リコリス(ヒガンバナの仲間)の完全理解! 基本情報から育て方まで詳しく解説
リコリスはヒガンバナの仲間の総称で、秋に開花を楽しめる球根植物です。ヒガンバナといえば赤花をイメージすることが多いようですが、リコリスはピンクやオレンジ、黄、白などカラフルな種類が揃い、庭に華やぎをもたらしてくれます。西洋で人気か高いリコリスは、日本でも新たな魅力を見出して庭に取り入れることが多くなっているようです。この記事では、リコリスの特性や育て方など、詳しく解説していきます。
目次
リコリス(ヒガンバナの仲間)の基本情報
リコリスは、ヒガンバナ科ヒガンバナ属(リコリス属)の球根植物。原産地は日本や中国、ミャンマーなど東アジアの地域で、10〜20種が確認されています。秋の彼岸頃に咲くヒガンバナもリコリスの一種で、自然が残る郊外へ出かけると土手や田舎道などで自生して咲く姿には馴染みがありますね。山野などで見かけるキツネノカミソリやナツヅイスセンなどもリコリスの仲間。日本でも自生している種類があるということは、ビギナーでも比較的育てやすい草花だといえます。
リコリスは球根植物で、葉が生えてくるよりも先に花茎を伸ばし、頂部に花を咲かせます。数輪の花弁が外側に向かって放射状に並ぶ、エレガントな咲き姿が大変華やか。細長い花弁が外にクルンと反り返り、長く伸びるしべとの対比もあって、秋の庭の主役となる存在感があります。花色には赤、オレンジ、黄、白、ピンク、紫、青、複色があり、バラエティー豊か。花弁にキラキラとラメが入るような光沢感のある品種もあります。
リコリスの草丈は20〜50cmで、花壇の中段などに向いています。花茎を伸ばした先端に花を咲かせる時には、まだ葉が出てこないので株元がぽっかりと空いてしまいます。その空間を埋めるように、草丈の低い草花やカラーリーフプランツを組み合わせるとよいでしょう。
ヒガンバナはリコリスの一種
秋の季語としても知られるヒガンバナは、昔から日本で親しまれてきた植物です。リコリスの一種に分類されており、リコリス・ラジエータ(Lycolis radiate)の学名を持っています。ヒガンバナの特徴として挙げられるのは、種をつけないこと。基本的に種子を残さず、球根が分球して増えていきます。そのため、個体ごとの変異が現れず、遺伝的に同じクローンが連綿と続いていることになるのです。
ヒガンバナは、古い時代に中国から伝えられた植物で、花色は赤が最もポピュラーですが、白花もあります。9月中旬のお彼岸の頃に咲くので、「彼岸花」という名前が付けられました。ヒガンバナを群生させて絨毯のように咲かせる名所も多数あり、宮城県の羽黒山公園や埼玉県の巾着田などは、毎年多くの観光客が訪れて、賑わいをみせます。何百万本ものヒガンバナが咲く群生地は圧巻の美しさです。
さて、ヒガンバナは日本人にとって身近な植物で、畦道や川に面した土手、お寺や墓地などに自生し、季節の訪れを告げてくれる存在。ヒガンバナはリコリンと呼ばれるアルカロイドの一種を含み、毒性があることから、虫除けや獣除け、または雑草除けとして、人間の手で植えられたと考えられています。人間が食べても、すぐに死に至るほどの毒性でありませんが、嘔吐などの中毒症状が現れるようです。
生活に根ざした植物であることは、ヒガンバナが地方ごとに何百種類もの別名を持っていることからもうかがえます。赤花を指す梵語からきている「曼珠沙華(マンジュシャゲ)」はよく知られていますね。「きつねの花火」「ちょうちん花」は見た目の美しさから親しまれたのでしょうが、「じごく花」「しびと草」「いっときごろし」などの呼び方も。これは毒性を持ち、虫や獣除けとして墓地などにも植えられたことから来ているのかもしれません。このような名前から「縁起が悪い」として、日本では庭先に植栽するのを嫌ってきた経緯があるようです。しかし、そのような文化がない西欧では美しい花として人気があり、品種改良も進んでリコリスとしてカラフルな花色が揃うようになりました。近年では日本でも逆輸入の現象で、ヒガンバナの仲間と捉えずにリコリスがガーデニング向きの草花として見直されてきています。
リコリス(ヒガンバナの仲間)の花言葉
