常緑ヤマボウシはシンボルツリーとしても人気! 特徴や育て方を詳しく解説

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夏に白い花をあふれんばかりに咲かせる常緑ヤマボウシ。一般に普及しているヤマボウシは落葉樹に分類されていますが、常緑ヤマボウシは冬でもみずみずしいエバーグリーンを保つのも魅力です。一年を通して葉姿を楽しめ、シンボルツリーとして人気があります。この記事では、常緑ヤマボウシの基本情報や特徴、名前の由来や花言葉、落葉性のヤマボウシとの違いや育て方など、幅広くご紹介します。
目次
常緑ヤマボウシの基本情報

植物名:常緑ヤマボウシ
学名:Cornus hongkongensis
英名:Hong Kong dogwood
和名:トキワヤマボウシ(常盤山法師)
その他の名前:ホンコンエンシス
科名:ミズキ科
属名:ミズキ属
原産地:中国南部からインドネシア半島
分類:常緑性小高木
常緑ヤマボウシの学名はCornus hongkongensis(コルヌス・ホンコンエンシス)。ミズキ科ミズキ属の花木です。原産地は中国南部からインドネシア半島。暑さに強い一方で寒さには弱く、耐寒温度はマイナス8℃くらいなので、地植えは関東地方以南の太平洋側などの暖地に限られます。自然樹高は3〜5mで旺盛に生育しますが、毎年の剪定によってほどよい樹高にコントロールすることが可能です。日本に自生するヤマボウシは落葉樹ですが、常緑ヤマボウシは冬でもみずみずしい葉姿を楽しめます。
常緑ヤマボウシの花・葉・実の特徴

園芸分類:庭木
開花時期:6〜8月
樹高:3〜5m
耐寒性:普通
耐暑性:強い
花色:白、ピンク
常緑ヤマボウシの開花期は6~8月。落葉性のヤマボウシによく似た白い花が、木を覆い尽くすほどに咲く姿は見応えがあります。花弁に見える部分は総苞片で、真ん中の球状のものが本来の花です。
光沢のある葉は常緑ですが、寒くなると赤みがかったり、さらには葉を落としてしまうこともあります。しかし枯れたと判断するのは時期尚早で、冬を越した後、生育期に入って芽吹くか否かを見守ってください。
10〜11月には赤くて丸い実をつけます。この実は、収穫すれば食材として利用できます。
樹形は2種類

常緑ヤマボウシの仕立て方には、株立ちと単幹の2つがあります。
【株立ち】
株立ちは、地際から数本の幹を出すように仕立てる樹形です。幹が数本になるため生育が緩やかで、華奢な姿を楽しめます。購入時の株立ちの姿のままで放置すると、すべての幹が太くなっていかつくなるので、華奢な姿を楽しみたいなら、定期的な更新が必要です。太くなってきた幹は地際で切り取り、株元からたくさん出るひこばえのうち1〜2本を残して次世代の幹として育成します。この更新を繰り返せば、細い幹を維持することができます。
【単幹】
単幹とは、1本の幹を伸ばした樹形のことです。養分が1本に集中するので、旺盛に枝葉を伸ばして生育します。単幹の常緑ヤマボウシは、左右対称に綺麗に整える仕立て方ができ、端正な姿を楽しめます。
常緑ヤマボウシの名前の由来やヤマボウシの花言葉

常緑ヤマボウシやトキワヤマボウシという名前は、特性をそのまま樹木名に冠したもの。ヤマボウシ(山法師)は、中央の球状の花のかたまりを僧の頭に、白い総苞片を頭巾に見立てたもので、「山」に咲く「法師」が由来だとされています。ヤマボウシの花言葉は「友情」です。
常緑ヤマボウシの園芸品種

常緑ヤマボウシにはいくつかの園芸品種があるのでご紹介しましょう。‘月光’は、常緑ヤマボウシの中でも特に人気のある品種です。花つき、実つきともに素晴らしく、葉には光沢があります。主にまっすぐに伸びる直幹性が出回っており、樹形が整いやすいほうです。‘リトルルビー’は、赤い花が咲く品種。葉は新芽が赤く、初夏になると次第に緑色になり、秋に紅葉し、一年を通して葉色の変化が楽しめます。
常緑ヤマボウシと似た木との違い
常緑ヤマボウシは、ヤマボウシやハナミズキと見た目がそっくりで、見分けがつかないという方も多いことでしょう。ここでは、それぞれの違いについてご紹介します。
ヤマボウシとの違い

