スナップエンドウは家庭菜園でも栽培できる! 美味しく育てるポイントを解説

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スナップエンドウは、家庭菜園ではもちろんプランターでも栽培できる人気の野菜。実が大きくなっても莢がかたくならないので、丸ごと食べられるのがいいですね。この記事では、スナップエンドウの基本情報や特徴、育て方のポイント、保存の仕方などについてご紹介します。
目次
スナップエンドウの基本情報

植物名:スナップエンドウ
学名:Pisum sativum L.
英名:snap pea、sugar snap pea
和名:エンドウ(豌豆)
その他の名前:スナックエンドウ、エンドウ、エンドウマメ
科名:マメ科
属名:エンドウ属
原産地:中央アジアから中近東
分類:一年草
スナップエンドウはマメ科エンドウ属の果菜類で、エンドウの栽培品種。学名はPisum sativum L.(ピスム・サティブム)で、原産地は中央アジアから中近東にかけてです。エンドウは、食べる部位や収穫期などによって、サヤエンドウ、実エンドウ、スナップエンドウ、トウミョウの4つに分けられます。サヤエンドウ(キヌサヤ)は若くてやわらかい莢を、実エンドウ(グリーンピース)は、丸々と太った豆を食べます。今回ご紹介するスナップエンドウは、アメリカからもたらされた新しい品種で、実も莢も食べられます。そしてトウミョウは、エンドウの新芽を10cmほど摘み取ったもので、独特の香りを楽しめます。それぞれに専用の品種が出回っているので、種子を購入する際は目的に応じた品種を選びましょう。
スナップエンドウを育てる際のスケジュールは以下のとおりです。10月中旬〜11月中旬に種を播くことからスタート。低温に耐える若い苗の状態で冬越しし、翌年の春から生育が盛んになり、3~4月にスイートピーに似た白やピンクの花が開花。莢をつけたのち4月中旬~6月中旬にかけて収穫できます。スナップエンドウはつるを伸ばして生育しますが、つるが伸びるタイプ(2m以上)と伸びないタイプ(60〜80cm)があるので、用途や広さによって品種を選ぶとよいでしょう。
スナップエンドウの花や実の特徴

園芸分類:野菜
開花時期:4〜6月
草丈:60〜200cm以上
耐寒性:普通
耐暑性:弱い
花色:白、ピンク
スナップエンドウは白花のものが多いですが、紅花種もあります。莢が肉厚でやわらかく、豆が大きくなってもほかのエンドウのように莢が硬くならないことが特徴で、莢とその中の豆の両方を食用できます。
スナップエンドウにはつるが伸びる「つるあり種」と、つるが伸びない「つるなし種」があります。巻きひげで周囲に絡みつきながら成長するつるあり種のほうが長く収穫が楽しめますが、スペースのない場所ではコンパクトに育つつるなし種のほうが育てやすいでしょう。
スナップエンドウの名前の由来や花言葉

エンドウは漢字では豌豆と書きます。これはエンドウの原産地フェルガナの中国名が大宛国であることに由来し、中国に伝来した際に宛の豆として名付けられたそうです。また、スナップエンドウのスナップ(snap)は、英語で「ポキッと折れる」を意味する表現で、パリッとした莢の食感から名付けられたものです。
エンドウの花言葉は「必ずくる幸福」「約束」「永遠の悲しみ」「いつまでも続く楽しみ」など。
スナップエンドウとスナックエンドウの違いとは

