植物の葉に張り巡らされている葉脈。この葉脈だけを残し、他の部分を取り除いたものをスケルトンリーフ(葉脈標本)といいます。繊細な美しさが魅力のこのスケルトンリーフ、じつは自宅でも制作できるのです。夏休みの自由工作に作ってみるのもいいかもしれませんね。子どもと一緒にチャレンジしたスケルトンリーフ作りを、マンション暮らしのライター、神山真由美さんが体験レポートします。

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植物ごとに異なる葉脈。自然が作り出すミクロな世界の美しさにはまる

植物の葉

植物にとって葉は、光合成を行い、成長するための養分を作る大切な器官。その形や質感は種によって千差万別です。そして、複雑な網目や並んだ筋のように葉全体に張り巡らされた葉脈も、種によってじつにさまざま。

葉脈には、①土から吸収した水分や養分を葉全体に運ぶ ②光合成でつくられたデンプンを他の器官に運ぶ ③骨格のように葉を支える といった役割があります。

透かし葉

葉を光にかざすと、レース編みのように繊細で美しい葉脈を見ることができます。葉脈は他の部分に比べて硬いので、葉が朽ちても最後まで残ります。枯れたまま枝に残っている葉や、水の中に沈んだ落ち葉などで、葉脈だけが筋のように残っているのを見たことがあるのではないでしょうか。このような葉を「透かし葉」と呼び、たとえば果実を包む袋状の苞(ほう)がレースのようになったホオズキなどは、フラワー装飾やクラフトの素材として使われています。

ほおずき

葉脈は人工的に取り出すこともできます。「スケルトンリーフ」の名称で、クラフト素材として販売されていますが、身の回りにあるものを使って作ることも可能。小学生向けのイベントなどでも「葉脈取り」「葉脈標本づくり」と題して、体験させてもらえる機会が多いようです。

Let’s try !   子どもと一緒に楽しめる「葉脈取り」

葉脈標本

葉脈だけを残すにはいくつか方法があり、泥水の中に数週間入れておくだけでも出来るのだそうです(土壌にいる微生物の力を利用するんですね)。それも面白そうですが、今回は小学生の娘と、手間をかけて作る方法を試してみました。

硬い葉脈は「アルカリ性や熱にも強い」という性質を生かして、葉脈標本(スケルトンリーフ)を作ってみます。アルカリ水溶液で煮込んで、柔らかい組織だけを壊して取り除く方法と、強アルカリ性のパイプ洗浄剤に浸ける方法の2通りでやってみることにしました。

用意するものは

  • ステンレス鍋(アルミ鍋はアルカリ性に溶けるので使用できません)
  • 菜箸、ピンセットもしくはトング
  • キッチンぺーパー、布巾など
  • 重曹もしくはセスキ炭酸ソーダ
  • 液体タイプのパイプ洗浄剤
  • 歯ブラシ
  • ステンレスまたはガラスのパットや器
  • いろいろな葉

※ほとんどの材料は100円ショップでも揃います。

「葉脈を残しやすい葉は、どんな植物の葉?」考えながら材料集め

葉脈標本の作り方

まずは、葉っぱ集めです。どんな植物にも葉脈はありますが、どの植物でも葉脈がきれいに残せるわけではありません。「葉脈取り」「葉脈標本」で調べてみると、「適した植物」「適していない葉」がいろいろと出てきます。おおむねまとめてみると

成功しやすいのは「厚みがあってしっかりとした質感の葉」

ツバキ、サザンカ、シャリンバイ、ヒイラギ、アセビ、クチナシ、ナンテンなど

成功しにくいのは「薄い葉、肉厚でも柔らかく葉脈が見えにくい葉」

サクラ、アサガオ、アジサイ、ハナミズキ、ゴムノキなど

庭やベランダ、雑木林、お隣近所(声をかけてから採取させてもらいましょう)など、「これはどうかな」「〇〇にあったね」と、図鑑を片手に〝使えそうな植物〟を考えるだけでもなかなか楽しいもの。植物をじっくりと観察するよい機会にもなります。

葉脈標本作り
ツバキ、サザンカ、シャリンバイ、ナンテン、モミジ、イチゴ、イチョウ、ドウダンツツジなどを集めてみました。

「簡単に作れる」と書いてあるものもあるけれど、果たして……?

