トップへ戻る

「天使のハーブ」アンジェリカの魅力とは? 育て方と活用法を徹底解説!

「天使のハーブ」アンジェリカの魅力とは? 育て方と活用法を徹底解説!

Fanfo/Shutterstock.com

「天使のハーブ」として知られるアンジェリカ。繊細なレースのような花がふわふわと風に揺られる、エアリーで印象的な草姿がナチュラルガーデンで人気の高い植物です。見た目の美しさだけでなく、西洋では昔からハーブとして利用されてきました。この記事では、アンジェリカの魅力から育て方まで、詳しくご紹介します。

アンジェリカの基本情報

アンジェリカ
Elena Odareeva/Shutterstock.com

植物名:アンジェリカ
学名:Angelica
英名:angelica、garden angelica、wild celery、Norwegian angelicaなど
和名:セイヨウトウキ(代表種のアンジェリカ・アルカンゲリカ)
その他の名前:エンジェルズプラント
科名:セリ科
属名:シシウド属
原産地:ヨーロッパ・西アジア
形態:宿根草(多年草)

アンジェリカは、セリ科シシウド属の草花で、学名は流通名そのままのAngelica。本来は多年草ですが、日本の暑い夏を苦手として短命になることが多いため、一般的には二年草として流通しています。草丈は120〜200cmほど、株幅は60〜80cmほどになるので、庭に植える際は成長を見越して余裕のあるスペースに植えるとよいでしょう。

アンジェリカ
Mariola Anna S/Shutterstock.com

アンジェリカは北半球を中心に80種ほどが分布しており、日本に自生するノダケやシシウド、アシタバ、ヨロイグサなどもアンジェリカの仲間です。基本的には冷涼な気候を好み、高温多湿の環境を苦手としています。

アンジェリカの花や葉の特徴

アンジェリカ
Irenestev/Shutterstock.com

園芸分類:草花
開花時期:6〜8月
草丈:120〜200cm
耐寒性:強い
耐暑性:やや弱い
花色:白、緑、紫、ピンク

アンジェリカの開花期は6〜8月で、花色は白がほとんどですが、中には紫やピンク、グリーンの花を咲かせるものもあります。一つひとつの花はごく小さいのですが、花茎を伸ばした先に集まって咲き、繊細なレースのような風情が魅力的です。楚々とした草姿でナチュラルな雰囲気を持っています。葉は羽状複葉や3出羽状複葉で、品種によってはブロンズ色のシックな葉を展開するものもあり、カラーリーフプランツとしても活躍します。

アンジェリカ
大型のハーブなので花壇の構造的なアクセントにも。mcajan/Shutterstock.com

西洋では古くからハーブとして利用

アンジェリカの葉
アンジェリカの葉。SeDmi/Shutterstock.com

主にヨーロッパではセイヨウトウキ(Angelica archangelica アンジェリカ・アルカンゲリカ)が分布しており、古くからハーブとして利用されてきました。葉を乾燥させてハーブティーにするほか、若い葉はサラダのトッピングや料理の香りづけに向いています。砂糖漬けにした茎はお菓子作りに用いられるほか、根や種子も香りづけに活用できます。

アンジェリカの名前の由来と花言葉

アンジェリカ
Francesca Leslie/Shutterstock.com

アンジェリカは、ラテン語で「天使」を意味する「Angelicus」が由来です。一般にアンジェリカと呼ばれるセイヨウトウキの学名はAngelica archangelica、種小名の「archangelica」も「大天使の」という意味で、大天使ミカエルにちなんだもの。「天使のハーブ」とも呼ばれています。昔、疫病が流行して世が荒れた際に天使が修道僧の夢に出てきて、アンジェリカを摂取すれば疫病に効果があると告げたという言い伝えがあるそうです。ミカエルの記念祭にアンジェリカが開花することからという説もあります。ヨーロッパを中心に、古くからアンジェリカが薬草として民間療法的に重宝されてきた歴史が垣間見られます。

アンジェリカの花言葉は、「インスピレーション」「霊感」「優しい憂鬱」「健康美」「旺盛な活動力」などです。

アンジェリカの代表的な品種

アンジェリカ
セイヨウトウキ。Tom Korcak/Shutterstock.com

一般的にアンジェリカというとセイヨウトウキ(アンジェリカ・アルカンゲリカ)を指しますが、人の手によって交配された園芸品種なども流通しています。代表的な品種をいくつかご紹介します。

アンジェリカ・パシカーパ‘サマーデライト’

アンジェリカ・パシカーパ
アンジェリカ・パシカーパ。demamiel62/Shutterstock.com

アンジェリカ・パシカーパ‘サマーデライト’は、草丈80〜100cmほどで、艶のある葉に明るいライムグリーンの花が咲きます。

アンジェリカ・シルベストリス‘ビカーズミード’

アンジェリカ・シルベストリス‘ビカーズミード’
Lidia Kovacs/Shutterstock.com

アンジェリカ・シルベストリス‘ビカーズミード’は草丈120〜150㎝ほどで、くすんだピンク色の花を咲かせます。茎葉がブロンズ色で、カラーリーフプランツとしても活躍します。

