ドラゴンに例えられる、インパクトのある外観の果実「ドラゴンフルーツ」。栄養価が高く、ヘルシーフルーツとして特に女性に高く支持されています。自分で育てるイメージはないかもしれませんが、じつは、あのサボテンの仲間で、丈夫で育てやすい植物。透けるように美しく夜咲く花の「月下美人」にそっくりで、芳香も素晴らしく、育てる価値があります。ここではトロピカルフルーツのドラゴンフルーツの栽培の楽しみと挿し木の方法、品種や果実の味わい方などを、園芸研究家の小川泰弘さんが詳しく解説します。
ドラゴンフルーツの基本情報

ドラゴンフルーツはサボテン科ヒモサボテン属の森林性サボテンで、中米から南米北部が原産です。ピタヤの別名でも知られています。茎は自立せず、木や岩などに気根を出しながらよじ登り、20m以上ほどまでの長さに伸びます。また茎は環境がよいと1年で1m伸びるほど生育が早く、育てる上では適切に仕立てて強く剪定することが必要で、熱帯の農園などでは、傘状に仕立てて栽培されています。ベトナムで多く生産されて日本にも輸入されるほか、熱帯の乾燥した地域でも商業栽培が盛んです。

サボテンなので乾燥に強く、病害虫の被害も少ないです。また水を切れば0℃近くまで耐え、丈夫で育てやすいのも特徴。冬は室内で管理すれば、家庭でも開花させて実を収穫することは十分可能です。
開花習性と果実

6〜10月頃まで月に1回、満月の頃に開花します。そして年に3~5回程度開花結実し、開花から1カ月程度で果実が収穫できます。
果肉はゴマのような小さな種が無数にありますが、そのまま気にせずに食べることができます。一般的に味は甘味が少なく薄味ですが、甘味の強い品種もあり、栄養豊富でヘルシーなことから世界的に人気が上昇しています。
一般に流通しているドラゴンフルーツは果実を未熟なうちに収穫していることが、甘味が薄い原因となっています。樹上で完熟させた果実は甘味が強くなり、これは育てた人だけが味わえる特権です。
ドラゴンフルーツの美しい花

夜に月下美人を思わせる直径20~30cmほどの白くて大きな美しい花が、一晩だけ咲きます。花は美しいだけでなく、爽やかな芳香も楽しめます。ドラゴンフルーツの農園で見られる、満月の夜に花が一斉開花する光景は非常に幻想的な美しさで、一見の価値があります。
ドラゴンフルーツの種類

多く流通するのは果皮が赤で果肉が赤と白の種類ですが、他の種類もあります。
・果肉が赤色の種類(赤肉種)
鮮烈な赤色の果肉が人目を引き、服などに果汁が付くと落ちにくいです。甘味がやや強いと言われています。例外はありますが、自家不和合性の品種があるので、品種名が不明の場合は白肉種と混植するとよいでしょう。
・果肉が白色の種類(白肉腫)
世界で最も多く生産される種類です。夏の終わり頃に集中して結実する傾向があります。赤色に比べると甘味がやや薄いですが、酸味が少しあってすっきりした味わいと言われます。自家不和合性の品種もあります。
・果皮が黄色で果肉が白色の種類

ニュージーランドから輸入されるドラゴンフルーツです。味はほとんど変わりませんが、より高価格で流通します。近年は見かけることが少ないようです。
・果肉がピンクの種類
果肉が赤と白の種類を交配したピンクの品種(ちゅらみやらび)が、沖縄や通販などで少数流通しています。
・その他
イエロードラゴン、またはイエローピタヤの名で輸入果実が少数販売されています。別属ともされますが、ドラゴンフルーツの中では一番美味です。またイエロードラゴンと一般的な赤と白の果肉の品種との交配種、オレンジドラゴンもありますが、こちらはほぼ流通していません。
ドラゴンフルーツの栄養と食べ方

各種ビタミンとミネラルがバランスよく豊富に含まれていることから、スーパーフードとして知られています。美容に効果のあるビタミンとミネラルを多く含み、アンチエイジング効果も期待されるため、女性に強く支持されるのも納得です。体内の代謝を促進し、高血圧などの生活習慣病やがん予防、疲労回復などさまざまな効能があるといわれています。
また、体内を内側から綺麗にしてくれる食物繊維が非常に豊富に含まれています。ただし食物繊維はとりすぎるとお腹を壊すので、ドラゴンフルーツも食べすぎには注意してください。1日に半分程度なら多くの人は問題ないですが、お腹の調子が悪い時や便秘気味の時は避けたほうがよいでしょう。
また、ジュースやスムージーにして味わうのもおすすめです。そのまま食べるとほとんど吸収されない栄養と繊維が豊富な種の部分も効率よく吸収することができます。
食用としてのさまざまな利用法

