【毎年咲く!】ふわふわ花のアスチルベ|植え付けから冬越し、トラブル対策まで完全ガイド

Tunatura/Shutterstock.com
アスチルベは、ふわふわとした柔らかな質感の花を咲かせ、庭を美しく彩る人気の宿根草(多年草)です。一度植え付ければ毎年可憐な花を咲かせてくれるのが大きな魅力で、特に半日陰でも元気に育つため、日当たりが少ない場所の救世主としても重宝されています。この記事では、アスチルベを長く楽しむために必要な植え付けから冬越し、さらには花が咲かないなどのトラブル対策まで、栽培の全てを詳しく解説します。
目次
アスチルベの基本情報

植物名:アスチルベ
学名:Astilbe
英名:Astilbe
和名:チダケサシ、アワモリショウマ
その他の名前:アワモリソウ
科名:ユキノシタ科
属名:チダケサシ属(アスチルベ属)
原産地:日本、中国、朝鮮半島、北アメリカ
形態:宿根草(多年草)
アスチルベはユキノシタ科の多年草です。原産地は日本、中国、朝鮮半島、北アメリカ。これらの地域に約25種が自生し、日本ではアワモリショウマ、チダケサシなど6種が分布しています。寒さに強く、マイナス15℃程度まで耐えるとされています。日当たりのよい場所を好みますが、半日陰の場所でも生育し、よく開花するので、日当たりに恵まれないシェードガーデンを明るく彩ってくれるとして人気のある植物です。

一度植え付ければ毎年開花し、株分けで増やしやすいので、コストパフォーマンスにも優れています。春に新芽を出して生育期に入り、開花は5〜7月。落葉性のため、晩秋に地上部の葉を落としますが、休眠して越年するので「枯れてしまった」と判断して抜き取って処分したりしないでください。そのまま春まで待つと、春には再び新芽を出す……というライフサイクルを繰り返します。
種類によって異なりますが、草丈は60〜90cm。株幅は環境にもよりますが40〜80cmと比較的大きく育つので、庭植えの場合はスペースを広めにとっておくのをおすすめします。花色は、赤、ピンク、白などがあります。
風に揺れるアスチルベ。sonicbox/Shutterstock.com
アスチルベの花や葉の特徴

園芸分類:草花
開花時期:5~7月
草丈・樹高:20~80cm
耐寒性:強い
耐暑性:普通
花色:白、ピンク、赤、紫
アスチルベは、花茎を30cmほど伸ばし、下から頂部に向かって穂状に多数の花をつけます。ふわふわと柔らかな質感で花穂が大きいので、開花期には色の塊となって迫力のあるシーンを演出できます。
葉の形はほっそりとした楕円形で、縁はのこぎり状です。葉軸の両側に小葉がつく複葉タイプで、シダ植物のような繊細な姿をしており、花が咲く前後の期間も庭のアクセントとして活躍します。
アスチルベの名前の由来と花言葉

アスチルベの名前は、ギリシャ語の「a(~がない)」と「stilbe(輝き)」が組み合わされています。ふわふわとしてツヤのない質感の花を咲かせることから、「地味」「輝きがない」などのニュアンスがあります。
和名の一つである「泡盛草」は、花の見た目を泡に例えて名付けられました。なお、お酒の泡盛とはあまり関係がないとされています。
その花姿から、アスチルベの花言葉は、「恋の訪れ」「自由」「落ち着いた明るさ」などがあります。
アスチルベの代表的な品種

アスチルベにはいくつかの種類があります。ガーデニングで特に人気なのは、ドイツのブリーダー、ゲオルク・アレンツによって作出されたアスチルベの品種群「アスチルベ・アレンジー(Astilbe aredsii-hybr)」や「アスチルベ・シネンシス(Astilbe chinensis)」などあります。アスチルベの代表的な品種をご紹介します。
‘チョコレートショーグン’
Astilbe thunbergii ‘Chocolate Shogun’

