バショウは、バナナに見た目がよく似た植物で、大きな葉やエキゾチックな姿が特徴です。この記事では、バショウの基本情報や特徴、名前の由来や花言葉、そして、バナナとの見分け方、育て方のポイントについてご紹介します。
目次
バショウの基本情報
植物名:バショウ
学名:Musa basjoo
英名:Japanese banana、hardy banana、Japanese fibre banana
和名:バショウ(芭蕉)
その他の名前:ムサ・バショウ、ジャパニーズバナナ
科名:バショウ科
属名:バショウ属
原産地:中国南部
分類:宿根草(多年草)
バショウの学名はMusa basjooで、バショウ科バショウ属の多年草です。バナナと同じ属で、木のように大きく育ちますが、樹木ではなく実際には草本に分類されます。幹のように見える部分は茎(葉鞘)で、冬に枯れて毎年新しく生え変わります。草丈は3〜5mです。
バショウは原産地が中国で、日本や朝鮮半島で栽培されています。高温多湿に耐え、日本の風土に合っているため、東北以西では露地栽培も可能です。ジャパニーズバナナとも呼ばれます。なお、バナナはミバショウ(実芭蕉)と呼ばれることもあります。
バショウの花や葉の特徴
園芸分類:草花
開花時期:7〜9月
草丈:3〜5m
耐寒性:強い
耐暑性:強い
花色:淡黄(苞の色)
バショウの花期は7〜9月で、雌雄異花です。雄花は長い花序の先端につき、苞葉の内側に15〜20個ほどの花序が並ぶように垂れ下がります。花が咲くと苞葉はめくれて、やがて散ります。一方、雌花は長い花序の基部につきます。
雌花が咲いた後、バナナを小さくしたような実ができます。ただし、結実率は低く、あまり実らないことが特徴です。また、実は果肉が少なく、食用には向きません。
バショウの葉は大きく、長さは2〜3m、幅は30〜60㎝になります。幹のように見える部分は、実際には葉の基部が茎を包み込むように成長した葉鞘で、これを偽茎と呼びます。
バショウの名前の由来や花言葉
バショウは、古名のハセオ・ハセオバが転訛したものとされています。原産地は中国ですが、英語ではジャパニーズバナナと呼ばれます。これは、植物学者のシーボルトがバショウに「ムサ・バショウ」という学名をつけて学会で発表したことにより、日本のバナナとの認識が広まったためです。ムサはバナナ属を指す学名です。
また、バショウの花言葉は「燃える思い」です。
バショウとバナナとの違い
バショウとバナナの株姿は、見た目が非常によく似ており、どちらもバショウ科バショウ属の大型多年草。バショウはバナナの一種で、果実が食べられるかどうかの違いがあります。この2種類を見分けるポイントは、苞の色。バショウは緑色や黄色っぽいのに対し、バナナは上の写真のように紫色です。また、バナナは葉の裏に白っぽい粉をふいていますが、バショウにはありません。
また、バショウは南国風の見た目ですが、耐寒性はマイナス7℃ほどまで寒さに耐えるので、東北以南地域ならば地植えで越冬が可能です。冬は地上部が冬枯れしますが、春になると再び芽を出し生育します。
バショウの栽培12カ月カレンダー
開花時期:7〜9月
植え付け・植え替え:4〜9月(真夏を除く)
肥料:4月、7月
種まき:4~7月
バショウの栽培環境
日当たり・置き場所
【日当たり/屋外】日当たり・風通しのよい場所で育てます。風で葉が破れることがあるため、あまり強く風が当たらない場所がよいでしょう。
【日当たり/屋内】大きくなるため屋外での栽培が基本です。
【置き場所】バショウは地植えにすると地下茎が広がり、かなり大きくなるため、広大なスペースを確保する必要があります。また、地下茎からどんどん増え、管理が大変になることも。大きくなると移植は難しいため、鉢植えのほうが管理しやすくおすすめです。
耐寒性・耐暑性
バショウの耐寒性はマイナス7℃程度で、凍結しない東北以南地域であれば地植えでの栽培が可能です。
バショウの育て方のポイント
用土
土質を選ばず丈夫に育ちますが、水はけ・水もちのよい、有機質に富んだ土を好みます。地植えの場合は、植え付け前に堆肥を混ぜ込み、ふかふかとした土づくりをしておくとよいでしょう。
水やり
地植えの場合は、基本的に水やりは必要ありません。
鉢植えの場合は、水のやりすぎに注意。土の表面が乾いてからさらに1日おいて、たっぷりと水を与えます。
肥料
鉢植えの場合、4月と7月に油かすなどの有機肥料を与えます。しかし、地植えでバショウがよく育っている場合は、特別に施肥をする必要はありません。
注意する病害虫
【病気】