アンジェリカ・ギガス

アンジェリカ・ギガス
Ole Schoener/Shutterstock.com

コリアン・アンジェリカとも呼ばれるように、朝鮮半島や日本の一部地域など、東アジアに分布しています。黒っぽい花茎に、黒みを帯びた濃い赤花がワイルドで目を引きます。国内の流通は少ないですが、欧米のガーデンで人気の高い植物です。

アンジェリカの栽培12カ月カレンダー

開花時期:6〜8月
植え付け・植え替え:10月頃
肥料:特になし
種まき:10月頃

アンジェリカの栽培環境

アンジェリカ
Ingrid Maasik/Shutterstock.com

日当たり・置き場所

【日当たり/屋外】日当たりがよく、風通しのよい場所を好みますが、明るい半日陰でも育ちます。ただし、あまりに暗い環境では徒長してヒョロヒョロと間のびした株姿になるので注意しましょう。また、真夏に直射日光が強く当たると葉焼けして株が傷む恐れがあるので注意しましょう。

【日当たり/屋内】屋外での栽培が基本です。

【置き場所】土質は酸性に傾いた土壌を苦手とするので、土づくりの際に石灰を散布して調整します。また、乾燥しすぎない土壌を好むので、乾きやすい環境では土壌改良が必要です。

耐寒性・耐暑性

寒さには強く、基本的に特別な防寒対策をしなくても越冬できます。日本の夏の高温多湿が苦手なので、西日が当たる場所での地植えは避け、真夏は鉢上げして半日陰の涼しい場所に移すのも一案です。

アンジェリカの栽培方法のポイント

用土

土
blueeyes/Shutterstock.com

【地植え】

酸性に傾いた土壌を嫌うので、植え付ける3〜4週間前に苦土石灰を散布して土に混ぜ込んでおきましょう。さらに1〜2週間前に腐葉土や堆肥などの有機質資材と緩効性化成肥料を植え場所に投入し、よく耕してふかふかの土をつくっておきます。土づくりは植え付け直前ではなく、数週間前に行っておくことで分解が進んで土が熟成し、根張りがよくなります。

【鉢植え】

草花の栽培用に配合された園芸用培養土を利用すると便利です。

水やり

水やり
Afanasiev Andrii/Shutterstock.com

株が蒸れるのを防ぐために株全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。

真夏は、気温が上がっている昼間に行うと、すぐに水の温度が上がってぬるま湯のようになり、株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に与えることが大切です。

また、真冬は、気温が低くなる夕方に行うと凍結の原因になってしまうので、十分に気温が上がった真昼に与えるようにしましょう。

【地植え】

植え付け後にしっかり根づいて茎葉をぐんぐん伸ばすようになるまでは、水切れしないように管理しましょう。根付いた後は下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らずに乾燥が続くようなら、水やりをして補います。

【鉢植え】

日頃の水やりを忘れずに管理します。ただし、毎日決まった分量の水やりをすればいいというものでもありません。動物が毎日の食事が必要なのとは違って、植物は適した水分量を保つことが大切です。乾きすぎるとしおれてしまいますし、反対に常にジメジメと湿った状態にしておくと、病気が発生しやすく株が弱りやすくなります。土が乾くタイミングは、季節や天候によっても異なるので、まずは土や株の状態を観察しましょう。土の表面が白く乾いていたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えてください。「株の状態を見て」と書きましたが、水が十分にあれば茎葉は勢いよく隅々までピンと伸ばしています。もしも茎葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。

肥料

肥料
Sarycheva Olesia/Shutterstock.com

【地植え】

植え付け時に十分な土づくりをしていれば、追肥は不要です。多肥にすると茎葉ばかりが勢いよく茂って株姿が乱れやすくなり、花数も少なくなるので注意します。株の状態を見て、生育に勢いがないようであれば、速効性のある液肥を与えて様子を見てください。

【鉢植え】

開花期に液肥を月に2回ほど与えて、株の勢いを保ちましょう。

注意する病害虫

幼虫
M.V.Photography/Shutterstock.com

【病気】

アンジェリカはそれほど病気の心配はありませんが、まれにうどんこ病やべと病を発症することがあります。

うどんこ病は、カビによる伝染性の病気です。葉、新梢、つぼみに発生しやすく、表面が白く粉を吹いたような状態になり、放任するとどんどん広がるので注意。対処せずにそのままにしておくと光合成ができなくなり、やがて枯死してしまいます。窒素肥料を施しすぎたり、枝葉が繁茂しすぎて風通しが悪くなったりしていると、罹病しやすくなります。うどんこ病が出たら病気の葉を摘み取って処分し、適用する殺菌剤を葉の表と裏に散布して、蔓延するのを防ぎましょう。

