て方、収穫のコツまで、分かりやすくご紹介します。
目次
チャービルの基本情報

植物名:チャービル
学名:Anthriscus cerefolium
英名:chervil、French parsley、Garden chervil
和名:ウイキョウゼリ(茴香芹)
その他の名前:セルフィーユ
科名:セリ科
属名:シャク属
原産地:ヨーロッパ南東部〜西アジア
形態:一年草
チャービルはセリ科シャク属のハーブで、主に茎葉を収穫します。学名はAnthriscus cerefolium。チャービル(chervil)は英名で、別名のセルフィーユはフランス名です。和名はウイキョウゼリで、漢字で「茴香芹」と書きます。原産地はヨーロッパ南東部〜西アジアで、冷涼な気候を好み、高温や乾燥が苦手。一年草でライフサイクルは短いものの、春まきと秋まきができ、種まきから2カ月ほどで収穫できます。
チャービルの花や葉の特徴

園芸分類:ハーブ
開花時期:6〜7月
草丈・樹高:20〜60cm
耐寒性:普通
耐暑性:やや弱い
花色:白
チャービルの開花期は6〜7月で、花色は白。一つひとつの花は小さいものの、花茎を伸ばした先端に集まって咲くので、レースのような愛らしい花姿を楽しめます。葉は羽状複葉で、小葉は深く切れ込みが入り、繊細な印象です。収穫を目的とするなら、花が咲くと茎葉がかたくなるので花芽がついたらいち早く摘み取るようにしましょう。それでも株が老化して茎葉がかたくなったら収穫をやめて花姿を楽しむのもおすすめ。レースフラワーのような花は楚々とした風情で、ナチュラルガーデンなどで活躍しそうです。草丈は20〜60cmほどですが、収穫は草丈20〜25cmほどの若くてやわらかいうちからスタートします。
マイルドで甘い香りの「美食家のパセリ」

チャービルはローマ時代の文献に記録が残されており、西洋では古くから親しまれてきたハーブの一つです。キリスト教では体を浄化すると伝わっており、復活祭の前にいただく料理に使用されてきた歴史もあります。
チャービルはセリ科のハーブの中でもマイルドでほんのり甘い香りが特徴で、肉料理や魚料理、卵料理などと相性がよく、繊細な葉姿は料理の彩りとして本領を発揮します。クセが強すぎないため、サラダにたっぷり入れるのもおすすめ。熱を加えると香りがしなくなるので、生のまま使いましょう。また、タラゴン、チャイブ、パセリなどと相性がよく、ほどよいブレンドでミックスハーブにし、みじん切りにして、オムレツや魚のソース、ドレッシングに加えるのも一案です。
チャービルの栄養価

チャービルの葉には、ビタミンB群、ビタミンC、鉄、マグネシウム、カロテンなどが含まれています。
チャービルの名前の由来や花言葉

チャービルの名前はラテン語cerefoliumに由来するとされており、その語源にはいくつかの説があります。1つは、葉の質感にちなんで「ロウ質の葉」を意味するという説。もう1つは、ギリシャ語の chairephyllonに由来し、「chairein」(喜ぶ)と「phyllon」(葉)から「喜びの葉」と解釈する説です。
チャービルの花言葉は「正直」「誠実」などです。
チャービルとルートチャービルの違い

日本ではあまり知られていませんが、フランスで普及している根菜類に、イモ状の根を利用する「ルートチャービル」があります。クルミとニンジンをミックスしたような風味が特徴で、スープなどに利用されます。しかし、ここでご紹介しているチャービルとは種類が異なり、ルートチャービルの葉は食用には適さないので、混同しないように注意しましょう。
チャービルの栽培12カ月カレンダー

開花時期:6〜7月
種まき:3月中旬〜6月上旬(春まき)、9月中旬〜10月中旬(秋まき)
植え付け:6月頃(春まき)、10月頃(秋まき)
肥料: 7月頃(春まき)、11月頃(秋まき)
チャービルは冷涼な気候を好み、発芽適温は15〜20℃、生育適温は10〜20℃です。年に2回、春まき(3月中旬〜6月上旬)と秋まき(9月中旬〜10月中旬頃)の二期作ができ、種まきから約2カ月後から収穫できます。春まきの場合、暑くて乾燥する環境では花がつきやすいので、半日陰の涼しい場所で管理するのがポイントです。
チャービルの栽培環境

