早春の冷たい風に白いふわふわした花穂をキラキラ光らせて咲かせるネコヤナギ。やわらかな花穂には頬ずりしたくなるような、また指先でその感触を確かめたいような魅力があります。雛祭りの花材として、またおしゃれな花束やリースとの材料としても人気。庭木としてはあまりその存在価値が知られていませんが、じつはそれほど樹高が高くなく庭にも有用です。育てやすく、あまり手をかけなくても花をたくさんつけるネコヤナギを、あなたの庭の仲間に加えてみませんか?

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ネコヤナギは低木なので庭木にもおすすめ!

ネコヤナギ
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ネコヤナギは、ヤナギ科ヤナギ属の落葉性低木。中国、朝鮮半島のほか日本でも、山間部の渓流から平地の水辺にまで自生し、春の訪れを知らせてくれます。

ヤナギといえば、街路樹として植栽されている大木で、枝が枝垂れて揺れている「シダレヤナギ」を思い浮かべる方も多いでしょう。「ネコヤナギ」は枝が枝垂れず、天を向き、樹高は1〜3mほどとそれほど高くならないので、庭木にも向いています。

ネコヤナギ
Syda Productions/Shutterstock.com

ネコヤナギは、ほかのヤナギに先駆けて、春を告げる猫のしっぽのようなふわふわした可愛い花穂をつけます。フラワーアレンジメントなどでもよく利用されますし、イースターの飾り付けなどでも活躍します。

このふわふわの花穂の構造はどうなっているのでしょう。早春、葉を出す前に、まず枝先に白銀の綿毛に覆われた花穂を作ります。このふわふわの白い綿毛は、とても滑らかな手触りです。

ネコヤナギ
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その中からやがて花びらのない無数の糸のような雄しべ、雌しべを出します。ネコヤナギは雄木と雌木に分かれていますので、雄木には雄しべ、雌木には雌しべの花が咲きます。見た目はどちらもあまり変わりません。花期は3〜4月。不思議な構造ですね!

ネコヤナギ
IJPhoto/Shutterstock.com

葉は細長い楕円形で互生し、枝がよく分岐するので、夏季は涼しげな樹形を楽しめます。

ネコヤナギは耐寒性、耐暑性に優れているので育てやすい植物ですが、自生地が水辺なので乾燥を嫌います。その点に気をつけて育てれば、たくさんの美しい花穂を咲かせることができます。

白だけじゃない! ネコヤナギの種類

ネコヤナギは銀白色の花穂が特徴的ですが、ほかの花色もあります。主な品種をご紹介しましょう。

ギンネコ

ネコヤナギ
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一番馴染みがある、白いネコヤナギ。

ピンクネコヤナギ

ピンクネコヤナギ
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愛らしいピンク色の花穂を咲かせる品種。開花が進むと黄色い花粉を持つしべが現れます。

クロネコヤナギ

花穂が黒い品種。花穂はギンネコのようにふわふわした感じではなく、小さめです。白いネコヤナギの中に混じると存在感があります。

シマントネコヤナギ

四万十川の川辺に自生する品種。花色はクリーム色で、盆栽用としてよく使われています。

ネコヤナギの育て方

植え付け場所

水辺に自生するネコヤナギは、日光と水を好みます。乾きすぎず、かつある程度日が当たる場所に植え付けます。

地植えの場合、根鉢の2倍ほどの穴を掘り、腐葉土をたっぷり混ぜた土に植えます。植え付け後は水をしっかり与え、棒などでつついて根と土を馴染ませておきます。

鉢植えの場合、赤玉土7、腐葉土3の一般的な配合土を使います。

植え付け時期

植え付け・植え替え共に、落葉期の11〜3月に行います。

肥料

ネコヤナギは多くの肥料を必要としない植物です。

地植えの場合、生育が悪いようなら2月頃に固形の油粕と骨粉を混ぜたものを株元に埋め込みます。順調に育っているようなら、肥料を与える必要はありません。

鉢植えの場合、冬の2月頃に寒肥として緩効性化成肥料を株元にばらまきます。

肥料を与えすぎると、枝が伸びすぎて樹形が乱れてしまうので注意しましょう。

剪定

剪定の適期は、花後すぐです。ネコヤナギの花芽は夏には形成されます。遅くとも5月中には終わらせるようにしましょう。

枝が込み合ってきたら、不要な枝を切り落としても樹勢には影響しません。しかし、毎年強い剪定を行っていると樹勢が衰えるので注意してください。3〜5年に1回くらいで十分です。

病害虫

ネコヤナギがかかりやすい病害虫は、アブラムシ、うどんこ病などです。

アブラムシは、春先に発生して新芽につき吸汁します。窒素分の多い肥料の与えすぎや密植状態だと発生しやすいです。木酢液やニームオイルを塗布して、アブラムシを引き寄せないようにすることが大事です。

うどんこ病は梅雨時に発生しやすく、葉が白い粉のようなカビに覆われてネコヤナギを弱らせます。葉が込み合っていると感染しやすいため、風通しをよくしておきましょう。被害を受けた葉は速やかに取り去り、焼却してください。

ネコヤナギの増やし方

ネコヤナギは、挿し木によって増やすことができます。

3月上旬に、前の年に伸びた枝を20〜30cm切り取り、挿し穂にします。先端に3枚くらい葉を残します。挿し穂を1、2時間水につけたのち、用土に挿します。挿し木用土として、赤玉土(小粒)を入れた鉢を準備しておいてください。水をたっぷり与え、土が乾かないように管理します。1カ月くらいで発根します。根が十分に生えたら鉢や地面に植え替えます。

ネコヤナギと一緒に育てたい庭木

一年を通して花や緑を楽しめる庭はガーデナーの理想です。そんな庭を目指して、ネコヤナギと共に育てたい庭木をご紹介します。

ツツジ

ツツジ
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ツツジはネコヤナギの花と入れ替わるように、初夏の頃、紫、赤、朱、ピンク、白など色とりどりの華やかな花を咲かせます。ふんわりした低木の樹形は、すらりと伸びるネコヤナギの足元をカバーするのにぴったり。日当たりを好み、乾燥を嫌うなどネコヤナギと同じ性質ですから、一緒に育てやすいです。

また、挿し木で簡単に増やせます。

ナンテン

ナンテン
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ナンテンは常緑低木で、一年中緑を楽しめます。そして、彩りの乏しくなった冬に、真っ赤な小さな実を房状にたくさんつけてくれます。その枝を切り取って、クリスマスやお正月の飾りとして利用できます。

半日陰でも十分育ちますので、家のあまり日の当たらないところに植えても大丈夫。半日陰を積極的に活用できます。

ナンテンは「難を転ずる」に通じるところから、厄除け、魔除けとして古くから庭に植えられてきたそうです。きっとあなたの庭にも幸運をもたらしてくれるでしょう。

まとめ

ネコヤナギ
Yulcha/Shutterstock.com

生け花の花材として利用した枝をそのまま土に挿しても発根するほど生命力が強く、育てやすいネコヤナギ。ガーデニング初心者だけれど、庭木にも関心がある方にぴったりの樹木です。手入れが簡単で、初心者でも十分剪定ができますよ。

庭に奥行きと変化を与えてくれ、白、ピンク、黒といろいろな種類の花穂があるネコヤナギ。ぜひあなたのお好きな色のネコヤナギを見つけて楽しんでください。

Credit

文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。

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