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丈夫なシランは蘭初心者におすすめ! シランの種類から育て方まで

丈夫なシランは蘭初心者におすすめ! シランの種類から育て方まで

Itsunfotos/Shutterstock.com

シランという植物をご存じですか? シランは古くから日本で親しまれているランの一種です。植栽に使われていたり里山に生えていたりするので、名前は知らなくとも目にしたことがある人も多いことでしょう。ランというと初心者には難しいというイメージがありますが、シランのように丈夫な種類を選べば、初心者でも身近に楽しむことができます。この記事では、シランの種類から手入れの方法、増やし方までをご紹介します。

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シランの基本情報

紫蘭
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シランはラン科シラン属の多年草で、漢字では紫蘭と書きます。学名はBletilla striata。地中に根を張って育つタイプで、地生蘭に分類されます。冬の間は葉を落としますが、春になると地中のバルブ(偽球茎。球根のような部位)から新芽を出し、開花に向けて生育を始めます。

4~6月に花を咲かせ、赤紫、紫、ピンク、白の花色があります。春から秋にかけぐんぐん生育して草丈は50cm程度になり、冬に向け地中のバルブが太ります。そして冬の訪れとともに落葉します。原産地は日本、中国で、日本では関東以西に自生しています。暑さ寒さに強く、古くから園芸植物として親しまれており、鉢植えや庭植えで楽しまれています。街中の植栽などでも利用されることが多い植物の一つです。

シランの花言葉は?

紫蘭
Scisetti Alfio/Shutterstock.com

シランの花言葉は、「変わらぬ愛」「あなたを忘れない」「互いに忘れないように」「美しい姿」など。暑さ寒さにも耐える性質は強い心を表し、バルブや種子で増えて子孫を残し群生する様子は永遠性を感じます。何輪も花を咲かせますが、うつむき気味に咲く姿はどこか控え目で、美しい横顔も印象的です。シランは切り花として流通していないので、贈り物にするなら鉢植えがよいでしょう。

シランの主な種類や花の色をご紹介

紫蘭
Martin Fowler/Shutterstock.com

シランは花弁が6枚、花径8cmくらいのサイズで、1本の花茎に5輪程度の花を咲かせます。花は大きく開かず、ややすぼみ気味にうつむいて咲くので、全体的には縦長に見えます。香りは甘い微香があります。基本種は赤紫色の花を咲かせることに由来して「紫蘭」と名付けられていますが、そのほかにもいろいろな種類があります。

紫蘭(シラン)
シランは種全体の名称ですが、園芸店などで特に色や形について書かれていない場合は普通種の赤紫の花のシランを指す場合が多いです。

口紅紫蘭(クチベニシラン)
全体は白く、中央の唇弁(リップとも呼ばれる)が紅を差したように桃色や赤紫になります。

青花紫蘭(アオバナシラン)
青みがかった紫色の花を咲かせます。多くの場合、唇弁の先に濃く色が乗ります。花全体は青紫色の濃淡があり、薄紫から紫紺まで幅があります。

白花紫蘭(シロバナシラン)
白い花を咲かせます。まれに蕊柱(ずいちゅう)が薄ピンクになったり、唇弁の先が薄ピンクになったりすることがあります。

黄花紫蘭(キバナシラン)
中国の南西部に自生するシラン。薄黄色の花を咲かせます。唇弁は濃いめの黄色です。

覆輪紫蘭(フクリンシラン)
葉の縁を囲むように斑の入った種類のシランです。花色は各種あります。

三蝶咲き(サンチョウサキ)
花弁が唇弁化した花を三蝶咲きといい、ランの花では時々見られる変異花の一つです。シランも三蝶咲きのものがあり、色は各種あります。

シランの育て方のポイントを解説

紫蘭
sgfj/Shutterstock.com

シランは暑さ寒さに強く丈夫なランです。育て方のポイントを押さえれば、より大きく育ち、花つきもよくなります。ここではシランの栽培に合った土の配合、水やりの仕方、適した環境、病害虫の対処法など、育て方全般について解説します。

