【短期で収穫】インゲンマメの育て方は? 主な特徴と種類、栽培のポイントを解説

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緑黄色野菜の一つに分類されているインゲンマメは若い莢を収穫し、甘みと独特の食感を楽しめるのが魅力です。種まきから始めて収穫までの期間が短いので、いろいろな野菜を育てたい人やビギナーにもおすすめ。この記事では、インゲンマメの基本情報や種類、育て方について詳しくご紹介します。
目次
インゲンマメの基本情報

植物名:インゲンマメ
学名:Phaseolus vulgaris
英名:Common bean、French bean
和名:インゲンマメ(隠元豆)
その他の名前:インゲン、サイトウ、サンドマメ、ゴガツササゲ
科名:マメ科
属名:インゲンマメ属
原産地:中央アメリカ
形態:一年草
インゲンマメはマメ科インゲンマメ属の果菜類で、原産地は中央アメリカ。緑黄色野菜の一つで、ビタミンB1、B2、K、Cや、カリウム、亜鉛、鉄などのミネラル分を豊富に含んでいます。スープの具や炒め物、ゴマあえ、煮物など、調理の幅が広いのもいいですね。
インゲンマメの花や葉、実の特徴

園芸分類:野菜
開花時期:6〜8月
草丈:40〜300cm
耐寒性:弱い
耐暑性:やや弱い
花色:白、ピンク
インゲンマメにはつるありとつるなしがあり、つるあり品種はつるの長さが3mほどにまでなることもあります。花色は白もしくはピンクで、マメ科らしい蝶形のスイートピーに似た花を咲かせます。花後は細長い莢ができます。葉は互生し、軸の先に3枚の小葉がつく3出複葉になります。
インゲンマメの名前の由来や歴史と花言葉

インゲンマメは古くからアメリカで栽培されており、アステカ帝国の時代には乾燥させたインゲンマメを年貢として収めていたという説もあります。16世紀末にヨーロッパに渡り、さらに中国に伝わりました。日本へは江戸時代に明から来日した隠元禅師(京都・満福寺を創建した高僧)がもたらしたことから、この名前がついたとされています。ただし、隠元禅師がもたらしたのはフジマメだったという説も残っているので、実際は明確ではありません。若い莢を食用するようになったのは明治時代になってからで、その前は完熟した豆が食材に利用されていました。種まきしてから収穫までの期間が短く、暖地では年に3回収穫できることから、関西方面では三度豆とも呼ばれています。
インゲンマメの花言葉は、「豊かさ」「必ず来る幸福」「喜びの別れ」「喜びを選ぶ」などがあります。
サヤインゲン、キヌサヤ、フジマメとの違いは?

何かと混同しやすいサヤインゲン、キヌサヤ、フジマメ。ここで違いを整理してみましょう。サヤインゲンはインゲンマメと同じものですが、豆ではなく若い莢を食用にします。キヌサヤはマメ科エンドウ属のエンドウで、若い莢を食用します。フジマメは隠元禅師がもたらしたとして、主に関西地方でインゲンマメと呼ばれているため混同されがちですが、マメ科コウシュンフジマメ属の多年草です。若い莢を食用します。
インゲンマメの種類
インゲンマメは種類がバラエティー豊かに揃うのが特徴の一つ。つるあり、つるなしの種類に分けられるほか、切り口の断面によって丸莢、平莢に分類できます。ここでは、それぞれの特性についてご紹介します。
つるの有無
インゲンは、つるを伸ばして生育する「つるあり」(つる性種)と、つるのない「つるなし」(矮性種)があります。
つるあり

つる性種は草丈が2〜3mくらいまで達するので、栽培時にはつるを誘引する支柱が必須アイテムです。つるを長く伸ばすためやや広めの敷地での栽培に向いています。栽培期間は4カ月ほどで、収穫期間は約2カ月と長く収穫することができます。その分、追肥をして肥料を切らさないようにし、敷きわらや摘葉などをして夏を乗り切るケアが必要です。
つるなし

つるのない矮性種は、草丈40〜50cmほど。基本的には支柱は不要ですが、倒伏防止のための短い支柱を設置しておくのがおすすめです。狭い場所での栽培に向き、プランターで栽培するならつるなしを選ぶとよいでしょう。また、栽培期間が短く、種まきから60〜70日ほどで収穫できます。収穫期間は2週間ほどと短く、一気に収穫のピークとなった後は株の衰えも早いのが特徴。手軽に栽培できるので、ビギナーにおすすめです。
莢の種類
インゲンの莢の形には、丸莢、平莢、丸平莢があり、また莢の片側にすじありとすじなしの種類もありますが、現在は品種改良によってほとんどがすじなしになっています。おかげで、現代では調理前のすじ取りの手間がほとんど不要に。以下に莢の種類とそれぞれの特性についてご紹介します。
丸莢

莢の切り口の断面が丸いタイプ。やわらかくサクサクとした食感で、味がよいのが特徴。すじなしの品種が多く、下処理しやすいのも長所です。つるなし、つるありの両方の品種があります。おひたしなどにおすすめ。
平莢