銅のような赤黒い、ツヤのある葉が特徴の品種。アスチルベの中ではひときわ鮮やかな銅葉品種で、国内外で人気が高まっています。真夏でも葉色が変わらず、日陰にも強いので、夏のシェードガーデンにもぴったりです。花は、薄いピンクから白色で、葉色とのコントラストが魅力です。
‘ショースター’
Astilbe arendsii-hybr‘Showstar’
草丈30~45cmと、アスチルベのなかでは小型の品種です。コンパクトなので、小さなスペースの寄せ植えにも活用できるでしょう。花は、白、ピンク、赤のミックスがあります。
‘ピーチブロッサム’
Astilbe × rosea ‘Peach Blossom’

パステルピンクの花が可憐で可愛らしい品種。アスチルベのなかでは比較的小型で、花つきがよく丈夫です。
‘カプチーノ’
Astilbe × arendsii ‘Cappucino’

茶色がかった葉色とクリーム色の花のコントラストを、飲み物のカプチーノになぞらえた品種。葉色は芽吹いた時がもっとも茶色が濃く、季節が進むにつれて徐々に濃い緑になります。
‘マイティチョコレートチェリー’
Astilbe chinensis ‘Mighty Chocolate Cherry’

赤系の花が印象的な品種。茎も赤みを帯びています。葉は新芽は銅葉で、大きくなるにつれて茶色っぽくなります。
‘ビジョンインフェルノ’
Astilbe chinensis ‘Vision Inferno’

淡いピンクの花をつけるピジョンインフェルノは、大きめの花房が特徴です。開花期が長く、花後は緑の房が残ります。
‘スプライト’
Astilbe x Simplicifolia ‘Sprite’
シンプリシフォリアタイプの小型品種。ピンクや白の花が、横に広がるように咲きます。繊細でやさしい印象を与える品種です。
‘ファナル’
Astilbe arendsii ‘Fanal’

深みのある赤い花色が特徴の品種。花が密に咲くため、ほかの品種に比べて花房がコンパクトです。
アワモリショウマ
Astilbe japonica

日本の山や森に自生するアスチルベの仲間です。白く可憐な花をつけます。収穫しても花が崩れにくいので切り花やドライフラワー、ブリザーブドフラワーなどのアレンジにも適しています。
アスチルベの12カ月栽培カレンダー
開花時期:5月中旬〜7月
植え替え適期:3〜4月
肥料:3〜4月、10月
植え付け:3〜4月、10~11月
アスチルベの栽培環境

日当たり・置き場所
アスチルベは基本的には日当たりや風通しのよい場所を好みますが、半日陰でも育ちます。水はけや水持ちのよい土壌が適しているので、用土は腐葉土や堆肥を多めにして、栄養豊富な環境にしましょう。
真夏は強い日差しで乾燥しすぎてしまうことがあるので、午前中のみ日光が当たる場所や、木漏れ日が当たる木陰など、半日陰での管理がおすすめです。
耐寒性・耐暑性
アスチルベは寒さ・暑さには強いほうです。ただし近年の厳しい夏の暑さでは、葉焼けをしたり株が弱ったりする恐れがあります。日光が一日中当たる場所は避けて、半日陰で育てましょう。
冬越しの必要性は特にありません。冬の低温が翌年の開花につながるので、温室などには移動しないようにしましょう。
アスチルベの育て方のポイント
用土

【地植え】
植え付けの約2週間前に、腐葉土や堆肥、緩効性肥料を混ぜ込んで、よく耕しておいてください。土づくりをした後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。
【鉢植え】
市販の山野草用の培養土を利用すると手軽です。自身でブレンドする場合は、赤玉土小粒6、腐葉土4の割合で配合し、水はけのよい土を作るのがおすすめです。
水やり