シランにおすすめの土

土
mokjc/Shutterstock.com

シランの根は空気が好きなので、土選びのポイントは水はけがよいこと。自分で配合する場合、鉢植えは鹿沼土、赤玉土、軽石(それぞれ小粒のもの)を混合するとよいでしょう。赤玉土と腐葉土を6:4で混合するのもおすすめです。ブレンドされた市販の土を購入する場合は、山野草の土がよいでしょう。根がよく張るので、一回り大きめの鉢を用意します。地植えの場合は水はけのよい場所に。背丈が50cm程度になり、成長スピードが速いので、スペースのある場所がおすすめです。

水やりの頻度

水やり
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シランは水が好きなランの一つです。鉢植えの場合、新芽を伸ばし成長する春から秋にかけては表面が乾いたらたっぷり水を与えましょう。地中には水や栄養を蓄えて球根のような役割を果たすバルブ(偽球茎)があるため、ある程度は乾燥に耐えられますが、花の時期に長く乾燥した状態になると、花が咲かずに干からびてしまうことがあります。また水が少ないと新芽の成長が阻害され小さくなってしまいます。根が詰まり気味だったり、大株の場合などは、水をたくさん必要とするので、毎日たっぷり水やりをします。落葉し休眠する冬は、水やりの回数を減らしてやや乾き気味にしますが、断水はしないで週1回くらい水を与えます。地植えの場合は雨任せで構いませんが、軒下の雨がかからない場所や、すぐ乾燥してしまう場所に植えている場合は水やりを忘れないようにしましょう。

シランは日当たりのよい場所が好き

紫蘭
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シランに適した場所はどのようなところでしょうか。野生のシランは里山の開けた土手や崖に自生しています。つまり、日当たりがよく、風通しのよい場所を好みます。夏、温度が非常に高く風通しが悪いと、葉焼けを起こしたり、葉先から枯れたり、根腐れすることがあります。その場合は夏の間は涼しく過ごせるよう日陰に移動したり、少し遮光してあげましょう。冬の寒さにも強いので戸外で越冬できますが、鉢植えの場合、凍るような場所は避け、雨水の当たらないところに置きましょう。地植えの場合は、凍結するような場所でなければ植えたままでかまいません。植える時に夏と冬の日当たりや凍結具合を確認しておくとよいでしょう。

シランに付きやすい害虫やかかりやすい病気

紫蘭
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シランは日当たりと風通しのよい場所が好きなので、戸外で育てます。そうすると季節によっては害虫が付いたり、病気が発生したりすることがあります。最もよく見かける害虫は、アブラムシやハダニ、ナメクジです。アブラムシは新芽や花のつぼみに付きやすく、汁を吸って株を弱らせます。つぼみが吸汁されるとカスリ状に花弁の色が抜けたり、きれいに咲かない場合があります。

ハダニは葉の裏に付いて吸汁します。カスリ状に傷がついたようにムラになっている葉を裏返すと、ザラザラとした粉のような粒が付いていることがありますが、よく見ると、それはハダニの大群。ハダニは高温の乾燥した気候で発生しやすいので、こまめに葉裏にも水をかけるようにすると予防効果があります。アブラムシやハダニはしばしばウイルスを媒介するので、見つけたら早めに駆除しましょう。

ナメクジは葉や花に付きやすく、特に新芽やつぼみが小さい時は、気が付かないうちにナメクジに食害されることがあります。新芽を食べられると、その後の成長が著しく阻害されます。また、つぼみを食べられると花が咲きません。日頃から周囲にナメクジの這った跡がないか注意深く観察することが重要です。

シランは葉にウイルス症状が出ることがあります。葉が黒くすすけたようになったり、色むらが出たりする場合は、ほかの株への感染を防ぐために、見つけたら抜いて処分します。

植え付け・植え替えのポイント

ガーデニング
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シランの植え付けや植え替えは4〜5月、または9月下旬〜10月の暖かい時期がおすすめです。新芽がある程度の大きさに育った時点で行います。梅雨時期には根がよく伸びて成長するので、梅雨に入る少し前に植え替えるのがおすすめです。真夏の暑い時期や落葉している冬の時期は生育が鈍化するので避けましょう。鉢植えの場合、植え替えたら鉢底から流れ出るくらいたっぷり水やりし、根が落ち着くまで1週間程度は日陰に置いて様子を見ましょう。

