春のポタジェガーデンの準備と、挑戦したい! ステキな組み合わせ

Friedrich Strauss Gartenbildagentur / Strauss, Friedrich
コロナ禍で人気が高まっている家庭菜園。菜園といっても、野菜だけではなく花も一緒に育てれば、見た目も美しくステキなポタジェガーデンになりますよ。ドイツ出身のガーデナー、エルフリーデ・フジ=ツェルナーさんに、春のポタジェガーデンの庭仕事と、菜園で楽しみたい! 植物の組み合わせアイデアについて教えていただきます。
目次
駆け足でやってきた春

一年の最初の3カ月は、あっという間に過ぎ去っていき、春の陽気が続くと、だんだんソワソワしてきます。雨の日は、私にとって心を落ち着けてくれる嬉しい日。春のエネルギーがいたるところであふれ出すようで、冬の間に計画していた予定をこなすのが大変なのです。背中が痛くなるほど精を出しても、ガーデンで過ごす時間は短すぎるよう。皆さんの中にも同じような心持ちで、少々焦っている人もいらっしゃるのでは?

私の春のポタジェガーデンの仕事始めは、レイズドベッドのリニューアル。そのためにはまず、植わっている美味しいルッコラやコマツナを収穫し、食用菊の苗を移植することから始めなくてはいけません。冬の間、これらの野菜は低温障害を防ぐための寒冷紗をかけて育てていました。アーチ状の支柱を使えば、トンネル栽培もできますよ。冬野菜の成長はゆっくりですが、その分収穫の喜びは大きく、また長く収穫し続けることができます。小さなベビーリーフだったのが、数日暖かい日が続いたら一気に成長し、3月半ばには収穫を終えました。食用菊だけは、別の場所に移動して4月も収穫を楽しむとともに、花も咲かせようと考えています。
レイズドベッドのリニューアル

レイズドベッドのリニューアルは手のかかる作業です。まず一度土を取り出して、雑草を取り除きます。木や落ち葉の腐葉土、少量の砂と堆肥が混ざった土はとてもよい状態。こうした土は、私はガーデンセンターでは見たことがありません。植物に合ったよい土は、植物を健康に育てて、実り多い収穫をもたらすためには欠かせないもの。したがって、土を購入する際は、ぜひしっかりと品質をチェックしてください。プロのガーデナーさんがアドバイスをくれるような、信頼できるガーデンセンターを行きつけにするといいですよ。植物を育てたりガーデンをつくる時は、必ずなにかと疑問が浮かぶものですから、相談できる専門家がいるととてもありがたいものです。

レイズドベッドを空にして、周囲のワイヤーや下に敷くマルチを直したら、宿根草ボーダーで集めた素材を入れていきます。入れるのは、大量の落ち葉や剪定した茎などの乾いた素材で、寒風から根を守ったり、虫たちの棲み処になったりしていたもの。作業中には、いくつか春を待つ虫の蛹も見つかりました。
それらの素材を50cmほど入れたら、取り出した土をその上に戻します。そのまま数日~数週間、土が落ち着くのを待ってから種まき。ここは芽生えたばかりの苗を寒さや強風から守る「ゆりかご」になる予定です。
私のガーデニング用語は、子育ての言葉と重なることが多いです。例えば先日友人と話した時、「この植物の気持ちになって考えたら、暖かい日に冷たい水でシャワーを浴びたいと思う?」と訊いたら、そのたとえに大笑いされてしまいました。でも、種から植物を育てるのは赤ちゃんを育てるのによく似ています。はじめはとてもか弱いので、適した環境であることはもちろん、特に注意を払い、守ってあげる必要があるのです。
例えば、先日植えたばかりのソラマメとエンドウマメ。3月半ばだというのに、すでにびっしりとアブラムシがついていました。新芽についたアブラムシは、苗を弱らせてしまうので、対処が必要。まだ寒さの残る日の早朝に、大きな紙を下に敷いて苗を優しく揺すると、ほとんどが紙に落ちてくるので、簡単に駆除することができます。その後は、今のところ苗の生育は順調。この方法は、寒い日に小さな苗で行うと特に効果的です。
家庭菜園をもっと楽しむ組み合わせアイデア

菜園で育てたい植物を選んで合わせてみるのは、とても楽しい作業です。組み合わせのアイデアは、例えばルッコラ、コマツナ、菜の花、そしてカラフルな花咲くラナンキュラス。野菜は緑で、菜の花は黄色、そこに黄色や赤、オレンジなどのラナンキュラスが加われば、見た目も味もよいガーデンになりますよ。私はこれらを長さ50×幅20×深さ30cmのコンテナに植えています。見ても美しく、長く収穫できる、お気に入りの組み合わせです。
野菜と花を組み合わせるのはとても楽しく、ほとんど無限大の可能性があるというのが私の意見。もちろん、野菜と組み合わせるのに有毒植物はNGですが、それ以外ならいろいろな花に挑戦できます。

