「メロンを自宅でも育てられるなんて、想像もつかない! プロの農家が栽培するものでしょ?」と、最初からチャレンジをあきらめてはいませんか? じつはメロンは暑さに強く、強健に育つ果菜類の一つ。庭でも育てることはできますし、なんとプランターで栽培することだってできるんです! この記事では、メロンの植物としての基本情報とともに、地植え、プランター栽培での育て方について、詳しく解説します。
目次
メロンの基本情報

植物名:メロン
学名:Cucumis melo
英名:melon
和名:メロン(甜瓜)
科名:ウリ科
属名:キュウリ属
原産地:東アフリカ、中近東
分類:一年草
メロンは、ウリ科キュウリ属の一年草です。フルーツのイメージが強いですが、野菜の果菜類に分類されています。原産地は東アフリカ、中近東が有力と考えられ、夏が暑くて乾燥する地域が故郷です。野菜の中でも高温性で、生育適温は昼間が28〜30℃、夜間が18〜20℃です。15℃以下では生育しないので、気温が十分に上がってから栽培をスタートします。
ここで、メロンの栽培スケジュールを見てみましょう。メロンの栽培は一般的に、花苗店で販売されている苗を購入して植え付けることからスタートします。植え付けは気温が十分に上がった5月頃が適期。つるを伸ばして生育するので、地面に這わせるか、支柱を設置してつるを誘引して栽培します。開花は6月中旬〜下旬で、収穫は7月下旬〜8月中旬です。メロンは1年以内に枯れてしまう一年草なので、収穫が終わったら株を抜き、資材なども撤去します。
メロンの栄養価

メロンに含まれる成分はカリウムが特に多く、バナナに匹敵する量を誇ります。また赤肉のメロンはベータカロテンも多いのが特徴。種の周りのわたには、血液の凝固を防ぐ働きがあるとされるアデニシンが多く、その他ビタミンやミネラル成分も含まれています。
ちなみに、メロン100gのカロリーは、45キロカロリー。甘くてジューシーな果実はデザート代わりになりますが、アボカドのカロリーが100gあたり187キロカロリーなのに比べると、控えめなほうだといえます。
メロンの名前の由来や花言葉

メロンという名前は、英名のmelonをそのまま取り入れたもので、このmelonはギリシャ語でリンゴのようなウリという意味のmelopeponに由来するといわれています。ちなみに、贈答用に人気が高いマスクメロンのマスクは、その芳醇な香りに由来し、麝香を表す「ムスク」が訛ったものだそうです。メロンの花言葉は「豊富」「潤沢」「飽食」「裕福」「多産」など。
メロンの代表的な種類

メロンは種類が多く、外見からいえばネットのあるネット型と、ネットのないマクワ型とがあります。また、果肉の色によって、夕張メロンなどの赤肉系、マスクメロンなどの青肉系、グランドールなどの白肉系があります。家庭菜園で育てやすいのは、プリンスメロンやミニメロン、マクワウリなどです。
メロンの歴史

メロンの原産地である東アフリカや中近東では、紀元前2000年頃には栽培されていました。日本での栽培も古く、弥生時代の土器と一緒に、マクワウリやシロウリの原種に近いタネが発見されていることから、意外にも昔から愛されてきた果実であることが分かります。
スーパーなどでは表面に網目の入ったものも多く見られますが、このネットメロンの栽培が始まったのは16世紀のイギリスで、温室栽培されていました。それが日本に伝わったのは明治期です。日本でも育種や栽培方法が研究されて本格的な生産が始まり、現在に至っています。
メロンの栽培12カ月カレンダー
開花時期:6月中旬~下旬
植え付け:5月頃
肥料:7月頃
収穫:7月下旬〜8月中旬
メロンの栽培環境
日当たり・置き場所
【日当たり/屋外】日差しと乾燥を好むため、日当たりがよい場所で栽培します。
【日当たり/屋内】屋外で栽培します。
【置き場所】水はけ、通気性のよい土壌を好みます。地温がしっかり上がるようにマルチングやトンネルを利用するとよいでしょう。
耐寒性・耐暑性
生育適温は18〜30℃で、15℃以下では生育しません。一年草なので、収穫が終わったら処分しましょう。
メロン栽培の手順
土づくり