特に注意すべき病気はありません。
【害虫】
ハダニやカイガラムシがつくことがあり、これらの害虫は吸汁して株を弱らせます。ハダニは乾燥すると発生しやすくなるため、定期的に葉の裏に水を散布して予防しましょう。ハダニが発生した場合は、水で流したり粘着テープで駆除します。または、薬剤を散布してもよいでしょう。
カイガラムシは殻に守られているため、薬剤が効きづらい害虫です。そのため、見つけ次第、ヘラやブラシでこすり落とすなどして駆除しましょう。
植え付け・植え替え
苗の植え付けは4〜9月の間であればいつでも可能ですが、真夏は避けたほうがよいでしょう。
鉢植えの場合、根が回ってきたら大きめの鉢に植え替えます。鉢から株を取り出し、黒ずんだり傷んだりしている根がある場合は取り除きましょう。その後、土はなるべくつけたまま、新しい土を入れた鉢に植え替えます。
日常のお手入れ
バショウは放置しているとかなり大きくなるため、適度に剪定しましょう。伸びすぎた茎や邪魔な葉はざくざくと切ってしまっても問題ありません。
冬になるとバショウは枯れ、春に新しい茎が芽吹きます。そのままにしておいても大丈夫ですが、わらを巻いて保温して越冬させる方法もあります。冬に枯れた葉はこまめに取り除くようにしましょう。
バショウの増やし方
バショウは種まきや株分けで増やすことができます。
ここでは、それぞれの方法についてご紹介します。
【種まき】
バショウはバナナのような実をつけますが、その中には果肉はほとんどなく、黒い種子が多く入っています。もっとも、バショウはあまり結実せず、種子をつけにくい植物です。バショウの種子はネットで販売されていることがあるため、見つけた場合は種まきから育てることもできます。
種まきは春から夏頃が適期です。また、発芽の適温は20〜25℃程度です。
【株分け】
バショウの株分けについては、4〜9月が適期とされています。株分けを行う際には、根に土ができるだけつくように掘り、地下茎をハサミなどで切り分けてから植え付けます。植え付け後はたっぷりと水をやり、数日間は半日陰で管理しましょう。
また、株分けした株が枯れてしまった場合でも、隣から新たな芽が出てくることがあります。そのため、すぐに枯れたと判断せず、少し様子を見たほうがよいでしょう。
バショウが増えすぎたときの対処方法
バショウを地植えにすると、地下茎がどんどん増えてたくさんの新しい株が生えてきます。増えすぎてしまったら、必要に応じて取り除き、株の勢いをコントロールしましょう。
バショウの株を減らす方法は、スコップなどを使って地下茎をさくさくと切り、取り除きます。その際、残したい株の周りを掘るのは避けて、少し離れた場所にある地下茎を切って取り除きます。
バショウをその場所から完全に撤去したい場合は、重機を使って深く掘り起こし、地下茎をすべて取り除きます。これが難しい場合は、芽が出るたびに地道に掘って手作業で取り除く必要があるため、バショウを地植えにする際は、適した場所かをよく考えてから植えましょう。
バショウを利用した工芸品
12〜13世紀の沖縄では、バショウ(糸芭蕉)を利用した工芸品が盛んに作られていました。その中でも、「芭蕉布(バショウフ)」と呼ばれる織物が特に有名です。芭蕉布は透けるほど薄く軽いため、琉球王族の着物が作られたり、徳川家への貢ぎ物となったりしました。
1974年には、芭蕉布はその文化的価値を認められ、国の重要無形文化財として登録されました。また、バショウはこれ以外にも、紙づくりの原料として利用されたり、沖縄の獅子舞の獅子の毛として葉の部分が使われたりしています。
バショウは松尾芭蕉の名前のルーツ
「おくのほそ道」などの紀行文や数多くの俳句を残した俳人、松尾芭蕉の名前は、実際にバショウから取られたとされています。当時、彼は俳号を桃青と称していましたが、門徒から寄贈されたバショウの株が立派に育ち、庵の名物となったことから、「芭蕉」と名乗るようになったといわれています。
エキゾチックな風貌が楽しめるバショウを育ててみよう
バショウは南国風のエキゾチックな雰囲気が魅力の植物です。バナナとは違い食べられる実はつきませんが、耐寒性があるので本州の多くの地域で育てることができます。繁殖力が強いため、扱いやすい鉢植えで楽しんでみてはいかがでしょうか?
Credit
文 / 3and garden
スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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