ハナビシソウってどんな植物? 名前の由来や特徴・育て方のポイントを解説
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ハナビシソウは、アメリカ・カリフォルニアの州花になっているケシ科の植物。大きめの愛らしい4弁花を花つきよく次々と咲かせるので、ガーデンでも目を引く存在です。この記事では、ハナビシソウの基本情報や特徴、名前の由来や花言葉、主な品種、育て方などについて、詳しく解説します。
目次
ハナビシソウの基本情報

植物名:ハナビシソウ
学名:Eschscholzia californica
英名:California poppy、golden poppy、California sunlight、cup of gold
和名:ハナビシソウ(花菱草)
その他の名前:カリフォルニアポピー、エスコルチア
科名:ケシ科
属名:ハナビシソウ属
原産地:北アメリカ
形態:宿根草(多年草)、一年草
ハナビシソウはケシ科ハナビシソウ属の植物です。原産地はアメリカで、日当たりがよく乾燥した野山に自生しています。本来は短命な多年草ですが、日本では暑さを乗り越えられないので一年草として流通しています。カリフォルニアポピーとも呼ばれ、多数の園芸品種が出回っています。草丈は30〜60cmで、花茎を伸ばした頂部に咲くため花壇の中段などにおすすめです。
ハナビシソウは、花に蜂が集まってくるので蜜源植物にもなります。Pair Srinrat/Shutterstock.com
ハナビシソウの花や葉の特徴

園芸分類:草花
開花時期:4月中旬〜6月
草丈:30〜60cm
耐寒性:普通
耐暑性:普通
花色:黄、オレンジ、赤、ピンク、白など
ハナビシソウの開花期は、4月中旬〜6月です。花色は黄、オレンジ、赤、ピンク、白など。花茎を長く伸ばした頂部に、花径5〜6cmほどの4弁花を咲かせます。日が差すと開花し、暗くなると閉じる性質があるので、地植えの場合は必ず日当たりがよい場所を選びましょう。ハナビシソウの葉は細かな切れ込みが入る羽状複葉で、株元から放射状に茎葉を広げます。
ハナビシソウの名前の由来や花言葉

ハナビシソウは、漢字で「花菱草」と書きます。菱の葉に似た4枚の花弁を並べて花を表現した花菱紋をイメージさせることから、この名前がついたようです。英名のカリフォルニアポピーは、原産地がカリフォルニアで、花姿がポピーに似ていることから。学名のEschscholzia California(エッショルツィア・カリフォルニア)の「Eschscholzia」は、医師で博物学者のエッシュショルツ氏の名前に由来します。
ハナビシソウの花言葉は「富」や「成功」など。黄色やオレンジなどの花が一面に咲く姿からイメージされたようです。
ハナビシソウの主な種類

ハナビシソウは、さまざまな品種があります。ここでは、代表的な園芸品種と近縁の種類について一部ご紹介します。
オレンジキング

ビビッドなオレンジ色の大輪種で、草丈は40cmほど。目を引くカラーは、庭のアイキャッチにもなります。細かく切れ込みの入ったレースのような質感の葉姿も魅力です。
ローズシフォン
草丈は30cm前後でバランスよくまとまります。花径5〜7cmの半八重咲きで、花弁はゆるやかなフリルが入るのが特徴。花色はピンクですが、個体によって色幅があります。
ミルクメイド
草丈はやや低めで20〜30cm。クリーム色の一重咲きや八重咲きなど、花姿の違いも楽しめます。ほかの植物と調和しやすいのも長所の1つです。
ヒメハナビシソウ(Eschscholzia caespitosa)

漢字で書くと「姫花菱草」。花菱草よりもコンパクトにまとまる小型種で、草丈は20〜30cm。株元からたくさんの花茎が立ち上がり、よく開花します。花色はパステルイエローが基本で、優しい雰囲気です。ミニチュアサンデーとも。
ハナビシソウの栽培12カ月カレンダー
開花時期:4月中旬〜6月
植え付け:10〜11月、3~4月
肥料:特になし
種まき:9月下旬〜10月、3~4月
ハナビシソウの栽培環境

日当たり・置き場所
【日当たり/屋外】日当たり・風通しのよい場所を選びます。日照不足では、花つきが悪くなったり、ヒョロヒョロとしたか弱い茎葉が茂って草姿が間のびしたりするので注意しましょう。
【日当たり/屋内】一年を通して屋外での管理が基本です。
【置き場所】水はけ・水もちのよい土壌を好みます。地植えの場合は、植え付け前に腐葉土や堆肥などの有機質資材を投入してよく耕し、ふかふかの土づくりをしておくとよいでしょう。多湿が苦手なので、土を盛って周囲よりも高くしておくのも一案です。湿り気の多い場所では、川砂やパーライトなどの土壌改良資材を投入しておくとよいでしょう。また、酸性に傾いた土壌を嫌うので、土づくりの際に苦土石灰を散布して酸度調整をしておきます。
耐寒性・耐暑性
ハナビシソウの生育適温は10~20℃程度。耐寒温度はマイナス5℃程度と、寒さにはある程度強いですが、寒冷地では春まきにするとよいでしょう。高温多湿に弱く、日本では夏越しが難しいため、夏には枯れる一年草として扱われることが多いです。
ハナビシソウの育て方のポイント
用土