【地植え】
メロンは、連作障害が出やすい植物です。連作とは、同じ科に属す植物を同じ場所に植え続けることをいいます。連作障害とは、連作することによって土壌バランスが悪くなって病気や生理障害が発生しやすくなり、極端に生育が悪くなる状態を指します。そのため、前年にメロンと同じウリ科の植物が植えられていない場所を選ぶことが大切です。
苗の植え付けの2〜3週間以上前に、苦土石灰を1㎡当たり100〜150g散布し、よく耕して土に混ぜ込んでおきます。さらに、植え付けの1〜2週間前に、畝幅を約70cm取り、その中央に深さ15〜20cmの溝を掘ります。溝の中へ1㎡当たり堆肥500ml、有機配合肥料180〜200g、熔成リン酸50gを均一にまき、埋め戻して平らにならしておきましょう。土づくりをした後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成します。
【プランター栽培】
野菜用にブレンドされた市販の培養土を使うと便利です。それぞれの野菜に適した土壌酸度などが異なるので、製品の用途に「メロン」の項目が入っているか、確認しておくとよいでしょう。
植え付け

メロンの植え付け適期は5月頃です。本葉が4〜5枚ついた苗が好適。茎が太く、節間が短くがっしり締まって勢いのある苗を選びましょう。値段は少し高くなりますが、接木苗を使うと病気に強く、管理がしやすくなります。
【地植え】
土づくりをしておいた場所に、幅約70cm、高さ5〜10cmの畝を作り、表土を平らにならします。畝ができたら、その表面に黒マルチ(ポリフィルム製の被覆資材)を張り、風で飛ばないように四方に土を盛って固定します。黒マルチはできるだけピンと張っておきましょう。黒マルチを張ることで、地温を上げるとともに乾燥や雑草を防ぐほか、泥はねを防止して病気の蔓延を防ぐ効果もあります。
畝の中央でマルチに穴をあけ(カッターでバツ印に切ってもOK)、苗より1回り大きな植え穴を掘り、根鉢をくずさずそのまま苗を植え付けます。最後にたっぷりと水を与えましょう。苗を複数植える場合は、株の間隔を80〜90cm離します。植える株数によって、畝の長さを調整します。
植え付け後、つるを誘引するための支柱を畝の片側に数カ所設置して、ネットを張っておきます。
【プランター栽培】
大型プランター、鉢底網、鉢底石、培養土、苗、支柱、ひもを用意します。
大型プランターの底穴に鉢底網を敷き、底が見えなくなるくらいまで鉢底石を入れ、その上に市販の野菜用培養土を入れます。水やりの際にあふれ出さないように、ウォータースペースを鉢縁から2〜3cm残しておきましょう。苗より1回り大きな植え穴を掘り、根鉢をくずさずそのまま苗を植え付けます。最後にたっぷりと水を与えましょう。
プランターの4隅に支柱を立てます。支柱の下から10cmと20cmの高さのところ2カ所をひもで囲ってあんどん状にしておき、つるが伸びてきたら適宜誘引していきましょう。苗の成長とともに、あんどん状のひも囲いの数を増やし、つるを誘引していきます。
水やり

【地植え】
下から水が上がってくるので、天候にまかせてもよく育ちます。ただし、雨が降らずに乾燥が続くようなら、水やりをして補いましょう。
【プランター栽培】
土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えます。特に梅雨明け後の高温期は乾燥しやすいので、朝夕2回の水やりを忘れずに行いましょう。高温の真昼に水やりすると、すぐに水の温度が上がり、かえって株が弱ってしまうので、必ず涼しい時間帯に与えることが大切です。
肥料

【地植え】
花が咲き始めたら、マルチをはがして1㎡につき化成肥料40〜50gを畝の端にまいて軽く耕し、土になじませます。マルチは元に戻しておきましょう。また、実がつき始めたら、通路あたりに同様に追肥します。
【プランター栽培】
実がついたら、10日おきを目安に液肥を与えます。
整枝

【地植え】
本葉が7〜8枚ついたら、親づるの先端を切り取り、子づるの発生を促します。わき芽が出て、子づるが4本以上伸びてきたら、元気のいい子づるを2〜3本残し、ほかは元から切り取りましょう。残した子づるの葉が7〜8枚になったら先端を切り取り、次に出てくる孫づるに実をつけさせます。
【プランター栽培】
親づると子づる2本の、合計3本を残し、ほかの不要なつるはすべて切り取ります。
人工授粉

