2019年12月、埼玉県熊谷市にオープンした「花音の森」。植物と快適に暮らせるように設計された場所で、 “ガーデンセラピー”をコンセプトに、植物の楽しみ方が学べるレッスンが行われています。今回は、建物×庭をトータルでとらえ、自然を活用した快適な住まいを作るために工夫した点をご紹介していきます。

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夏もエアコンなしに暮らすためにの家づくり

前回お話しした通り、日本一暑い街・熊谷でクーラーなしで暮らすぞ! と決心したのはいいのですが、周りにそれを話すと「…ホントにやる気なの? 大丈夫? 熱中症で倒れるんじゃ…」というような反応ばかりで、心が折れそうになったことも多々ありました(笑)。

しかし、くじけそうな私の決心を再び鼓舞し、現実へと導いてくれたのが、ファンスタイル一級建築士事務所の代表・森さんでした。

熊谷市内にある森さんの事務所
熊谷市内にある森さんの事務所

森さんとはちょうど、この家づくりを誰に頼もうかと思っている時に出会いました。自然素材を生かした注文住宅を設計施工している方で、「工夫次第で、夏もエアコンに頼らずとも暮らせますよ、僕もそうしていますから。」と心強い言葉を頂き、お願いすることにしました。

そして完成まで約1年間かけて、打ち合わせを重ねていきました。

夏涼しく、冬暖かく暮らすための工夫は?

前回もお伝えしましたが、エアコンなどの機械をできるだけ使わず、太陽の熱・風・水・庭の植物といった「自然エネルギー」を最大限に活用して、快適な住まいをつくる手法を、「パッシブデザイン」と呼びます。

例えば、窓や壁・屋根に当たった太陽熱を集めたり、蓄えたり、また逆に逃がしたりシャットダウンしたりして、自然エネルギーを上手にコントロールし、家の快適性を上げる機能として取り入れます。

難しいのは、日本には四季があるので、季節変化にどう対応するかということ。大きい窓を複数配置すれば、冬は暖かい光が入るけれど、夏は暑さを室内に入れる原因になる…というように、一方のことを考えるだけでは済まないわけです。森さんは、そのバランスを上手に取りながら、デザイン性や機能性も重視して、家を作ってくれました。

実際に工夫した点をいくつか紹介していきますね。

「窓」

窓そのものの機能性を重視

まずは窓。窓そのものの機能性を重視し、室外側のサッシは風雨に晒されても丈夫で錆びにくい耐候性の高いアルミ製、室内側のサッシは断熱性や防露性、遮音性に優れた樹脂製という2重構造になっているアルミ樹脂複合窓というものをセレクトしました。さらに、夏は風がよく通り、冬は北風を入れないために、窓の大きさ・位置・開閉向きなども、しっかり考えられています。

ここの窓は南向き

ここの窓は南向きで、冬はぽかぽか日差しを届けてくれますが、夏は暑さを蓄える場所にもなります。

そこで、ウッドデッキを広めに確保して、デッキ周りには7mほどのコナラを中心とした植栽と、パーゴラ(藤棚)を設置してぶどうを植えました。夏場は葉が茂ってデッキ周りを覆い、窓に日差しが入ってくるのを防いでくれる予定です。

また、植物越しに入ってくる風は、植物が持つ蒸散作用により冷たいのも夏には嬉しい点。コナラもぶどうも落葉樹ですから、冬場には葉を落として日差しが確保できます。

ただし、植物が生長して機能するまで、年月がかかるので、少なくとも1~2年は何か工夫が必要です。春になったら、一工夫加える予定なので、その様子も引き続きレポートしますね。

「壁」

壁は外壁・内壁共に漆喰に

壁は外壁・内壁共に漆喰にしました。外壁は汚れが気になるので、真っ白にはせず、ちょっと茶色を入れました。

漆喰は多孔質素材。たくさんの小さな穴があり、湿度の高い夏は湿気を吸い込み、乾燥した冬には湿気を放出し、壁自体に湿度調節の機能があります。その結果、結露を防止し、建物の耐久性の維持にもつながります。

