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シャクヤクの、上手なドライフラワーの作り方と簡単アレンジ

シャクヤクの、上手なドライフラワーの作り方と簡単アレンジ

艶やかな大輪を、すらりと伸びた細い茎の先に咲かせるシャクヤク。茶花やいけばなで親しまれ、日本人に愛されてきた花は、いまやパリをはじめ欧米でも大人気です。「シャクヤクは丸いつぼみから散る間際まで、そのみずみずしさを味わいたい花。そのうえ、この花はドライフラワーにしたときのナチュラル感も素敵です」と語るのは、東京・用賀の花店『ブロッサム(blossom)』の嶋 友紀さん。嶋さんにシャクヤクのドライフラワーの作り方と、その簡単なアレンジについて伺いました。

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シャクヤクのドライフラワー作りは難しくありません

シャクヤクは花びらをたっぷり重ねる花です。花びらが多いので、シャクヤクのドライフラワー作りは難しいと思う方がいるかもしれませんが、特に難しいということはありません。確かに、丸いつぼみのときは花びらが重なっていているので、乾きにくく、ドライフラワー向きではありませんが、満開のシャクヤクはふわっと咲いて、空気感のある花。花びらと花びらの間にも空気が通るので、しっかり乾燥させることができます。しかも、満開を過ぎるまで、花びらがパラパラ落ちることがなく、花首もしっかりしているので、ドライフラワー作りには適した花材のひとつです。

ドライフラワーにしても見応えがあるシャクヤク。しかも、かさかさと乾いた質感、落ち着いた色合いが他の花材では味わえない、心地よいナチュラル感を表現してくれます。

ドライフラワーに適している、シャクヤクの種類と選び方

満開を楽しんでから、ドライにします

八重咲きのシャクヤクは、よく咲いたときの花びらの重なりが何とも美しい花です。写真のように、満開のときも花びらはしっかりしています。ですから、花屋さんでシャクヤクを購入してきたら、花瓶などにあしらって、満開になるまで満喫することをおすすめします。

ただし、散り始めたらドライフラワーにできません。満開を楽しんだあと、タイミングをよく見計らって水から引き上げ、ドライフラワーにしましょう。庭に咲いたシャクヤクを摘んでドライフラワーにする場合は、晴れた日の午前中に摘むのが最適。満開のシャクヤクを摘み、そのまま乾燥させます。

濃色を選ぶと、きれいに花色が残ります

シャクヤクの白花はドライにすると、生成り色やアイボリー色、淡くピンクを含むこともあります。どんな花色であっても、ドライフラワーにすると花色は薄く茶色を含む色になりがちです。そのため、できるだけ色鮮やかなドライフラワーにしたいときは、上の写真の品種、夕映のような赤紫色など、濃色を選ぶことがポイント。ドライフラワーにしたあとも、飾る環境によって、きれいな花色を長く楽しむことができます。いずれにしても、日差しや湿気の影響を受けて、飾っていくうちに、茶色っぽい色に変化していきます。

八重咲き品種で作ると、量感のあるドライフラワーに

ドライフラワーになるとどんな花も小さく縮みます。ひと重咲きや翁咲きに比べて、花びらの枚数が多い八重咲きは、ドライフラワーにしても量感が残ります。

シャクヤクをドライフラワーに仕立てる、ふたつの作り方

ドライフラワーの作り方には、大きく分けて、ハンギング法、シリカゲル法、ドライ・イン・ウォーター法の3つがあります。ただし、長時間かけて作るドライ・イン・ウォーター法の方法では、シャクヤクはドライフラワーになりませんでした。花びらがとても多いので、乾燥する前に花びらが傷んでしまいます。

上の写真は、右がハンギング法、左がシリカゲル法で作ったドライフラワーのシャクヤク。ハンギング法のほうが花はより小さくなります。作り方で仕上がりのイメージが変わるので、ドライフラワーで何を作りたいかを考えて、方法を選ぶといいでしょう。

シャクヤクを吊るして乾燥させる「ハンギング法」

ドライフラワーの作り方で、もっとも定番が、このハンギング法です。花を下に向けて吊るすだけ、初心者にも簡単にできる方法です。ハンギングを行うのに最適なのは、からっとした晴天が続く日。シャクヤクの開花時期は梅雨にまたがっていますね。梅雨が明けても夏は湿度が高くなるので、乾燥した環境に吊るしましょう。

ハンギング法で必要なもの
・シャクヤク
・輪ゴム
・麻紐 *紐のなかでも花を傷めないのでおすすめ
・ハサミ

ハンギング法のコツと注意点

ハンギング法は、直射日光が当たらず、風通しがよく、湿度変化が少ないところで乾燥させるのがベストです。風がよく当たらない箇所があれば、向きを変えて、まんべんなく風を通しましょう。

キッチンでは調理や湯わかしで蒸気があがります。お風呂場や洗面所の近くも湿度が高い場所。湿度の差や温度差が大きいと、花が湿気を吸ったり、蒸発したりを繰り返してしまうので、1日中変化が少ない場所を選ぶことが大切です。

