2020年の春、世界各地で皆がそれぞれに工夫して「おうち時間」を乗り切ろうという今。ドイツで暮らすガーデナー、エルフリーデ・フジ=ツェルナーさんから届いた現在の様子と、季節のイベントであるイースターや、外出制限の続く生活で見つけた6つの楽しみについてのレポートをご紹介します。

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外出制限が続くドイツ

2020年の春は、いつもの春とは全く異なる、とても特殊な期間になっています。

私の場合、そもそも今年の春は日本で迎える予定でした。6カ月のドイツ滞在の後、日本にいる夫と会うのを待ち遠しく思っていたのです。美しい桜の花や、過ごしやすい穏やかな日本の気候、にぎやかな通りやお店などに加え、友人を訪ねたり、ドイツにいる間に起こった小さな変化を探したりするのも楽しみにしていたのです。

これらの楽しみは、ご承知の通り、実現することができませんでした。

実際に訪れた春は、ずっと厳しいものでした。突然の全世界的なコロナウイルスの感染拡大により、日本行きの飛行機に乗ることすらできなかったのです。

日本に比べると、ドイツでは人々の活動への規制はより厳しいものになっています。現在私の暮らすバイエルン州は、ドイツの中でも感染拡大が深刻な地域だったため、生活の新たなルールもとても厳しいものです。幸いなことに、この対応はウイルスの拡大スピードを抑制するのに効果が出ているように感じられます。

イースター

さて、この記事を書いているのは、ちょうどイースターホリデーの中頃のこと。通常であれば、この休日は2週間あり、この間は学校もお休みになります。しかし、今年は、この地域の学校は、すでに4週間以上も休校になっています。日本と同じように、この休校期間は在宅学習期間となっているため、休日のような感じは全くしません。

今はドイツの実家に、ある種“収監”されているような状況ですが、そんな状況でも、そしてそんな状況だからこその新しい取り組みや、さまざまな楽しみも見いだすことができます。今回は、そんな隔離生活の中での取り組みや楽しみ、私の暮らしについてレポートしたいと思います。

2020年のイースター

教会

主にキリスト教のカトリックが信仰されている南ドイツでは、一般的に、イースターの間は多くの時間を教会で過ごします。それほど信仰に熱心ではない人も、この特別なイースターの時間を楽しむのです。しかしながら、今年は教会に行って祭事に参加する人は誰もいません。生まれて初めて、自宅の前の朝食の席で、地元の教会の牧師の行うイースターのミサに、YouTubeのライブストリーミングで参加することになったのです。このライブストリーミングのミサは、とても奇妙な感じがしましたが、一方で教会の牧師と補佐、そして映像会社の協力により実現したというのは素晴らしいことだと思います。

ちなみに、イースターエッグやイースターベーコン、イースターブレッド、その他ホースラディッシュなどのイースターの食事への祝福は、ドライブスルーで行われました。このドライブスルー方式では、人々は祝福してもらう食べ物を入れたバスケットを持って車に乗り込みます。同じく車に乗ったままの牧師のそばを通り、自分たちとイースターの食べ物とを祝福してもらうのです。

イースター

2020年のイースターはとてもよく晴れた暖かい日で、まるで6月のよう。気温は15~20℃まで上がりました。このイースターサンデーには、玄関の前、外に出て美味しい朝食をいただくことにしました。私の家の周りにはちょっとしたスペースがあり、大きなベンチとどっしりとした木製のテーブルが置いてあります。真っ青な空、澄んだ空気、車も通らず騒音もなく、鳥たちが気持ちよくさえずり、優しいそよ風が吹いていました。

完璧な一日のためには、車に乗り込んでバイエルン州ミュンヘンの南にあるきれいな湖を訪れるか、さらに美味しい食事を求めて近くのレストランまで、ちょっとしたドライブを楽しみたいところなのですが…今年は残念ながら当然できませんね。レストランはすべて休業中ですし、必要不可欠な外出以外は認められていません。もっとも、どちらにせよ、イースター休暇の間は、例年お店はみんな休業です。日本の年末年始とちょっと似ています。今は近くの空港を発着する飛行機も最小限になっていて、機影もほとんど見えません。素晴らしく静かです。

さて、どこかに出かけることが禁止されているこの外出制限期間を、どう活用していきましょう?

