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エンジェルストランペット完全ガイド|豪華な花と育てるコツ・危険な毒性まで

エンジェルストランペット完全ガイド|豪華な花と育てるコツ・危険な毒性まで

Khairil Azhar Junos/Shutterstock.com

ラッパのように豪華な花を咲かせる「エンジェルストランペット」。強健でよく育ち、夏から秋にかけて咲くその姿はまさに圧巻で、庭の主役にもなります。ただし、美しい見た目とは裏腹に、強い毒性を持つ有毒植物でもあるため、育てるには注意が必要です。この記事では、エンジェルストランペットの特徴や正しい育て方、剪定や越冬のコツ、そして誤食を防ぐための注意点まで、詳しく解説します。

エンジェルストランペットの基本情報

エンジェルストランペット
volkova natalia/Shutterstock.com

植物名:エンジェルストランペット
学名:Brugmansia
英名:Angel’s Trumpet、Brugmansia
和名:キダチチョウセンアサガオ(木立朝鮮朝顔)
その他の名前:ブルグマンシア、エンゼルトランペット、ダチュラ
科名:ナス科
属名:ブルグマンシア属(キダチチョウセンアサガオ属)
原産地:熱帯アメリカ
形態:低木

エンジェルストランペットは、ナス科ブルグマンシア属(キダチチョウセンアサガオ属)の花木です。原産地は熱帯アメリカで、寒さに弱い性質を持ち、最低気温が0℃以下になる地域では、冬越し対策が必要です。とはいえ強健な性質で放任してもよく育つので、初心者でも育てやすい花咲く樹木の1つです。また、樹高は1~3mほどの低木で、あまり大きくなりすぎず扱いやすいのも長所といえるでしょう。注意したいのは花、葉、樹液すべてに毒があることで、花がら摘みや剪定などを行う際には、ゴム手袋などを着用して作業する必要があります。

以前はダチュラ属に分類されていたため、今でもダチュラと呼ばれることがありますが、現在はキダチチョウセンアサガオ属(ブルグマンシア属)に分類されています。

エンジェルストランペットの花や葉の特徴

エンジェルストランペット
54613/Shutterstock.com

園芸分類:庭木
開花時期:5〜11月
草丈・樹高:1〜3m
耐寒性:やや弱い
耐暑性:普通
花色:白、ピンク、オレンジ、黄

ラッパ形の大きな花が下向きに咲くのが特徴的で、花径は25~30cmほどです。開花期は5~11月で、花色は白やピンク、オレンジ、黄色などがあります。数輪ずつ連なって咲く姿は迫力があり、大株に育つと一度に50~100輪も咲かせることも。品種によっては夕方から香りを漂わせるものもあります。花が終わった後には、トゲをまとった丸い実がつき、熟すと果皮が割れて中の種子を飛ばします。葉は10~20cmほどで、楕円形で先が尖り、縁がギザギザとした鋸歯があります。本来は常緑ですが、寒いと落葉して枝が枯れます。霜や凍結に注意すれば、地上部が枯れても株自体は枯れることはなく、春に暖かくなると株元から新しく芽を吹きます。

植物全体、特に根や種子に強い毒性があるため扱いには注意が必要です。

エンジェルストランペットの名前の由来と花言葉

エンジェルストランペット
Sanatana/Shutterstock.com

エンジェルストランペットは、当初チョウセンアサガオとして日本に伝わりました。チョウセンアサガオ属(ダチュラ属)に分類されていたので「チョウセンアサガオ」「ダチュラ」などと呼ばれることもありますが、現在は草本性で主に一年草のものをダチュラ(チョウセンアサガオ)、木本性で複数年生育するものをブルグマンシア(キダチチョウセンアサガオ)として区別し、近年はほとんど英名の「エンジェルストランペット」で流通するようになっています。学名はブルグマンシアですが、かわいらしい響きのエンジェルストランペットの通名が浸透しており、学名ではあまり流通していません。エンジェルストランペットという名前の由来は、淡い黄色いラッパ型の花が、天使の持つトランペットのように見えたことからといわれています。

エンジェルストランペットの花言葉は「愛嬌」「偽りの魅力」「変装」「あなたを酔わせる」など。「愛嬌」はかわいらしい花の姿をイメージしたもの。一方「偽りの魅力」や「変装」は、愛らしい花姿ながらも毒を持つことに由来します。「あなたを酔わせる」は、エンジェルストランペットが持つ毒に幻覚作用があるためです。