また、シャクヤクを何本かドライにする場合は、花と花の間隔をあけて吊るすと風通しがよくなるので、早く乾燥します。

ハンギング法の手順

①満開のシャクヤクを用意します。シャクヤクも乾燥させるとかなりボリュームがダウンしますが、なるべく量感を残したいので、葉をつけたまま乾燥させます。

②シャクヤクは1本ずつ茎に輪ゴムを巻き、そこに麻紐を通して吊るします。シャクヤクが乾燥すると、抜けた水分の分だけ茎が細くなるので、柔軟性のある輪ゴムを使います。

③花を下に向けて、麻紐をフックなどに引っかけて吊るします。直射日光が当たらず、風通しのいい場所に、そのまま10日ほど吊るしましょう。ドライフラワーが仕上がるまでにかかる日数は、湿度や風通しのよさによって前後します。

シャクヤクの美しい色を残す「シリカゲル法」

シリカゲルは、湿気を嫌う菓子類や乾物などにパッケージにされ、広く使われています。成分は水晶や石英の成分と同じ、二酸化ケイ素です。二酸化ケイ素は、表面に微細な穴が空いていて、水分をはじめとするさまざまな物質を吸着する作用があります。この働きを利用して、シリカゲルは、ドライフラワー専用の乾燥材として、ネットや100均ショップなどで販売されています。

シリカゲルを使ってドライフラワーを作るメリットは、花色をきれいに残せること。蒸し暑い梅雨時や夏でも、シリカゲルを使えば、きれいな色のドライフラワーにすることができます。

シリカゲル法で必要なもの

・シャクヤク
・シリカゲル *粉末状のもの。ドライフラワー用が最適
・タッパー
・スプーン
・ハサミ

シリカゲル法のコツと注意点
シリカゲルはドライフラワー専用を用意。ドライフラワー用シリカゲルは、花びらと花びらの間に入りやすい粉末状です。花びらの隅々にまで入り込むため、水分が抜けたあとも花の形を保つことができます。一方、食品などについているシリカゲルはこれより大きな粒状のため、利用はおすすめできません、乾燥はしますが、花びらにシリカゲルの粒の跡が残ってしまうことがあります。

前述したように、シリカゲル法は色も形もあまり変化せず、生花の状態をある程度残しながらドライフラワーに仕上げることができます。美しいドライフラワーを作るためには、花びらの間にも隙間なくシリカゲルを入れ、最後はシャクヤクをシリカゲルの中に埋め込むといいですね。シリカゲルから花びらが飛び出していると、そこだけドライフラワーにならないので注意しましょう。

何度も使ううちに、花の湿気を吸ったシリカゲルは水分の吸収力が落ちてきます。きれいなドライフラワーを作るには、早く乾燥させることがポイント。吸水力の高いシリカゲルを用意しましょう。湿気を吸ったシリカゲルを加熱すると、再生して吸水力を回復します。まめにメンテナンスをして、コンディションを整えておきくといいですね。

シリカゲル法の手順

①大きなシャクヤクの花がすっぽり入る深いタイプのタッパーを用意。まず、シリカゲルをタッパーの深さの1/3ぐらいまで入れます。シャクヤクを置く場所に浅く穴を掘ってから、その穴の上にシャクヤクをのせます。

②シリカゲルを少しずつシャクヤクにかけていきます。シャクヤクがきれいに咲いたそのままの状態で乾燥させるには、まんべんなくシリカゲルをかけるのがポイント。すべての花びらと花びらの間にシリカゲルを入れていきます。

③最後はすっぽりと、シャクヤクが完全に隠れるまで、シリカゲルをかけます。このあとは蓋をして、しばらく置きます。

④蓋をして1週間ほど経ってから、シャクヤクを取り出します。

⑤ドライフラワーになったシャクヤクの花びらは、パリパリに乾いています。花びらが傷ついたり、折れたりしないように、取り出すときは丁寧にやさしく扱って。

※シリカゲルは一般的に青い色をしています。使っていくうちに水分の吸収力が落ちると、青から色が変わってきます。シリカゲルは加熱して再生すると繰り返し使えるのが利点。再生方法は、繰り返して使用したシリカゲルを鍋やフライパンに入れ、かき混ぜながら5~10分加熱するだけ。青い色が戻ってきたら再生したサインです。

シャクヤクのドライフラワーをより楽しむために…

乾燥して色のきれいなドライフラワーができあがっても、時間が立つとドライフラワーは褪色していきます。日光が当たっても褪色が早まりますが、直射日光が当たらない場所に飾れば、きれいな色をより長く保つことができます。

キッチンや風呂場など、頻繁に水を使う場所や、湿気が多い場所は、ドライフラワーがその湿気を吸い込んでしまうため長もちしません。乾いた風が通る、風通しのいい場所を選んで飾りましょう。

鮮明な色に仕上がっても、しだいに褪色していくドライフラワー。色鮮やかなドライフラワーを楽しむ場合の観賞期間は、数か月間と考えてください。反対に生成り色や茶色っぽく褪色した色を、ドライフラワーらしいとするならば、半永久的に楽しめます。長く楽しめることがドライフラワーのよさですね。