葉脈標本作り

それでは、取り掛かりましょう。まずは、使う葉を仕分けます。今回は鍋で煮込む方法と、強アルカリ性のパイプ洗浄剤に浸ける方法を試してみるので、ツバキなど厚く硬い葉を「パイプ洗浄剤」用に選んでおきました。汚れがついているものは軽く洗っておきましょう。

【アルカリ水溶液で煮込む方法】

① 煮る

葉脈標本の作り方

はじめにアルカリ水溶液を作ります。目安は水に対して重曹(もしくはセスキ炭酸ソーダ)が5~10%程度になるように。今回はアルカリ度が高く、水に溶けやすいセスキ炭酸ソーダを使うことにしました。

理科室での実験などで行う場合は、強アルカリ性の水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)を用いることが多く、そのほうが簡単にできるようです。苛性ソーダは薬局で扱っていることもあり、一般でも入手できなくはないとのことですが、取り扱いに注意を要する「危険な薬剤」でもあるので、家庭で使う(特に子どもとの作業では)のはおすすめできません。

葉脈標本の作り方
掃除用品として販売されているセスキ炭酸ソーダ(商品名がアルカリウォッシュのことも)と重曹。

鍋に水溶液と葉を入れ加熱します。沸騰直前で火を弱め、そのまま1時間から2時間ほど煮込みます。

葉脈標本の作り方

煮汁が黒くなって、甘いお茶のような匂いがしてきます。葉が全体的に黒ずんできたら火を止めます。ピンセットなどで葉を取り出し、1時間以上水洗いをします。我が家は金属製のパッドに水を張り、何度か水をかえながら1時間ほど放置しておきました。

② 葉肉の部分を落とす

参考にした資料のなかには「水の中で軽く動かすだけで、葉肉がはがれます。残り部分を歯ブラシなどで軽くたたいて落としましょう」とありましたが、我が家の鍋の中には、ほとんどそのような状態の葉はありませんでした。

葉脈標本の作り方

ということで、歯ブラシで叩きながら葉肉をはがす作業に。それでもなかなか取れません。あまり強く叩くと、破れてしまうので、優しく慎重に。かなり根気のいる作業です。

はじめは歯ブラシを使用していたのですが、意外にも作業がはかどったのはシューズ洗い用の取っ手つきブラシ(写真で使用しているもの)。歯ブラシよりも面積が広く、〝毛〟が硬いので叩いたときにしならないところがいい! 業務用キッチンダスターの上に置き、水をかけながら行うとやりやすかったです。

葉脈標本の作り方
左/このような色になると、煮込みは完了。右/ブラシなどで叩くと葉脈だけが残ります。
葉脈標本の作り方

薄くてカサカサとした葉ですが、予想外に上手くできたのが「モミジ」でした。こちらの〝秘密兵器〟は亀子の束子。力加減とリズムは「包丁で梅干しを叩く」要領で。

葉脈標本の作り方
トントン、トントン。一生懸命やるとそれなりにしぶきが飛びます。子どもの場合、手元と目線が近くなりやすいので、メガネやゴーグルをつけるといいかも。

③ 漂白する

あとで着色したいのであれば、漂白しておくとよいでしょう。キッチン用の塩素系漂白剤を使うと簡単です。

葉脈標本の作り方
泡で出てくるスプレータイプを使用しました。10分ほど置いて白くなったら、流水でしっかりと洗います。

④ 広げて乾かす

葉脈標本の作り方

おおむね取れたところで、最後は水に浮かべながら、やさしく残った部分を手で取り除きます。キッチンペーパーに挟んだら、板や本などで重しを乗せて(平らに仕上げるため)乾燥させます。

モミジのように繊細なものは、溜めた水に浮かせながらとると、崩さずきれいに広げられます。

葉脈標本の作り方
風通しのよい場所に吊るして干すと、〝ペタンコ〟ではない自然な形に仕上がります

⑤ アイロンをかける

葉脈標本の作り方

クラフトなどに利用するなら、アイロンをかけておくと、ピンと張ったきれいな仕上がりになります。やや湿り気の残った状態で、キッチンペーパーで挟んだ上から、ハンカチなど薄手の布を当て、「中」程度の温度でかけました。

【パイプ洗浄剤に浸ける方法】

① 液に浸けて、数時間から一晩ほど置いておく。

葉脈標本の作り方

柔らかい葉や薄い葉だと、葉脈まで溶けてしまうということなので、ツバキやサザンカ、シャリンバイ、ヒイラギナンテンなどで挑戦。鍋で煮込む方法に比べて簡単です。ステンレスの容器と、ガラス瓶を用意しましたが、長時間放置しておくので、蓋ができるガラス瓶のほうがおすすめ。