葉が大きくてしっかりした野菜なら、華やかな主役級の花を合わせて。ディルやクミンのような柔らかい葉を持つ繊細なハーブや野菜なら、カモミールがぴったりのパートナーになります。育てたい野菜やハーブ、そしてもちろん好みに合わせて、いろいろな組み合わせが考えられるので、終わりのない挑戦を続けることができますね。
玄関前に大きなコンテナを置き、エンドウマメを育ててみるのも楽しいもの。可愛い花が咲き、大きく育つので、ちょっとした目隠しにもなりますし、収穫期間も長くてほとんど毎日収穫することも可能です。サラダ菜やカブ、ニンジンなどを組み合わせてもいいですね。
合わせる植物に制限はありません。時には相性がよい組み合わせが見つかることもあれば、その逆もあります。ガーデンは、一生かけて遊べる、さまざまな物語が生まれる場所なのです。
コラム:ガーデニングのココが気になる!
緑の公共空間とそれを彩る一年草

寒い冬から春への移り変わりの期間に私の興味を引いたのは、さまざまな場所で行われている、季節の花への植え替え。特に公共空間では、ほとんど毎年、もしくは2~3年スパンのローテーションで、同じ植物が使われています。このようなシーンを見ると、ガーデナーとして駆け出しの頃働いていたガーデンのことを思い出します。私の上司はガーデン日記を付けていて、それを見ながら「昨年の今日はこれとこれをやったから、今年も今週中に同じ作業をしよう」というふうに決めていくのです。ルーティンやガーデン日記を付けるのは、よい面もたくさんありますが、年によって気候は変わるもの。気候変動が起きてる昨今はなおさらです。
ドイツでは、緑の公共空間をつくる際、植物がどのように育てられ、どのように使われるかを気にする人も増えています。例えば、公園に植えるパンジーやビオラを準備するためは、どれくらいのエネルギーが必要でしょうか。毎年何百万ものビオラの苗が、エネルギーを使って適切な温度に管理された温室の中で、公共空間を彩るためだけに育てられています。そして植えられた後、数カ月も経てば、捨てられてしまうのです。これは他の一年草でも同じこと。もちろん一年草はガーデニングにおいて重要ですが、1年しか生きられない一年草をこれほどたくさん使う必要はあるのでしょうか。

こうした一年草は、ミックスボーダー花壇に宿根草やグラス類と一緒に植えてもいいはず。隊列のように何列も植えたり、単植の鉢植えにするだけでなく、アリッサムやラナンキュラス、カラーリーフプランツと合わせて素敵な寄せ植えに仕立てるのもいいですね。ほかに、これから満開となるユキヤナギを使えば、花後には小さな可愛い葉が茂り、花壇や庭に優しい印象をもたらしてくれるでしょう。コンパクトな茂みとなるユキヤナギは、ドイツでもよく植えられる植物です。地域や植え場所にもよりますが、ドイツでは4月の終わり頃に咲きます。育てやすく刈り込みにも耐えるユキヤナギは、春の木立の中でも私のお気に入りの一つです。

先日、多摩川に沿って続く遊歩道で、たくさんのユキヤナギが植えられているのを見ました。まだ色彩の無い冬枯れの景色の中で、その愛らしさがより一層引き立っていました。もっとも、私はいろいろな植物が混ざり育ち、互いの魅力を引き立てあっている光景が大好きなので、そのせいで一層魅力的に見えていたかもしれませんね。
これは人間にも同じことがいえます。さまざまな背景や意見を持つ人々が集まったほうが、同じタイプの人ばかり集まるより、大きなエネルギーとポジティブな環境が生まれます。この春はぜひ、新しい挑戦も始めましょう!
Credit

ストーリー/Elfriede Fuji-Zellner
ガーデナー。南ドイツ、バイエルン出身。幼い頃から豊かな自然や動物に囲まれて育つ。プロのガーデナーを志してドイツで“Technician in Horticulture(園芸技術者)”の学位を取得。ベルギー、スイス、アメリカ、日本など、各国で経験を積む。日本原産の植物や日本庭園の魅力に惹かれて20年以上前に日本に移り住み、現在は神奈川県にて暮らしている。ガーデニングや植物、自然を通じたコミュニケーションが大好きで、子供向けにガーデニングワークショップやスクールガーデンサークルなどで活動中。
Photo/ Friedrich Strauss Gartenbildagentur/Stockfood
取材/3and garden
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