シャクヤクのドライフラワーを使った、簡単アレンジ

生花を飾るには必ず給水が必要です。その縛りがない、給水を気にすることなく楽しめるドライフラワー。つまり自由な発想で花をあしらいうことができるのです。ナチュラル感たっぷりのシャクヤクのドライフラワーを、インテリア雑貨として飾ってみてはいかがでしょう。

シリカゲル法で花だけをドライフラワーにした場合は、ワイヤリングして花茎をつけると用途が広がります。

その1 3品種のドライを花瓶にいけます

花材:シャクヤク(滝の粧、サラベルナール、バンカヒル)

ハンギング法で作ったドライフラワーを、そのまま花瓶に挿してアレンジ。本数をたっぷりあしらっても、1輪を飾っても素敵です。花器の黒い色がシャクヤクのドライフラワーの色や質感を引き出してくれます。

その2 雑貨のように、錆びた金属のプレートと

花材:シャクヤク(サラベルナール)

水がはっていないプレートに飾るなんて、生花では考えられないこと。もちろんプレートがなくても、何かの上に置くだけでもOK。心の赴くままにシャクヤクを飾れるのが、ドライフラワーの嬉しいところです。

その3  初夏の花・シャクヤクと、海を感じて

花材:シャクヤク(サラベルナール)

シリカゲル法で作った、色鮮やかなドライフラワーです。白いサンゴやヒトデなど海のアイテムと、季節のシャクヤクの思いがけない出合い。夏の暑い日、ひんやりと目を癒やしてくれるアレンジです。

その4  エアプランツとテーブルに並べて

花材:シャクヤク(サラベルナール)、テクトラム

水がいらないドライフラワーと、土がいらないエアプランツは、オブジェのように飾れる仲間同士ですね。テーブルの上ににそのまま飾ったり、プレートやトレイに並べても。ただし、エアプランツは水が必要。ドライフラワーから離した場所で霧を吹き、乾いてからいっしょに並べましょう。

その5 ドライフラワーリースにトッピング

シャクヤク(バンカヒル)、ニゲラの実、ユーカリのポポラスの実

長く楽しめるドライフラワーのリース。もともとあったニゲラの実とユーカリの実で作ったドライフラワーのリースに、1輪挿したのはシャクヤクのドライフラワー。こんなふうに、ときどきリースの着せ替えを楽しんでみては?

その6 華やかな彩りは、シャクヤクとスターチスのブーケ

シャクヤク(サラベルナール、バンカヒル、滝の粧)、スターチス

ドライフラワーを作っておけば、いつでもさっと束ねて花束をプレゼントできますね。シャクヤクは花色の異なる3輪。小花のスターチスはもともと乾いた質感の花材なので、ドライフラワーにするのは簡単。花色のバリエーションが揃うので、シャクヤクの花色に合わせて選ぶこともできます。

その7 1輪をユーカリのガーランドを添えて

シャクヤク(サラベルナール)、ユーカリ

シリカゲル法で作った、色鮮やかなシャクヤクのガクの部分に、ワイヤーを掛けて壁に飾りました。ドライフラワーのユーカリは、枝先をワイヤーで留めた長いガーランド。ぐるぐると丸めてリース状にしています。

その8 シャクヤクの明かりを灯します

シャクヤク(サラベルナール)、ユーカリ

その7のユーカリのガーランドを垂らして、先端にシャクヤクのドライフラワーを1輪あしらいました。軽やかなシャクヤクが細いワイヤーの先で揺れて、可憐な雰囲気を漂わせます。

その9 初夏のドア飾りは、ピンクのシャクヤク

シャクヤク(サラベルナール)

かわいらしいドア飾り…。訪ねた人はきっとそういうことでしょう。まさかとおもうところに飾ることができるのも、ドライフラワーの魅力ですね。さりげなく1輪飾ることが、むしろ効果的でしょう。

その10 シルバー系グリーンに映えて、色鮮やかに

シャクヤク(サラベルナール、バンカヒル)、ユーカリ・テトラゴナ、チランジアなど

見上げる場所に吊るしたのは、シャキャクとシルバー系のグリーン。ドライフラワーとエアープラングを一緒に吊るして、部屋中に漂うボタニカルなムードを楽しんで。

Credit

記事協力

嶋友紀

嶋友紀
『ブロッサム(BLOSSOM)』オーナー。
1輪の花との出合いをきっかけに植物に魅了され、2000年、会社勤務から花の世界へ。人気花店、市場の仲卸で経験を積み、2011年、東京・用賀にショップをオープン。日々の暮らしを豊かにする花を提案し、ヨーロッパスタイル、トロピカル、和テイストの花などをオーダーメイドで応えている。さりげない1本、葉や枝ものをたっぷり、といった植物そのままの魅力を生かした作風に定評がある。
https://www.blossom-jp.com
https://www.instagram.com/blossom_shima/

構成と撮影と文・瀧下昌代

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