【デルフィニウムの育て方】庭での使い方・種類・魅力を解説

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デルフィニウムは、直線的に花穂を伸ばして咲く、存在感のある宿根草(多年草)。バラや他の草花とも組み合わせやすく、初夏のガーデニングで長年人気が高いガーデンプランツです。「高貴」という花言葉を持つデルフィニウムは、青やピンク、白など花色が豊富なのも魅力。この記事では、デルフィニウムの基本情報や特徴、名前の由来や花言葉、代表的な種類、育て方などを、ガーデンでの写真とともにご紹介します。
目次
デルフィニウムの基本情報

植物名:デルフィニウム
学名:Delphinium
英名:Delphinium
和名:大飛燕草(オオヒエンソウ)
その他の名前:チドリソウ
科名:キンポウゲ科
属名:デルフィニウム属(ヒエンソウ属)
原産地:ヨーロッパの山岳地帯、シベリア、モンゴル、中央アジア~中国西南部の山岳地帯※種類によって産地が異なります
形態:多年草(環境によっては一年草)
デルフィニウム(Delphinium)は、キンポウゲ科オオヒエンソウ属(デルフィニウム属)、和名はオオヒエンソウ(大飛燕草)です。原産地は、ヨーロッパのピレネー山脈からアルプス山脈、シベリア、中央アジアから中国西南部の標高1,000m以上の山岳地帯。また、シベリアからモンゴル、中国に分布。野生種は、雪解け水が流れ込むような冷涼な高地に自生しています。

長い花穂をまっすぐに立ち上げて、青や紫、白などさまざまな色の花をびっしりとつける姿が印象的なデルフィニウムは、初夏のガーデンで人気の花です。本来は宿根草ですが、高温多湿に弱いため、種類によっては日本の夏に耐えられずに枯れてしまうことも多く、暖地では基本的に一年草扱いとされます。バラとの相性もよく、ローズガーデンでも活躍。他の草花と合わせてボーダーガーデンなどに植栽されていることも多いですね。長い花穂が縦のラインを生み、ガーデン演出のアクセントになります。また、花束やフラワーアレンジ でも豪華な雰囲気が出る花材として、一年中、花屋さんにも並ぶ人気の草花です。
下から上へと咲き上がり、長く開花が楽しめるデルフィニウム。青花といっても淡いものから濃いものと幅があり、デルフィニウムをまとめて植えるだけでも見応えがあります。Proshkin Aleksandr/Shutterstock.com
デルフィニウムの花や葉の特徴

園芸分類:草花
開花時期:5~6月
草丈:20~150cm
耐寒性:強い
耐暑性:弱い
花色:青、紫、ピンク、白、複色
デルフィニウムの花は、花がいくつも連なって穂のように見える、花穂と呼ばれる咲き姿。花弁に見える部分はガクで、中央部分に花があります。花の後ろに、「距(きょ)」という突起があるのも特徴です。

花色は白やピンク、青、紫などさまざまで、華やかな見た目からブーケなどアレンジメントにも人気があります。
デルフィニウムの葉は手のひらのような形をしており、切れ込みの深さや細裂の具合は種類によって異なります。
デルフィニウムの名前の由来や花言葉

デルフィニウムという名前の由来は、ギリシア語でイルカを意味する「Delphis」。つぼみの形がイルカに似ていることからこの名が付いたといわれています。
和名の大飛燕草(オオヒエンソウ)は、花の形が燕が飛ぶ姿に似ていることから名付けられました。花の柔らかく澄んだ佇まいから、「清明」「高貴」などの花言葉があります。
デルフィニウムの代表的な系統と種類

デルフィニウムには大きく分けて、長い花穂にたっぷりと花を咲かせ、柱のようにボリュームのある花姿が楽しめる大型のエラータム系と、細い茎葉に花を付け、華奢で繊細な姿を持つシネンセ(シネンシス)系があり、またその中間的なベラドンナ系が知られています。特にガーデンでよく見るのはエラータム系ですが、どのタイプもガーデン素材として使いやすいおすすめの花です。カラーバリエーションも豊かなデルフィニウムの仲間は、濃いブルーや淡いブルー、白、紫、ピンクまで、さまざまな花色があります。