【地植え・プランター栽培ともに】
植え付け後、1カ月〜1カ月半ほどで花が咲き始めます。放任しても自然に受粉しますが、確実に実をつけさせるために、人工授粉をしておきましょう。メロンの花には、雄花と雌花があります。見分け方は簡単で、花の下に膨らみがないのが雄花で、膨らみがあるのが雌花です。一番花はまだ不安定なので、二番花、三番花に授粉します。
人工授粉は、花が新鮮な朝のうち、午前9時までに行います。雄花を摘んで、花粉が出ているのを確認して花弁を取り除き、雌花の雌しべに花粉をこすりつけましょう。人工授粉をした日付を書き入れたラベルをつけておくと、収穫適期が分かりやすくなって便利です。
摘果・玉直し・果実の保護

【地植え・プランター栽培ともに】
●摘果
実がついて2週間くらいまでに、形が整って傷のない果実を、つる1本につき1個残しましょう。残す実以外はすべて摘み取り、残す果実に養分を集中させます。
●玉直し
日光が当たると色づくので、色むらができないように時々果実を回して、裏側もまんべんなく太陽に当てましょう。
●果実の保護
実が大きくなってきたら、ネットを利用してハンモック状にし、実をのせて支柱にしっかりと固定します。ネットがなければ、ひもで吊してもOKです。
収穫

【地植え・プランター栽培ともに】
実が熟期に達して、甘い香りがしてきたら収穫します。収穫の際は、ヘタの上をハサミで切り取ります。収穫後は直射日光の当たらない、涼しい場所に置きましょう。
すべて収穫し終えたらあとは枯死してしまうので、黒マルチや支柱、ネットなどの園芸資材を撤去して、株や土中の根を処分しておきます。
病害虫

【病気】
メロンに発生しやすい病気は、うどんこ病、べと病などです。
うどんこ病は、カビによる伝染性の病気です。葉、新梢、つぼみに発生しやすく、表面が白く粉を吹いたような状態になり、放置するとどんどん広がって光合成ができなくなり、やがて枯死してしまいます。チッ素肥料を施しすぎたり、枝葉が繁茂しすぎて風通しが悪くなったりしていると、発病しやすくなります。うどんこ病が出たら病気の葉を摘み取って処分し、適用のある殺菌剤を葉の表と裏に散布して、蔓延するのを防ぎましょう。
べと病は糸状菌が原因の病気で、3〜6月、9月下旬〜11月の気温15〜20℃の条件下、かつ気温差が大きいときに発生しやすくなります。葉に黄色みがかった斑紋が現れ、だんだんと広がって枯れ上がっていきます。発生条件が揃うと2〜3日で全体に広がってしまうので注意。チッ素成分が多い肥料を与えすぎると発生しやすくなります。
【害虫】
メロンの栽培で発生しやすい害虫は、アブラムシ、ハダニなどです。
アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mmの小さな虫で繁殖力が大変強く、茎葉にびっしりとついて吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目もよくないので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、シャワーではじいたりして防除しましょう。
ハダニは、葉裏に寄生して吸汁する害虫です。体長は0.5mmほどと大変小さく、黄緑色や茶色い姿をしています。名前に「ダニ」がつきますが、クモの仲間です。高温で乾燥した環境を好み、梅雨明け以降に大発生しやすいので注意が必要。繁殖力が強く、被害が大きくなると、葉にクモの巣のような網が発生することもあります。ハダニは湿気を嫌うため、予防として高温乾燥期には葉裏にスプレーやシャワーなどで水をかけておくとよいでしょう。
メロンを栽培して自宅で味わおう

甘くて香りがよく、水分をたくさん含むジューシーな果実は、暑い夏のデザートにぴったり。自身で苗の植え付けからスタートし、手塩にかけて育てたメロンは、より一層美味しく感じることでしょう。ぜひメロンの栽培にチャレンジしてみませんか?
(参考文献)
『甘やかさない栽培法で野菜の力を引き出す 加藤流絶品野菜づくり』著者/加藤正明 発行/万来舎 発売/エイブル 2015年5月25日発行第2刷
『はじめての野菜づくり コンテナ菜園を楽しもう』著者/藤田智 発行/日本放送出版協会 2007年5月25日発行
『わが家の片隅でおいしい野菜をつくる』監修/藤田智 発行/日本放送出版協会 2008年2月10日第5刷発行
『別冊やさい畑 野菜づくり名人 虎の巻』発行/家の光協会 2009年2月1日発行
Credit
文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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