どんぐりから発芽させる! 初心者でもできる「コナラ」の育て方とシンボルツリーとしての魅力
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秋になるとどんぐりを実らせるコナラは、日本の里山を象徴する木の1つ。丈夫で手がかからず、雑木の庭づくりやシンボルツリー、盆栽としても人気があります。この記事では、コナラの特徴から育て方、どんぐりからの発芽方法、そしてよく似たクヌギやミズナラとの違いまで、写真付きでやさしく解説します。自宅の庭でどんぐりのなる木を育ててみませんか?
目次
コナラの基本情報

植物名:コナラ
学名:Quercus serrata
英名:Konara Oak
和名:コナラ(小楢)
その他の名前:イシナラ、ナラ、ハハソなど
科名:ブナ科
属名:コナラ属
原産地:本州・四国・九州、朝鮮半島
形態:落葉性高木
コナラは、ブナ科コナラ属に分類される落葉広葉樹で、北海道から九州まで日本全国のさまざまな場所に広く自生しています。雑木林や里山といった自然の中だけでなく、公園や庭に植えられることもある身近な樹木です。まっすぐに伸びる幹とやさしい緑の葉が印象的で、秋になると可愛らしいどんぐりを実らせることで知られ、子どもたちや動物たちにも親しまれています。また、コナラは薪や炭の材料としても活用されてきた歴史があり、人間と自然とのつながりを感じられる魅力的な木です。
コナラの花や葉、実の特徴

園芸分類:庭木
開花時期:4〜5月
草丈・樹高:10〜20m
耐寒性:強い
耐暑性:強い
花色:黄色(雄花)
コナラは基本的に1本の幹をまっすぐ伸ばす単幹樹形になります。葉は長さ5~15cm、幅5cmほどの先が尖った楕円形で、縁にはギザギザと大きな鋸歯が入ります。秋には黄葉や紅葉が楽しめます。花は葉の展開と同時期に咲き、1つの木に雄花と雌花の両方がつく雌雄同株です。雌花は葉の脇に咲いてあまり目立たず、雄花は3~6cmほどの黄緑色の紐のようになって垂れ下がります。灰褐色の樹皮は、樹齢を重ねると縦にひび割れが入ります。

コナラのどんぐりは長さ2cm前後。先が尖っていて、小さな帽子のようなうろこ状の短い殻斗(かくと)が付いている、いかにもどんぐりらしい形が特徴です。

コナラは庭木として使われることも

コナラは、庭のシンボルツリーとしても人気があります。自然な雰囲気のある庭づくりに適しており、和風の庭にもよくなじみます。高木で大きく成長するものの、成長速度がゆっくりなため、手入れしながら好みの樹形に整えることができます。また、盆栽としても親しまれており、四季の移ろいを楽しめる点が多くの愛好家に支持されています。さらに、落ち葉を堆肥として活用できるため、環境に配慮したガーデニングにも役立ちます。観賞用と実用性を兼ね備えた、優れた樹木です。そのほか、薪やしいたけのホダ木、家具の木材などにも使われています。
コナラの名前の由来と花言葉

コナラという名前は、もう1つの日本の主要なナラであるミズナラが、別名「オオナラ(大楢)」と呼ばれているのに対し、葉やどんぐりが小さめであることから名付けられました。
コナラの花言葉は「勇気」「快活」「独立」などです。
コナラとクヌギやミズナラとの違い

コナラに似た木としては、同じくコナラ属のクヌギやミズナラが挙げられます。葉やどんぐりが実るという特徴が似ているため混同されがちですが、それぞれに違いがあります。

クヌギは樹皮が厚く縦に割れ、丸みを帯びた大きなどんぐりを実らせます。葉は細長く、深い切れ込みがあり、手触りもざらついています。殻斗はイソギンチャクのようにうねうねとした形が特徴です。