「オーロラ」や「キャンドル」シリーズなどのエラータム系のデルフィニウムは草丈1mを越え、その長い花穂にびっしりと八重花をつけるので、存在感抜群。背が高くなるので、ボーダーガーデンの奥に配したり、フェンスの手前に植えたりするのに向いています。また、直線的なラインの花姿を持つので、ふんわり茂るタイプなど、他の草花と組み合わせる際のアクセントにも。繰り返し植栽すると、ガーデンにリズムも生まれます。バラにはないブルー系の花色と直線的な姿は、バラとの相性もよく、ローズガーデンに取り入れるのもおすすめです。矮性種もあるので、ガーデンのデザインやスペースに合わせて選ぶことができます。

「ミストラル」シリーズなどのシネンセ系のデルフィニウムは、青や水色、白など透明感のある爽やかな花色を持つものが多く、華奢な花姿と相まって、ナチュラルなガーデン演出にぴったりです。白花や同系色の花でまとめたり、風に揺れるナチュラルな小花と組み合わせて、コテージガーデン風の優しい印象の庭に活用するのもいいですね。
デルフィニウムのハイブリッド種である‘チアブルー’は、その名のとおり、上向きに咲く鮮やかな水色の花が咲きます。また、デルフィニウムの特徴である、花の後ろの突起「距」がありません。
‘チアブルー’よりも青色が濃い品種が、‘ミントブルー’です。‘チアブルー’と同じく距がなく、上向きの花を咲かせます。
デルフィニウムとラクスパーの違い

デルフィニウムによく似ている花が、一年草のラクスパー(チドリソウ/千鳥草/飛燕草)。デルフィニウムの多くの葉は、手の平のように切れ込みが入る葉で、花穂は1株に1本伸びて丈高くなります。一方、ラクスパーの葉はコスモスのように細く、枝分かれ(分枝)しながら花が咲く点が見分ける方法の一つです。

デルフィニウムのガーデンでの使い方 実例紹介
花色豊富でボリュームある花姿が、ボーダーガーデンやローズガーデンでもよく利用されるデルフィニウム。実際に、ガーデンにデルフィニウムを取り入れている例を、写真を通してご紹介しましょう。

ガウラやリアトリスと混ぜてメドウ風に咲かせると小さな花と強弱がついて、ナチュラル感のあるオリジナルの風景に。

同じ品種を1カ所にまとめて植えてもインパクトがあって華やか。春〜初夏の開花期にはいくつもの花穂を立ち上げ、見事な眺めになります。

ピンク系のバラと青や紫のデルフィニウムは、好相性。お互いの花が引き立つ効果があります。

背が高くなるので、華やかな初夏のガーデンでもひときわ目を引きます。

大きな鉢に植えてもインパクト大。バラのトンネルと組み合わせて。茎が長く伸びる品種は、支柱を添えて育てます。
デルフィニウムの栽培12カ月カレンダー
開花時期:5〜6月
肥料:3月上旬、10月中旬
入手時期:3月、秋頃
植え付け:3〜4月上旬
デルフィニウムを入手したいなら、ポット苗がおすすめです。種子を取りたい場合は、花が終わったあと、さやが茶色くなるのを待ちましょう。種子は傷みやすいので、乾燥材と共に秋まで冷蔵庫で保管するのがおすすめです。
デルフィニウムの栽培環境

日当たり・置き場所
デルフィニウムは日当たりや風通し、水はけのよい場所を好む花です。高温多湿な場所が苦手なので、置き場所や用土の水はけには気をつけましょう。
日当たりが悪いと枝の生育が悪くなったり、花つきが悪くなったりします。また、土の水はけが悪かったり、風が通らない場所に置いてあったりすると、病害虫が発生しやすくなるので注意が必要です。
耐寒性・耐暑性
デルフィニウムは耐寒性が強く、耐暑性が弱い花です。
多年草として知られるデルフィニウムですが、日本での夏越しは難しいため、一般的には一年草として栽培されます。ただし、冷涼な地域なら、直射日光を避けて管理することで、日本でも夏が越せる場合があります。
デルフィニウムの育て方のポイント