ピューレ状にしたドラゴンフルーツに、ベリー類やバナナなどをトッピングしたピタヤボウルは、ハワイでは定番のヘルシーデザートになっています。
癖がないので、アボカドのように野菜感覚でサラダに使ってもよく合います。
赤肉種は色素のアントシアニンが豊富なので、アイスやシャーベットの栄養豊富な着色原料として使うこともできます。
ドラゴンフルーツは果実以外も食用でき、原産地では捨てるところのない植物とされています。果実の皮も火を通すと柔らかくなり、パプリカに似た食感と味。つぼみや花弁は野菜として、天ぷらやスープなどに使えます。新しく伸びた枝の葉肉は柔らかく、刻めばオクラに似た味です。
ドラゴンフルーツの育て方

置き場所
春から秋は、屋外の日光がよく当たる場所が適します。日光不足になると花も咲かなくなるので、半日以上日光が当たる場所に置くようにしてください。
ビニールハウスの中や暑さの厳しい地域、風通しの悪い場所では夏に葉焼けすることが多いです。午前中だけ日光が当たる場所に置くか、遮光率50%くらいの遮光ネットを張ってください。
水やり
よく花を咲かせて実を収穫するには、春から秋は鉢土が乾いてからたっぷりと水を与えてください。水はけのよい用土の場合は、表層を湿らすように毎日少しずつ与えるとよいでしょう。乾燥に強いですが、水が不足すると花が咲かなくなります。また開花から結実までは、水切れしないようにすることで果実の品質がよくなります。また受け皿に水を貯めると根腐れするので、注意してください。
冬は断水します。
肥料
実をたくさん収穫したい場合は、十分な肥料が必要です。春から秋の成長期に、骨粉が入った発酵済み油粕などの有機肥料を規定量与えてください。
用土
比較的選びませんが、初心者はサボテン用の土など排水のよいものがおすすめです。花を多く咲かせたい場合は、汎用性の高い一般的な培養土に、赤玉土中粒を3~4割混ぜた用土などがよいでしょう。
また、植え付けや植え替えの際は、急に大きな鉢に植えないでください。根腐れしやすく、成長も遅くなります。
冬越し
断水すれば、0℃近くまで温度が下がっても耐えます。11~12月までに室内に移動すれば容易に越冬します。関東南部の海沿いの地域では大株が戸外で越冬することもありますが、失敗も多く難しいです。
病害虫
被害は少ないですが、花や果実にアブラムシが発生することがあります。水を勢いよく当てて洗い流すとよいでしょう。
実をならせるための仕立て方と作業

よく実をならせるには仕立て方が重要です。10~15号くらいの鉢に2株程度植えるとよいでしょう。自家不和合性の品種もあるため、1鉢だけ育てる場合は赤肉腫と白肉種の2株を植えると確実です。
1mほどのしっかりとした支柱を立て、枝をヒモで支柱に固定しながら伸ばします。支柱の先端部付近からは、1株につき枝を2~4本ほどさらに伸ばし、ヒモなどで縛って垂らすように誘引してください。枝を垂らすようにしないと、花芽がつきにくくなります。また新芽が至る所から出るので、余分な新芽は早めに切りましょう。
人工授粉
花は20時頃に満開になります。筆や軍手などに花粉を付け、中央のめしべに人工授粉すると確実です。花が雨に当たると花粉が不活性化し、受粉がうまくいきません。
ドラゴンフルーツの増やし方

ドラゴンフルーツは、挿し木で非常に簡単に増やすことができます。30~50cmほど切って切り口を日陰で1週間ほど乾かした後、赤玉土小粒や川砂などの清潔な用土に挿します。雨と風が当たらない明るい日陰に置き、用土が乾いたら表層がだいたい湿る程度に水やりします。新芽が勢いよく成長を始めたら日当たりに置き、水やりの量を増やしていきます。
育てればさまざまな楽しみが! ドラゴンフルーツを栽培しよう

ドラゴンフルーツはサイズが大きくスペースをとるのが難点ですが、花を咲かせたり実を収穫できる容易さはトップレベル。しかも果実は女性の美と健康、若さの維持に役立つのも見逃せません。年に何度も美しい花や果実を楽しめ、いろいろに食用できるドラゴンフルーツは、家庭で育てればさまざまなメリットがあることでしょう。ぜひこの機会にドラゴンフルーツの栽培にチャレンジしてください。
Credit
文 / 小川恭弘 - 園芸研究家 -

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