水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために茎葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。
真夏に水やりする場合、気温の高い昼間はすぐに水の温度が上がって株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に行うことが大切です。
また、真冬に水やりする場合は、気温が低くなる夕方は凍結の原因になってしまうので、十分に気温が上がった真昼に与えるようにしましょう。
【地植え】
根付いた後は、地植えの場合は下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らない日が続くようなら水やりをして補います。
【鉢植え】
日頃の水やりを忘れずに管理します。アスチルベは乾燥するとつぼみがつかなくなったり、株が弱ったりするので、水切れに注意してください。ただし、いつもジメジメした状態にしておくと、根腐れの原因になってしまいます。土の表面がしっかり乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。茎葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。また、冬でもカラカラに乾燥させることのないように、適宜水やりを続けてください。
肥料

【地植え・鉢植えともに】
植え付け時に元肥として緩効性肥料を施しておきましょう。
その後は、生育期に入る3〜4月と、暑さがおさまった10月に、緩効性肥料を株の周囲にばらまき、軽く耕して周囲の土に馴染ませます。
注意する病害虫

【病気】
アスチルベの栽培で注意したい病気は、白絹病、灰色かび病などです。
白絹病はカビが原因で周囲に伝染しやすい病気で、根や茎に発生しやすく、発症初期は地際あたりに褐色の斑点が見つかります。病状が進むと株元の土に白いカビがはびこり、やがて株は枯れてしまうので注意が必要。病株を発見したら、周囲に蔓延させないためにただちに抜き取り、土ごと処分してください。土づくりの際に、水はけのよい環境に整えることが予防につながります。
灰色かび病は花や葉に発生しやすく、褐色の斑点ができて灰色のカビが広がっていきます。気温が20℃ほど、かつ多湿の環境下で発生しやすい病気です。ボトリチス病、ボト病などとも呼ばれています。風通しが悪い場所に植えている場合は花がらは摘み取り、葉が極端に込み合っていたら、間引いて風通しよく管理しましょう。
【害虫】
アスチルベの栽培で注意したい害虫は、アブラムシ、ハダニなどです。
アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mm程度の小さな虫で繁殖力が大変強く、発生すると茎葉にびっしりとついて吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目もよくないので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、シャワーではじいたりして防除しましょう。虫が苦手な方は、スプレータイプの薬剤を散布して退治するか、植え付け時に土に混ぜ込んで防除するアブラムシ用の粒状薬剤を利用するのがおすすめです。
ハダニは、葉裏に寄生して吸汁する害虫です。体長は0.5道ほどと大変小さく、黄緑色や茶色い姿をしています。名前に「ダニ」がつきますが、クモの仲間。高温で乾燥した環境を好み、梅雨明け以降に大発生しやすいので注意が必要です。繁殖力が強く、被害が大きくなると、葉にクモの巣のような網が発生することもあります。ハダニは湿気を嫌うため、予防として高温乾燥期には葉裏にスプレーやシャワーなどで水をかけてやるとよいでしょう。
アスチルベの詳しい育て方

苗の選び方
アスチルベの苗が出回るのは、春から初夏にかけて。苗を選ぶ際は葉がしっかりと茂っているかどうか、開花が近い時期ならば、花茎が伸び出しているかどうかをチェックしましょう。
植え付け

アスチルベの植え付けの適期は、3〜4月か10〜11月です。ただし、ほかの時期にも苗は出回っているので、花苗店などで入手したら早めに植え付けるとよいでしょう。
【地植え】
土づくりをしておいた場所に、苗の根鉢よりも一回り大きな穴を掘り、根鉢をくずさずに植え付けましょう。最後にたっぷりと水を与えます。複数の苗を植える場合は、40〜60cmくらいの間隔を取っておきましょう。
【鉢植え】
鉢で栽培する場合は、入手した苗よりも1〜2回り大きな鉢を準備します。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから山野草用の培養土を半分くらいまで入れましょう。苗をポットから取り出し、根鉢をくずさないよう鉢の中に仮置きして高さを決めたら、少しずつ土を入れて、植え付けていきます。水やりの際にあふれ出さないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取っておいてください。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底から水が流れ出すまで、十分に水を与えましょう。
植え替え