結論からいえば、どちらも同じ野菜です。
スナップエンドウは1970年代に日本に導入された、比較的新しい野菜です。その当時は「スナップエンドウ」「スナックエンドウ」「スナップタイプエンドウ」「スナックタイプエンドウ」など、さまざまな名称で販売されていましたが、1983年に農林水産省が「スナップエンドウ」に統一しました。しかし、ひと昔前に流通していた「スナックエンドウ」などの名前が、いまだに残っているようです。
スナップエンドウの栽培12カ月カレンダー
開花時期:3〜4月
植え付け:11月頃
肥料:2月下旬〜6月
種まき:10月中旬〜11月中旬
スナップエンドウの栽培環境
日当たり・置き場所
【日当たり/屋外】日当たり・風通しのよい場所で育てます。
【日当たり/屋内】屋外での栽培が基本です。
【置き場所】酸性土壌に弱いため、苦土石灰を施すなどして土壌酸度を調整しておきます。連作障害を避けるため、3~4年マメ科の植物を栽培していない場所で育てるとよいでしょう。
耐寒性・耐暑性
冷涼な気候を好み、15~20℃が生育の適温です。幼苗は4~7℃の低温に耐えますが、苗が小さすぎても大きすぎても耐寒性が低くなるため、草丈15~20cmの状態で冬越しするとよいでしょう。冬越しの際は、地面はわらなどでマルチングし、不織布や寒冷紗で苗を覆って保護します。一年草で夏には枯れるため、夏越し対策は必要ありません。
スナップエンドウの育て方のポイント
つるを伸ばして生育するスナップエンドウは、それほど管理が難しいわけではなく、ビギナーでも十分な収穫を楽しめます。ここでは、スナップエンドウの育て方について、順を追って詳しく解説します。
1.種まき

【菜園・プランター栽培ともに】
スナップエンドウの発芽適温は18〜20℃。種まきの適期は10月中旬〜11月中旬です。
3号ほどの黒ポットに野菜用にブレンドされた培養土を入れ、ジョウロで十分に湿らせておきます。均等な間隔を取って4カ所に指で2〜3cmの植え穴をあけ、種を播きましょう。土を軽くかぶせて手で押さえます。日当たり・風通しがよく、鳥害にあわない場所で管理してください。種まきから5日くらいで発芽します。適宜水やりをして1カ月ほど育苗し、本葉が3〜4枚ついたら植え付け適期です。種まきの時期がずれると苗が小さすぎたり大きすぎたりして冬越ししにくくなるので、ちょうどいい状態で冬越しできるよう、適期に種まきをすることがポイントです。
2.土づくり
【菜園】
連作を避け、できれば3~4年はマメ科の植物を栽培していない場所を選びましょう。また、日当たり・風通しのよい環境を選ぶことも大切です。
苗を植え付ける2〜3週間以上前に、苦土石灰を1㎡当たり約150g散布し、よく耕して土に混ぜ込んでおきます。さらに、苗の植え付けの1〜2週間前に、畝幅(60〜70cm)の中央に深さ20〜30cmの溝を掘り、1㎡当たり堆肥2kg、化成肥料50gを均一にまき、埋め戻して平らにならしておきましょう。このように土づくりを事前に行っておくことで、分解が進んで土が熟成します。
【プランター栽培】
野菜用にブレンドされた市販の培養土を使うと便利です。野菜によって適した土壌酸度などは異なるので、製品の用途に「スナップエンドウ」の項目が入っているか、確認しておくとよいでしょう。
3.植え付け

黒ポットで育苗した苗は、弱々しいものを1本のみ選び、地際で切り取ります。引き抜くと残す苗の根を傷めるためです。1カ所に3本の苗のまま植え付けます。マメ科の植物は根をいじられるのを嫌い、移植を好まないので、幼苗のうちに根鉢をくずさずに植え付けましょう。
【菜園】
土づくりをしておいた場所に、幅60〜70cm、高さ約10cmの畝を作り、表土を平らにならします。中央に30〜40cmの間隔をとって、根鉢をくずさずに苗を植え付けましょう。植え付け後に、たっぷりと水やりをしておきます。
【プランター栽培】
土が25〜30Lは入る大型のプランターを用意します。
プランターの底穴に鉢底ネットを敷き、底が見えなくなるくらいまで鉢底石を入れ、その上に野菜用にブレンドされた培養土を入れます。水やりの際にあふれ出さないように、ウォータースペースを鉢縁から2〜3cm残しておきましょう。20cmの間隔を取って、根鉢をくずさずに苗を植え付けます。株元をしっかり押さえ、最後に鉢底から流れ出すまで、たっぷりと水やりをしましょう。植え付け後は、日当たり・風通しのよい場所に置いて管理します。
4.水やり

