【完全ガイド】ウツギ(空木)の育て方|初心者も安心!剪定・水やり・種類まで徹底解説

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初夏に満開に咲き誇る白い花が印象的な「ウツギ(空木)」。古くから日本に自生する丈夫な低木で、庭木や生け垣としても人気の花木です。放任でも育ちやすく、剪定や挿し木で手軽に管理できるため、ガーデニング初心者にもぴったり。この記事では、ウツギの概要や種類、育て方の基本から剪定・挿し木のコツ、よくあるトラブル対策まで分かりやすく解説します。庭に華やかな季節の彩りを加えてみませんか?
目次
ウツギの基本情報

植物名:ウツギ
学名:Deutzia crenata
英名:Deutzia crenata、Japanese snow flower
和名:ウツギ(空木)
その他の名前:ウノハナ(卯の花)、ウノハナウツギ、ウツロギ、カキミグサなど
科名:アジサイ科
属名:ウツギ属
原産地:日本、中国
形態:落葉性低木
ウツギは、アジサイ科ウツギ属の低木です。原産地は日本、中国で、日本では5〜6種の自生種が確認されています。昔から日本の野山に自生してきたため暑さや寒さに耐え、育てやすい花木の一つで、北海道から沖縄まで栽培可能です。昔は畑などの耕作地に、境界の目印としてよく植えられていました。
樹高は1〜2mほどの低木で、地際から枝が放射状に出る株立ちの樹形が特徴です。放任すると株幅が大きくなって場所を取りがちになりますが、毎年の剪定によって程よい株幅にコントロールすることができます。
ウツギは落葉性の樹木で、冬前にすべての葉を落とします。春に生育期に入ると新芽を出して生育し、初夏に開花。花後についた果実は秋に種が熟して近くに散らします。晩秋には紅葉して休眠する……という繰り返しで、四季の移ろいを強く感じることができるのも魅力です。
満開に咲く八重咲きのウツギが風に揺れる初夏の庭。Pavel105/Shutterstock.com
ウツギの花や葉の特徴

園芸分類:庭木
開花時期:5月中旬〜6月上旬
樹高:1〜2m
耐寒性:強い
耐暑性:強い
花色:白、ピンク
ウツギの開花期は、5月中旬〜6月上旬で、花色は白、ピンク。一重咲きと八重咲きがあります。一つひとつの花は1cmほどで小さいのですが、釣鐘形の花を多数連ねて咲くので、満開時には大変見応えがあります。
葉は先端が尖った卵形で、若葉の表面には細かな毛があり、触るとザラザラとした触感です。
ウツギの名前の由来と花言葉

ウツギは、漢字で「空木」と書きます。幹や枝を切ってみると、中が空洞になっていることから。また、「卯木」とも書き、これは旧暦の卯月(四月)頃に咲いたことに由来します。「ウノハナ」の別名も持っています。
ウツギの花言葉には、「秘密」「古風」「風情「乙女の香り」などがあります。
ウツギの代表的な種類と品種

ウツギはさまざまな種類や園芸品種が出回っています。そのいくつかをご紹介します。
ヒメウツギ

ヒメウツギは、ウツギよりもコンパクトにまとまるので「姫」の名前がつけられました。あまりスペースを取らないので、家庭での栽培に向いています。ヒメウツギの園芸品種‘ライムシャンデリア’は、明るいライムイエローの葉が特徴的で、晩秋には赤く紅葉し、カラーリーフプランツとして活躍します。
シロバナヤエウツギ

シロバナヤエウツギは白い花を咲かせる八重咲きで、華やかな雰囲気が魅力です。
サラサウツギ

サラサウツギは外側の花弁にほんのりとピンクがのる八重咲きで、優美な雰囲気を持っています。
‘バリエガータ’
‘バリエガータ’は、葉に白い散り斑が入り、カラーリーフプランツとしても活躍する品種です。

ちなみに、「ウツギ」という名前がつく樹木はたくさんありますが、その中にはバイカウツギやタニウツギなどのように、分類上では関係のないものが多くあります。
ウツギの栽培12カ月カレンダー
開花時期:5月中旬〜6月上旬
植え付け・植え替え:11月〜12月上旬、2月下旬〜3月
肥料:12〜2月、6月頃
剪定:12月〜翌年2月、6月頃
種まき:5月頃
ウツギの栽培環境