ミズナラは湿った環境を好み、葉はやや丸みを帯びていて全体的にやさしい印象があります。どんぐりはややふっくらとして大きめで、殻斗も深め。コナラと見分けやすいポイントは葉で、ミズナラの葉はほとんど葉柄がなく、鋸歯がはっきりしているという違いがあります。
コナラは両者の中間のような性質を持ち、乾燥した土地でも育ちやすいことが特徴です。それぞれの違いを知って選ぶことで、より自分に合った木を見つけやすくなります。
コナラの栽培12カ月カレンダー

開花時期:4〜5月
植え付け・植え替え:11~3月
肥料:2月頃
剪定:12~翌年2月
種まき:10~12月
コナラの栽培環境

日当たり・置き場所
【日当たり/屋外】日当たりと風通しの良い環境を好みます。明るい場所で育てることで、葉がよく茂り健康な状態を保てます。半日陰でも栽培できますが、あまりに暗いと枯れてしまうので注意しましょう。
【日当たり/屋内】屋外での栽培が基本です。
【置き場所】比較的乾燥にも強く、土質を選ばずよく育ちます。大木に成長するので、十分なスペースを確保して植えましょう。また、真夏の西日や強い直射日光は避けたほうが無難。鉢植えの場合は半日陰に移動させるなどの工夫が効果的です。
耐寒性・耐暑性
日本に自生するコナラは耐寒性・耐暑性ともにあり、夏越しや冬越しの対策は特に必要ありません。
コナラの育て方のポイント
用土

コナラは土質に対する適応力が高く、一般的な培養土でも問題なく育ちます。地植えの場合は、水はけのよい土壌を選ぶとさらに元気に育ちやすくなります。水がたまりやすい場所では、腐葉土や牛ふん堆肥を混ぜて土壌改良を行うと安心です。鉢植えでは、底に軽石を敷いて通気性を高めるなどの工夫をすると、根が健全に育ちます。
水やり

コナラは比較的乾燥に強い木ですが、植え付け直後や夏場には水切れに注意が必要です。根がまだ張っていないうちは、水分を十分に吸収できません。根付くまでは必要に応じて水やりをしましょう。地植えの場合、根付いた後は自然の雨だけでかまいません。鉢植え場合は、表土が乾いたタイミングで鉢底から流れ出るまでしっかり水を与えます。冬は土が乾ききる前に与える程度の控えめの水やりをします。
肥料

肥料は2月頃に株元に緩効性肥料をすき込むとよいでしょう。肥料が多いと成長速度が速くなり、庭木としては大きくなりすぎることもあるため、様子を見ながら控えめに与えるのがおすすめです。
注意する病害虫

コナラは比較的丈夫で病害虫の心配はあまりありませんが、「ナラ枯れ」と呼ばれる病気に注意が必要です。これはカシノナガキクイムシが媒介する病気で、進行すると葉が変色し枯れてしまうことがあります。特に夏場は注意が必要です。原因となるカシノナガキクイムシが発生しないよう、風通しをよくする剪定や、殺虫剤の散布が予防に効果的です。幹に小さな穴があったり、木くずのような粉が付着していたりする場合は、早めに対応しましょう。葉や幹の様子を観察し、異変を早期に見つけることが大切です。
コナラの詳しい育て方
植え付け・植え替え

コナラの植え付けには、落葉期である11~3月が適しています。この時期は木が休眠しているため、根に与えるダメージが少なく、活着しやすくなります。コナラは成長すると大きくなりやすいため、十分なスペースを確保して植えることが大切です。鉢植えで楽しむ場合は、定期的な剪定や植え替えを行うことで、コンパクトに育てることができます。
地植えでは特に植え替えは必要ありませんが、鉢植えは2〜3年に1回を目安に植え替えを。根詰まりを防ぐため、鉢の中で根が回っているようであれば、植え替えをしましょう。植え替えの際は、鉢を外して軽く根をほぐし、黒く傷んだ根は切り取ります。中粒の赤玉土7に腐葉土か牛ふん堆肥を3の割合で混ぜ込んだ配合用土を使って植え付けます。あまり大きくしたくない場合は同じ鉢に、大きくしたい場合は元の鉢よりも1〜2回り大きな(直径が3〜6cm大きな)鉢に植え付けます。
剪定・切り戻し

