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寒さに強いヤシで冬もリゾート風景を庭に作ろう

寒さに強いヤシで冬もリゾート風景を庭に作ろう

Mark Roger Bailey/Shutterstock.com

南国を象徴する代表的な植物のヤシ。地植えのまま冬越しができる種類を選べば、年中、トロピカルムードや非日常的な雰囲気を庭に演出することができます。主に温かい地域が適地の植物ですが、東京などの屋外で越冬する寒さに強い種類を選べば、庭やベランダが冬でもリゾートに! この記事では、ヤシの基本的な情報や特徴、寒さに強いヤシの種類とその概要や育て方などを園芸のプロが解説します。

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ヤシの基本情報

ヤシ
Anthony King Nature/Shutterstock.com

ヤシ科の植物は、約180属2,600種が知られており、多くが熱帯・亜熱帯地域に分布します。

葉は掌状のものと、羽状のものがあり、分岐しない幹の先端部につきます。ごく一部の種類に分枝するヤシもあります。幹は単独で生育する種類と、株元近くから多くの幹が群生する種類に分かれます。カナリーヤシの仲間など雌雄異株の種類があり、雄株と雌株があります。

実はナツメヤシやココヤシのように食用にされたり、アブラヤシは油の原料になります。ヤシからは食品のほか、さまざまな製品が作られ、また多くの地域で平和や豊かさなどの象徴とされています。

観葉植物としては、小型のテーブルヤシやフェニックス・ロベレニー(ロベ)のほか、大型になるアレカヤシやココヤシも鉢植えがよく流通しているヤシ。熱帯のイメージを代表する植物ですが、寒さに強く関東地方でも屋外で栽培できる種類があります。

寒さに強いヤシの主な品種

耐寒性のあるヤシ
TATIANA GRIAZNEVA/Shutterstock.com

テーマパークなどの観光施設やショッピングモールなどの植栽に多く使われているように、寒さに強い種類は造園用としても人気があります。関東地方以西で地植えで越冬できる種類を6種、特徴と育て方とともにご紹介します。

カナリーヤシ

カナリーヤシ
Nick Pecker/Shutterstock.com

学名 Phoenix canariensis
和名 カナリーヤシ
英名 Canary Island date palm
属名 ナツメヤシ属(フェニックス属)
原産 カナリア諸島

高さ20mになる大型のヤシで、葉も大きく広がり、雄大な姿が魅力です。明るい日陰でも育ち、乾燥や過湿、あらゆる土壌に耐えるので、世界でも多く植えられています。

カナリーヤシの仲間は雌雄異株です。セネガルヤシ(P. reclinata)やナツメヤシ(P. dactylifera)も、造園用のヤシとして植えることができます。

家庭ではかなり広い庭がないと地植えできませんが、小株を鉢植えで育てることができます。

最低温度の目安はマイナス10℃です。関東地方でも多くの地域で植栽可能です。

育て方

カナリーヤシ
Beekeepx/Shutterstock.com

日当たりと排水のよい場所を好みます。環境適応性が高いので、明るい日陰でも育ちます。小株は日向でも葉焼けしにくいです。

冬に根を切ると病気で枯れることがあります。地植えする場合は、花壇の近くなどには植えないほうがよいでしょう。

ヤタイヤシ(ココスヤシ)

ヤタイヤシ(ココスヤシ)
Alexander Denisenko/Shutterstock.com

学名 Butia
和名 ヤタイヤシ
英名 Yatay palm、Jelly palm
属名 ブティア属
原産 アルゼンチン、ブラジル、ウルグアイ

名前や分類に混乱が多いヤシです。ココスヤシの名でよく流通しますが、名前は以前にココス属に分類されていたことに由来します。よく似た同じ仲間のブラジルヤシ(Butia capitata)は現在の分類では誤称で、オドラタ(B. odorata)とされます。寒さに強いオドラタは変異が多く、国内でココスヤシ、またはヤタイヤシとされる種類はオドラタの可能性があります。

生育は遅く、樹高6mくらいの中型のヤシです。葉色は青緑色で、株によっては白みがかったような葉色で幅があります。古い葉柄は硬く、いつまでも残ります。

雌雄同株で、黄色からオレンジ色の実は芳香があり甘く、食用になります。ブラジルなどの原産地ではジュースやリキュール、アイスクリームなどに加工されます。

最低温度の目安はマイナス10℃です。関東地方でも多くの地域で植栽可能です。高温多湿を嫌い、沖縄などでの植栽には向きません。

育て方

ヤタイヤシ
Dinesh tulsiyahi/Shutterstock.com

日向から半日陰の排水のよい場所が適します。広い場所が確保できるならば、地植えしてもよいでしょう。大株でも移植が可能で、その場合、ユンボなどで掘り上げます。

小株は日向から明るい日陰に置くことができます。乾燥や直射日光に強く、初心者でも育てやすいです。

ワシントンヤシ

ワシントンヤシ

学名 Washingtonia filifera
和名 ワシントンヤシ
別名 オキナヤシ(翁椰子)、シラガヤシ(白髪椰子)
英名 California fan palm
属名 ワシントンヤシ属
原産 カリフォルニア州、アリゾナ州、メキシコ北西部

カリフォルニアの乾燥地などに自生し、樹高30mまで生育することがある大型のヤシです。雄大な樹姿で性質が強く、世界の熱帯から温帯地域で広く植栽されます。国内でも道路沿いなどに列植され、観光名所となっています。雌雄同株で、実は原産地では食用とされました。