【地植え】
酸性に傾いた土壌を嫌うので、種まきや植え付けの3〜4週間前に、苦土石灰を散布して土に混ぜ込んでおきましょう。さらに1〜2週間前に、腐葉土や堆肥などの有機質資材と緩効性化成肥料を投入し、よく耕してふかふかの土をつくっておきます。水はけの悪い場所では、川砂やパーライトなどを施し、周囲より土を盛って土壌改良しておくとよいでしょう。土づくりをした後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成します。
【鉢植え】
草花の栽培用に配合された園芸用培養土を利用すると便利です。
水やり

株が蒸れるのを防ぐために株全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。なお、種まきしたあと、育苗中の冬は夕方に水やりすると凍結の原因になるので、十分に気温が上がった真昼に行いましょう。
【地植え】
下から水が上がってくるので、ほとんど不要です。ただし、過度に乾燥し、茎葉がしおれそうにだらんと下がっていたら水やりをして補います。
【鉢植え】
日頃の水やりを忘れずに管理します。ただし、多湿にすると株が弱るので、水の与えすぎには注意。土の表面が乾いたら鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。成長期を迎えてぐんぐん茎葉を広げ出すと、水を欲しがるようになります。気候や株の状態に適した水やりを心がけましょう。茎葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。
肥料

【地植え】
植え付けの際に肥料を施してあれば、必要ありません。
【鉢植え】
植え付けの際に肥料を施してあれば、必要ありません。また鉢植えで使用する市販の培養土には、ほとんどの場合肥料が配合されています。しかし葉色が冴えなかったり、株に勢いがない場合などには、液体肥料を施して様子を見ましょう。
注意する病害虫

【病気】
ハナビシソウに発生しやすい病気は、根腐れ病や立ち枯れ病などです。
根腐れ病はカビが原因で、根に発生しやすいために発見が遅れるので注意が必要。日中に地上部が萎れるようになり、株に勢いがなくなってきたら、根腐れ病を疑います。感染すると根が茶褐色〜黒に変色して枯死していき、地上部に水分や養分を送るのが難しくなって、やがて地上部の茎葉も黄色く変色して枯れてしまいます。株を引き抜いてみると、ほとんど根がついていないこともあるほどです。水はけのよい土づくりが大切で、また株が茂りすぎているようなら適宜間引いて風通しよく管理しましょう。効果的な殺菌剤を利用するのも一案です。
立ち枯れ病は土壌中の原因菌によるもので、根や地際の茎から感染します。感染すると株全体の生育が悪くなり、日中はしおれるようになるのが特徴。進行すると下葉から黄色く変色して茎も枯れが進み、株全体が枯死します。病原菌は被害にあった植物や土壌中で繁殖するので、感染した株は抜き取って処分しましょう。予防には土壌の殺菌や連作を避けることが効果的です。
【害虫】
ハナビシソウに発生しやすい害虫は、アブラムシなどです。
アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mmの小さな虫で繁殖力が大変強く、茎葉にびっしりとついて吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目もよくないので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、水ではじいたりして防除しましょう。虫が苦手な方は、スプレータイプの薬剤を散布して退治するか、植え付け時に土に混ぜ込んで防除するアブラムシ用の粒状薬剤を利用するのがおすすめです。
ハナビシソウの詳しい育て方
苗の選び方
ハナビシソウは直根性で移植を嫌うため、種まきからの栽培が一般的ですが、苗からでも栽培することができます。苗を購入する際は、若い苗を選ぶとよいでしょう。つぼみが多く、節間が短く、茎ががっしりと締まっているものがおすすめです。
種まき