日当たり・置き場所
【日当たり/屋外】日当たりと風通しがよい場所を選びます。半日陰の環境でも育ちますが、日当たりが悪く暗い場所では、花つきが悪くなり、枝葉が間伸びして徒長してしまうので注意してください。
【日当たり/屋内】屋外での栽培が基本です。
【置き場所】水もちがよく腐植質に富んだ土壌を好みます。ウツギは低木ではありますが、株立ちタイプで横に広がりやすいので、広めの場所を確保しておくとよいでしょう。
耐寒性・耐暑性
日本の気候に馴染みやすく、暑さ寒さに耐えるので、一年を通して戸外で管理でき、夏越し・冬越し対策などは特に必要ありません。乾燥する時期は、株元にバークチップなどでマルチングをしておくとよいでしょう。
ウツギの育て方のポイント

用土

【地植え】
まず一年を通して日当たり、風通しのよい場所を選びましょう。植え付けの2〜3週間前に、直径・深さともに50㎝程度の穴を掘ります。掘り上げた土に腐葉土や堆肥、緩効性肥料などをよく混ぜ込んで、再び植え穴に戻しておきましょう。土に肥料などを混ぜ込んだ後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。
【鉢植え】
市販の花木用培養土を利用すると手軽です。
水やり

水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために枝葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。
真夏は、気温が上がっている昼間に行うと、すぐに水の温度が上がってぬるま湯のようになり、木が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に与えることが大切です。
また、真冬は、気温が低くなる夕方に行うと凍結の原因になってしまうので、十分に気温が上がった真昼に与えるようにしましょう。
【地植え】
植え付け後にしっかり根づいて枝葉をぐんぐん伸ばすようになるまでは、乾いたら水やりをしましょう。根づいた後は、地植えの場合は下から水が上がってくるので、ほとんど不要です。ただしウツギは乾燥を苦手とするので、真夏に晴天が続いて乾燥している場合は水やりをして補いましょう。
【鉢植え】
日頃から水やりを忘れずに管理します。ただし、いつも湿った状態にしていると根腐れの原因になるので、与えすぎに注意。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。枝葉がややだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサインです。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイント。特に真夏は高温によって乾燥しやすくなるため、朝夕2回の水やりを欠かさないように注意します。冬は休眠し、表土も乾きにくくなるので控えめに与えるとよいでしょう。
肥料

【地植え・鉢植えともに】
12月〜翌年2月に一度肥料を与え、土によくなじませましょう。生育期を迎える前に肥料を与えることで、新芽を出すエネルギーとなり旺盛に枝葉を広げることにつながります。
また、開花後の6月頃に緩効性肥料を与えます。開花によって木が消耗したタイミングで与えるのでお礼肥といいます。忘れずに与えて、体力回復を促してあげましょう。
注意する病害虫

ウツギは生命力が強く、あまり枯死することはありませんが、まれに病害虫が発生することがあります。ここでは、比較的発生しやすい病害虫について取り上げます。
【病気】
・うどんこ病
うどんこ病は、カビによる伝染性の病気です。葉、新梢、つぼみに発生しやすく、表面が白く粉を吹いたような状態になり、放任するとどんどん広がるので注意。対処せずにそのままにしておくと光合成ができなくなり、やがて枯死してしまいます。窒素肥料を施しすぎたり、枝葉が繁茂しすぎて風通しが悪くなったりしていると、発病しやすくなります。うどんこ病が出たら病気の葉を摘み取って処分し、適用する殺菌剤を葉の表と裏に散布して、蔓延するのを防ぎましょう。
・さび病
さび病は、かびによる伝染性の病気です。葉にくすんだオレンジ色で楕円形の斑点が現れます。この斑点は、やや細長くイボ状に突起するのが特徴です。症状が進むと斑点が破れ、中から粉のように細かい胞子を飛ばします。発症すると株が弱り、枯死することもあるので注意。発病した葉は見つけ次第切り取って処分し、適用する薬剤を散布して防除します。
【害虫】
・アブラムシ
アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4㎜程度の小さな虫で繁殖力が大変強く、発生すると茎葉にびっしりとついて吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目もよくないので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、水ではじいたりして防除しましょう。虫が苦手な方は、スプレータイプの薬剤を散布して退治するか、植え付け時に土に混ぜ込んで防除するアブラムシ用の粒状薬剤を利用するのがおすすめです。
ウツギの詳しい育て方
苗の選び方
苗を購入する際は、葉がみずみずしく、変色したりしおれたりしていないもの、幹が太くしっかりしているものを選びましょう。
植え付け・植え替え