最低温度の目安は、マイナス10℃です。水はけが悪いと、耐寒性が弱くなります。

育て方

ワシントンヤシ
Pryimachuk Mariana/Shutterstock.com

日当たりと水はけのよい場所を好みます。半日陰から明るい日陰でも育ちます。小株は強い直射日光下で葉焼けしにくく、よく育ちます。

乾燥に比較的強いですが、用土の表面が乾いたら水やりしたほうがよく育ちます。

ビロウ

ビロウ
Mauro Rodrigues/Shutterstock.com

学名 Livistona chinensis
和名 ビロウ
英名 Chinese fan palm
属名 ビロウ属
原産 日本南部、中国、台湾

海岸近くの地域に自生し、樹高15mまで大きくなります。掌状の葉が大きく広がり、先端部は細かく裂けて垂れ下がります。雌雄異株で、雄株と雌株があります。

沖縄では葉が実用品に加工されたり、若芽が食用されています。

最低温度の目安は、マイナス8℃~マイナス10℃です。成木は葉が傷んでも復活しやすいので、さらに低い温度に耐える可能性があります。

育て方

ビロウ
kaiwut niponkaew/Shutterstock.com

日当たりのよい場所を好みます。地植えすると長い主根を伸ばし、乾燥にも強いです。

小さい株を鉢植えで育てる場合は半日陰に置き、水を十分与えるようにしてください。株が小さい間は夏の直射日光で葉焼けすることがあり、水を多く与えることで成長が早くなります。

チャボトウジュロ

チャボトウジュロ
Luziana5588/Shutterstock.com

学名 Chamaerops humilis
和名 チャボトウジュロ(矮鶏唐棕櫚)
英名 European fan palm
属名 チャボトウジュロ属
原産 地中海沿岸

高さ4mほどの小型のヤシで、雌雄異株です。荒涼とした岩場などに自生します。大きくならないので庭植えに最適です。トウジュロに似ていますが葉柄にトゲがあり、幹が複数集まって株立ちになります。

最低温度の目安は、マイナス12℃~マイナス15℃です。最も寒さ強いヤシの一つとされ、世界で広く植栽に使われています。

育て方

チャボトウジュロ
phM2019/Shutterstock.com

日向から半日陰の、水はけのよい場所が適します。夏の暑さや乾燥に非常に強いです。排水の悪い場所を嫌い、水のたまりやすい場所では根腐れします。小型で成長が遅いので、鉢植えに最適です。

シュロ

シュロ
Alexander Denisenko/Shutterstock.com

学名 Trachycarpus fortunei
和名 シュロ(棕櫚)
別名 ワジュロ(和棕櫚)
英名 Chinese windmill palm
属名 シュロ属
原産 中国、ミャンマー

最低温度の目安はマイナス20℃で、最も寒さに強いヤシといわれます。日本でも東北や北海道の一部の地域で育てることができます。日本の南西部は自生地の可能性がありますが、過去に持ち込まれた株が帰化したものと考えられています。

雌雄異株で樹高10mになり、葉は熊手のような形で先端が垂れ下がります。幹の繊維層が厚くあり、シュロ縄など繊維利用のために古くから栽培されます。

生育は非常に遅く、手間がかかりません。苗は園芸店で流通することは少ないので、庭木などを主に扱う植木販売店か、ネットショップなどで入手するとよいでしょう。

栽培品種に矮性のトウジュロがあります。シュロに比べて葉が小さく、先端は垂れ下がりません。葉軸も短く、庭木としてシュロより観賞価値が高いとされています。

育て方

シュロ
Samuel Petrovich/Shutterstock.com

肥沃で排水のよい土壌を好み、日向から明るい日陰で育ちます。小株は乾燥を避け、半日陰から明るい日陰で育てたほうがよいです。また小株は強い寒さで傷みやすいので、注意してください。

ヤシの育て方のポイント

ヤシの育て方
Liami/Shutterstock.com
  • 幼苗は明るい日陰に置けるので、室内で育てるのもよいでしょう。暑さの心配のない11月から4月は、窓際の日当たりのよい場所で育ててください。夏の窓際の日向は異常な高温になりやすいので避けます。
  • 小株は寒さに強くないので、冬は北風の当たらない場所に置いてください。発芽したばかりの苗は、室内で冬越しさせてください。
  • 小株は屋外の風通しのよい場所でも夏に葉焼けすることがあります。コンクリートの上などに直接鉢を置くのは避け、水切れしても葉焼けします。葉焼けしやすいビロウやシュロは、夏の西日は避けたほうがよいです。
  • 種子を入手した場合は、発芽まで時間がかかることがあります。種まきして半年程度かかることは珍しくなく、1年ほどかけて発芽することがあります。

ヤシの栽培に挑戦してみよう

ヤシの育て方
Dusan UHRIN/Shutterstock.com

耐寒性の強いヤシは、造園業界などで人気があります。大きく育って持て余した株は、造園業者に相談すれば買い取ってもらえる可能性が高いです。

豊かさの象徴であるヤシの鉢植えを庭やベランダなどに置くと、リゾートのような明るい雰囲気になることでしょう。意外と手間もかからないのも魅力的です。初心者でも育てやすいので、苗を入手して気軽に栽培に挑戦してみてください。

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