ラッパ形の花を咲かせるほかの植物

エンジェルストランペット以外にも、ラッパ形の花を咲かせる植物はたくさんあります。そのうち魅力的な花を2つご紹介しましょう。

チョウセンアサガオ(ダチュラ)

チョウセンアサガオ
ediy van de moel/Shutterstock.com

チョウセンアサガオは、エンジェルストランペットと同じナス科で花姿も似ていますが別種で、ナス科チョウセンアサガオ属に分類されています。ガーデニングで広く栽培されるのは主に一年草ですが、多年草もあり、各地で野生化したものも見られます。チョウセンアサガオは大きなラッパ形の花を咲かせますが、花が下にぶら下がるエンジェルストランペットとは異なり、花が上を向いて咲きます。エンジェルストランペット同様に毒があるため、取り扱いには注意が必要です。

テッポウユリ

テッポウユリ
Takakophoto/Shutterstock.com

テッポウユリは、ユリ科ユリ属で日本の固有種です。開花時期は6~8月で、直径10~15cmほどのラッパに似た白い花を咲かせます。甘い香りを放ち、数輪咲く様子も豪華で海外でも人気。地植えにしている場合は2年に1回は植え替えが必要ですが、連作を嫌うので、球根を掘り上げたら前年と同じ場所には植え付けないようにしましょう。

エンジェルストランペットの栽培12カ月カレンダー

開花時期:5〜11月
植え付け・植え替え:4〜6月
肥料:4〜10月

エンジェルストランペットの栽培環境

エンジェルストランペット
imageBROKER.com/Shutterstock.com

日当たり・置き場所

【日当たり/屋外】日当たり、風通しのよい場所を好みます。あまり日当たりがよくない場所では、花つきが悪くなってしまうので注意してください。ただし、夏は半日陰のできるだけ涼しい場所に置くか、遮光するとよいでしょう。

【日当たり/屋内】戸外での栽培が基本ですが、寒さにはやや弱いため、冬は室内や温室に取り込んで管理しましょう。

【置き場所】有機質に富んで水はけ・水もちがよく、肥沃な土壌を好みます。また、強風が吹きつける場所では葉や花が傷みやすくなるので、風の通り道となる場所は避けたほうが無難です。また、生育旺盛で大きくなりやすいため、スペースを確保して植え付けます。

耐寒性・耐暑性

エンジェルストランペットは、寒さにはやや弱い性質を持ち、耐寒性は0〜マイナス3℃程度。ほとんど凍結することがない暖地であれば戸外で越冬できますが、凍結する寒冷地では鉢栽培にして、季節に応じて適した場所で移動しながら管理するとよいでしょう。また、耐暑性は普通程度にありますが、高山に自生している種が多く、日本の夏の極端な暑さでは弱ってしまうこともあります。品種により真夏の強い日差しに弱いものもあるので、購入苗についているラベルを確認して適した場所を選ぶようにし、必要に応じて涼しい半日陰に移動したり遮光したりして夏越しさせるとよいでしょう。

エンジェルストランペットの育て方のポイント

用土

土
blueeyes/Shutterstock.com

【地植え】

植え付けの約2週間前に腐葉土や堆肥、緩効性肥料を混ぜ込んで、よく耕しておきます。土に肥料などを混ぜ込んだ後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。

【鉢植え】

市販の花木用培養土を利用すると手軽です。自身で用土を配合する場合は、赤玉土小粒6、腐葉土2、ピートモス2の割合で混ぜ合わせて用いるとよいでしょう。

水やり

水やり
Ivanko80/Shutterstock.com

水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために枝葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。

真夏は、気温が高い昼間に行うと、すぐに水の温度が上がってぬるま湯のようになってしまいます。すると株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に与えることが大切です。

また、真冬は、気温が低くなる夕方に行うと凍結の原因になってしまうので、十分に気温が上がった真昼に与えるようにしましょう。

【地植え】

根付いた後は下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らない日が続くようなら水やりをして補います。

【鉢植え】

日頃の水やりを忘れずに管理します。ただし、いつも湿った状態にしていると根腐れの原因になるので、与えすぎに注意。土の表面が乾いたのを見はからってから、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。茎葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。特に開花期は水を欲しがるので、水切れしないように注意しましょう。