② 水洗いして、歯ブラシで叩きながら葉肉をはがす

葉脈標本の作り方

手順としては、見出しのように説明されていますが、我が家では失敗に終わりました。選んだ植物が合わなかったのか、液から取り出すタイミングを誤ったのか。葉肉が崩れることはなく、全体が白く蝋のようになってしまいました。水で洗って、ほぐそうとすると、ボロボロと割れて崩れてしまいます。

葉脈標本作り

かろうじて形の残ったものを乾燥させると、紙のように薄く白くなりました。もろいので、パウチ加工したり、紙などに貼ったりすれば使えるかもしれません。

なんだかんだで3日がかり。完成はこちら

葉脈標本
脱色せずに自然の色合いのままでも美しい。

親子で作る「葉脈標本」。2通りの方法を試してみての感想は、「全然簡単じゃあない!!!」でした。子どもの頃、学校でやったときは、簡単にできた記憶があるのですが、それは水酸化ナトリウムで処理したものだったのでしょう。〝安全な域〟でのアルカリ剤だと、葉肉を溶かすにはやっぱり弱いようです。

ツバキやサザンカのような肉厚で硬い葉は、確かに成功する率は高いのですが、1枚仕上げるのに30分近く。親子で交代しながらも、なかなか大変で根気のいる作業でした。午前中に葉の収集を始め、煮込んで、水にさらしてまでで半日。そこから葉肉を取り除く作業を行い、日が暮れる頃に、やっと5、6枚の葉脈標本が完成。

葉脈標本

とはいえ、1日で終わらなかったのには、理由があります。疲れ果てて、残りの葉を鍋に入れたままにしておき、翌日、翌々日と、気が向いたときに数枚ずつ〝葉肉をはずす〟作業のみを行ったのです。漬け込んでおいたせいか、コツがつかめたせいか、日が経つほどに効率よくできるようになった気がします。ぜひ、お試しを。

自作のスケルトンリーフでアクセサリーを作ってみよう

スケルトンリーフ

市販のスケルトンリーフのようにはなかなかできませんが、どうしても葉肉が残ってしまう〝自家製〟も、ナチュラルな風合いで「それはそれで良し!」。というか手を加えてみると、かえって「天然の透かし葉」の風情もあり、素敵に見えるのは〝贔屓目〟でしょうか。

スケルトンリーフのアクセサリー

マニキュアで着色した後、UVレジン液(透明)を塗って、直射日光に当てて1時間ほど置くと、プラスチックのように硬くなります。

スケルトンリーフのアクセサリー

娘は100円ショップのパーツを使ってアクセサリー作りに夢中。ドウダンツツジなどの小葉はアクセサリー作りにとても重宝しました。

スケルトンリーフ
漂白したものに水彩絵の具で着色する(左)とこんなかんじに。

着色は学校で使う水彩絵の具でも十分。マニキュアを塗るとメタリックな見た目になるのでおすすめです。100円ショップでも売っているUVレジン液を使うと、プラスチックのように硬くなるので、アクセサリーにもできます。

スケルトンリーフのカード
祖父宛のハガキにも利用(娘作)。カードなどに使うのであれば、その部分のみ、上から透明テープなどを貼りカバーしたほうがいいかも。
スケルトンリーフのインテリア
写真立てに入れて飾っても。モミジは水彩絵の具で着色していますが、木のフレームに入っているのは全て天然の色のままのものです。

簡単ではないけれど新しい観点で植物を知る機会に

葉脈標本

加工まで楽しむと余裕で1週間以上はかかりますが、STAY HOMEの夏休みに、親子で楽しむにはなかなか〝遣り甲斐のある〟遊びです。夏休みの自由研究にも〝もってこい!〟なので、時間の余裕があるときにぜひ挑戦を。花や実とはちがって、季節を問わず入手可能な葉が材料なので、夏でなくても楽しめます。

Credit

写真&文/神山真由美(かみやま まゆみ)

フリーライター。千葉大学園芸学部園芸学科卒業後、園芸専門学校講師、花市場勤務を経て、編集業界に。情報誌や女性誌を中心にライターとして、健康や食、伝統工芸などに関する記事を担当。現在は自宅マンションで、バラやハーブ、宿根草、多肉植物など、あらゆるジャンルの植物栽培に挑戦している。20年来育てている鉢植えの〝パンの木〟が自慢。

Photo/ 1) Veronika Andrianova 2) Taiga 3) O.S. Fisher 4) katestrem 30) Ortis /Shutterstock.com

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