初夏の主役花、バラと組み合わせる新たな選択肢としてオージープランツを取り入れてみませんか? バラの開花期に合わせてコンビネーションが楽しめるオージープランツの魅力と栽培のコツを、分類の垣根を取り去った植物セレクトで話題のボタニカルショップ「ACID NATURE 乙庭」のオーナーで、園芸家の太田敦雄さんにご案内いただきます。

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春から初夏をつなぐ異彩素材!
春のバラと開花期が合うオージープランツ

オーナメンタルプランツの庭が好きな方だけでなく、バラ好きの方にも差別化素材としておすすめしたい、「春のバラと開花期が合う」オーストラリア原産の植物、いわゆるオージープランツをご紹介します。第1回目となる今回は概要編。次回はオススメの具体的な品種をご紹介します。

 ハケア・ラウリナ
ハケア・ラウリナHakea laurina。Wattlebird/Shutterstock.com

オージープランツを紹介する前に、まず初めに「バラと一緒に植えることはできない」ことをお伝えしておきます。その理由は、オージープランツの中にはリン酸肥料を好まない性質のものも多いためです。それを踏まえた上で、植え場所の工夫で「同じ視界の中に収めて」フラワーアレンジメントのような異色の組み合わせを楽しむ方法をご提案します。

オージープランツ
本記事トップ写真のテロペア・スペキオシッシマ Telopea speciosissima やバンクシアなどのオーストラリア原産種と、リューカデンドロンやバーゼリアといった南アフリカ原産種を組み合わせたアレンジメント。これらの植物の中から、日本の庭植え環境でも栽培できるものを紹介します。Daniela Constantinescu/Shutterstock.com

また、庭で咲くバラやシャクヤクなどの豪奢な花に加え、開花期の合うテロペアやグレビレアの花、灰水色が美しいユーカリの枝などを庭から切ってきて、部屋に活けても素敵ですよ。

オージープランツのアレンジ
Bearmoney/Shutterstock.com

上写真では、バラ、シャクヤクに加え、南アフリカ原産種のプロテアがポイントで加わっています。このプロテアのような役として、エキゾチックなオージープランツの花が入るイメージです。

近年、異色のガーデニング素材として人気が高まっているオージープランツ。まだ栽培方法などの情報が少なく、育て方や種類の選び方が分からず導入しにくいと思っている方も多いのではないでしょうか。

しかし、通常のガーデンプランツとオージープランツのちょっとした性質の違いを把握して、日本の気候環境で育てやすい種を的確に選んで植えれば、むしろ手間少なく楽しむことができる植物です。ガーデニングの可能性を広げる選択肢としてご参考になれば幸いです。

ブラシの木
ブラシノキという和名でも知られるカリステモン。春バラの終盤頃から咲き始め、初夏の幕開けを飾ります。日本の環境でも最も育てやすいオージープランツの一つです。Tymonko Galyna/Shutterstock.com

バラの開花ラッシュとなる5月の中〜下旬は、日に日にぐんぐんと気温が上がり、一気に初夏の風情になりますよね。オージープランツの中には、前後も含めこの時期に開花するものも多いです。

グレビレア ‘ロビンゴードン’
グレビレア ‘ロビンゴードン’ Grevillea ‘Robin Gordon’。Alybaba/Shutterstock.com

今回の記事では、常緑性で耐寒耐暑性のあるものをセレクトしています。花や葉、全体の姿にそれぞれ特徴があり、開花期以外も通年観賞価値があります。バラの開花終了から元気な夏庭へと、スムーズに移行できますよ。

独自の進化を遂げてきたオージープランツ

大陸移動の歴史
tinkivinki/Shutterstock.com

オーストラリア大陸は、地球の歴史上、白亜紀に当たる6500万年前頃に、巨大な超大陸ゴンドワナから分離し、ゆっくりと現在の位置へと移動しながら独自の生態系を形成してきました。

オーストラリア大陸
okili77/Shutterstock.com

その上、国土面積も日本の約20倍ととても広く、同じ国内でもさまざまな気候環境の地域にまたがっています。特に西オーストラリアの乾燥地域など、独特の過酷な気候風土で進化した固有種は、個性的な見た目で園芸素材としても魅力的なものが多いです。

