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カメラマンが訪ねた感動の花の庭。滋賀県のコミュニティーガーデン「Rose Branch」

カメラマンが訪ねた感動の花の庭。滋賀県のコミュニティーガーデン「Rose Branch」

これまで長年、素敵な庭があると聞けばカメラを抱えて、北へ南へ出向いてきたカメラマンの今井秀治さん。カメラを向ける対象は、公共の庭から個人の庭、珍しい植物まで、全国各地でさまざまな感動の一瞬を捉えてきました。そんな今井カメラマンがお届けするガーデン訪問記。第36回は、滋賀県米原市にある「Rose Branch(ローズブランチ)」。2017年から始まった庭づくりのストーリーとともに、3度訪れて写真に収めた、英国式庭園に咲くバラや宿根草のベストショットをご紹介します。

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2018年にオープンした「ローズブランチ」

バラ‘レイニーブルー’
廃墟風の塀に覆い咲く‘レイニー・ブルー’が美しい。

5月18日早朝のこと。今回ご紹介する「Rose Branch(ローズブランチ)」のガーデナー、上田政子さん、愛称「まーちゃん」の車に先導してもらい彦根の町を抜けて街道を右折すると、すぐに朝陽に輝くガーデン、「ローズブランチ」が目に飛び込んできました。

サポナリアとラグラス
朝陽に輝くサポナリアとラグラス。

この庭は、隣接する会社「ベースワン」のバラ園で、2017年に「ベースワン」の社長に「この土地にバラ園をつくってほしい」と頼まれたのがきっかけでした。最初、まーちゃんは、大した経験もない自分にできるのか悩んだそうですが、これは人生の転機だと思って決断、まずはベースワンに就職して、この庭のガーデナーになったのです。

Rose Branch(ローズブランチ)
まーちゃんは種まきの名人でもあり、ガーデンに来たお客様のために苗の販売もしています。

はじめのうちは、水はけの悪い粘土質の土との戦いに疲れ果て、自分には無理と諦めかけたこともあったようですが、「最初が肝心」と社長さんに相談。事情を聞いた社長が必要なものをすべて用意してくれて、さらに、バラに詳しい友人たちの助けもあって、翌2018年に「ローズブランチ」はオープンしました。

小屋を背景に咲くバラと宿根草

Rose Branch(ローズブランチ)
屋根からこぼれるように咲く‘ポールズ・ヒマラヤン・ムスク’。このつるバラを、こんなに枝を自由に伸ばして咲かせてしまうセンスが素晴らしいと思う。

それから4年。まーちゃんのバラ愛と頑張りで、バラがモリモリ咲くようになったのです。始めはバラ以外には興味のなかったまーちゃんですが、今ではすっかり宿根草好きに。最近は「バラも植物の一つ」と考えが変わって、フェンスや小屋にはあふれるようにつるバラが、そして、庭の随所に宿根草が咲く素敵なガーデンになっています。

Rose Branch
風に遊ぶ麦もきれい。

この庭は、西側と隣地のベースワンとの境の北側に高いフェンスが設けられていて、そこにはモダンローズやイングリッシュローズ、いろいろなつるバラが誘引されています。しかし、残念ながら訪問した時期の彦根では、まだ2割くらいしか咲いていませんでした。

Rose Branch(ローズブランチ)
ハチミツ色のモルタルの塀に、アメリカテマリシモツケ‘ディアボロ’の赤黒系の葉がよく合っている。

東側には、野菜栽培用のビニールハウス、南側は隣に民家があります。これらを隠すためにモルタル製の小屋が立ち並んで、さながら小さな町並みのような景観を作っています。モルタル製の小屋には、いかにもまーちゃんの好みそうなオールドローズや小輪のつるバラが可愛らしく誘引されていましたが、こちらもまだほとんどがつぼみでした。

自由なアイデアあふれる植栽術

Rose Branch(ローズブランチ)
5月19日。夕方の柔らかな日差しの中のアイランド。左から、白花のボリジ、ラムズイヤー、サポナリア、ラベンダーが優しい雰囲気。後方には、フィリペンデュラ・ブルガリス。足元をクリーピングタイムとスギナが低く縁取って。

目を中央に向けると、ちょっと大きめのアイランドの白花と、シルバーやグリーンの葉のテクスチャーでデザインされた花壇の宿根草が朝日を浴びてキラキラ輝いているではないですか!

