植物を育てていると、さまざまな病気に悩まされることも少なくないですよね。その中でもカビが原因で葉に白い粉状のものが付く「うどんこ(うどん粉)病」は、植物がかかりやすい病気の一つです。みなさんも一度は遭遇したことがあるのではないでしょうか。本記事ではうどんこ病についての基礎知識と併せ、薬剤を使わない自然治癒を含めた対応方法についても解説します。
目次
うどんこ病とは
うどんこ病とは、カビの一種が植物に感染して起き、葉や茎の表面が粉をふったように白くなる病気です。カビが広がってしまうと、葉は黄化や奇形化を起こすことがあります。ひどい場合は落葉し、生育不良が目立つようになります。このうどんこ病を引き起こすカビは絶対寄生菌といい、生きている植物の組織からしか栄養補給ができないという特徴があります。
うどんこ病の原因
子嚢菌でウドンコカビ科の絶対寄生菌が原因です。多くの植物で発生する病害ですが、1種類の菌により引き起こされる病気という訳ではなく、植物の種類によって、ウドンコカビ科の異なる種の菌が原因となります。土の中や空気中にあるそれぞれの寄生菌の胞子が植物に付いて繁殖することで発症します。
うどんこ病が発生しやすい時期
うどんこ病は気温が高い時期に発生します。そのため、5月から10月にかけては注意が必要。17~25℃程度の気温があれば、いつでも発生する可能性があります。カビなので湿気が好きかと思いきや、比較的乾燥した時期のほうが活発です。梅雨明けの時期は特に注意が必要です。
うどんこ病になりやすい植物
草花や野菜、果樹、樹木など多くの植物がうどんこ病になります。もっとも、それぞれの菌種によって宿主が決まっているので、一つの植物が感染したとしても他種の植物に蔓延することはほとんどありません。それぞれの植物に応じた対策について解説します。
野菜類
うどんこ病になりやすい野菜の例としては、キュウリ、トマト、メロン、カボチャ、ズッキーニ、ナス、オクラなど。そのままにしても、うどんこ病が原因で枯死することはほとんどありませんが、あまり気持ちのよいものではありませんし、放置すると感染の拡大により収穫量が減る場合もあるので、予防が肝心です。降雨による泥はねなどで胞子が葉に付くことも多いので、まずはマルチングをして株に土が付かないようにしましょう。下葉から発症し、株全体に感染が広がることもあるので、適宜下葉取りをするのも有効です。また株間が狭く、風通しの悪い環境だと感染拡大が起きやすいので、株間を空けるなどの対策も効果があるでしょう。時期によっては完全に防ぐことは難しい場合もあるので、早期発見、早期対策をおすすめします。
草花
宿根草や一年草にもうどんこ病は発症します。中でもパンジーやビオラなど地際で生育する植物は、泥はねなどにより発症しやすいです。また花木では、バラやアジサイなどが発症しやすく、抵抗力の弱いバラなどは葉を落とし、生育不良になりやすいため、定期的な防除として殺菌剤などの予防薬を散布するとよいでしょう。
果樹・樹木
果樹で発症しやすいのはブドウです。野菜と同様に予防が重要です。適宜剪定したり、葉を間引くなどして風通しのよい環境を作りましょう。また発症した場合は葉を取り除き、新たな感染源とならないよう圃場外などで処分しましょう。ブドウの中でもヨーロッパ種とも呼ばれるヴィニフェラ種Vitis viniferaは雨に弱いため、生育期には雨が当たらない場所で管理することがありますが、乾燥しすぎているとうどんこ病が発生しやすくなるので気をつけましょう。
樹木ではハナミズキの発症がよく見られます。放っておくと、一面うどんこ病に罹患してしまうこともあるので、綺麗に保ちたい場合は梅雨の終わり頃から薬剤散布し、予防に努めましょう。
うどんこ病になった野菜などは食べても大丈夫?