水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために茎葉には水をかけず、株元を狙って与えましょう。
【菜園】
下から水が上がってくるので、天候に任せてもよく育ちます。ただし、雨が降らずに乾燥が続くようなら、適切に水やりをして補いましょう。
【プランター栽培】
日頃の水やりを忘れずに管理します。ただし、いつも湿った状態にしていると根腐れの原因になるので、与えすぎに注意。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。茎葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。また、真冬は、気温が低くなる夕方に与えると凍結の原因になってしまうので、十分に気温が上がった日中に与えるようにしましょう。
5.防寒対策

【菜園・プランター栽培ともに】
スナップエンドウは、秋に種まきをし、幼苗の状態で冬越しさせます。寒さにあうことで花芽が作られるのですが、霜対策は必要です。霜が降りる時期になったら、株元にわらを敷き詰めておきましょう。苗は寒冷紗や不織布で覆うとより安心です。
6.肥料

マメ科の植物は、根に共生する根粒菌により少ない肥料でもよく育ちます。そのため肥料は控えめにして与えすぎに注意し、根の張りと実つきをよくする働きのあるリン酸肥料を中心に与えるとよいでしょう。
【菜園】
越年後に春を迎え、茎葉がよく茂るようになったら、わらや寒冷紗を外します。追肥として化成肥料を1㎡当たり30gほど株元にばらまき、軽く耕して株元に土寄せしておきます。わらは追肥が終わった後に戻しておきましょう。
【プランター栽培】
茎葉がよく茂るようになったら寒冷紗を外します。つぼみが見え始めたらわらを外し、追肥として化成肥料を1株につき5gほど施し、軽く耕して株元に土を寄せておきます。追肥後に、わらを戻しておきましょう。
7.支柱の設置

スナップエンドウはつるを伸ばして生育するので、茎葉がよく茂るようになったら支柱を設置します。
【菜園】
長さ2mの園芸用支柱を、畝の長さに合わせて準備し、等間隔に垂直に60cmほど埋め込みます。埋め込みが浅いと、強風によって倒伏することもあるので注意しましょう。支柱を設置したら園芸用ネットをピンと張り、支柱に固定します。つるが伸びてきたら、等間隔になるように支柱に誘引してビニタイなどでとめていきましょう。
つるなしタイプの場合は矮性なので、園芸用支柱は1.5mほどの長さでもかまいません。
【プランター栽培】
草丈が20〜30cmになったら、1.5mくらいの園芸用支柱を準備し、四隅に支柱を立てて成長とともにつるをバランスよく誘引します。
8.収穫

【菜園・プランター栽培ともに】
開花後に莢がついて鮮やかな緑色になり、中の豆が十分にふくらんだ頃に、ハサミか手で茎から切り取って収穫します。
9.注意する病害虫

【病気】
発生しやすい病気は、うどんこ病や灰色かび病などです。
うどんこ病は、カビによる伝染性の病気です。葉、新梢、つぼみに発生しやすく、表面が白く粉を吹いたようになり、放置するとどんどん広がるので注意。進行すると光合成ができなくなり、やがて枯死してしまいます。窒素肥料を施しすぎたり、枝葉が繁茂しすぎて風通しが悪くなったりしていると、発病しやすくなります。うどんこ病が出たら早々に病気の葉を摘み取って処分し、蔓延するのを防ぎましょう。
灰色かび病は花や葉に発生しやすく、褐色の斑点ができて灰色のカビが広がっていきます。気温が20℃ほど、かつ多湿の環境下で発生しやすい病気で、ボトリチス病、ボト病などとも呼ばれています。風通しが悪く込み合っていたり、終わった花や枯れ葉を放置していたりすると発生しやすくなるので注意。茎葉が込み合っている場合は、誘引し直して風通しよく管理しましょう。
【害虫】
発生しやすい害虫は、アブラムシ、アザミウマなどです。
アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mmの小さな虫で繁殖力が大変強く、茎葉にびっしりとついて吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目もよくないので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、シャワーではじいたりして防除しましょう。
アザミウマは花や葉につき、吸汁する害虫で、スリップスという別名もあります。体長は1〜2mmと大変小さく、緑や茶色、黒い姿をした昆虫です。群生して植物を弱らせるので注意しましょう。針のような器官を葉などに刺して吸汁する際にウイルスを媒介するので、二次被害が発生することもあります。被害が進んだ花や葉は傷がついてかすり状になるので、異変がないかよく観察してみてください。枯れ葉、雑草などに潜みやすいので、株まわりを清潔に保っておきます。
収穫したスナップエンドウの保存方法

