手作りオーガニック栽培を始めよう! SDGsで植物を生き生き育てる土づくり

Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich
ガーデニングの基本はよい土から。ローメンテナンスでも元気で美しい花を咲かせるためには、土づくりが肝心です。ドイツ出身のガーデナー、エルフリーデ・フジ-ツェルナーさんが今回ご紹介するのは、オーガニックでコスパ抜群の自家製堆肥の作り方。有機物を堆肥に変えるミミズたちに協力してもらうための「ワームベース」とともに、環境にもやさしい自家製堆肥について解説します。
目次
春本番の到来と庭木たち

私の暮らす湘南地域では桜の季節も過ぎ、春のエネルギーがあふれ出るように、木々や宿根草、小さな花々も、一斉に開花し成長しています。いまが旬の筍も、頭を出して驚くほどのスピードでぐんぐん成長する様子を見るのは楽しいもの。寒冷なドイツやオーストリアでは見ることができなかった光景です。
ドイツでは、基本的に竹はこれほど早く大きく成長することはありません。ちょっとした「ジャパニーズスタイル」の庭は人気があり、モミジや竹をガーデンの植栽に取り入れている人もいましたし、園芸店でも購入できる場所はありました。しかし、イロハモミジなどと同じく、夏が短く冬が厳しいため、あまり大きく成長することができないのです。先日、満開のガマズミ(ビバーナム)を目にしましたが、目にも美しく優しい香りもあり、とても素敵でした。ドイツでもビバーナムを庭に植えることはありますが、こちらも基本的に大きさは1/3ほどにしかならないため、日本で見る美しさはまた格別です。

スペースの都合やメンテナンスの大変さから、庭に大きな樹木を持てるガーデナーは希少です。そして、自分の庭にぴったりな庭木を見つけるのもなかなかのチャレンジ。私の暮らす湘南地域では、オリーブの木を植える人も多いですが、数年経って大きくなりすぎ、株が暴れて視界を遮ったり、道に飛び出したりと、管理されていない状態のものも見かけます。樹木の根は家の周囲の水道管など、埋設されたパイプにダメージを与えることもあるため、大きく育つ樹木やつる植物を植栽する前には、よく検討することが必須です。
マイナス面も書きましたが、オリーブの木の美しい葉色と涼やかな姿、そしてオリーブの果実はとても魅力的ですよね。

ガーデニングの基本は土づくりから

さて、見上げる頭上には木々が美しく茂る中ですが、今回は足元の土や地中の重要性に着目したいと思います。
植物を健康に育てるには、よい土であることがとても大切。もともと「緑の親指(Green Thumb)」を持っていたわけではなく、植物を育てるときも失敗が多かったけれど、いろいろな栽培方法を試し、またよい土と健康な生態系を育てることを心掛けた結果、すっかり栽培上手になった友人もいます。
よい土のために重要なのは、有機物。秋に降り積もった落ち葉が、土づくりを始めるための素晴らしいベースになっていますよ。
自家製堆肥でSDGsにも貢献

多くが可燃ゴミとして捨てられる生ゴミは、じつはとても価値がある「お宝廃棄物」。生ゴミなどの有機物を処理して得られる堆肥は、よい土づくりのためにはとても有用です。そして、生ゴミを堆肥化することで、ゴミを減らす効果もあります。
野菜の切れ端やリンゴなどの果物の皮、使用済みコーヒーかすにティーバッグなどなど、日常生活では毎日たくさんの生ゴミが生まれます。ゴミ袋に捨てれば、特にこれからの気温の高い季節はすぐにコバエが現れてニオイも発生してしまいます。
日々可燃ゴミとして燃やされるゴミのうち、1/3ほどがリサイクル可能な有機物で構成されていることもあります。これらを有効活用することにより、ゴミの収集に必要なエネルギー量、そして資源を節約することができます。例えばゴミ収集車の台数を減らしたり、作業員の労働時間を短縮することができるかもしれません。ゴミの収集や燃焼に必要な燃料、ひいては二酸化炭素排出量の削減にもつながります。ゴミ袋の枚数も節約できるので、プラスチックの使用削減にもなりますね。
生ゴミが入っていないとなればカラスもゴミに興味がなくなり、ゴミ集積所を荒らすこともなくなるかもしれません。そうすれば道にゴミやゴミ袋の切れ端が散乱していることもなくなります。
こうしてみると、いろいろメリットがありますね。
自家製堆肥を作るためのコンポスト容器やワームベース

堆肥を作るときに便利な資材が、コンポスト容器やワームベース。最近、私の関心は素焼きのワームベースにあります。
ワームとはミミズのこと。ワームベースはミミズたちが暮らすための器です。有機物を分解し、堆肥に変えるミミズは、土づくりの頼れる相棒です。そのミミズたちに暮らしてもらうワームベースは、穴がいくつかあいた素焼きの壺のような形。全体に小さな穴が、そして底部分に大きな穴があり、ミミズをはじめとする分解者たちが自由に出入りできる仕組みです。先端には蓋をするための栓がついていて、ものによっては栓を簡単にあけられるつまみがついたものもあります。
ワームベースは、直接花壇や大きなプランターに設置して使います。土に穴を掘ってワームベースを埋め、落ち葉を少々入れて、ミミズがいる土をかぶせれば、準備は完了。このワームベースの中でミミズたちは食事をとり、分解したあとに出来上がる堆肥は、周囲の1m四方ぐらいまで広がります。
サイズはさまざまで、小さなものからあるので、どんな大きさの庭でもミミズコンポストがスタートできますよ。
ワームベースを設置してあると、植物の根はそれに向かって伸びていく傾向にあります。寒い冬の間も周囲を落ち葉でマルチングすれば、ワームベースの中でミミズたちは活動することができます。特にローム質で硬い土壌は、こうした自然な方法で少しずつ育てていくことができます。
ミミズコンポストから得られる「黒い金」