用土
デルフィニウムは水はけのよい用土を好みます。市販の草花用培養土を利用するか、赤玉土と腐葉土を7:3の割合で配合した土などを使うとよいでしょう。
水やり
デルフィニウムは多湿な環境を苦手とするので、水やりはどちらかといえば控えめに行いましょう。
鉢植えの場合は、土の表面が乾いたタイミングで水やりをします。
地植えをする場合、植え付け後にたっぷり水やりをした後は、水やりはほとんど必要ありません。晴れの日が続いた時のみ、土の渇き具合を確認しつつ水やりをしましょう。
肥料
植え付けの際には、緩効性肥料などを元肥として混ぜておきます。葉が展開してきたら、必要に応じて追肥を行います。
注意する病害虫
デルフィニウムを育てる際に注意するべき病害虫は、うどんこ病、立枯病、ナメクジなどです。
うどん粉病は、置き場所の日当たりや風通しが悪い場合にかかりやすい病気です。葉や茎が白い粉のような菌で覆われて、植物が弱ってしまいます。病気が進むと枯れてしまうこともあるので、症状を見つけたら専用の薬剤を散布して対処します。気温や湿度が上がる5~6月に発生しやすいので、特に注意しましょう。
立枯病は、地表近くの部分が腐ってしまう病気です。古土などを使用した場合に出やすいため、用土を選ぶ際には注意が必要です。
ナメクジやヨトウムシによる食害もあります。つぼみや葉、茎などが食べられてしまい、デルフィウムが弱るので、見つけ次第駆除しましょう。
デルフィニウムの詳しい育て方

苗の選び方
デルフィニウムの苗を選ぶ際は、葉の状態やつぼみの数がポイントです。葉にハリがあり、生き生きとしているものや、つぼみの多い苗を選びましょう。
またデルフィニウムは、品種によって草丈が違います。植え付けてしまってから困らないように、場所に適したサイズの品種を選ぶことも大切です。
なお、デルフィニウムは種まきから育てることも一般的です。デルフィニウムの苗には品種が記されていないことも多いので、育てたい品種が決まっている場合は、種から育てたほうが確実でしょう。
植え付け
デルフィニウムの苗は春・秋に市場に出回ります。大株に育ちやすいのは秋の植え付け。華やかに咲く姿を楽しみたいなら、秋の植え付けがおすすめです。草丈が高い品種が多いので、必要に応じて支柱を立てて置くと、倒伏防止になります。
デルフィニウムの根はまっすぐ伸びる直根性です。苗が大きくなりすぎると移植によって弱ってしまうことがあるので、苗があまり大きくならないうちに植え付けましょう。植え付ける際には根を傷つけないよう、注意が必要です。
なお、デルフィニウムは日本では夏越しが難しいので、一年草として扱われるのが一般的です。毎年花を楽しみたいなら、苗や種子の入手は欠かさないようにしましょう。
剪定・切り戻し

デルフィニウムの開花期は5~6月ですが、花後に茎の切り戻しを行うことで、二番花を楽しめることもあります。花が終わりかけだと感じたら、株元から花茎を切り戻しましょう。なお、花が咲いている最中に切って、ドライフラワーにする楽しみ方もあります。
夏越し
デルフィニウムは暑さに弱いため、基本的に暖地では一年草として扱われます。ただし、寒冷地なら日本でも夏越しができる可能性があります。夏場は直射日光を避け、風通しのよい日陰で管理しましょう。水やりを控えめに行うことで、過湿を避けることも重要です。
増やし方

デルフィニウムは苗を植え付けて育てることもできますが、種子から育てて増やすことも可能です。デルフィニウムをすでに植えているなら、その株から種子を採ることができるでしょう。

タネを採る場合は、花茎を切らずにそのままにしておき、結実してできたさやが茶色くなったら採って乾燥させてましょう。デルフィニウムのタネは寿命が短いので、採取したタネは、その年の秋に播いて苗をつくるとよいでしょう。
デルフィニウムの栽培の際の注意
デルフィニウムにはアルカロイドの一種、デルフィニンという毒があります。有毒なので害虫がつきにくい半面、人や動物が口にすると体調を崩してしまうので注意が必要です。幼児やペットの誤食には気をつけましょう。
初夏を彩る華やかなデルフィニウムを咲かせよう

花穂を立ち上げて美しい花を咲かせるデルフィニウムは、縦のラインがガーデン風景にメリハリを与え、初夏の庭を涼しげに演出してくれます。花色が豊富でバラとも相性がよく、ローズガーデンやイングリッシュガーデンには欠かせない存在。ぜひ庭やベランダに取り入れて、華やかな姿を楽しんでみてはいかがでしょうか。
Credit
文&写真(クレジット記載以外) / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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