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- もう枯らさない!【アジアンタム】のお手入れ完全ガイド|人気品種や水やりのコツを徹底解説
観葉植物アジアンタムは、湿度を好むシダ科の植物。人気の品種、水やりや剪定のコツを、当連載でおなじみのオザキフラワーパーク後藤さんに伺ってきました。最後まで読めば、お部屋のインテリアグリーンに絶対加えたくなりますよ!
目次
アジアンタムはどんな植物?
葉がかわいらしい

シダの仲間であるアジアンタムの葉は小さく繊細で、まるでレースのような美しい見た目をしています。
丸みを帯びた葉が密集し、軽やかに揺れる姿が特徴的。
芽吹きの季節には、シダ植物らしい淡い緑色のゼンマイのような新芽がいくつも顔を出し、その姿がまたとても可愛らしいです。

新芽は成長するにつれて深みのある緑色へと変化していき、その色彩のコントラストはまるで絵画を見ているよう。
柔らかな質感の葉がふんわりと広がる様子に癒やしを求める方は多く、観葉植物としての人気を高めています。
アジアンタムは現在250種類ほどあるといわれていますが、観葉植物としてはそのうちの10〜15種類ほどが流通しています。
どの品種も風にそよぐような優雅な動きを見せるため、インテリアグリーンとしての映えも秀逸。
こうした愛らしい特徴から、自宅のインテリアグリーンとしてだけではなく、ギフトに選ばれることも多く、オザキフラワーパーク観葉植物担当の後藤さん曰く、アジアンタムは春の引っ越しシーズンには欠かせない商品なのだとか。
湿度を好む
高湿度を好むアジアンタムは、乾燥が苦手。
原産地が熱帯から亜熱帯というとても湿度の高い地域であるため、日本の冬場の乾燥した室内では水切れを起こしやすく、そうならないためには、こまめな葉水や加湿が欠かせません。
このため、今までこの連載でご紹介してきたフィカスなどに比べると、栽培難度はやや高め。
でも逆に考えれば、お世話が大好きな方には最適の観葉植物といえます。
また、浴室やキッチンのような湿度の高い場所で育てると美しい葉を維持しやすいため、無機質になりがちな水回りを彩るインテリアグリーンとしてもおすすめです。

アジアンタムの基本情報
- 科属:ホウライシダ科 アジアンタム属
- 学名:Adiantum spp.
- 名前の由来:ギリシャ語の「adiantos(濡れない)」が語源。葉が水を弾く性質を持つため。
- 和名:ホウライシダ(蓬莱羊歯)
- 和名の由来:蓬莱(ホウライ)は中国の伝説に登場する神仙の住むところを指し、シダ植物の神秘的な印象から命名されたと考えられている。
- 原産地:熱帯~温帯地域(南米、アジア、アフリカなど)。日本でも四国や九州地方の一部で自生しています。
アジアンタムの主な種類
ラディアナム(Adiantum raddianum)

- 主な原産地:南米
- 名前の由来:ラディアナムいう種小名は、18〜19世紀のイタリアの植物学者で、特にシダ植物の研究で知られるジュゼッペ・ラッディに由来。
当時は未知の分野だったシダ植物解明に対する氏の功績を、種小名をもって讃えたとされている。 - 概要:ラディアナムは、繊細な葉がふんわりと茂るタイプのアジアンタムで、観葉植物としてとても人気が高い。
欧米ではラディアナムの園芸品種‘フリッツルーシー’がアジアンタムのアイコン的存在として有名です。
しかし日本では、ラディアナムの中でも特に美しく丈夫な個体として選抜された園芸品種‘フラグランティッシムン’(通称フラグランス)のほうが人気が高いようです。
ともに小さな葉が密集していてどこか涼しげな見た目が特徴で、黒い茎と緑の葉の色彩コントラストがとても美しく、ラディアナムはアジアンタム人気を決定づけた品種といえます。