常緑ヤマボウシは中国南部〜インドネシア半島原産で、国内での流通量はそれほど多くはありません。ヤマボウシは日本、朝鮮半島、中国原産で、日本の山野に自生している身近な樹木です。常緑ヤマボウシの葉は厚く光沢があり、強い寒さにあわなければ年間を通して葉姿を保ちます。一方ヤマボウシは丸みのある葉の縁には細かくウェーブが入り、冬は葉を落とします。また、常緑ヤマボウシの花はヤマボウシよりやや小さめで、全体にびっしりと咲かせます。耐寒性は常緑ヤマボウシよりも落葉性のヤマボウシのほうが強いという違いもあります。
ヒマラヤヤマボウシとの違い

ヒマラヤヤマボウシは、中国からヒマラヤ山脈周辺、ベトナム、ミャンマーなどを原産とする常緑~半常緑のヤマボウシの仲間です。暖地ではほとんど葉を落とさずに越冬しますが、寒冷地では冬季に落葉します。葉は細長い形でやや黄緑色に近く、花はヤマボウシよりも1回り小さく黄色がかっていることが特徴。そのため、別名キバナヤマボウシとも呼ばれます。常緑ヤマボウシに比べると樹高が高くなりやすい樹種です。
ハナミズキとの違い

ヤマボウシとハナミズキは、外見がそっくり。じつは、ハナミズキの和名は「アメリカヤマボウシ」といいます。ヤマボウシは日本原産で、ハナミズキはアメリカ原産の外来種と覚えておくとよいでしょう。また、ヤマボウシは苞の先端が少し尖っており、ハナミズキの苞は全体に丸みを帯びているので、じっくりと苞を見比べるとその違いが見えてきます。開花期もヤマボウシは6〜7月で、4月中旬〜5月中旬に咲くハナミズキよりも遅いので、花が咲く時期によって見分けることもできます。
常緑ヤマボウシの栽培12カ月カレンダー
開花時期:6〜8月
植え付け・植え替え:10〜11月、3〜5月
肥料:2〜3月
剪定:11〜翌年2月(厳寒期を除く)
種まき:10~11月
常緑ヤマボウシの栽培環境

日当たり・置き場所
【日当たり/屋外】日当たり・風通しのよい場所で管理します。半日陰の場所でも育ちますが、日照不足になると葉色が冴えなくなったり、花数が少なくなったりするので注意してください。
【日当たり/屋内】基本的には一年を通して屋外で管理します。ただし、マイナス8℃以下になる寒冷地では、冬は室内の窓辺や温室などで管理するとよいでしょう。
【置き場所】水はけ・水もちのバランスがよい、ふかふかとして腐植質に富んだ土壌を好みます。強い日差しを浴びると葉焼けすることがあるので、西日が照りつけない場所を選ぶとよいでしょう。
耐寒性・耐暑性
夏の暑さには強いのですが、強い直射日光による葉焼けには注意が必要です。冬の寒さは苦手で、耐寒温度はマイナス8℃くらいまで。関東以南の太平洋側などの暖地では地植えにしても冬越しできますが、マイナス8℃以下になる寒い地域では、鉢栽培にして季節によって移動できるようにし、冬は室内の窓辺や温室などに置いて越年させましょう。
常緑ヤマボウシの育て方のポイント
用土

【地植え】
植え付けの2〜3週間前に、直径・深さともに50cm程度の穴を掘りましょう。掘り上げた土に腐葉土や堆肥、緩効性肥料などをよく混ぜ込んで、再び植え穴に戻しておきます。粘土質や砂質、水はけの悪い土壌であれば、腐葉土や堆肥を多めに入れるとよいでしょう。土づくりをした後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。
【鉢植え】
樹木用にブレンドされた培養土を利用すると手軽です。赤玉土(小粒)7、腐葉土3の割合でよく混ぜ、配合土を作ってもよいでしょう。
水やり