肥料

肥料
Singkham/Shutterstock.com

【地植え・鉢植えともに】

植え付け時には、元肥として緩効性肥料を施しておきましょう。

追肥は4〜10月の成育期に、月に1度を目安に緩効性肥料を株の周囲にばら撒き、スコップなどで軽く表土を耕し、土に馴染ませます。株に勢いがないようであれば、液肥を施して様子を見守りましょう。

注意する病害虫

アブラムシ
nechaevkon/Shutterstock.com

【病気】

エンジェルストランペットに発生しやすい病気は、うどんこ病、灰色かび病などです。

うどんこ病は、カビによる伝染性の病気です。葉、新梢、つぼみに発生しやすく、表面が白く粉を吹いたような状態になり、放任するとどんどん広がるので注意。対処せずにそのままにしておくと光合成ができなくなり、やがて枯死してしまいます。窒素肥料を施しすぎたり、枝葉が繁茂しすぎて風通しが悪くなったりしていると、発病しやすくなります。うどんこ病が出たら病気の葉を摘み取って処分し、適用する殺菌剤を葉の表と裏に散布して、蔓延するのを防ぎましょう。

灰色かび病は花や葉に発生しやすく、褐色の斑点ができて灰色のカビが広がっていきます。気温が20℃ほど、かつ多湿の環境下にて発生しやすい病気です。ボトリチス病、ボト病などとも呼ばれています。風通しが悪く込み合いすぎていたり、終わった花や枯れ葉を放置していたりすると発生しやすくなるので注意。花がらをこまめに摘み取り、茎葉が込み合いすぎている場合は、間引いて風通しよく管理しましょう。

【害虫】

エンジェルストランペットに発生しやすい害虫は、アブラムシ、ハダニなどです。

アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mm程度の小さな虫で繁殖力が大変強く、発生すると茎葉にびっしりとついて吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目もよくないので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、水ではじいたりして防除しましょう。虫が苦手な方は、スプレータイプの薬剤を散布して退治するか、植え付け時に土に混ぜ込んで防除するアブラムシ用の粒状薬剤を利用するのがおすすめです。

ハダニは、葉裏に寄生して吸汁する害虫です。体長は0.5mmほどと大変小さく、黄緑色や茶色い姿をしています。名前に「ダニ」がつきますが、クモの仲間です。高温で乾燥した環境を好み、梅雨明け以降に大発生しやすいので注意が必要。繁殖力が強く、被害が大きくなると、葉にクモの巣のような網が発生することもあります。ハダニは湿気を嫌うため、予防として高温乾燥期に葉裏にスプレーやシャワーなどで水をかけておくとよいでしょう。

エンジェルストランペットの詳しい育て方

苗の選び方

苗を購入する際は、葉色が鮮やかで、株元がしっかりとしていてぐらつきがないものを選ぶとよいでしょう。

植え付け・植え替え

ガーデニング
Jurga Jot/Shutterstock.com

エンジェルストランペットの植え付け・植え替えの適期は4〜6月です。ただし、植え付け適期以外にも苗は出回っているので、入手したら真夏や真冬を除き、早めに植え付けるとよいでしょう。

【地植え】

土づくりをしておいた場所に、苗の根鉢よりも一回り大きな穴を掘り、軽く根鉢を崩して植え付けます。最後にたっぷりと水を与えましょう。

地植えにしている場合は、暖地では植えたままにしてもかまいません。熱帯性の花木のため寒さには弱いので、0℃以下になる地域では寒くなる前に鉢に植え替え、暖かく日当たりがよい室内や温室で越冬させてください。

【鉢植え】

エンジェルストランペットを鉢で栽培する場合は、8〜10号鉢を準備します。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから花木用の培養土を半分くらいまで入れましょう。エンジェルストランペットの苗木をポットから取り出して鉢の中に仮置きし、高さを決めます。根鉢を軽くほぐし、少しずつ土を入れて、植え付けていきましょう。水やりの際にすぐ水があふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取っておいてください。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底から水が流れ出すまで、十分に水を与えましょう。

鉢植えで楽しんでいる場合、成長とともに根詰まりして株の勢いが衰えてくるので、1〜2年に1度は植え替えることが大切です。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から株を取り出して根鉢をくずして小さくし、新しい培養土を使って植え直しましょう。