コナラをコンパクトに収めるためには、定期的な剪定が必要です。剪定の適期は落葉期の12~2月。枝分かれしている部分や内側に伸びている枝を中心に整えます。伸びすぎた枝は付け根から、小さな枝は先端を軽く整えると自然な樹形になります。コナラは剪定に強く、初心者でも扱いやすい木です。主幹は放任すると背が高くなりすぎるので、作業しやすい高さで幹を切り落とし、芯をとめてコンパクトに保ちましょう。
5~9月の間は枝が旺盛に伸びるため、込み合った部分や不要な枝をこまめに取り除き、風通しよく管理しましょう。風通しよく保つことで、病害虫の予防にもつながります。ただし、この時期に剪定すると花芽を落としてしまうため、翌年の花数が減ることもあります。
夏越し・冬越し

コナラは暑さにも寒さにも強く、特別な温度管理は必要ありません。屋外で年間を通して育てることができます。ただし、鉢植えの場合は冬に根が冷えすぎないよう注意が必要です。鉢の周囲にわらや布を巻いて保護すると安心です。
真夏の直射日光や乾燥には注意し、葉がしおれるようであれば、水やりの頻度を増やしたり、日の当たる時間が短い場所に置き場所を変更するなどしてみましょう。基本的に手のかからない性質のため、無理なく育てられます。
増やし方
コナラは、どんぐりの実を播く方法と、枝を使った挿し木の2つの方法で増やせます。ただし、挿し木は発根しにくく成功率が低いため、一般的にはどんぐりから実生で増やします。
どんぐりを播いて育てる方法

秋に実るどんぐりを採取し、水につけて浮いたものを取り除きます。健康などんぐりを選んだら、湿らせた土に横向きか斜めに植え、軽く土をかぶせます。乾燥を防ぎながら管理すると、しばらくすると根が出て、春には発芽します。
発芽後は徐々に日光に慣らしながら育てます。芽が出てくる様子を見守るのは、とても楽しい経験になります。
コナラを育てる際の注意点

コナラは丈夫な木ですが、育て方によっては大きくなりすぎたり、病気にかかることもあります。日常のお手入れや観察を丁寧に行うことが、健やかな成長につながります。
コナラを大きくしすぎないためには?

コナラは放っておくと大きく育つため、定期的な剪定が必要です。春から夏にかけて伸びる枝を中心に整えることで、サイズを抑えることができます。切りすぎを防ぐため、様子を見ながら少しずつ整えるのがポイントです。
剪定後には切り口に癒合剤を塗ると雑菌の侵入を防げます。コンパクトでもバランスの良い樹形を保つことで、庭に適した美しい姿に仕上がります。
コナラは薪を取るために育てられてきた樹木です。薪を取る際には地際で切り倒しますが、それでも株元から新しい芽が出てきて大きな木に育ちます。大きくなりすぎて困ったときは、大胆に切り戻してしまってもいいでしょう。
病気になったコナラは復活する?

ナラ枯れなどの病気にかかった場合でも、初期段階であれば回復する可能性があります。枝の剪定や薬剤による対処を早めに行うことが重要です。
大きく育った木ほど対処が難しくなるため、日頃から葉や幹の変化に気を配りましょう。異常を見つけたら、早めに専門家に相談するのもひとつの方法です。
コナラを育ててみよう

コナラは、基本的な管理や環境さえ整えば、初心者でも育てやすい樹木です。どんぐりが実る様子や、季節ごとの表情を楽しめる点も魅力的です。
シンボルツリーとして庭に植えたり、鉢植えや盆栽として育てたりと、楽しみ方は多様です。自然に寄り添いながら、暮らしの中で緑を楽しむきっかけとして、コナラを育ててみてはいかがでしょうか。
Credit
文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。2026壁掛けカレンダー『ガーデンストーリー』 植物と暮らす12カ月の楽しみ 2026 Calendar (発行/KADOKAWA)好評発売中!
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