植物といえば、花の美しさや緑の木陰など、私たちにとって心地よい面ばかりが注目されがちです。しかし、時に危険な秘密のほうが人を惹きつけるもの。ここでは身近に見られるガーデンプランツの中から、人を死に至らしめるほどの毒性を持つ植物を紹介します。妖しい魅力を放つ毒草の世界を堪能してください。
目次
禁帯出 ガーデン毒草図鑑
エンジェルストランペット
植物データ
名称:キダチチョウセンアサガオ(木立朝鮮朝顔)
英名・別名:angel’s trumpet、gardener’s mydriasis、ダチュラ、エンジェルトランペット
学名:Brugmansia
科:ナス科
有毒部位:全草 特に種子、地下茎
有毒成分:ヒヨスチン、ヒヨスチアミンなどのトロパンアルカロイド
少女が階段を踏み外した理由は?
もし、子どもが突然階段を踏み外したとしたら、いったい何が原因でしょうか? 近年、ある6歳の少女が自宅の子ども用のプールからから外に転がり落ちるという事件がありました。幸い命に別状はなかったものの、瞳孔が過度に拡大する散瞳の症状が見られたために、病院で検査を受けることになりました。散瞳は脳内出血などの際に起こり、ピントが合わせにくく、物が見えづらい状態を招きます。この少女の場合、散瞳を引き起こし、足元が不確かな状態になった原因は、脳内出血ではなく裏庭に植えられていた鮮やかな花を咲かせる植物でした。
視力の低下や幻覚などを招く毒性に注意
和名をキダチチョウセンアサガオ、またはダチュラと呼ばれるこの花は、下向きに垂れ下がった鮮やかな花が特徴です。日本では、エンジェルストランペットという園芸品種名で流通しています。花はオレンジ色や白色、淡紅色など種類があり、その名の通り美しいラッパ状の花は印象的。育て方は簡単で、寒さに強く、初夏に大きく葉を茂らせて大きな花を何十も下げて育成する姿が目を引き、最近では住宅地の庭でもよく見かけます。しかしながら、この植物には「庭師の散瞳」という異名もあり、視力低下や幻覚などを招く毒性を含んでいるのです。エンジェルストランペットは、江戸時代に日本に渡来して麻酔薬として活用される一方、マンダラゲやキチガイナスビとも呼ばれ、口にすれば錯乱状態に陥ることで知られていたチョウセンアサガオの近縁種に当たり、よく混同されました。この2種は、花姿はもちろん同様の毒性を持つことでも似ています。これらの植物を摂取した場合、嘔吐やけいれん、幻覚などの症状が出て、呼吸困難が生じ、目に入れば一時的な視力障害をもたらします。しかしながら、これは一定以上の量を摂取してしまった場合なので、まずは心配しなくて大丈夫。庭木としてなど、家で育てている場合は、子どもやペットが誤食しないように気をつけましょう。また、全草に有毒成分を含むので、傷のある手で直接触れるのは避け、ガーデニング作業の際は手袋をはめると安心です。
エキゾチックな花が魅力のエンジェルストランペット
天使のラッパという名前と美しい姿を持ちながら、実際には人を悪夢に導く幻覚や、一歩間違えれば実際に死出の旅に送り出してしまうエンジェルストランペット。なかなかにパンチの効いた皮肉ですが、それもこのエキゾチックな花の持つ魅力の一つなのです。
併せて読みたい
・上手に育てるにはまず植物を知ることから 植物辞典を使いこなすコツ
・甘い香りを放つ カロライナジャスミンの危険な誘惑
・中世イタリア領主の命を奪った「ジギタリス」の危険な秘密
Credit
文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
Photo/1)Warawanai Neko/2)Sealstep/3)Pisit Sangkaboad/Shutterstock.com
参考文献/『邪悪な植物』エイミー・スチュワート著(山形浩生・守岡桜訳 朝日出版社刊)
新着記事
-
ガーデン&ショップ
都立公園を新たな花の魅力で彩る「第2回 東京パークガーデンアワード 神代植物公園」は秋の彩り
新しい発想を生かした花壇デザインを競うコンテスト「東京パークガーデンアワード」。第2回のコンテストは、都立神代植物公園(調布市深大寺)を舞台に一般公開がスタートしています。ここでは、5つのコンテストガ…
-
イベント・ニュース
【スペシャル・イベント】ハロウィン・ディスプレイが秋の庭を彩る「横浜イングリッシュガ…PR
今年のハロウィン(Halloween)は10月31日(木)。秋の深まりとともにカラフルなハロウィン・ディスプレイが楽しい季節です。「横浜イングリッシュガーデン」では、9月14日(土)から「ハロウィン・ディスプレイ」…
-
美容
ざくろ、マカ、橙、黄柏などの力でつるんとなめらかな肌に! 「毛穴対策コスメ」3選
植物の力を閉じ込めたコスメを、長年にわたり雑誌やウェブサイトで美容記事の編集をしてきた徳永幸子さんがご紹介する連載「ボタニカル・パワー」。今回は、肌悩みの中でも多くの人が悩む毛穴問題にフォーカス。黒…