西オーストラリアの植生風景
西オーストラリアの植生風景。ENVIROSENSE/Shutterstock.com

今回ご紹介する品種群は、バラと概ね開花期が重なりつつもそれぞれに若干異なるので、いくつかの種類を組み合わせて植えることで、バラの開花期も含め、春~夏本番までの長い期間、花のある風景をつないでくれます。

 ダーウィニア・シトリオドラ
ダーウィニア・シトリオドラ Darwinia citriodora。4月下旬~5月にかけて咲きます。
グレビレア ‘エレガンス’
グレビレア ‘エレガンス’ Grevillea ‘Elegance’ 。関東では5月の下旬頃から、バラの最盛期からバトンタッチするように咲き始めます。

独自の生態系で進化してきた植物なので、日本での栽培にはちょっとしたコツが必要です。それをしっかりと押さえて、オージープランツのある庭を楽しみましょう!

栽培のポイント1
リン酸系肥料を好まないので肥料は控えめ程度

学術的な説明よりは、ざっくりと概要で把握する方が実地のガーデニングでは使いやすいと思いますので、詳細は省きます。オージープランツは、オーストラリアの降水量も肥料分もとても少ない風土、つまり「痩せ地」に適応して進化してきました。

オーストラリアの風土
Vaclav Sebek/Shutterstock.com

特に、花を咲かせるのに役立つリン酸系の栄養素について、オーストラリア原産の一部の植物は、極端にリン酸分の少ない大地からでも効率よくリン酸分を吸収できる根の仕組みになっています。そのため普通のガーデンプランツと同じように肥料を与えるとむしろ多肥になってしまい、調子を崩しやすいのです。むしろ植物にマメに肥料を与えてあげる「お花好き」の方ほど、オージープランツを枯らしてしまう危険性があるんですね。

リン酸肥料に少しでも当たると枯れてしまうほどの過敏さではありませんが、オージープランツは全般的に多肥を好まない傾向があります。オージープランツを植え付ける際には肥沃な土地や、花を咲かせる用途でリン酸を多めに配合された培養土の使用を避けた方が賢明でしょう。

リン酸無配合の化成肥料
乙庭でも使用しているリン酸無配合の化成肥料。

植え付け後、植物の成長の様子を見ながら、リン酸分の少ない肥料を控えめに追肥するのが安全です。

見方を変えれば、頻繁に施肥をしなくてもよいため、案外手間いらずということでもありますね。

ちなみに乙庭では、オージープランツや南アフリカ原産のプロテアやリューカデンドロンなどには、リン酸分を含まない化成肥料と、海藻原料でリン酸分がとても少ない有機肥料を併用して育てています。

乙庭で使っている有機肥料
乙庭愛用の、リン酸分がとても少なく、微量栄養素に富んだ海藻原料の有機肥料。紅茶葉のような見た目も気に入っています。先出のリン酸無配合化成肥料と共に乙庭のオンラインショップでも販売しています。

栽培のポイント2
適地は「暖かい日向」。完全な乾燥は禁物!

次回で詳しくご紹介するオージープランツは、群馬県高崎市の乙庭にて屋外栽培で過酷な夏冬を超えています。冬季の最低気温は-5℃程度まで下がり、凍結し霜も降りる場所です。ですので、関東平野部以南の温暖な地域であれば、概ね庭植え可能といえるでしょう。

乙庭の植栽
オージープランツも織り交ぜられた乙庭の植栽。写真左側の暖かい南向き面に温暖地系植物をまとめて配置しています。

ただし、雪の重みで枝が折れやすいものが多いので、降雪量の少ない地域向けです。耐寒性があるとはいえ、冬季の気候が日本よりもマイルドな地域原産の植物たちです。強い北風に晒される場所や、日当たりが悪く凍結した土が解けにくい場所などに植えると越冬成績が悪くなります。建物の南側など、北風を避けられて、昼間の土中温度が上がりやすい場所を選んで植えると安全です。

グレビレアとユーフォルビアなどを組み合わせて
日当たりがよい場所で、グレビレアとユーフォルビアなどを組み合わせたコンテナ植栽例。

特に小さな苗は耐寒性が万全ではありませんので、まずは鉢植えで、真冬の間は凍結しない程度の場所で保護してあげるとよいでしょう。春~初夏に定植して、秋までによく根付かせるのがポイントです。

