花や野菜を元気に育てるために大切なのが、土づくりです。植物の種類によって最適な土壌環境は異なるので、栽培する植物に合っていない土壌の場合は土壌改良が必要になります。この記事では、土壌改良の種類や方法について詳しくご紹介します。
目次
植物を元気に育てるために欠かせない土壌改良! 土質やpHを調整
植物を元気に育てるためには「土壌改良(どじょうかいりょう)」が欠かせません。植物に適した土というのは、「水はけのよい土」や「保水性のある土」、「微生物が多い土」、「pH(ペーハーまたはピーエイチ)がちょうどよい土」などですが、育てたい植物の種類によって、どのような土が適しているかは異なります。
また、植物を育て始めてから時間が経過すると、土の状態も変化していきます。育てたい植物の特性を考慮した上で、土の状態を調整することが必要です。
表面と深部の土を入れ替える「天地返し」も土壌改良の方法の一つ
植物が根を伸ばしている範囲でそのまま栽培を続けていると、土壌の養分のバランスが偏ったり、悪くなってしまいます。これを解決するには、シャベルなどを使って深く掘り込み、上層と下層の土を入れ替える「天地がえし」を行います。
これは下層へ有機物をすきこむとともに、下層に溜まった栄養素を上層にあげて偏りを緩和することができます。土中に潜んでいる害虫を発見するのにも役立ちます。
また、掘り起こすことができない樹木などであれば、株元から少し離れた場所を掘り返すことでも適度に根が切れて樹勢が抑えられ、徒長枝が出にくくなるというメリットもあります。
土質を変えたいときやpHの調整には土壌改良剤を使う! 種類と特徴
土に施すことで土壌の性質を改善することができるのが、土壌改良剤です。ここでは代表的な土壌改良剤についてご紹介します。
通気性や水はけをよくして土をフカフカにする「腐葉土」
腐葉土は広葉樹の落ち葉や枝を積み重ねて発酵させたものです。腐葉土を使うと微生物が繁殖しやすくなり、有機物の分解や土の団粒化を促進してくれるので、通気性や排水性、肥料もちがよくなり、ふかふかの土になります。腐葉土を使う際は、しっかりと熟成させたものを使いましょう。また、腐葉土は自分で作ることもできます。
土の中に腐葉土などの有機物が豊富にあると、特定の微生物だけが増えず、多様な微生物が棲みつくようになります。これによって、土の中の特定の微生物が原因となる病気を防ぐ効果も期待できます。
もみ殻が原料の「もみ殻くん炭」も代表的な土壌改良剤
もみ殻をいぶして炭化させた「もみ殻くん炭」は、土壌をアルカリ性にする効果があります。
保水性や排水性、通気性もよくなり、消臭効果や雑菌・害虫を抑える効果も期待できます。
また、もみ殻くん炭には微細な穴が無数にあり、ここに数多くの微生物が棲みつくことで、土壌環境の改善につながります。
土を柔らかくしてくれる効果が高い「バーク堆肥」
バーク堆肥は、針葉樹や広葉樹の樹皮を発酵させたものです。保水性や肥料もちがよくなる効果があります。分解されにくいため、さまざまな微生物が集まり、また効果が長もちする特徴があります。
動物由来の「牛ふん堆肥」や「鶏ふん堆肥」は肥料分を含む
牛や豚、鶏などのふんを発酵させて作る動物由来の堆肥は、土をフカフカにする効果があります。窒素やリン酸、カリウムなどの栄養分も多く含みます。
牛ふん堆肥は、草や藁を食べる牛のふんを使っているため、繊維質が多いのが特徴です。それに対し、鶏ふん堆肥は肥料分が多いのが特徴です。そのほかにも、豚ぷん堆肥や馬ふん堆肥などもあります。
これらの堆肥は、しっかりと熟成させたものを使いましょう。
通気性や保水性に優れた「バーミキュライト」は種まきや挿し木にも!