莢の切り口が平たいタイプで、長さ20cmほどになる大型の莢がつくのが特徴。しっとりとした食感で食べごたえがあります。甘みがあり、揚げものやソテーに。
その他の莢

丸莢と平莢のそれぞれの特徴を併せ持つ丸平莢のほか、黄色インゲンや紫インゲンなどカラーバリエーションもあり、選ぶ楽しみが広がっています。
インゲンマメの栽培12カ月カレンダー
開花時期:6〜8月
種まき:4月下旬〜5月中旬
肥料:6月頃
インゲンマメを育てる際の大まかなスケジュールは以下の通りです。4月下旬〜5月中旬に種を播くことからスタートします。菜園に直まきするか、鳥害を防ぐためポットに種を播いて2週間ほど育苗してから苗を植え付けましょう。スイートピーに似た白やピンクの花が開花した後、莢が12〜15cmほどの長さになったら収穫します。インゲンは一年草で、一通り収穫を終えたら枯死する、ライフサイクルの短い植物です。一度植えれば毎年収穫できるというわけではないので、枯れ込んできたら早めに抜き取って、次期の野菜に切り替えるとよいでしょう。
インゲンマメの栽培環境

日当たり・置き場所
【日当たり/屋外】日当たり、風通しのよい場所を好みます。日当たりの悪い場所では花数や収穫量が少なくなるので注意。
【日当たり/屋内】屋外での栽培が基本です。
【置き場所】水はけ、水もちのよい土壌を好み、酸性土壌を嫌うので、土づくりの際に苦土石灰を散布しておくとよいでしょう。マメ科の植物は窒素分を固定する働きのある根粒菌が根に寄生するので、少ない肥料で育ちます。
耐寒性・耐暑性
インゲンマメの生育適温は10〜25℃ほど。気温が高い盛夏は、花が咲いても莢がつかないことがあります。
インゲンの育て方のポイント
種まき

インゲンの発芽適温は25℃くらい。種まきの適期は4月下旬〜5月中旬頃ですが、6~7月に播けば秋に収穫することもできます。
【畑に直まきする場合】
種を播く2週間前までに、苦土石灰100〜150g/㎡をまいて耕しておき、1週間前までに堆肥2㎏/㎡、化成肥料50g/㎡を散布してよく耕します。幅約60cm、高さ10cmほどの畝を作り、つるなし種は約30cm、つるあり種は約40cmの間隔を取って、直径4〜5cm、深さ2cmほどの穴をあけ、3〜4粒ずつ播いて軽く覆土します。最後にたっぷりと水やりしておきましょう。双葉が揃った頃に生育がよいものを1〜2本残し、ほかは間引きます。
【プランターに直まきする場合】
プランターで栽培する場合は、つるなしインゲンが向いています。一般的なサイズのプランターの鉢底に底が見えなくなるくらいまで鉢底石を入れ、その上に野菜用の培養土を入れます。水やりの際に水があふれ出ずに済むように、ウォータースペースを鉢縁から2〜3cm残しておきましょう。15〜20cmほどの間隔を取って穴をあけ、直径4〜5cm、深さ2cmほどの穴を開け、3〜4粒ずつ播いて軽く覆土します。最後にたっぷりと水やりしておきましょう。双葉が揃った頃に生育がよいものを1〜2本残し、ほかは間引きます。
【ポットに種子を播いて育苗する場合】
直まきすると鳥に食害されることがあるので、ポットに種まきをして育苗するとより安心です。3号の黒ポットに野菜用の培養土を入れ、直径4〜5cm、深さ2cmほどの穴を開け、3〜4粒ずつ播いて軽く覆土します。最後にたっぷりと水やりしておきましょう。双葉が揃った頃に生育がよいものを1〜2本残し、ほかは間引きます。育苗して本葉が1〜2枚ついた頃に、定植します。定植する際は、根鉢をくずさずに植え付けましょう。
植え付け

ポットに種子をまいて育苗した場合、または苗を購入した場合は、育てたい場所に苗を植え付けましょう。本葉1~2枚のときが定植適期です。植え付けの際は根鉢をくずさずそのまま植え付けましょう。
【菜園】
植え付け2週間前までに、苦土石灰100〜150g/㎡をまいて耕しておき、1週間前までに堆肥2㎏/㎡、化成肥料50g/㎡を散布してよく耕します。幅約60cm、高さ10cmほどの畝を作り、つるなし種は約30cm、つるあり種は約40cmの間隔を取って植え付けます。最後にたっぷりと水やりしておきましょう。
【プランター栽培】
一般的なサイズのプランターの鉢底に底が見えなくなるくらいまで鉢底石を入れ、その上に野菜用の培養土を入れます。水やりの際に水があふれ出さないように、ウォータースペースを鉢縁から2〜3cm残しておきましょう。15〜20cmほどの間隔を取って、苗を植え付けます。最後にたっぷりと水やりしておきましょう。
水やり