リコリスの名前は、ギリシャ神話の海の精「リコリアス」から名付けられたとされています。リコリスの花言葉は花色によって異なり、赤花は「情熱」「独立」「再会」「あきらめ」「転生」「悲しい思い出」などがあります。燃えるような赤い花にエネルギーを感じての「情熱」「独立」などがあるのでしょうが、ほかは「死」をイメージさせるような言葉が並んでいますね。また、白花には「想うのはあなた一人」、黄花には「追想」「深い思いやり」「悲しい思い出」「陽気」などがあります。
リコリス(ヒガンバナの仲間)の開花時期
リコリスは秋咲きの球根で、6月中旬〜8月中旬に球根を植え付けると、葉が出るよりも先に花茎が上がり、8〜10月に開花します。品種によっては早咲き、遅咲きのものがあるので、組み合わせて開花リレーをさせると、長期間にわたって楽しめます。
リコリスは一度植えつければ毎年開花してくれる、コストパフォーマンスの高い植物なので、開花が終わったからといって抜き取って処分しないでください。開花後に葉が出てきますが、光合成をして球根を太らせるのでそのままにしておきましょう。4月中旬〜9月中旬は地上部が枯れますが、球根は休眠せずに活動しているので、掘り上げて乾燥させる必要はありません。
リコリス(ヒガンバナの仲間)の種類
リコリスの種類は、日本に昔から馴染みがある赤花の彼岸花、淡いピンク色のナツズイセン、鮮やかなオレンジ色のキツネノカミソリなどがあります。他に早咲きのリコリス・スクアミゲラ、遅咲きのオーレアなども出回っています。
園芸品種では、大輪で美しい朱色の‘さつま美人’、白花で涼しげな‘真夏のクリスマス’、白地にピンクがのる複色咲きの‘アルビピンク’、濃いピンクの花弁の先端に青紫が入る‘ジャクソニアナ’などが人気です。
リコリス(ヒガンバナの仲間)の育て方
品種によって花色が豊富で、咲き姿も美しいリコリス。放任してもよく育ってくれるので、ビギナーにおすすめの草花です。ここでは、リコリスの適した栽培環境や球根の植え付け方から、日頃の管理の仕方、増やし方など、細かく解説していきます。ここから先を読んだあとには、きっとリコリスのことを深く理解できているはずですよ!
適した栽培環境
日当たり・風通しのよい場所を好みます。明るめの半日陰の場所でも栽培可能ですが、日なたに比べて花数は少なくなるようです。
土壌はじめじめとした湿り気の多い環境を苦手とするので、水はけの悪い場所では盛り土をするとよいでしょう。植える場所には堆肥や腐葉土などの有機質資材を混ぜ込み、ふかふかとした土をつくるとよく育ちます。
基本的に暑さにも寒さにも強い性質で、植えっぱなしにして越年します。ただし種類によっては寒さに弱いものもあるので、入手した品種のラベルに書かれてある性質を確認しておくとよいでしょう。寒冷地では腐葉土や落ち葉などをかぶせる「マルチング」をしておくのもおすすめです。
植え付け
リコリスの球根の植え付け適期は、6月中旬〜8月中旬です。花苗店などに出回る開花株を買い求めた場合は、植えたい場所へ早めに定植します。
リコリスは、1株のみ咲かせるというよりは、同じ品種で球根を5〜10球まとめ植えし、一斉に咲かせると華やかに演出できます。
【庭植え】
腐葉土や堆肥などの有機質資材をすき込んで土づくりをしておいた場所に、5〜10cmほどの穴を掘り、球根を植え付けます。たくさん植える場合は間隔を20cmほど開けましょう。最後にたっぷりと水やりをしておきます。
【鉢栽培】
6〜7号鉢を用意し、4〜5球を目安に植え付けるとよいでしょう。土は、草花の栽培用にブレンドされた市販の培養土を利用すると便利です。
用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから培養土を入れます。水やりの際にすぐ水があふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。球根は、地表すれすれくらいの浅植えにし、間隔は5〜10cm開けます。最後に、鉢底からたっぷりと水が流れ出すまで、十分に水を与えましょう。寄せ植えの素材として、大鉢にほかの植物と一緒に植え付けてもOKです。