さらに、漆喰はアルカリ性が高いため、防カビ・抗菌・消臭作用が期待できます。我が家には犬がいるので、助かりますね。

外からも植物で壁を覆うように

外からも植物で壁を覆うように、わざと壁面近くに植栽をしています。こちらもメインはコナラやアオダモなどの「落葉樹」。これで日差しが壁に直接当たり、夏場に蓄熱するのを防ぎます。ですが、冬場は落葉してこのような枝だけの状態なので、冬は暖かくなる仕組みです。

「屋根」

屋根はアスファルト基材とグラスファイバーでできたもの

屋根はアスファルト基材とグラスファイバーでできたものをセレクトしました。

本当は、草屋根にしたかったのですが、予算の都合で残念ながら見合わせることに。その代わり、家の周りに大きくなる落葉樹を植えました。生長して、屋根を覆ってくれる計画です。

「断熱材」

断熱材はグラスウール

グラスウールが使われています。

今回、家を建てるにあたり「断熱材」は大事だと思って、自分でもいろいろ調べてみました。ですが、評価も人によってさまざまですし、地域によっても変わる…何が正しい選択なのか、調べるほどにわからなくなり、結局はお任せしました。

施工中は、ほぼ毎日写真を撮りつつ見学に。感じたことは、材質も大切だけど、施工方法が正しくあってこそという点。木を植える時に置き換えて考えてみると、植え方や扱い方が悪ければ、それがいい木だったとしても枯れてしまいます。そういう点からも、信頼できる施工店に頼むことと、そして、コミュニケーションを密にすることは、家づくりでも庭づくりでも、共通して大事なことだと思いました。

「無垢材」

梁や土台、柱なども天然の木をそのまま使った無垢材

床や壁に加え、梁や土台、柱なども天然の木をそのまま使った無垢材を使用しています。

天然のため反りやねじれが出やすいですが、アレルギーの原因となる接着剤も使用していないため、安全安心の素材といえますね。

木のぬくもりや香りを感じる

犬の爪の跡や、物を落としてできたであろうへこみが少々気になりますが、木のぬくもりや香りを感じられて、特に床は無垢材にしてよかったと思っています。これからの経年変化が楽しみでもありますね。

真冬の引っ越し…暮らしてみての体感は?

引っ越ししてきたのが12月下旬。今まで40年以上住んでいた実家は、この花音の森からほど近いところで、外環境の変化はほぼありません。なのに、引っ越し初日、実家からそのまま持ってきた布団セットで寝たら、夜中に暑くて目が覚めてしまいました。寒くて目が覚めることはあっても、こんな冬に暑いなんて…今まで、どれだけ寒い家に住んでいたのでしょう(笑)。

暮らしている時には「寒いのは冬だから当たり前」だと思っていましたが、そうではなかったことに気付かされました。

冬場の暖房は薪ストーブ

冬場の暖房は薪ストーブです。夜寝る頃には火が消えていますが、家中をじんわりと暖めていてくれているので、朝起きて、靴下をはかなくても床が寒くないことにも驚きです。また、体感として、薪ストーブの火は身体の芯まで温めてくれるように思います。エアコンや石油ストーブでは感じたことのなかった暖かさですね。

花音の森の植物が大きくなったら、この庭で育った枝葉や、庭の仕事で出たものも大切に使わせてもらおうと思っています。「庭で出たものをゴミにしない」という視点を持つと、庭仕事のすべてが大切に感じますね。私のライフスタイルも、今まで以上に自然に寄り添うものになりそうで、それもまた楽しみです。

次回は、こちらもこだわりがいっぱい詰まった、「庭づくり」について、ご紹介しようと思います。

Credit

写真&文/堀 久恵(ほり ひさえ)

花音-kanon- 代表、ガーデンセラピーナビゲーター。一般社団法人日本ガーデンセラピー協会専門講師。

生花店勤務を経て、ガーデンデザイン・ハーブ・アロマセラピー等を学び、起業。植物のある暮らしを通じて、病気になりにくい身体を作り健康寿命を延ばすことを目指した「ガーデンセラピー」に特化した講座の企画運営と庭作りを得意とする。植物に囲まれ、日々ガーデンセラピーを実践中。埼玉県熊谷市在住。
https://kanongreen.com/

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