ただ、‘フリッツルーシー’かフラグランスかは、小株のうちはほとんど見分けがつきません。
しかし中型株以上になると、フラグランスのほうが葉の密度も高く、こんもりと茂るように成長していきます。
- 市場価格:1,000〜4,000円
ペダタム(Adiantum pedatum)

- 主な原産地:北米~南米及び、日本では四国から九州にかけて。
- 名前の由来:ラテン語の「pedatus(足の形)」から。葉の形が鳥の足のように見えるため。
- 概要:ペダタムは北米から南米にかけての比較的標高の高い地域に広く分布する品種で、葉は細かく分かれており、1本の茎からほぼ左右対称に生えています。
耐寒性が強く、日本の気候でも育てやすいのが特徴です。
ちなみに日本では「クジャクシダ」という名前でも呼ばれていて、山野草や高山植物に造詣がある方にとってはそちらのほうが馴染み深いでしょう。
確かに、鳥の足というよりは、そちらのほうが的を射ているように思います。
ただこの品種、乱獲により野生種の個体数も減少傾向にあるため、規模の大きい園芸店か、あるいは観葉植物を専門に扱っている園芸店でないと出会えない、とても流通量の少ない希少種です。 - 市場価格:1,000〜5,000円
カピラス・ヴェネリス(Adiantum capillus-veneris)

- 主な原産地:地中海沿岸
- 名前の由来:ラテン語でカピラスは「髪の毛」、ヴェネリスは「ヴィーナスの」、つまり「ヴィーナスの髪の毛」という意味。ふわふわとした葉が女神の髪のように見えることからその名がついたとされている。
- 概要:カピラス・ヴェネリスは地中海沿岸や南米に分布する品種で、非常に繊細な葉を持つのが特徴。
見た目はフラグランスにも似ていますが、葉の密度がフラグランスよりも少ないため、茎の黒さがより目立ちます。
この種も乱獲により野生種は減少しており、自生地である米国のノースカロライナ州とケンタッキー州では絶滅危惧種に指定されています。
園芸種としても決して流通が多くはないため、園芸店で出会えたら幸運。大切に育てたいですね。 - 市場価格:2,000〜5,000円
ペルヴィアナム(Adiantum peruvianum)

- 主な原産地:南米(ペルー)
- 名前の由来:「ペルー産の」という意味。
- 概要:ペルヴィアナムは南米ペルー原産の品種で、比較的大きめの葉を持っています。
このため、インテリアグリーンとしての映えはアジアンタムの中でも随一だと思います。
広めのリビングルームに、周辺空間に余裕を持って置くのがおすすめです。
耐暑性もほかの品種よりも強く、乾燥にも比較的強いことから、初心者でも育てやすいでしょう。
ペルヴィアナムは前出2品種のような希少種というわけでもなく、欧米ではアジアンタムの品種としては比較的メジャーなほうなのですが、なぜか日本国内では流通量が少ないため、見つけたら即買いがおすすめです。 - 市場価格:1,500〜4,000円
ヒスピドゥラム(Adiantum hispidulum)

- 主な原産地:東南アジア
- 名前の由来:葉の表面が少し粗めの感触を持つため、ラテン語の「Hispid(ざらざらした)」に由来。
日本では「アラゲクジャク」とも呼ばれている。 - 概要:ヒスピドゥラム(アラゲクジャク)は、やや厚みのある葉を持ち、ほかのアジアンタムに比べてかなり丈夫な性質です。
繊細な葉が密に茂り、いかにも恐竜時代を生き抜いてきたシダの仲間という佇まいは観賞価値も高く、落ち着いたカラーテイストは大人びた空間にピッタリ。
国内での流通量がそう多くないため、この品種を探している人は多いと聞きます。
大型の園芸店か、観葉植物専門の園芸店でないと出会えないかも。 - 市場価格:2,000〜6,000円
オザキフラワーパークでも人気のアジアンタム・フラグランスと鉢カバー
アジアンタムのアイコン的品種のフラグランスは、オザキフラワーパークでも年間通しての売れ筋商品。
今回は、おなじみ観葉植物担当の後藤さんに、特におすすめのアジアンタム・フラグランス2株と、それらに合わせる鉢カバーを選んでいただきました。