水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために茎葉には水をかけず、株元の土を狙って与えましょう。
【菜園】
下から水が上がってくるので、天候にまかせてもよく育ちます。ただし、雨が降らずに乾燥が続くようなら、適切に水やりをして補いましょう。
【プランター栽培】
日頃の水やりを忘れずに管理します。ただし、いつも湿った状態にしていると根腐れの原因になるので、与えすぎに注意。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。茎葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。
肥料

マメ科のインゲンマメは窒素分を固定する働きのある根粒菌が根に寄生するので、肥料は控えめで育ちます。樹勢が衰えているかを観察しながら、必要に応じて追肥を行います。
【菜園】
植え付けから2週間後を目安に、追肥として化成肥料を1㎡当たり30gほどを株元にばらまき、軽く耕して株元に土寄せしておきます。
【プランター栽培】
つぼみがついた頃に、液体肥料を施します。2回目の追肥は、収穫し始めた頃に液体肥料を与えます。
支柱の設置

インゲンマメはつるを伸ばして生育するので、茎葉がよく茂るようになったら支柱を設置します。
【菜園】
●つるなしインゲン
畝の四隅に支柱を立てた後、適宜畝幅の両端に支柱を設置します。埋め込みが浅いと、強風によって倒伏することもあるので注意しましょう。地上から20cmほどの高さに麻ひもで囲い込むように、支柱に結びつけます。以後は、インゲンマメの成長と共に高さ20cm間隔を取り、麻ひもで囲っていきましょう。麻ひもでインゲンマメの茎葉を支えます。
●つるありインゲン
約2mの園芸用支柱を約1.5m間隔で畝の中央に設置します。埋め込みが浅いと、強風によって倒伏することもあるので注意しましょう。園芸用のネットをピンと張って支柱に固定します。インゲンマメのつるが伸びるごとに、ビニタイなどでネットに誘引していきます。茎葉が重ならないようにし、バランスよく太陽の光が当たるように仕立てるのがポイントです。
【ブランター栽培】
プランターの四隅に長さ90cmほどの園芸用支柱を立て、下から15cmほどの高さで麻ひもで囲い込みます。以後、インゲンマメの成長とともに約15cmの間隔を取って麻ひもで囲い、倒伏を防ぎましょう。
収穫

【菜園・プランター栽培ともに】
インゲンマメは、やわらかい莢を食べる野菜で、いちばん美味しいのは、莢を触ってみて中の豆の粒をわずかに感じるくらいの頃です。開花から10日ほどが経ってさやの長さが12〜15cmほどになった頃、中の子実がふくらまないうちに、ハサミでヘタを切り取って収穫します。中の豆が育ち始めると、莢がかたくなって味が落ちるので、若どりしてどんどん収穫していきましょう。
注意すべき病害虫

【病気】
インゲンマメに発生しやすい病気は、炭疽病やさび病などです。
炭疽病は、春や秋の長雨の頃に発生しやすくなります。カビが原因で発生する伝染性の病気で、葉に褐色で円形の斑点ができるのが特徴です。その後、葉に穴があき始め、やがて枯れ込んでいくので早期に対処することが大切です。斑点の部分に胞子ができ、雨の跳ね返りなどで周囲に蔓延していくので、被害を見つけたらすぐに除去して土ごと処分しておきましょう。密植すると発病しやすくなるので、茂りすぎたら葉を間引いて風通しよく管理してください。水やり時に株全体に水をかけると、泥の跳ね返りをきっかけに発症しやすくなるので、株元の表土を狙って与えるようにしましょう。
さび病は、かびによる伝染性の病気です。葉にくすんだオレンジ色で楕円形の斑点が現れます。この斑点は、やや細長くイボ状に突起するのが特徴です。症状が進むと斑点が破れ、中から粉のように細かい胞子を飛ばします。発症すると株が弱り、枯死することもあるので注意。発病した葉は見つけ次第切り取って処分し、適用する薬剤を散布して防除します。
【害虫】
インゲンマメに発生しやすい害虫は、アブラムシやハダニなどです。
アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mm程度の小さな虫で繁殖力が大変強く、発生すると茎葉にびっしりとついて吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目もよくないので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、水ではじいたりして防除しましょう。
ハダニは、葉裏に寄生して吸汁する害虫です。体長は0.5mmほどと大変小さく、黄緑色や茶色い姿をしています。名前に「ダニ」がつきますが、クモの仲間です。高温で乾燥した環境を好み、梅雨明け以降に大発生しやすいので注意が必要。繁殖力が強く、被害が大きくなると、葉にクモの巣のような網が発生することもあります。ハダニは湿気を嫌うため、予防として高温乾燥期に葉裏にスプレーやシャワーなどで水をかけておくとよいでしょう。
育て方も比較的簡単! 自分で育てたインゲンマメを食べてみよう

インゲンマメはつるなしやつるありのタイプがあるほか、莢の形も丸いものや平たいものなどさまざまな種類があるので、実際に育てて食べ比べをしてみるのも楽しいもの。栽培期間が短く、比較的早く収穫できる手軽さがあるので、ぜひ栽培にチャレンジしてみてください。
Credit
文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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