アスチルベの植え替えの適期は、3〜4月か10〜11月です。
【地植え】
地植えの場合は、毎年植え替える必要はありません。しかし3〜4年経つと大株に育ち、根が込んで株が老化してくるので、掘り上げて根を切り分け、植え替えましょう。
【鉢植え】
鉢植えで楽しんでいる場合、成長とともに根詰まりして株の勢いが衰えてくるので、1〜2年に1度は植え替えることが大切です。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から株を取り出して古い根を整理し、根鉢をくずして新しい培養土に植え直します。もっと大きく育てたい場合は、元の鉢よりも大きな鉢を準備し、軽く根鉢をくずして植え替えてください。
日常のお手入れ
また株元の乾燥が気になる場合は、バークチップなどで根元の土を覆うマルチングを行うのも方法です。
剪定・切り戻し

【花がら摘み】
株がまだ幼く、大きく育てたい場合は、花色があせてきたら花がら摘みをしておきましょう。また、花がらが残った姿があまり美しいと思わない状態の時は、株まわりを清潔に保つため花がらをきれいに摘んでおきましょう。
【剪定】
自然に株姿がまとまるので、基本的に剪定は不要です。冬には地上部が枯れて休眠するので、地際で刈り取っておきましょう。
増やし方

アスチルベは株分けして増やすことができます。作業の適期は10月頃です。株を植え付けて数年が経ち、大きく育ったら株の老化が進むので、「株分け」をして若返りをはかります。株を掘り上げて数芽ずつ付けて根を切り分け、再び植え直しましょう。それらの株が再び大きく成長し、同じ姿の株が増えていくというわけです。あまり細かく分けると開花しにくくなるので注意してください。
アスチルベは種まきからでも栽培できますが、種子の販売はほぼありません。花に種子をつけさせてとりまきすることもできますが、個体差が出やすいため、親と同じ花が咲くとは限らない点に注意しましょう。アスチルベは強健で株が太りやすいので、株分けして同じ個体を増やすほうが手軽でおすすめです。
アスチルベ栽培のよくあるトラブル

アスチルベを栽培していると、花が咲かない、葉がチリチリになるなどのトラブルが起きることがあります。原因や対処方法について解説します。
花が咲かない
アスチルベの花が咲かない場合、まず考えられるのは乾燥や水切れです。特に鉢植えでは乾燥しやすいので、十分な水やりを心がけましょう。
冬にしっかり寒さに当たっていないのも、花つきが悪くなる原因です。冬は室内に移動せず、低温で管理することが大切です。
アスチルベは日陰でも育ちやすい植物ですが、日当たりが悪すぎると花数が少なくなります。置き場所を再考するのも一つの対処法です。
また、株が充実していない状態でも花は咲きづらくなります。栽培環境を整えて、株をしっかりと大きく育てましょう。
葉がチリチリになる
葉がチリチリになってしまう主な原因は、水切れです。鉢植えは特に水切れを起こしやすいので注意しましょう。日光の当たりすぎも乾燥の原因になるので、置き場所を半日陰にするなど工夫が必要です。
地植えの場合も、雨が降らない日が続くと乾燥や水切れになることがあります。葉が傷むだけでなく、株も弱ってしまうので、土の状態を観察して適宜水をあげましょう。
アスチルベを上手に育てておしゃれな庭をつくろう

アスチルベは丈夫で長生きな宿根草のなかでも定番のガーデンプランツです。耐寒性が強く、北海道など寒冷地の庭でも育てられます。
品種によっては日当たりの悪い庭でもよく育つので、シェードガーデンでも活躍するでしょう。同じユキノシタ科で、日陰に強いヒューケラとも相性抜群です。

開花期が長く次々と花が咲き、夏の庭を華やかに彩り、花色があせてきた秋口も房が残ってアクセントになる品種もあります。ビギナーでも育てやすい植物なので、ぜひ庭やベランダに取り入れてはいかがでしょうか。
Credit
文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。2026壁掛けカレンダー『ガーデンストーリー』 植物と暮らす12カ月の楽しみ 2026 Calendar (発行/KADOKAWA)好評発売中!
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