外出制限期間中の楽しみ6つ

1.テレビ視聴

多くの人がテレビを見ているとは思いますが、テレビにはコロナウイルスに関連するニュースがいつもあふれているので、私はすぐにチャンネルを変えてしまいます。

先日、あるおじいさんが、彼の小さなガーデンを、毎年赤や青、紫、黄、オレンジなど、1,000個以上のカラフルなプラスチックのイースターエッグで飾るというニュースを見ました。イースターエッグを木の上や茂みに配置する準備には、2週間以上かかり、それを片付けるにはさらに時間がかかるのだそうです。

たくさんの人が、外から彼の庭を楽しみますが、中でも、この庭が大好きなのは子どもたちです。普段は、子どもたちはこの庭に入ってチョコレートバニーをもらえるのだそう。この季節だけのイースターの飾りで近隣の人の気持ちを明るくしてくれたこの取り組みは、イースターエッグとガーデンをコミュニケーションのきっかけとして、人と知り合ったり、子どもたちを励ましたりもでき、イースターの季節を過ごす素晴らしい方法だと思います。

このようなほっこりするニュースが流れてくることもありますが、素敵なお天気の日中に、テレビを眺めて過ごすのは、私としては一番最後の選択肢です。

2.食料品の買い物/ファーマーズマーケット

野菜

イースターの時には特に、とても大切な仕事が食料品の買い物です。

幸いにも、いくつかの地元のファーマーズマーケットは再開し始めました。再開にあたって、他の場所に移動しなければならなかったマーケットもあります。例えば、私たちの地元、ミュンヘン空港近くで一番大きなマーケットはフライジングで開かれるものですが、今年はフライジングの市内での開催ではなく、美しいイーザル川近くの大きな駐車場に場所を移すことになりました。その理由は、野菜などの食材の露店を並べる際に、より一層の間隔が必要となったため。買い物客も、1.5~2mの間隔を取って買い物をしなければなりません。そのため、この大きな駐車場がぴったりの解決策となったのです。

食材の買い出しは必要不可欠なことですから、人々は買い物に出かけるのは認められていて、この間は少なくとも外の空気を楽しむことができます。よく知った環境の中で、他の人々を見るのは嬉しいことですね。さらにメリットとして、このようなマーケットでは、とても新鮮な食材が手に入りますし、地元の農家を応援することもできます。

せっかく話題が出たので、地元や地域の食材についてもお話ししましょう。

近頃、ドイツでは、” Fresh from the Farmer Shops”の人気がますます高まっています。これは、農家が自分の農場に、小さな自分のお店を開いて販売すること。このようなお店は決まった日にだけ開き、基本的に自分の農場で収穫したものを販売しています。

ホワイトアスパラガス

現在、ドイツで旬を迎えているのは、ホワイトアスパラガス。最近、ホワイトアスパラガスを販売する小さな露店が道に並ぶようになりました。これらは基本的に朝9~10時くらいにオープンして、夕方5時頃に閉店します。売り切れになった場合は、もっと早くに店じまいすることも。こういうお店にちょっと立ち寄って、新鮮なホワイトアスパラガスを購入するのは、暮らしのちょっとした楽しみ。お店には、小さなベビーアスパラガスから、長くて太い立派なアスパラガスまで、4~6種類くらいが並んでいます。日本に比べると、とてもリーズナブルな値段で手に入りますよ。

ホワイトアスパラガスとポークのソテー

イースターサンデーとイースターマンデーでは、食事にはホワイトアスパラガスとオランデーズソースを添えたポークをいただきます。付け合わせには、塩ゆでしたジャガイモが欠かせませんね。これは、この時期の食事のスタンダードのようなもので、6月半ばごろまで食卓によく登場します。このほかにも、ベビーアスパラガスをビネガードレッシングに入れて、ピクルスのようにしたりもします。さっぱりしてとても美味しいですよ。

3.新鮮な野菜の宅配

農家や野菜の生産者の中には、顧客に野菜を直接送るウィークリーのデリバリーサービスを展開しているところもあります。このサービスを活用するには、会員登録が必要です。

このような配達サービスの場合、その生産者がその年・その時に育てているものしか購入できないため、選べる野菜の選択肢はかなり絞られますが、多くが有機農法で生産されていて、一般の野菜よりも健康的だと考えられています。野菜の配達サービスは、もともとドイツでも普及していましたが、コロナウイルスの影響により、一層需要が高まりました。

近所の野菜の生産者は、ホームページ上に、生産物の量と配達に限りがあるため、新規の会員の受付を一時停止するとお知らせを出していました。この生産者はとても顧客志向で、彼の農地から自分で収穫することもできます。このような収穫体験は、人々や子どもたちに、食材の重要さを認識してもらうのにとてもいい方法ですね。都会的な暮らしが中心になった現代でも、自然に回帰し、そこからもたらされる宝物を発見することができます。

4.料理

この長い外出制限の期間を自宅で過ごす時には、料理にエネルギーを費やすのもいいですね。スーパーでは、トイレットペーパーや感染防止グッズに加えて、小麦、イーストが品薄になりました。日本でも同じようなことが起こったのでは?