鮮度が落ちやすいスナップエンドウは新鮮なうちが一番おいしく、収穫してすぐに調理するのが一番です。食べきれない場合は、茹でたものを冷蔵庫で保存し、3日のうちには消費しましょう。かために茹でて密閉できる保存袋に入れ、冷凍してもかまいません。冷凍したスナップエンドウを調理するときは、凍ったまま使います。冷凍保存期間は1カ月ほどを目安にしてください。
スナップエンドウを育てる際の注意点

スナップエンドウの栽培は、それほど難しくありません。しかし、いくつか注意したいポイントがあるので、ここで詳しく解説します。
連作を避ける
連作とは、同じ場所で同じ種類(科)の植物を育て続けることをいい、連作をすると土壌バランスが崩れて生育障害が起きやすくなるので、注意が必要です。スナップエンドウも、ほかのマメ科の植物(インゲン、エダマメ、ソラマメ、ラッカセイ、シカクマメ、ササゲなど)を一度栽培した場所では、2〜3年は栽培を避けるようにしましょう。家庭菜園では、前もって作物を輪作するプランニングを立てておくことをおすすめします。
種まきは適期を守る
スナップエンドウは、ある程度の寒さにあうことで花芽分化が促されるので、秋に種を播いて育成します。スナップエンドウの種まきの適期は10月中旬〜11月中旬で、このタイミングを逃さないことが大切。種まきが早すぎて株が大きくなった状態で冬を迎えると、寒さに耐えられずに枯死することがあり、また種まきが遅く株が小さすぎても同様の結果になります。ちょうどよい若い苗の状態で冬越しさせるためには、種まきの適期をはずさないことが大切です。
冬は寒さ対策をする
スナップエンドウは、寒さにあわせることで花芽分化が促されるとはいえ、あまり寒さに強いほうではありません。霜が降りると株が傷んでしまうので、寒さが厳しくなる前に表土にわらを敷き詰めてマルチングするか、不織布をべたがけして、防寒対策をしておきましょう。
病害虫は早めに対処する
スナップエンドウは、3月以降になるとうどんこ病、灰色かび病などが発生しやすくなります。風通しが悪いと発生しやすいので、つるが込み合っていれば適宜整枝して誘引し直すなど、風通しよく管理しましょう。
害虫はアブラムシやスリップス、ハモグリバエ、ヨトウムシが発生しやすくなるので注意。早期発見が大切で、株に食害の痕などがあれば、葉裏などをチェックして早めに捕殺しましょう。
スナップエンドウを栽培して新鮮な野菜を楽しもう

エンドウの中でも、スナップエンドウは莢ごと食べられるタイプで、やわらかくて肉厚な莢と甘みのある豆の食感を楽しめます。栽培は容易なので、ぜひ家庭菜園やプランターなどで育ててみてください。
(参考文献)
『やさしい家庭菜園』 監修者/藤田智、加藤義松 発行/家の光協会 2006年3月1日第1刷
『はじめての野菜づくり コンテナ菜園を楽しもう』著者/藤田智 発行/日本放送出版協会 2007年5月25日発行
『わが家の片隅でおいしい野菜をつくる』監修/藤田智 発行/日本放送出版協会 2008年2月10日発行第5刷
『別冊やさい畑 野菜づくり名人 虎の巻』発行/家の光協会 2009年2月1日発行
Credit
文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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