日当たり・置き場所
【日当たり/屋外】風通しのよい場所を好みます。直射日光が強く当たる場所では葉が傷みやすいため、半日陰か明るい日陰での栽培に向きます。
【日当たり/屋内】屋外での栽培が基本です。
【置き場所】冷涼な気候を好み、高温や乾燥に弱いので、明るい半日陰の場所で管理します。また適した土壌酸度はpH6.0〜7.0です。必要であれば植え付けの2〜3週間以上前に苦土石灰を散布して土壌改良をしておくとよいでしょう。肥沃で水はけ、水もちのよいふかふかとした土壌を好みます。
耐寒性・耐暑性
チャービルの生育適温は10〜20℃です。夏の暑さや強い直射日光で傷みやすいため、夏は風通しのよい半日陰か明るい日陰で管理するとよいでしょう。耐寒性はマイナス5℃程度ありますが、霜に当たると葉が傷むので注意しましょう。
チャービルの育て方のポイント
用土

【地植え】
種まきの2〜3週間以上前に、畝を作る場所に苦土石灰を1㎡当たり約100g散布し、よく耕して土に混ぜ込んでおいてください。さらに植え付けの1〜2週間前に、1㎡当たり堆肥2㎏、緩効性化成肥料(N-P-K=8-8-8)約100gを均一にまいて、よく耕しましょう。
畝の幅を約90cm取って、高さ10cmほどの畝を作ります。畝の長さは作りたい量や広さに応じて自由に決めてかまいません。表土は平らにならしておきましょう。土づくりは植え付け直前ではなく、数週間前に行っておくことで、分解が進んで土が熟成し、植物の生育がよくなります。
【鉢植え】
野菜の栽培用にブレンドされた市販の培養土を利用すると便利です。
種まき

種まきからスタートするメリットは、輸送などによる苗への負担がかからず、環境に馴染みやすいことです。敷地が広くてたくさんの苗が欲しい場合には、コストカットにもなります。ただし、チャービルの苗は花苗店やホームセンターなどで入手できます。手軽にスタートしたいなら、苗の植え付けからのスタートがおすすめです。「2〜3株あれば十分だから、苗の植え付けから始めたい」という方は、次項に進んでください。
チャービルの種まき適期は「春まき」が3月中旬〜6月上旬で、「秋まき」が9月中旬〜10月中旬頃。発芽適温は15〜20℃です。
種まきから栽培する場合、菜園などに種を直まきすると幼苗のうちに病気や虫の害にあいやすく、天候不順に左右されやすくなります。セルトレイに清潔な市販の種まき用の培養土を使って種をまき、適した場所で管理すると、より確実です。
種まき用のセルトレイに市販の種まき用の培養土を入れて水で湿らせ、数粒ずつ重ならないようにまきます。好光性の性質のため覆土はごく薄くしましょう。霧吹きで水をかけるか、容器に水を張ってセルトレイの底から水を吸水させるなどし、発芽までは半日陰に置き、乾燥させないように水の管理をしてください。発芽したら日の当たる場所に移動し、苗が込み合っている部分などがあれば抜き取って間引きましょう。もったいないからといって密になっている部分をそのままにしておくと、ヒョロヒョロと間のびした徒長苗になってしまうので、ご注意を。間引いた苗はベビーリーフとして利用できます。本葉が4〜5枚ついたら、菜園などに定植しましょう。
植え付け
チャービルの苗の植え付け適期は、種まきをした場合、春まきが6月頃、秋まきが10月頃です。
チャービルの苗は花苗店やホームセンターなどで入手できます。苗を選ぶ際は、ヒョロヒョロと頼りなく伸びているものや、虫食い跡があるものなどを避け、節間が短くがっしりと締まって勢いのあるものを選びましょう。
【地植え】
1〜2週間前に土づくりしておいた畝が少しくずれていたら、幅約60cm、高さ約10cmになるようにもう一度クワを入れて調整し、表土を平らにしておいてください。2列植えとし、列の間隔(条間)は約30cm取ります。1列ごとに20〜30cmの株間を取って穴を掘り、苗を植え付けていきます。最後にたっぷりと水やりをしておきましょう。
【鉢植え】
5〜6号鉢に1株、標準サイズのプランターに5〜6株を目安に植え付けます。
底穴に鉢底網を敷き、底が見えなくなるくらいまで鉢底石を入れ、その上に野菜用にブレンドされた培養土を入れます。水やりの際に水があふれ出ずに済むように、ウォータースペースを鉢縁から2〜3cm残しておきましょう。苗の根鉢より一回り大きな穴を掘り、軽く根鉢を崩して苗を植え付けます。最後に底から水が流れ出すまで、たっぷりと水やりをしましょう。
水やり