「黒い金」とは、私がコンポストワームと呼んでいるシマミミズの糞のこと。シマミミズは体節の中央の色が濃く、ほかのミミズよりも縞模様がくっきりと見えることが特徴です。ミミズは種類によっては非常に深く掘ることもありますが、シマミミズは地表から5~15cmほどの深さの場所に好んで生息し、ガーデニングの相棒にはぴったりです。他のミミズとともに、大小さまざまな塊になって生息していることが多いです。
彼らの得意分野は有機質の破砕ですが、種子は食べません。
以前、しばらくコンポスト容器の中をのぞいていなかったときがあるのですが、土を取り出すために開いてみると、土が見えないほどたくさんのミミズがいたことがありました。多すぎるほどでしたが、健全な土づくりが行われる環境のサインでもあります。
小さなスペースでのコンポストの作り方

パティオ、デッキ、バルコニー、あるいは庭で、コンポスト容器やワームベースを設置して堆肥作りに挑戦するのは、面白く有益なチャレンジです。バルコニーで行う場合は、土を入れた大きなプランターにワームベースを設置するとよいでしょう。
有機物の基本的な循環は次のとおり。落ち葉、枯れ草、植物などが地面に落ち、小さな生物たちがそれを細かくして、他の植物が利用できるように分解します。最も有名な分解者はミミズですが、数え切れないほどの小さなワラジムシ、トビムシ、甲虫、クモ、幼虫、菌類、その他無数の微生物がいます。
この循環を再現する場合、まずは落ち葉や枯れ草、ワラ、卵の殻、コーヒーかすやお茶の出し殻などの有機物を集めます。それをコンポスト容器に入れれば、時間と生き物たちの力により、自家製堆肥が出来上がります。その際、3/4は乾いた素材、残りは水分を含んだ素材など、バランスに配慮するのがポイントです。
無料で得られる自家製堆肥でガーデンを豊かに
コンポスト容器に入れた有機物が細かく分解されるまでは3週間かそれ以上かかります。コンポストでの堆肥作り、と聞くと、ニオイがするのではないかと心配する人も多いと思いますが、実際のところこうした堆肥には、土のようなニオイしかありません。しかし、そのためには乾いた有機物と湿った有機物のバランス、そして酸性度(pH)を整えるための卵の殻が重要。これらのバランスが崩れたり、ミミズにエサを与えすぎたり、また設置場所や温度が合わない場合は、ニオイが発生してしまいます。
天候の変化も、ワームベースの中のミミズたちの生育に大きな影響を与えます。また、エサを与えすぎないこと、定期的に様子をチェックすることも非常に重要です。1~2日に1回は中を覗いてみるとよいでしょう。また、中は乾燥しすぎても湿りすぎていてもいけません。
ミミズのコンポストで作る堆肥は、窒素(N)・リン酸(P)・カリ(K)という肥料の3要素を含み、また土壌の改善に役立ちます。土の再利用にも使うことができるので、うまく活用すれば園芸店で毎回新しい土を買ってくる必要もなくなりますね。
ちなみに義母によると、ワームベースやコンポスト容器を使わず、単に地面に穴を掘ってこれらのものを入れるだけでもいいそうです。問題は、そうすると鳥たちが簡単にミミズを見つけて食べてしまうということ。また、植え付けの際に空いたスペースを見つけるのが難しくなります。
手作り活力剤「コンポストティー/ワームティー」

皆さんは、コンポストティーやワームティーというものをご存じでしょうか。
ミミズが作った堆肥を少し取り、古いストッキングに入れてジョウロやバケツに吊るし、微生物の養分としてのスプーン1杯の砂糖を入れ、よく混ぜて水に溶かせば、コンポストティーの素の出来上がり。よく混ぜることで酸素を水に供給する効果もあります。ストローで空気を吹き込んでもいいですね。
そのまま4時間から2日ほど放置し、水やりの際の水に混ぜて使用しましょう。植物を元気にする、自家製の“植物栄養ドリンク”の完成です。
このレシピは、自然派ガーデニングに熱心なグループの中で見つけたもの。皆さんにシェアしたいと思い、ご紹介しました。ちょっとした手間はかかりますが、今シーズン試してみたいと思います。
大切な植物たちがオーガニック栽培で健康に育つよう、いろいろな方法に挑戦してみたいものですね。このコンポストティーはまだ一般的ではありませんが、通販などで購入できるサイトもあります。

たとえ最初から完璧にうまくいかなくても、すべての物事は初めの一歩が必要です。そしてよい結果を得るためには経験が欠かせません。成功した時に得られるさまざまな恩恵は、何よりのギフトです。
今回登場したシマミミズは、ご家庭やガーデンにぴったりの小さなペットです。地上からは目に見えないのに、とても役に立つ、まるで庭の妖精のようですね。
Credit
話 / Elfriede Fuji-Zellner - ガーデナー -

エルフリーデ・フジ・ツェルナー/南ドイツ、バイエルン出身。幼い頃から豊かな自然や動物に囲まれて育つ。プロのガーデナーを志してドイツで“Technician in Horticulture(園芸技術者)”の学位を取得。ベルギー、スイス、アメリカ、日本など、各国で経験を積む。日本原産の植物や日本庭園の魅力に惹かれて20年以上前に日本に移り住み、現在は神奈川県にて暮らしている。ガーデニングや植物、自然を通じたコミュニケーションが大好きで、子供向けにガーデニングワークショップやスクールガーデンサークルなどで活動中。
Photo/ Friedrich Strauss Gartenbildagentur/Stockfood
まとめ / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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