べと病は糸状菌が原因の病気で、3〜6月、9月下旬〜11月の気温15〜20℃の条件下、かつ気温差が大きい時に発生しやすくなります。葉に黄色みがかった斑紋が現れ、だんだんと広がって枯れ上がっていきます。気温などの条件が揃うと2〜3日で全体に広がってしまうので注意。窒素成分が多い肥料を与えすぎると発生しやすくなります。

【害虫】

アンジェリカに発生しやすい害虫は、アゲハチョウやヨトウムシなどです。

アゲハチョウは春から秋にかけて発生しやすく、主に幼虫が植物を食害します。幼虫がまだ若いうちは黒字に白斑が入る姿でまだ小さく見つけづらいのですが、大きくなると5cmほどのビッグサイズになって姿を現し、ギョッとしてしまいます。若芽や葉を好み、幼虫が大きくなると旺盛に葉に穴をあけて一晩で被害が拡大することもあるので注意。葉の裏表をチェックし、葉に穴があいていないかチェックしておきましょう。見つけ次第補殺しておきます。成虫は花の蜜をエサとするので、近くに花が咲く植物を植えないこともポイントです。

ヨトウムシは蛾の幼虫で、漢字で「夜盗虫」と書き、主に夜に姿を現して茎葉を食害します。大きくなった幼虫は食欲が旺盛で、一晩に株を丸裸にしてしまうほどです。葉から食害し始めるので、異変を察したら幼虫がまだ若いうちに駆除しましょう。発生しやすい時期は4〜6月、9〜10月です。食害の跡が認められたら夜にパトロールして補殺するか、適用する薬剤を散布して防除します。

アンジェリカの詳しい育て方

苗の選び方

苗を購入する際は、節間が間のびしておらず、がっしりと締まって勢いのあるものを選びましょう。

植え付け

ガーデニング
Vlyaks/Shutterstock.com

苗の植え付けの適期は10月頃で、苗の流通も秋になると多くなります。この時期以外に花苗店で苗を購入した際は、早めに定植しましょう。

【地植え】

土づくりをしておいた場所に、アンジェリカの苗をポットから出して植え付けます。複数の苗を植える場合は、60〜80cmの間隔を取っておきましょう。植え付けた後に、たっぷりと水やりします。

【鉢植え】

鉢のサイズは、7〜10号鉢を準備します。

用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから培養土を半分くらいまで入れましょう。苗をポットのまま鉢に仮置きし、高さを決めます。ポットからアンジェリカの苗を出し、根鉢を崩さずに植え付けましょう。水やりの際にすぐ水があふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取っておいてください。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底からたっぷりと水が流れ出すまで、十分に水を与えましょう。

収穫

アンジェリカ
Nishihama/Shutterstock.com

葉を収穫する場合は、葉が硬くなる開花する前の5月頃に摘み取ります。根は地上部が枯れた頃に掘り上げて収穫しましょう。

増やし方

種まきポット
Kunlanan Yarist/Shutterstock.com

アンジェリカは種まきをして増やします。種まきからスタートするメリットは、輸送などによる苗への負担がかからず、環境に馴染みやすいことです。敷地が広く、たくさんの苗を植え付けたい場合は、コストカットにもなります。ただし、アンジェリカは発芽率がよくないため、多めに播いておいたほうが安心です。

アンジェリカの種まき適期は、10月頃です。庭に直まきしても、ポットにまいて育苗してもかまいません。アンジェリカは株が大きく育って充実するまでは開花しません。種まきから開花までには2年ほどかかります。

【直まき】

植えたい場所に2〜3粒ずつ播いて薄く覆土し、水やりをしておきます。種同士の間隔は、50〜70cmほど開けておきましょう。しばらく経つと、細長い双葉が揃います。さらに本葉が出揃った頃に勢いのある苗を1本残し、徒長していたり虫に食われたりしている苗を間引きます。冬の間は地面を這うようにして葉を放射状に伸ばすロゼット状態で越年します。寒さに大変強く、霜が降りても弱ることはありません。春になって暖かくなると、茎葉が立ち上がってきて旺盛に生育し始めます。

【ポットまき】

黒ポットに2〜3粒ずつ種子を播き、薄く覆土し、水やりをしておきます。しばらく経つと、細長い双葉が揃います。さらに本葉が出揃った頃に勢いのある苗を1本残し、徒長していたり虫に食われたりしている苗を間引きます。本葉が数枚ついたら、植えたい場所に定植します。複数植える場合は、株の間隔は60〜80cmほど開けておきましょう。

アンジェリカは自家採種する場合は、花が終わった後に花がらを摘まずにそのままにしておき、種子をつくらせて採取しましょう。種子を採取したら密閉袋に入れて保存しておき、適期に種まきします。

食用でも楽しめるアンジェリカを育てよう

アンジェリカ
Penny Hicks/Shutterstock.com

野趣感あふれるナチュラルガーデンを目指すなら、繊細な草姿のアンジェリカはぜひ取り入れたい草花です。ガーデンのアクセントとして植栽してみてはいかがでしょうか。

人気の記事

連載・特集

GardenStoryを
フォローする

ビギナーさん向け!基本のHOW TO