日常のお手入れ

エンジェルストランペット
jejim/Shutterstock.com

【支柱の設置】

苗木がまだ幼いうちは、支柱を立てて幹を誘引しておき、強風などによる倒伏を防ぎます。十分に育ったら、支柱を撤去してもかまいません。

【花がら摘み】

エンジェルストランペットの終わった花は、適宜摘み取りましょう。まめに傷んだ花を摘んで株まわりを清潔に保つことで、病害虫発生の抑制につながりますよ! また、いつまでも終わった花を残しておくと、種子をつけようとして株が消耗し、老化が早まって花数が少なくなってしまうので注意。花がらをまめに摘み取ると、次世代を残そうとして次から次に花がつき、長く咲き続けてくれます。

剪定・切り戻し

剪定
Andrii Zastrozhnov/Shutterstock.com

【芽かき】

地際から出てくる新芽があれば、樹形を乱す原因となるので、全て切り取っておきましょう。

【切り戻し】

開花期間中は、開花が途切れた枝を2〜3節ほど切り戻すと、わき芽が出て再び花芽が上がってきます。

【剪定】

開花が一通り終わり、樹形が乱れていたら、切り戻して仕立て直します。深めに切り戻してもよく、翌年の生育期に入ると再び枝を伸ばして生育し始めます。

【枯れ枝の整理】

枯れた枝からは新芽を出さないので、越冬したのちの3〜4月に枯れ枝があれば切り取ります。

増やし方

種まきポット
Kunlanan Yarist/Shutterstock.com

エンジェルストランペットは、種まきと挿し木で増やすことができます。

【種まき】

種を採取する場合は、開花の後半になったら花がら摘みをやめて果実をつけさせます。果実が熟すと実が割れるので、種を採取して乾燥させ、種まきの適期まで保管しておきましょう。

エンジェルストランペットの種まき適期は5〜7月です。3号ほどの黒ポットに草花用にブレンドされた市販の培養土を入れて十分に水で湿らせた後、数粒ずつまきます。発芽までは乾燥・過湿にならないように適度な水管理をしてください。発芽後は生育のよい苗を1本残して間引き、日当たりがよく、風通しのよい場所で管理します。育苗して根鉢が充実し、十分に育ったら植えたい場所に定植します。

【挿し木】

挿し木とは、枝葉を切り取って地面に挿しておくと発根して生育を始める性質を生かして増やす方法です。植物のなかには挿し木で増やせるものと、そうでないものもありますが、エンジェルストランペットは挿し木で増やせます。

エンジェルストランペットの挿し木の適期は、5〜8月です。新しく伸びた枝を2節以上つけて切り口が斜めになるように切り取ります。採取した枝(さし穂といいます)は、水を張った容器に1時間ほどつけて水あげしておきましょう。黒ポットを用意して新しい培養土を入れ、水を入れて十分に湿らせておきます。培養土に穴を開け、穴にさし穂を挿して土を押さえてください。発根するまでは明るい日陰に置いて乾燥させないように管理します。発根後は日当たり、風通しのよい場所に移動し、十分に育ったら植えたい場所へ定植しましょう。挿し木のメリットは、親株とまったく同じクローンになることです。

エンジェルストランペットの毒性とは

エンジェルストランペット
Shulevskyy Volodymyr/Shutterstock.com

エンジェルストランペットが持つ毒にはアルカロイド系の成分が含まれ、一定量以上摂取するとせん妄や幻聴・幻覚を起こし、酷ければ意識障害や呼吸困難に至るとされています。

また、切り口から出る汁が皮膚に付着すると炎症を起こし、目に入ると失明の可能性もあるようです。手などに傷がある時は触らないようにし、剪定などの作業の際には必ずゴム手袋を着用してください。子どもやペットがいる家庭では、十分に注意して管理しましょう。

果実やつぼみをほかの野菜と間違えて食べ、中毒を起こす事例も発生しています。つぼみはオクラに、葉はモロヘイヤに、根はゴボウに似ているため、誤認を防ぐためにもこれらの野菜をそばで育てないようにしてください。

エンジェルストランペットの見事な花を咲かせよう!

エンジェルストランペット
Konstantinos Livadas/Shutterstock.com

ラッパ形の花として知られるエンジェルストランペットは、大ぶりな花がたくさんつき、とてもゴージャスなシーンを作り出してくれます。自宅で育てる場合は、強い毒に注意してメンテナンスし、華麗な咲き姿を楽しみましょう。

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