オーストラリアの植生
Vaclav Sebek/Shutterstock.com

オーストラリアというと、上写真に見られるようなカラカラの乾燥地をイメージしがちですが、実は、オージープランツの多くは、ある程度ドライ寄りの環境を好むものの、土壌が完全に乾燥すると一気に枯れてしまうものが多いです。 庭植えの場合、土中まで完全に乾燥してしまうことはほとんどないのでさほど心配いりませんが、 鉢植えの場合は水切れに注意しましょう。

【重要】植栽時の最大ポイント!
バラとは一緒に植えず「一緒の視界に入るように」

今回、「バラと開花期が合う」という切り口でオージープランツのご紹介をしていますが、オージープランツの「リン酸系肥料をあまり好まない」性質を考慮すると、花を咲かせるためにたっぷり肥料を与えて育てるバラの近くに地続きで植えるのは危険です。

バラに限らず、リン酸系の肥料を与えて育てる花モノとは一緒に植えないようにするのが、植栽時の重要ポイントになります。

オージープランツのガーデン
Wattlebird/Shutterstock.com

見方を変えれば、これがオージープランツを庭植えする際の組み合わせのヒントになります。土中が乾燥しきらない程度の乾いた環境に合い、かつ痩せ地出身の植物と組み合わせるとよいわけです。

かといって、上写真のように植生を気にしすぎてオーストラリアや南アフリカの植物ばかりの植栽にすると、モシャモシャしたブッシュになって、焦点が定まりにくいです。雰囲気の異なる植物と組み合わせてメリハリをつけたいものですね。

オージープランツの植栽例

上写真は乙庭での植栽例。北アメリカ乾燥地原産のアガベや地中海沿岸地域原産の植物と合わせて、オーストラリア原産のテロペアを植栽しています。

このようにオージープランツと同じような土壌環境を好む、南アフリカ原産のプロテアやリューカデンドロンの仲間、あるいはアガベやユッカ、耐寒性のアロエといった、主に葉を観賞するドライガーデン系素材などと組み合わせることで、オージープランツ一辺倒ではない多様性のある植栽を生み出せます。

バラとの組み合わせで考える場合、植え場所を分けつつも、「通して見た時に両者が同じ視界に入るように」配置計画をすることで、自然界ではありえない開花のコラボシーンを作り出すことができます。

バラとオージープランツのガーデン
バラのあるオーストラリアガーデン。Jacqui Martin/Shutterstock.com

上写真はグレビレアやユーカリといったオージープランツと南アフリカ原産種、そしてバラのある植栽例です。右上端に写っているバラは植えてある場所が明確に分けられている点によく注目してください。

たとえば水やりしにくい道路側花壇をアガベやオージープランツを合わせた植栽にして、その奥にバラや花モノの庭が広がっているとか、玄関周りにオージープランツのレイズドベッドやコンテナアレンジがあって、通路をはさんで反対側にバラが咲いているとか、そんなイメージですね。

グレビレア‘ムーンライト’

上写真は、ロサ ‘ベイシーズパープルローズ’ の前景に咲くグレビレア ‘ムーンライト’。鉢植えで土壌環境を分けて管理することで、これら全く性質の異なる植物を同じ視界の中で楽しむことを可能にしています。バラとオージープランツが同じ視界に入ることを意識しつつ、しっかり土壌を分けて管理するのがとても重要ポイントです。

では、次回、春のバラと開花期が重なるオススメのオージープランツを具体的にご紹介いたします。

グレビレア

「思いもかけない偶然から、まったく別の新しい発見が導かれることとなった。(中略)科学者の間ではこういう行きがけの駄賃のように生まれる発見、発明のことをセレンディピティと呼んでいる。」
(外山滋比古 英文学者・評論家 1923 – )

Credit


写真&文/太田敦雄
「ACID NATURE 乙庭」代表。園芸研究家、植栽デザイナー。立教大学経済学科卒業後、前橋工科大学で建築デザインを学ぶ。趣味で楽しんでいた自庭の植栽が注目され、建築家とのコラボレーションワークなどを経て、2011年にWEBデザイナー松島哲雄と「ACID NATURE 乙庭」を設立。著書に『刺激的・ガーデンプランツブック』(エフジー武蔵)。オンラインショップでは、レア植物や新発見のある植物紹介でファンを増やしている。
「ACID NATURE 乙庭」オンラインショップ http://garden0220.ocnk.net
「ACID NATURE 乙庭」WEBサイト http://garden0220.jp
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