シランは成長が早いランです。鉢が小さすぎるとすぐにいっぱいになってしまうので、一回り大きい鉢に植えるように心がけましょう。大きな鉢がない、大きくしたくない場合は、植え替えの際に株分けを行いましょう。根の成長が旺盛なので、植え替えずに置いておくと鉢が中から割れてしまうこともあるほどです。根が詰まると十分に水が吸えず、成長が鈍化して花が咲きにくくなります。少なくとも2年に1度は植え替えるのがおすすめです。地植えの場合も3年に1度は株分けし、美しい状態を保つようにしましょう。

シランに肥料を与えるときのポイント

肥料
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シランは本来、丈夫で生育旺盛な植物ですので、肥料が無くとも十分な水と日光、適度な風があればすくすく育ちますが、肥料を与えることによって、より成長が促進されたり花つきがよくなります。植え付けや植え替え時には元肥として緩効性化成肥料を与えましょう。追肥は緩効性化成肥料や液体肥料を、成長する春(4〜6月)や秋(9〜10月)に与えます。鉢植えの場合、株が鉢にいっぱいになったものはやせてくるので、肥料を与える回数を多くします。成長が鈍化する真夏や休眠する冬は、肥料を与えると根を傷める原因になるので控えましょう。

シランの増やし方

紫蘭の種
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シランを増やす方法は、一般的に株分けと種まきがあります。

株分けは植え替えの際に行います。株を分ける時、1株にバルブ(偽球茎)が3つ以上つくように分けると、体力を落とすことなく、翌年も花を咲かせやすくなります。株分けをしたら植え付け、たっぷりと水を与えます。鉢植えの場合はその後、根が動き出すまで涼しい日陰で管理し、少しずつ日光に慣らしていきましょう。

ラン科の植物は種子から育てるのが難しいものがほとんどですが、シランは比較的、成功率の高いランです。戸外で育てている場合は虫などの力によって自然に受粉することがありますが、好みの花同士を人工的に受粉させて種子を取ることもできます。受粉が成功すると、花の根元の子房が膨らんできて果実となり、熟すと自然に割れます。種子は粉のような見た目でとても細かく、風に乗って飛んでいきます。種まきをする場合は、熟して割れる直前に採取しましょう。ラン科の植物の多くは共生菌の力を借りて発芽、成長するので、親株の根元に播くと発芽しやすくなるでしょう。種子から育てた場合、開花までには2~3年かかります。

シランの冬越し方法

冬越し
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シランはもともと日本の関東地方以西の平地に自生しているランなので、これらの地域であればなんなく冬越しできます。冬には落葉しコンパクトになるので管理しやすいのも扱いやすい点です。鉢植えの場合、特殊な環境を用意する必要はありませんが、土が凍るような場所を避け、日だまりのような場所に春まで置いておきます。地植えのシランの場合は雪が降っても問題ありませんが、霜が降りると凍結の恐れがあるので、腐葉土で覆うなど霜よけをするとよいでしょう。鉢植えの場合、週に1度程度は水を与えます。水やりは暖かい昼間に行いましょう。地植えの場合は雨任せで構いません。

初心者でも大丈夫! シランを育ててみよう

紫蘭
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この記事ではシランの魅力や基本的な育て方をご紹介しました。シランは暑さ寒さに強く、特別な環境を用意しなくても戸外で育てられる初心者向きの丈夫なランです。鉢植えの場合、山野草に向く通気性のよい土に植え、日当たりのよい場所に置いておけば、すくすく育ちます。病害虫や植え替え、施肥や株分けも、ポイントを押さえれば難しくありません。

4~6月にかけて毎年花を咲かせ、楽しませてくれるシラン。花は色も形もバラエティ豊かで、鉢植えでも地植えでも育てられます。庭づくりやインテリアの一部として、お気に入りの種類を育ててみてはいかがでしょう。

Credit

文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。

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