ハナビシソウは、ビギナーでも種まきから育てられますよ! 種まきからスタートするメリットは、輸送などによる苗への負担がかからず、環境に馴染みやすいことです。敷地が広くてたくさんの苗が欲しい場合には、コストカットにもなりますね。ただし、ハナビシソウの苗は春から花苗店に出回り始めます。手軽にスタートしたいなら、苗の植え付けからがおすすめです。
種まきの適期は、一般地で3〜4月か9月下旬〜10月です。ハナビシソウの根はゴボウのように太く長く伸びる直根性で、この根を傷めると後の生育が悪くなるので、直まきかポットまきがおすすめです。
【直まき】
土づくりをしておいた場所に種子をばらまき、軽く覆土します。はす口をつけたジョウロで高い位置からやわらかい水流で水やりし、種子が流れ出さないようにしましょう。発芽後は間引きながら育成し、最終的に株同士の間隔を20〜30cm取ります。密植すると、蒸れたり病気にかかりやすくなったりするので、風通しよく管理しましょう。
【ポットまき】
まず、黒ポットに草花用にブレンドされた市販の培養土を入れ、種子を数粒ずつ播いて軽く覆土します。最後に浅く水を張った容器に入れて、底から給水します。これはジョウロなどで上から水やりすると水流によって種子が流れ出してしまうことがあるからです。発芽までは明るい半日陰で管理し、乾燥しないように適度に底から給水しましょう。
発芽後は日当たりのよい場所で管理します。勢いがあって元気のよい苗を1本のみ残し、ほかは間引きましょう。ヒョロヒョロと伸びて弱々しい苗や、葉が虫に食われている苗、葉が黄色くなっている苗などを選んで間引きます。本葉が4〜5枚ついたら植えたい場所に定植します。
植え付け

ハナビシソウの植え付け適期は、種子から育てて育苗した場合は10〜11月、花苗店で苗を購入する場合は3〜4月です。
ハナビシソウは、ゴボウのように太くて長く伸びる直根性の根を持っています。この根を傷めると生育が悪くなるので、植え付けの際には根鉢をくずさずに丁寧に扱うのがポイントです。
【地植え】
土づくりをしておいた場所に、苗よりもひと回り大きな穴を掘り、根鉢をくずさずに植え付けます。複数の苗を植え付ける場合は、20〜30cmほどの間隔を取りましょう。最後に、たっぷりと水やりします。
【鉢植え】
6〜7号鉢を準備しましょう。
底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから培養土を半分くらいまで入れます。苗を鉢に仮置きし、高さを決めたら、根鉢をくずさずに植え付けます。水やりの際にすぐあふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cm下を目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底からたっぷりと流れ出すまで、十分に水を与えましょう。
日常のお手入れ

【花がら摘み】
次から次へと花が咲くので、終わった花は花茎の根元から摘み取りましょう。まめに花がらを摘んで株まわりを清潔に保つことで、病害虫の抑制につながりますよ! また、いつまでも花がらを残しておくと、種子をつけようとして株が消耗し、老化が早まって花数が少なくなってしまうので注意。花がらをまめに摘み取ると、次世代を残そうとして次から次に花がつき、長く咲き続けてくれます。
夏越し・冬越し

【夏越し】
ハナビシソウは本来は多年草ですが、日本の猛暑に耐えられずに枯死してしまうので、夏越しの準備は必要ありません。気温の上昇によって枯れてしまったら、早めに抜き取って処分します。
【冬越し】
冬の寒さには強く、マイナス5℃くらいまで耐えます。しかし、秋に種子を播いた後の育苗中は霜柱によって根が傷むことがあるので、バークチップなどでマルチングをし、冬越しの対策をしておいてください。
増やし方

ハナビシソウは種まきで増やせます。その場合は、開花後に種子を採取します。開花期が終わりを迎える頃に花がら摘みをやめ、熟した種子を採取して密閉容器に入れ、種まき適期まで保管しておきましょう。
種まきの方法については、前述の「種まき」の項目を参照してください。
ハナビシソウはワイルドフラワーとしても人気

ワイルドフラワーとは、人の手を借りず自然の中で自生して咲く植物の総称です。ガーデニングでは、自然界の花草原や野山を模して花々が咲いている景色を作ることがあります。そこで、ハナビシソウはそのシーン作りに一役買うワイルドフラワーとしても人気があります。園芸店では、「ワイルドフラワーミックス」と称して、楚々とした風情の草花を多種混合した種袋が販売されていますが、ハナビシソウも入っていることがあります。
ハナビシソウが属するケシ科には栽培禁止の品種もある

ケシ科の仲間には、麻薬成分を含むために栽培が禁じられている種類があります。ケシ、アツミゲシ、ハカマオニゲシの3種類です。しかし、ガーデニング用の植物としては流通していないので、「間違えて育ててしまって、罰せられることはない?」などと心配する必要はありません。
ハナビシソウの元気な花姿を楽しもう

ハナビシソウは、多湿に注意すればあまり手がかからずによく育つ草花で、ビギナーにもおすすめです。開花期には次々とつぼみを上げてカラフルな咲き姿を楽しませてくれるので、ぜひ庭やベランダに取り入れてみてはいかがでしょうか。
Credit
文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。2026壁掛けカレンダー『ガーデンストーリー』 植物と暮らす12カ月の楽しみ 2026 Calendar (発行/KADOKAWA)好評発売中!
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