バーミキュライトは、黒雲母が風化した「ひる石」を高温で焼いて膨張させたものです。多孔質の多層構造をしているので、通気性に優れており、保水性が向上するほか、肥料もちもよくなります。無菌でpHが中性なので、種まきや挿し木、水耕栽培などにも使われます。
多孔質で軽い「パーライト」も通気性や保水性に優れた土壌改良剤
パーライトは真珠岩や黒曜石など、ガラス質の火山岩を高温で加熱して粒状にしたものです。多孔質なので、保水性や通気性、排水性などに優れています。
真珠岩が原料のパーライトは特に保水性がよく、乾きやすい土や水はけがよすぎる土の改良に向いています。
黒曜石が原料のものは通気性や排水性がよいため、真珠岩とは異なり、水はけが悪い土の改良に向いています。
改良したい土壌の目的に合ったパーライトを選ぶことがポイントです。
保水性を向上させながら酸性度も調整できる「ピートモス」
ピートモスは、湿原に苔が堆積して泥炭化したものを乾燥させ砕いたものです。強酸性で、ツツジやブルーベリーなど酸性土壌を好む植物の栽培に向きます。保水性や肥料もちもよく、フカフカで柔らかい土になります。
ピートモスを生産するためには、カナダなど冷涼な地域の泥炭(でいたん)を掘り上げる必要がありますが、泥炭を取った後の表土は植物が極めて育ちにくいため、そこだけ荒れ地になってしまい、豊かな湿原が失われる原因となっています。ピートモスは水もちがよく大量生産の苗づくりには便利なのですが、近年では環境保全の観点からピートモスの利用を控えようという動きが出始め、イギリスをはじめとしたヨーロッパ諸国などでは、ピートモスを含まない「ピートモス・フリー(ピートフリー)」の園芸用土の流通が進みつつあります。
酸性に傾きやすい日本の土壌をアルカリ性にしてくれる「苦土石灰」
苦土石灰(くどせっかい)はドロマイトという鉱物を加熱して、粉状や粒状にしたものです。苦土とはマグネシウムのことです。カルシウムを多く含み弱アルカリ性のため、酸性土壌をアルカリ性に傾けたいときに使います。
苦土石灰に似た土壌改良剤として、消石灰や有機石灰があり、どちらも酸性土壌を中和してくれます。ただし、消石灰はマグネシウムを含んでいません。有機石灰は貝殻や卵の殻などが原料の石灰です。消石灰は効き目が強いため酸度調整をしやすいメリットがありますが、土に混ぜ込んですぐは植物の根を傷めやすいため、植え付けの1〜2週間ほど前に土に混ぜ込み、土となじませておく必要があります。
苦土石灰や有機石灰は効き目がマイルドなため、植え付け後の土にそのまま混ぜ込んでも害が出にくい性質があります。
東日本に多い「火山灰土壌=赤土」、「鹿沼土」はリン酸を多く吸着する性質があり、せっかくリン酸肥料を土に混ぜ込んでも植物の根が利用できないというタイプの土です。また、酸度としてはやや酸性なのですが、石灰をまくことで土が中性〜弱アルカリ性になると赤土に吸着されていたリン酸が、植物の根が利用できる状態になることが知られています。そのため、石灰を使うことで植物の生育を促すことができます。ただし、まきすぎると逆に害になりますし、石灰にだけ頼っていると土壌への有機質補給がおろそかになり、土が硬くなってしまいます。石灰を施す際には、腐葉土や牛ふん堆肥などの有機質とセットで使うのがおすすめです。
土壌の団粒形成を促進する「合成高分子系資材」も土壌改良に使われる
高分子化合物系の土壌改良剤の代表的なものには、ポリエチレンイミン系の資材や、ポリビニルアルコール系資材があります。
どちらも土壌の団粒化を促し、保水性や透水性がアップします。
ポリエチレンイミン系資材は陽イオン系の資材です。ポリビニルアルコール系資材はポバールまたはPVAとも呼ばれています。
土壌改良に適した時期と方法は?
土壌改良を行う時期に決まりはありませんが、春や秋に咲く花の入れ替わる時期が適しており、花が少なく、多くの植物が休眠状態にある冬場が特にチャンスです。
冬に天地返しを行って深部の土を冷気にさらすことで、病害虫や病原菌を減らすことができ、土を軟らかくする効果もあります。
天地返しを行う際は、不要なゴミや根、雑草を取り除きましょう。その際に育てる植物に合った土になるように、これまでご紹介してきた土壌改良剤も適宜混ぜ込みます。
連作障害対策としても土壌改良は大切
連作障害(れんさくしょうがい)は、通気性や排水性の低下、肥料や微生物の偏りによって起こると考えられています。同じ植物を続けて植えないなどの対策もありますが、土壌改良によって連作障害を起こりにくくすることもできます。
夏には太陽熱を利用した土の殺菌、冬なら天地返しを行って、必要に応じて土壌改良剤を混ぜ込みましょう。また、連作障害対策には異なる種類(科)の植物を混ぜて植える「混植(こんしょく)」も有効です。
花や野菜を元気に育てるためにも土壌改良をしっかり行おう!
天地返しによる土壌改良や、さまざまな種類の土壌改良剤を目的に合わせて使い分けることで、植物が健やかに育つ土にすることができます。
花や野菜を元気に育てるために、タイミングを計ってしっかりと土壌改良を行いましょう。
Credit
文 / 3and garden
スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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