最近は、娘も率先して新しいレシピに挑戦して料理を作ってくれています。学校が休校中なので、新しいメニューや健康的な食事について考えているようです。

そんなわけで、毎日が新鮮なサプライズの連続です。

せっかくの機会なので、娘には、イラクサやタンポポ、ラムソンなどといった、自宅の庭に生えている有用な植物の料理の仕方を教えてみてはいるのですが…今のところはあまり成功しているとはいえません。

彼女が唯一使ってみてくれたのがチャイブです。バターに混ぜてパンに塗ったり、サラダに入れたりするととても美味しいですよ。スープのトッピングやスクランブルエッグに混ぜるのもおすすめです。庭で育てていると、必要な分だけカットして、すぐに使うことができます。

5.ガーデニング

ラディッシュの芽

私は最近、部屋の出窓で植物を育てる出窓ガーデニングを再開しました。

出窓ガーデニングで楽しむのは、例えばラディッシュの種まき。ラディッシュのタネを小さなポットに播き、水をやって数日待つと、可愛らしい新芽が姿を現します。植物の芽吹きを見るのは、なんと楽しいことでしょう! さらに嬉しいのは、この新芽をさっそく収穫して、サラダに入れて食べること。

種まきからでも簡単に育つ植物は、たくさんあります。例えば、ガーデンクレスやラディッシュの仲間、ブロッコリー、マスタードなど。さらに簡単な方法では、キッチンペーパーを使って育ててしまう手もあります。平らな皿などにキッチンペーパーを2枚重ね、水を注いで湿らせてから、ガーデンクレスのタネを広げます。数日の間湿った状態を保ち、芽が出てきたら料理に使いましょう。ガーデンクレスは成長がとても早く、カラフルなイースターエッグなどの卵の殻なんかに入れて育てるのも楽しいですよ。

6.散歩

イースターホリデーの間は晴れた気持ちのよい天気が続き、その陽気に誘われてよく散歩に出かけました。それぞれの道はどれも楽しく、近所について新たな印象を得ることができました。

スピノサスモモ

丘までの散歩道では、大きな2つのワイルドチェリーの木の間に、森に沿って白い茂みが列をなしているのを見ることができました。この白い茂みは、この辺りではよく見かけるスピノサスモモです。英名のスローのほうが一般的でしょうか。秋になれば、紺色の実を付けて、11月の最初の霜が降りた後に収穫期を迎えます。この実を使って、スロージャムやスロージュース、スローリキュールなどを作ることができます。

散歩

スピノサスモモは、この地域で育つ低木の中でもいち早く成長する種類で、濃い緑の森とのコントラストはとても美しいものでした。この木はほかに、防風林として区画分けに利用されている様子もよく見られ、ノウサギや、キジなどの鳥たちの棲み処となっています。

タンポポ

野原に行けば、昼時には明るい黄色のカーペットが目に飛び込んできます。これは早すぎても、遅すぎても見ることができません。私が話しているのはタンポポのこと。ちょっと見とれてしまうくらい素敵な光景です。

本当に素晴らしかったので、タンポポをカッティングフラワーとして使うことに。満開の花を選び、いくつかを切って小さなグラスに入れました。美しい姿が楽しめたのはわずか2日でしたが、それでも構いません。私が言いたいのは、その一瞬をもっと楽しむべきだということ。永遠に続くものなど何もないのですから。

先日、娘と一緒に、午後8時少し前という遅い時間から運動をしました。バイエルンではだいぶ日が長くなったため、私たちが帰る頃にはまだ日は暮れていませんでしたが、30分もすると日も落ちて、夜空に輝く最初の星を見ることができました。

帰り道に見えていた星は金星。日本でいえば宵の明星です。忘れられない美しい帰り道でした。

ガーデン

私が、このコロナウイルスの感染抑制のための規制を通して感じているのは、私たちはこの状況の中で、たくさんのことを再発見できるということ。そしてそれらは、いつも私たちの前や上に広がっていて、誰でも自由に楽しむことができるのです。

Credit

ストーリー&写真(*)/Elfriede Fuji-Zellner
ガーデナー。南ドイツ、バイエルン出身。幼い頃から豊かな自然や動物に囲まれて育つ。プロのガーデナーを志してドイツで“Technician in Horticulture(園芸技術者)”の学位を取得。ベルギー、スイス、アメリカ、日本など、各国で経験を積む。日本原産の植物や日本庭園の魅力に惹かれて20年以上前に日本に移り住み、現在は神奈川県にて暮らしている。ガーデニングや植物、自然を通じたコミュニケーションが大好きで、子供向けにガーデニングワークショップやスクールガーデンサークルなどで活動中。

Photo(記載外)/Friedrich Strauss/Stockfood

取材/3and garden 

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