何年か前の3月、クリスマスローズを見に来た時に、無国籍な雰囲気の自由なアイデアあふれる植栽がなされたこの庭を見て、「いつかしっかり撮影してみたい」と思ったことが、今まさに実現することになったのです。

ペディンデュラ・ブルガリスとバラモンジン
左/フィリペンデュラ・ブルガリスも、まーちゃんのお気に入り。右/洗練されたナチュラルな宿根草の花壇にはぴったりのバラモンジン。

東側のハウスの上から斜めに差し込んでくる朝陽を浴びて、白いサポナリアの花や隣のバラモンジ、そして麦の穂などが、まるで「きれいでしょう」「早く撮りなさい」と言っているようで、僕も「きれいだね~」と呟きながらアングルを探して歩いてはシャッターを切りました。また数歩進んではシャッターを切って…30分もしないうちに陽が高くなったので、このエリアの撮影を終了。まだ日陰になっているセリンセやクレマチスを撮って、この日は次の撮影地である神戸に向かいました。

バラ‘コーネリア’
枝垂れさせるとこんなにも可愛い、‘コーネリア’。

19日は早朝から神戸のお庭の撮影を終えて、再び車を東に向け、一路滋賀県へ。夕方の「ローザンベリー多和田」と、さらに間に合えば「ローズブランチ」のあの宿根草をもう一度、夕方の反対方向から差す光で撮影してみたいと思い「よい天気でありますように」と願いながら車を走らせました。

途中「ローザンベリー多和田」に連絡してみると「まだバラは3割程度で、ベストは来週くらいです」とのこと。一応自分の目で庭の状況を確認させてもらおうと思い、16時過ぎに「ローザンベリー多和田」に入り、撮影できるバラは押さえさせてもらって、再び「ローズブランチ」へ向かいました。

クレマチス‘ミケリテ’とバラ‘ジョゼフィーヌ’
クレマチス‘ミケリテ’と、終わりかけの咲き切る姿も可愛い‘ジョセフィーヌ’のコラボ。

「行きます」と連絡していなかったので、突然来た僕を見て、まーちゃんはびっくりしてましたが、夕陽の中の宿根草のアイランドは、やっぱりきれい! 太陽の沈み具合を見ながら18時過ぎまで撮影して、次回のバラの撮影を約束して帰路につきました。

シーズン3度目の訪問は絶好の撮影日和

つるバラ‘スペクタビリス’
ピンクのつぼみが可愛いつるバラ‘スペクタビリス’。まーちゃんはいいバラを知っているなぁと感心。

宿根草がいい感じで撮れたので、後はバラが咲くいいタイミングに行って撮影すれば完璧だなと考えながら、5月27日に3度目となる「ローズブランチ」に向かいました。16時過ぎに到着。すると予想通り、フェンスのバラも小屋に絡むつるバラも素晴らしく可愛く咲いていました。またまた、まるで植物たちが「待ってましたよ」「さあ早く撮ってください」と言っているようで、まーちゃんに向かって「最高~」と思わず叫びながら撮影開始です。

イングリッシュローズ‘セント・オルバン’
まーちゃんのお気に入り、イングリッシュローズ‘セント・オルバン’。

小屋に絡む“まーちゃん好み”のバラは、じつは僕も大好きなバラばかり。そのうえ、バラたちがタイミングもぴったりに可愛く咲いているのだから、もう嬉しくて楽しくて。本当にまーちゃんのセンスに感謝しながら、日暮れまで「ローズブランチ」の中を歩き回っていました。

ホサキナナカマドとボリジ
左/まーちゃんのお宝だというホザキナナカマド。右/花が終わってもいい仕事をしているボリジ。

まーちゃんに今後の目標を聞いてみたら、「バラとコラボして可愛い植物や、バラの後に咲き出す植物、真夏に元気な植物、秋に枯れ姿の素敵な植物……どれも好きな植物たちを集めて、ローズブランチを一年中楽しめるお庭にしたい」と夢を描きながら、日々奮闘中だそうです。

Rose Branch(ローズブランチ)
シックなカラーが周囲に溶け込み、よい雰囲気のセリンセ。

やっぱり植物が三度の飯より好きで、暑い日も寒い日も、雨の日も植物を見ていたいというくらいのガーデナーさんが僕は好きだなぁ、と改めて思う撮影となりました。

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