水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために枝葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。
真夏は、気温の高い昼間に行うと、すぐに水の温度が上がって木が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に与えることが大切です。
また、真冬は、気温が低くなる夕方に行うと凍結の原因になってしまうので、十分に気温が上がった日中に与えるようにしましょう。
【地植え】
植え付け後にしっかり根づいて茎葉をぐんぐん伸ばすようになるまでは、乾いたら水やりをしましょう。根づいた後は下から水が上がってくるので、ほとんど不要です。ただし、過度に乾燥が続く場合は水やりをして補いましょう。
【鉢植え】
日頃から水やりを忘れずに管理します。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。茎葉がややだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサインです。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイント。特に真夏は高温によって乾燥しやすくなるため、朝夕2回の水やりを欠かさないように注意します。冬は生育が緩慢になるうえ、表土が乾きにくくなるので控えめに与えるとよいでしょう。
肥料

【地植え、鉢植えともに】
2〜3月に緩効性化成肥料を与え、土によくなじませましょう。生育期を迎える前に肥料を与えることで、新芽を出すエネルギーとなり、旺盛に枝葉を広げることにつながります。
注意する病害虫

【病気】
発生しやすい病気は、うどんこ病です。
うどんこ病は、カビによる伝染性の病気です。葉、新梢、つぼみに発生しやすく、表面が白く粉を吹いたような状態になり、放置するとどんどん広がるので注意。進行すると光合成ができなくなり、やがて枯死してしまいます。窒素肥料を施しすぎたり、枝葉が繁茂しすぎて風通しが悪くなったりしていると、発病しやすくなります。うどんこ病が出たら病気の葉を摘み取って処分し、適用のある殺菌剤を葉の表と裏に散布して、蔓延するのを防ぎましょう。
【害虫】
発生しやすい害虫は、アブラムシです。
アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mmの小さな虫で繁殖力が大変強く、発生すると茎葉にびっしりとついて吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目もよくないので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、水ではじいたりして防除しましょう。虫が苦手な方は、スプレータイプの薬剤を散布して退治するか、植え付け時に土に混ぜ込んで防除するアブラムシ用の粒状薬剤を利用するのがおすすめです。
常緑ヤマボウシの詳しい育て方
苗の選び方
苗を購入する際は、株立ちと単幹の2種の樹形があるので、植え場所の環境や好みに合わせて選ぶとよいでしょう。
植え付け・植え替え

植え付け適期は10〜11月、3〜5月です。寒さにやや弱いので、12〜翌年2月には行わないようにしてください。
【地植え】
土づくりをしておいた場所に、苗の根鉢よりも1回り大きな穴を掘って植え付けます。しっかりと根づくまでは支柱を立てて誘引し、倒伏を防ぐとよいでしょう。最後にたっぷりと水を与えます。
【鉢植え】
鉢で栽培する場合は、8〜10号鉢を準備します。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから樹木用の培養土を半分くらいまで入れます。苗木をポットから取り出して鉢に仮置きし、高さを決めてから植え付けます。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。水やりの際にすぐあふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cm下を目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。根づくまでは、支柱を立てて誘引しておいてください。最後に、鉢底から流れ出すまで、十分に水を与えます。一年を通して日当たり・風通しのよい場所に置いて管理しましょう。
鉢植えで楽しむ場合は、成長とともに根詰まりしてくるので、2〜3年に1度は植え替えることが大切です。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から株を取り出し、軽く根鉢をくずして新しい培養土を使って植え直しましょう。
剪定