ウツギの植え付け適期は11月〜12月上旬か、2月下旬〜3月です。ただし、花苗店などでは植え付け適期以外でも苗木が出回っていることがあります。入手したら、真夏や真冬を除き、植えたい場所へ早めに定植しましょう。
【地植え】
土づくりをしておいた場所に、苗の根鉢よりも一回り大きな穴を掘って、根を傷めないように植え付けます。苗木がぐらつくようであれば、しっかり根付くまでは支柱を設置してビニタイや麻ひもなどで誘引し、倒伏を防ぎましょう。最後にたっぷりと水を与えます。
環境に合って順調に育っているようであれば、植え替えの必要はありません。
【鉢植え】
鉢で栽培する場合は、入手した苗木よりも1〜2まわり大きな鉢を準備します。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから花木用の培養土を半分くらいまで入れましょう。ウツギの苗木をポットから取り出して根鉢をあまり崩さずに鉢に仮置きし、高さを決めます。水やりの際にすぐ水があふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3㎝ほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底から水が流れ出すまで、十分に水を与えましょう。
鉢植えで楽しむ場合は、成長とともに根詰まりしてくるので、2〜3年に1度は植え替えることが大切です。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から株を取り出して軽く根鉢をくずし、古い根はカットして新しい培養土を使って植え直しましょう。
剪定・切り戻し

ウツギは樹形が乱れやすい樹木なので、定期的に剪定をしてコンパクトな姿を保ちましょう。生命力が強く枝をどんどん伸ばすので、強めに剪定してもかまいません。ここでは、剪定の仕方について解説します。
剪定は年に2回
ウツギは株立ち状で、地際から細めの枝を放射状に伸ばして枝垂れさせる樹形が特徴です。
ウツギの剪定は、「すかし剪定」を基本とします。適期は休眠期の12月〜翌年2月。ウツギは樹形が乱れやすく、放任していると次々に新しい枝が地際から伸びて込み合い、風通しが悪くなってしまいます。そこで、徒長枝や細くて弱々しい枝、他の枝に絡んで生育の邪魔になっている枝を選び、枝の途中で切らずに、分岐部まで遡るか、地際で切り取りましょう。
また樹形をコンパクトに保ちたい場合は、花後の6月頃に古い枝を選んで地際近くで切り取るとよいでしょう。8月には花芽ができるので、花後すぐに行うことがポイントです。
切り戻し
ウツギの枝が四方八方に伸びて、どうにも手がつけられないくらいに大きくなってしまった場合、2月頃に思い切って全ての枝を地際で切り取ってリセットする方法があります。ただし開花前に行うので、その年の開花はあきらめる必要があります。毎年行ってよいものではなく、切り戻しをする場合は4〜5年に一度を目途に行うとよいでしょう。
増やし方

ウツギは、挿し木で増やすことが可能です。挿し木とは、枝葉を切り取って地面に挿しておくと発根して生育を始める性質を生かして増やす方法です。植物のなかには挿し木で増やせるものと、そうでないものもありますが、ウツギは挿し木で増やせます。
●枝を15cmほどの長さで切る
ウツギの挿し木の適期は、6〜7月頃です。新しく伸びた枝を切り口が斜めになるように15cmほど切り取ります。
●1時間ほど水に浸ける
採取した枝(挿し穂)は、水を張った容器に1時間ほどつけて水あげしておきましょう。
●育苗ポットに挿す
3号の黒ポットを用意して新しい培養土を入れ、水を入れて十分に湿らせておきます。挿し穂についた葉は1〜2枚残してほかは取り除き、水の吸い上げと葉からの蒸散のバランスをとっておきましょう。培養土に穴をあけ、穴に挿し穂を挿して土を押さえてください。発根するまでは明るい日陰に置いて乾燥させないように管理します。発根後は日当たり、風通しのよい場所に移動しましょう。
●1カ月半で植え替え
十分に育ったら、植えたい場所へ定植しましょう。挿し木のメリットは、親株とまったく同じクローンになることです。
育てやすいウツギは庭の彩りや生け垣におすすめ

初夏に白やピンクの花を密につけて、息を呑むように美しい咲き姿を見せてくれるウツギ。暑さや寒さに強くて放任してもよく育ち、萌芽力が強いので強めに剪定してもかまわないので、管理がしやすい花木です。庭に植栽して、毎年の開花を愛でてはいかがでしょうか。
Credit
文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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