開花株を入手した場合は、ポットよりも1〜2回り大きな鉢を用意します。軽石を1〜2段分入れてから培養土を入れ、入手した株をポットから出して根鉢を崩さずに植え付けましょう。
水やり
【庭植え】
地植えの場合は下から水が上がってくるので、ほとんど不要です。ただし、真夏に晴天が続いて乾燥が続く場合は水やりをして補いましょう。真夏は昼間に水やりすると水の温度が上がってすぐお湯になってしまうので、朝か夕の涼しい時間帯に与えることが大切です。
【鉢栽培】
鉢栽培では土が乾きやすいので、日頃から水やりを忘れずに管理します。とはいっても、毎日水を与えればいいというものでもありません。なぜなら、気温や湿度など天候の状況によって、土が毎日乾くとは限らないからです。動物が毎日の食事が必要なのとは異なり、毎日水を与えて土がジメジメとした過湿の状況にすると、根腐れして枯れてしまうこともあるので注意。土の状態を見てから水やりするのがポイントで、基本は、土の表面が白っぽく乾いてから、鉢底から水が流れ出すまでたっぷりと与えます。また、茎葉がややだらんと下がって勢いがなくなっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。
一方で、真夏は高温によって乾燥しやすくなるため、朝夕の水やりを欠かさないようにします。真夏は気温が上がっている昼間に水やりすると、水がすぐにぬるま湯になって株が弱ってしまうので、朝夕の涼しい時間帯に行うことが大切です。地上部が枯れても球根は休眠していないので、水やりをやめずに控えめに与えます。
追肥
庭植え、鉢栽培ともに、開花期は球根に蓄えられた養分を使って成長するので、追肥は特に不要です。
開花後、茎葉が茂っている間に、球根を太らせる目的で化成肥料を少量施します。根の発育を促すリン酸やカリ分が多めに配合された肥料を選ぶとよいでしょう。
花がら摘み
花が終わったら、花茎の先端にある花房の下で切り取ります。花茎は光合成をして球根を充実させるのに一役買ってくれるので、残しておきましょう。
終わった花をいつまでも残しておくと、腐って病気を招く結果になるので、早めに切り取って株周りを清潔に保ちましょう。また、タネをつくろうとして養分がそちらに集中し、株がエネルギーを消耗して球根が太らないという結果になってしまいます(リコリスの中にはヒガンバナのようにタネをつけない種類もあります)。
植え替え
庭植え、鉢栽培ともに一度植え付けたら、数年は植えっぱなしで構いません。その方が、球根が年々充実していきます。ただし、球根が増えて大株になり、込み合いすぎている場合は、休眠期に掘り上げて植え直すとよいでしょう。
増やし方
球根は、植え付けてから数年経つと大きく太って充実します。込み合ってきているようなら、地上部の葉が枯れた後に、掘り上げてみましょう。大きくなった球根は自然にいくつかに分球できるので、それぞれ球根をはずして植え直すと増やすことができます。
リコリス(ヒガンバナの仲間)を育てるうえで注意すべき病気・害虫
病害虫の心配はほとんどありません。
ただし、水はけが悪くジメジメとした環境では、軟腐病にかかることがあるようです。もし病気が発生したら、周囲に蔓延しないように抜き取って処分するとよいでしょう。
育てやすいリコリス(ヒガンバナの仲間)を
ぜひ家の庭で栽培してみよう
この記事では、リコリスの基本情報や種類、豆知識に始まり、育て方の詳しいノウハウまで、幅広くご紹介してきました。リコリスは愛らしい花姿に、多様な花色が揃うため、西欧では人気の高い草花の一つです。そのためもあってか新品種も年々登場して、ガーデナーのコレクション欲をそそってくる草花でもあります。珍しい品種のリコリスを植栽して、庭に個性を演出するのも一案です。ぜひ愛らしいリコリスを育ててみてください。
Credit
文 / 3and garden
スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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