常緑ヤマボウシは毎年の剪定をして、樹高をコントロールし、風通しをよくしましょう。
剪定の適期は11〜翌年2月ですが、厳寒期の1月頃は避けたほうが無難です。
【単幹の樹形】
単幹とは、1本の幹のみを大きく育てる樹形のことです。地際から立ち上がっている「ひこばえ」は元から切り取ります。木の内側に向かって伸びている「逆さ枝」、垂直に立ち上がっている「立ち枝」、勢いよく伸びすぎている「徒長枝」も元から切り取ります。1カ所から3本以上の枝が出ていたら、間引いて枝を透かすとよいでしょう。
あまり大きくしたくない場合は、大体のアウトラインを決めて、そこからはみ出している枝を、分岐点までさかのぼって切り取ります。
【株立ちの樹形】
株立ちとは、地際から数本の幹が伸びるように仕立てられた樹形です。単幹と比べて、華奢な雰囲気で人気がありますが、放置するとそれぞれの幹が太く大きくなって、手に負えなくなりがちです。そこで、株元から出てくるひこばえを1〜2本残して上に伸ばすようにし、数年経って太くなった幹は地際から切り取ります。切り口には癒合剤を塗っておいてください。こうして数年ごとに幹を切り替えるようにメンテナンスすると、細い幹のまま楽しむことができます。常に3〜4本の細い幹をキープするとよいでしょう。
株立ちの樹形を維持する目的以外の剪定では、地際から立ち上がっている「ひこばえ」は、不要なものを元から切り取ります。木の内側に向かって伸びている「逆さ枝」、垂直に立ち上がっている「立ち枝」、勢いよく伸びすぎている「徒長枝」も元から切り取ります。1カ所から3本以上の枝が出ていたら、間引いて枝を透かすとよいでしょう。
あまり大きくしたくない場合は、大体のアウトラインを決めて、そこからはみ出している枝を、分岐点までさかのぼって切り取ります。
増やし方

常緑ヤマボウシは、種まき、挿し木で増やすことができます。ここでは、それぞれの方法について解説します。
【種まき】
常緑ヤマボウシの種子は、秋に実った果実から採取できます。種子が乾燥すると発芽率が下がるので、採取したらすぐに播きましょう。
黒ポットに新しい培養土を入れて十分に水で湿らせ、常緑ヤマボウシの種子を黒ポットに数粒播きます。軽く土をかぶせて明るい日陰で管理し、発芽した後は日当たりのよい場所に置きましょう。本葉が2〜3枚ついたら勢いのある苗を1本のみ残し、ほかは間引いて育苗します。ポットに根が回るまでに成長したら、少し大きな鉢に植え替えて育苗します。苗木として十分な大きさに育ったら、植えたい場所に定植しましょう。なお、種まきから育てる場合、開花までには7〜8年かかります。
【挿し木】
挿し木とは、枝を切り取って地面に挿しておくと発根して生育を始める性質を生かして増やす方法です。植物の中には挿し木ができないものもありますが、常緑ヤマボウシは挿し木で増やすことができます。
挿し木の適期は、6〜7月です。その年に伸びた新しくて勢いのある枝を10cmほどの長さで切り取ります。採取した枝(挿し穂)は、水を張った容器に1時間ほどつけて水あげしておきましょう。その後、吸い上げと蒸散のバランスを取るために下葉を数枚切り取ります。3号くらいの鉢を用意して、ゴロ土の上に新しい培養土を入れ、水で十分に湿らせておきます。培養土に穴をあけ、穴に挿し穂を挿して土を押さえてください。発根するまでは明るい日陰に置いて管理します。その後は日当たりのよい場所で育苗し、ポットに根が回るまでに成長したら、少し大きな鉢に植え替えます。苗木として十分な大きさに育ったら、植えたい場所に定植しましょう。挿し木のメリットは、親株とまったく同じ性質を持ったクローンになることです。
常緑ヤマボウシの実は食べられる

常緑ヤマボウシは10〜11月に小さな赤い果実をつけ、この実は十分に熟したら食べることができます。生で食べてもよく、乾燥させてドライフルーツとして楽しんでもOK。また、ジャムや果実酒に加工しても美味しくいただけます。たくさんの種子が入った果肉は、香りがよく甘みがあり、マンゴーやバナナのような風味が特徴です。
常緑ヤマボウシで庭に彩りを与えよう

白い花が満開になる時期は壮観で、花木としての人気が高い常緑ヤマボウシ。秋には果実をつけ、冬にみずみずしい葉を保つのもいいですね。シンボルツリーとして、庭やベランダに迎え入れてはいかがでしょうか。
Credit
文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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