うどんこ病の原因となる絶対寄生菌は人体には無害です。そのためうどんこ病にかかってしまった野菜などを食べても問題はありません。ただし、うどんこ病がひどく進行している場合、植物自体がうどんこ病に抵抗しようとして毒素を出している場合もあります。特にうどんこ病にかかった部分が可食部に当たる場合は要注意。感染が深刻な場合は、避けたほうが無難です。
うどんこ病の対応策
梅雨明けなどに発生することの多いうどんこ病は、季節の移り変わりとともに終わっていく一過性の場合がほとんどで、多くは自然治癒します。しかしながら流行期に収穫期や見頃を迎える植物の場合、やはり対応策が必要。ここでは軽度から重度の症状まで、さまざまな状況に応じた対応策について解説します。
自然治癒
初期段階であれば、多くの場合は風通しをよくしたり、うどんこ病の原因菌は水分に弱いため葉水などを行うだけで進行を抑えたり、防除することができます。
病原となる葉を切り取る
うどんこ病が進行前で小規模であれば、病変箇所の葉を切除しましょう。時間の経過とともに規模が拡大し、切り取るだけでは対処しにくくなってきます。日々観察して早期発見、早期対処を心がけることで危害拡大を防ぐことができます。
農薬・殺菌剤
うどんこ病の原因菌には殺菌剤などの農薬の散布が効果的です。ただし植物の種類によってうどんこ病を引き起こすカビの種類も違うため、殺菌剤が効かない場合があります。対象となる植物に効果のある薬剤かどうかを確認してから使用しましょう。また長期にわたって同じ種類の薬剤を利用すると、耐性を持った変種が増えて効かなくなる場合もあります。野菜や果樹などの食用植物の場合は、収穫前のいつまでに散布するなどの規定もあるので、それぞれの薬剤に記載されている用法・用量を守って使用するようにしましょう。
重曹スプレー
農薬や薬剤を使用したくない場合は、市販の薬剤より効果は劣るものの、アルカリ性の重曹を使った重曹スプレーでも対応できます。重曹スプレーは重曹:水=1:1000の割合で希釈し、簡単に作ることができます。効果が感じられない場合は重曹の濃度を高くすることもできますが、高くしすぎると散布した葉が黒ずんでしまう害が発生するので気をつけましょう。
お酢のスプレー
酸性度の高い酢を使ったお酢スプレーでも対応できます。お酢スプレーは酢:水=1:20の割合で希釈して作ります。重曹スプレーと同様に市販の薬剤と比べると効果が弱く、また希釈倍率を上げるとやはり葉が黒ずんでしまうなどの害が発生することがあります。
うどんこ病を予防するには?
どの植物もかかりやすいうどんこ病ですが、栽培環境を整え、ポイントを押さえることで発生の頻度を減らしたり、進行速度を弱めたりすることが可能です。ここでは可能な限り予防するための方法について解説したいと思います。
肥料の見直し
うどんこ病は窒素肥料分が多いことが原因で発生しやすくなります。窒素は植物の成長に欠かせない肥料分ですが、窒素過多になると逆に植物が弱体化し、うどんこ病を含めたさまざまな病気にかかりやすくなってしまいます。軟弱徒長した状態だと何倍もうどんこ病にかかりやすいため、元肥や追肥の時期や、窒素分の量などに気を付けて施肥することが大切です。
雑草の除草
雑草にうどんこ病が発生し、その後作物や草花などに感染が広まることがあります。周囲を除草し、マルチなどをして新たに雑草を生やさないようにすることで外部からの感染の広がりを抑え、予防することが可能です。
うどんこ病にかかりにくい品種選び
うどんこ病にかかりにくい抵抗品種というものがあります。特にウリ科野菜は本来うどんこ病にかかりやすいのですが、抵抗品種の苗を選ぶことで防除しやすくなるためおすすめです。
水はけのよい土壌
うどんこ病は、土壌湿度が高い場合、胞子ができて飛びやすくなります。土壌湿度を抑えるため、水はけのよい土づくりをすることが大切です。
うどんこ病の対応は早めに
うどんこ病は多くの植物がかかる病気です。例え発症したとしても、この記事でご紹介したようにさまざまな対応ができるので、状態に応じた対策を講じましょう。いずれにしても早期発見、そして早期の対応が大切です。日々の観察を心がけ、変化に気をつけるようにしましょう。
Credit
文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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