おすすめのフラグランス中型株

アジアンタム・フラグランスの中型株は、ボリュームがありながらも室内で扱いやすいサイズ感が魅力。
特に、上の写真のように高さ30〜60cmの株は、リビングや玄関などに置いても圧迫感がなく、インテリアとして優れた存在感を発揮します。
また、葉が繊細で柔らかいため、優雅な雰囲気を演出できるのも特徴です。
適度な湿度を保ちつつ、明るい日陰で育てることで美しい葉姿を維持できます。オザキフラワーパークでは、手軽に扱えるこの中型株が人気で、初心者から上級者まで幅広く支持されています。
おすすめのフラグランス小型株

アジアンタム・フラグランスの小型株は、コンパクトながらも繊細で優雅な葉が魅力。
特に、上の写真のように高さ20〜30cmの株は、デスクや棚の上、窓辺などの限られたスペースにも置きやすく、手軽にテーブルグリーンを楽しめます。
また小型株は成長が早いため、環境が合えば次第にボリュームが増し、美しい葉が広がっていく過程も楽しむことがきます。
適度な湿度を保ちつつ、風通しのよい場所で管理すれば、フレッシュなグリーンを長く楽しめるでしょう。
オザキフラワーパークでは、小型株は特に初心者やギフト用として人気があります。
おすすめの鉢カバー
鉢カバーを合わせてあげることで、アジアンタムの魅力的な葉が一層際立ちます。

上の写真の、編み込み作りの鉢カバーは、色柄ともに、私後藤のイチオシ商品です。

中型のアジアンタムと合わせてみると、上の写真のような感じになります。
全体的に爽やかな雰囲気で、緑映えもいい感じですよね!
鉢カバーが植物と同系色だと全体がぼやけてしまいがちですが、白いライン模様が絶妙なアクセントを加えているため、垂れ下がった葉がより際立ちます。

上の写真はテラコッタ製の鉢カバー。
さりげなく入っているライン模様が、素材のナチュラルな風合いを高めています。

小型のアジアンタムと合わせてみると、上の写真のような感じになります。
王道のアースカラーの組み合わせも、鉢カバーの底面がラウンドした形状になっているため、全体的に可愛らしくまとまった印象です。

底のゴム栓を取り外すことにより鉢底穴が開くので、そのままテラコッタ鉢として直に植え込むこともできます。
アジアンタムの基本的な育て方
置き場所・日当たり・温度

アジアンタムは直射日光が苦手なため、室内ではレースのカーテン越しに柔らかい光が当たるような場所が最適です。
日陰でも育ちますが、あまり暗すぎると成長が鈍るため、適度な明るさを確保しましょう。
明るさを確保できない場合は、植物育成LEDライトを活用するのも効果的です。
アジアンタムの適温は15~25℃で、高温多湿の環境を好みます。
多湿を好むとはいえ風通しも大切なので、毎日30分程度窓を開けて空気を入れ替えるか、あるいはサーキュレーターを使用し、室内の空気を循環させてあげるのも効果的です。
冬場は12℃以上の温度を保ち、寒さから守ることが大切です。
厳冬期は空気が最も乾燥するため、加湿器とサーキュレーターを併用することで、効果的に室内の湿度を保つことができます。
用土

水はけがよい土が適しています。
確かにアジアンタムは多湿を好みますが、土に関しては別で、水はけが悪いものを用いると根腐れを起こしてしまいます。
おすすめは観葉植物用の培養土、またはシダ専用培養土です。
肥料

春先に、置くだけで効果が持続する固形の緩効性肥料を適量、鉢の縁にまいてあげましょう。
液体肥料でもOK。この場合は、成長期に月2回ほど与えると元気に育ちます。
冬場は成長が鈍るため、肥料は控えめにしましょう。
水やり