水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために茎葉全体にかけるのではなく、株元の土を狙って与えてください。
真夏は、気温が高い昼間に行うと、すぐに水の温度が上がってぬるま湯のようになってしまいます。すると株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に与えることが大切です。
【地植え】
下から水が上がってくるので、天候にまかせてもよく育ちます。ただし、雨が降らずに乾燥が続くようなら、水やりをして補いましょう。
【鉢植え】
日頃の水やりを忘れずに管理します。ただし、いつもジメジメとした状態にしておくと、根腐れの原因になってしまいます。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。茎葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。
肥料

【地植え】
苗を植え付けた後、1カ月に1度を目安に1㎡当たり30gを目安に緩効性化成肥料を株の周囲にばら撒きます。その際に株の周囲をクワで軽く耕し、株元に土を寄せておきましょう。
【鉢植え】
苗を植え付けた後、1カ月に1度を目安に緩効性化成肥料をひとつまみ程度、株の周囲にばら撒きます。その際に株の周囲をスコップで軽く耕し、土に馴染ませておきましょう。
注意する病害虫

【病気】
チャービルに発生しやすい病気は、うどんこ病、灰色かび病などです。
うどんこ病は、カビによる伝染性の病気です。葉やつぼみに発生しやすく、表面が白く粉を吹いたような状態になり、放置するとどんどん広がって光合成ができなくなり、やがて枯死してしまいます。窒素肥料を施しすぎたり、茎葉が繁茂しすぎて風通しが悪くなったりしていると、発病しやすくなります。うどんこ病が出たら病気の葉を摘み取って処分し、適用のある殺菌剤を葉の表と裏に散布して、蔓延するのを防ぎましょう。
灰色かび病は花や葉に発生しやすく、褐色の斑点ができて灰色のカビが広がっていきます。気温が20℃ほど、かつ多湿の環境で発生しやすい病気です。ボトリチス病、ボト病などとも呼ばれています。風通しが悪く込み合っていたり、終わった花や枯れ葉を放置していたりすると発生しやすくなるので注意。花がらをこまめに摘み取り、茎葉が込み合っている場合は、間引いて風通しよく管理しましょう。
【害虫】
チャービルに発生しやすい害虫は、アブラムシ、ハダニなどです。
アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mm程度の小さな虫で繁殖力が大変強く、発生すると茎葉にびっしりとついて吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目もよくないので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、水ではじいたりして防除しましょう。
ハダニは、葉裏に寄生して吸汁する害虫です。体長は0.5mmほどと大変小さく、黄緑色や茶色い姿をしています。名前に「ダニ」がつきますが、クモの仲間です。高温で乾燥した環境を好み、梅雨明け以降に大発生しやすいので注意が必要。繁殖力が強く、被害が大きくなると、葉にクモの巣のような網が発生することもあります。ハダニは湿気を嫌うため、予防として高温乾燥期に葉裏にスプレーやシャワーなどで水をかけておくとよいでしょう。
収穫

【地植え・鉢植えともに】
春まきした場合の収穫適期は5月上旬〜7月下旬、秋まきした場合は、11月上旬〜12月上旬頃です。
草丈が20〜25cmになったら、適宜収穫します。外葉から順にハサミで切り取っていきましょう。一度にたくさん収穫すると株が弱るので、バランスを見ながら行います。花がつき始めたら、茎葉がかたくなるので一気に刈り取って収穫してもよいでしょう。
日常のお手入れ

【摘心】
チャービルの花が咲くと、茎葉がかたくなって食感も風味も悪くなるので、花芽やつぼみが見られたら早めに摘み取っておきます。
植え替え
チャービルは一年草で、開花後は枯死するため植え替えの必要はありません。株が弱ってきたら、抜き取って処分しましょう。
夏越し
強い日差しにさらされると茎葉がかたくなってしまいます。菜園では寒冷紗などを設置して日除けをし、プランター菜園では風通しのよい半日陰に移動しましょう。
増やし方

チャービルは種まきをして増やします。チャービルの開花期が終わる頃に花を摘まずにそのままにしておき、実をつらせます。茶色く変色して完熟したら種子を採取し、適期に種まきします。すぐに種まきをしない場合は密閉袋に入れて冷暗所で保存しておきましょう。ただし、あまり長く置くと発芽率が下がるので注意。種まきの方法は、前述の「種まき」の項目を参照してください。
チャービルの育て方を知りフレッシュハーブのある生活を楽しもう

チャービルは「美食家のパセリ」とも呼ばれ、パセリと同様にさまざまな料理に活用できるハーブです。放任してもよく育ち、プランター栽培も容易でビギナーにもおすすめ。香り高いチャービルを、ぜひ庭やベランダに迎え入れてみてください。
Credit
文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。2026壁掛けカレンダー『ガーデンストーリー』 植物と暮らす12カ月の楽しみ 2026 Calendar (発行/KADOKAWA)好評発売中!
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