アジアンタムは乾燥に弱いため、土の表面が乾いたら鉢底から流れ出るくらいたっぷりと水を与えます。
また、受け皿に溜まった水は必ず捨てるようにしましょう。
アジアンタムは多湿を好む植物ではありますが、用土が常に過湿状態にあると根腐れを引き起こす恐れがあります。
このため、初心者の方は土の乾き具合の判断に慣れるまでは、土壌水分計などを利用するのもおすすめです。
アジアンタムのお手入れ方法
葉水

高湿を好むアジアンタムを育てるうえで重要なポイントとなるのが、毎日の葉水。
葉の表面に霧吹きで水をかけることで、葉の表面の湿度を保ち、健康に育ちます。
しかし、注意すべき点は風通しです。
風通しがよい場所に置くことで、湿気がこもらず適度に乾燥を促し、植物が呼吸しやすくなります。
湿度が高すぎても葉の表面が蒸れてしまうため、風通しがよく、湿度と乾燥のバランスが取れた環境が理想的です。
アジアンタムの美しさと健康を維持するうえでの最大のコツは、葉水を与えた後は風通しがよい場所で乾かし、翌日また葉水をし、乾かす、というサイクルを守ることです。
浴室やキッチンでの管理も適していると前述しましたが、この場合は毎日1回は30分〜1時間ほど風通しのよい場所に置いて蒸れを取り除き、リフレッシュさせてあげましょう。
剪定
アジアンタムは、よほど生い茂りすぎて目に余るような状態にならない限り、こまめに剪定する必要はありません。
ただし、枯れた葉や、混み合った部分を放置すると見栄えにも影響するため、この場合は適宜カットして風通しをよくしてあげましょう。それにより新しい葉の成長が促され、見栄えのよい健康な株を維持することができます。
植え替え

アジアンタムはどの品種も比較的成長が早いため、根もよく育ちます。
根はあっという間に鉢の中で密度を高めていくため、放置すると根腐れを起こしやすくなります。
このため、2〜3年に1回、成長期の春頃に植え替えを行いましょう。
病害虫対策も随時行う
アジアンタムは比較的病害虫に強い植物ですが、稀にハダニやカイガラムシが発生することがあります。特に乾燥した室内ではハダニがつきやすいため、葉水をこまめに行い、湿度を保つことが重要です。
カイガラムシは葉や茎に付着しやすいので、見つけたら歯ブラシや布で優しく取り除きましょう。
病気予防のためにも風通しのよい環境を整え、葉の変色や害虫の有無を定期的にチェックすることが大切です。
まとめ|お世話が大好きな方はアジアンタムを育ててみよう!
アジアンタムは、繊細で優しげな葉が魅力的な観葉植物。
湿度を保ち、定期的に水やりを行うことで元気に育てることができるため、過保護なくらいお世話したい! という方にはとてもおすすめです。
本記事を監修するオザキフラワーパークの観葉植物担当後藤さんも、前出の動画でそこを特にプッシュしていましたね。
ちなみに、アジアンタムが属するシダ植物は、約6600万年前の巨大隕石衝突によるチクシュルーブ大量絶滅を生き抜き、太古の姿を今に伝える植物といわれています。

しかし、その仲間の中には絶滅した種も多く存在します。
そんな中でアジアンタムは生き延び、今では観葉植物として私たちの暮らしを彩ってくれているのです。
それって、すごいことだと思いませんか!?
何やら壮大な話になってしまいましたが、これからアジアンタムを育てる方には、そんな歴史のロマンにも思いを馳せ、楽しんでいただければと思います。
記事協力
『オザキフラワーパーク』
1961年に東京は練馬区石神井で創業以来61年、人気の観葉植物からニッチな珍奇植物まで、全国屈指を誇るその品揃えは「買える植物園」としての異名を持つ。植物や園芸グッズの豊富さもさることながら、アクアリウムや爬虫類の生体販売も行っているため、近隣はもちろん、全国各地からお客様が途絶えることなく来店する話題の超大型園芸店。編集部スタッフもプライベートで足繁く通う。
東京都練馬区石神井台4-6-32
TEL : 03-3929-0544
URL https://ozaki-flowerpark.co.jp
営業時間:9:00~19:00
Credit
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