バラの専門家がズバリ答える! コンパクトに育つブッシュローズと生育不良の株の剪定
ひと口にブッシュローズの剪定といっても、バラの種類や症状によって剪定方法は異なります。「うちのバラはあんまり大きくないけれど、思い切って剪定してしまっても大丈夫かな…?」と悩んでいる方、必見! コンパクトに生育するタイプのブッシュローズと、生育不良の株の剪定方法を、バラの専門家、河合伸志さんに分かりやすく解説していただきます。
コンパクトに生育するブッシュローズの剪定
ブッシュローズの剪定時期は、関東以西の平地であればバラが完全に休眠する12月下旬~2月頃です(寒冷地では寒さが緩んだ頃が適期)。つるバラを栽培している人は、つるバラの剪定・誘引を優先し、その終了後に行います。剪定時期が早すぎたり遅すぎたりすると、樹液が動いているため切り口から水分が噴出し、株の養分をロスしてしまいます。
ブッシュローズとひと口に言っても、よく伸びて樹高が高くなる品種や、コンパクトに生育するものなどさまざま。タイプに合わせた剪定が必要です。ここでは、コンパクトに生育するブッシュローズの剪定方法を解説します。よく伸びるタイプのブッシュローズの剪定は、『バラの専門家がズバリ答える! ブッシュローズの剪定方法 基本編』をご覧ください。
一般的な背の高くなるブッシュローズの場合、順調に生育していれば、上写真のように剪定では1/3強まで切り詰めますが、コンパクトに生育するブッシュローズの場合は、それほど切り詰める必要はありません。それでは、コンパクトに生育するブッシュローズの剪定はどのように行うのか、 ‘イヴ・ピアジェ’を例に、剪定の手順を解説します。
‘イヴ・ピアジェ’
花径14㎝ほどのシャクヤク咲きの大輪花。樹勢がやや弱く、耐病性も低く育てにくい品種の一つだが、力のついた株が咲かせる大きな花は圧巻の迫力がある。また、ダマスク系の強い香りも魅力的。樹高1.2mほど。
用意するもの
・剪定ばさみ
・トゲに引っかかってもよい服
・革手袋
・ゴミ袋(ビニール袋は破れやすいので、切った枝は新聞紙などで巻くか、紙袋に入れてから捨てるのがオススメです)
剪定の手順
- 葉を取り除く
株全体の姿が分かりやすくなるよう、残っている葉があれば取り除きます。多少葉があっても、全体の姿が分かる場合は、ほかの作業と並行して取り除いてもOKです。 - 枯れ枝を切る
茶色くなった枯れ枝を付け根から切ります。切り残しがないよう根元から丁寧に作業します。うどん粉病が枝まで広がってしまうと、枝が灰色になり、枯れているかどうかの判別がしにくいことがあります。枯れ枝かどうかの判別ができない場合は、枝先を切ってみます。生きている枝は、内部が緑色をしています。 - 弱小枝を切る
花の咲かない前年に伸びた細い枝(弱小枝/12月に剪定する場合は当年に伸びた枝)をつけ根から切ります。この株の場合は、鉛筆の太さ以下の枝を弱小枝として切ります。
※弱小枝の目安
弱小枝のおおまかな目安としては、大輪品種では鉛筆以下、中輪品種は割りばし以下、小輪品種は竹串以下になります。ただし大輪品種であっても枝が細めの品種があるなど、品種特性の差もあるので、そのあたりは考慮して判断します。また生育の悪い大輪品種は、鉛筆以下を基準にすると枝がなくなってしまうことがあるので、生育の度合いに応じて基準以下の細い枝でも残すようにします。 - 古枝を切る
枯れ枝と弱小枝を切った結果、古枝(前年以前の枝)だけになってしまった枝を元から切ります(慣れてくれば②~④の作業は一度にできるようになります)。
古枝(前年以前の枝)と前年の枝の区別は、前年の枝のほうが表面がつややかで、トゲもしっかりと残っています。また赤い小さな芽が葉の付け根ごとにあります。古枝は表面につやがなく、トゲも欠けていたり灰色っぽい乾いた質感です。また赤い芽も少なく、芽が黒くなっていることが多いです。 - 枝を軽く切り詰める
コンパクトに生育する品種は、特に樹高を下げる必要がないので、体力を温存するために、枯れ枝や弱小枝、古枝を切り除いた後は、樹形を整えるように軽く切り詰めましょう。高く伸びるブッシュローズの剪定に比べると切り詰めの度合いは小さく、全体の1/3程度を切り詰めます。
‘イヴ・ピアジェ’は株が横張りなので、春以降に伸びた枝が混み合ってこないよう、外芽(外側を向いた芽)の上で切るようにします(新しい枝は芽の方向に伸びていきます)。 - 掃除をして完了
剪定後の株に葉が残っている場合は摘み取ります。同時に株元を掃除し、落とした枝や枯れ葉を全て取り除きます。この作業は、病害の予防にとても重要です。
コンパクトに生育するブッシュローズの剪定は、これで完了です。
ブッシュローズの剪定は、よく伸びる樹高の高い品種はがっつり剪定し、コンパクトな品種は軽く剪定するので、切り詰めというよりは枝を透かすイメージになります。しかしながら、すべてのバラの株がこの2つにきっちり分けられる訳ではありません。中間の状態のものも存在し、それらは状況に合わせて切り詰めの度合いを変えます。
生育の悪いバラの剪定
育てているバラの生育が悪い場合、剪定をする際には注意が必要です。調子が悪い株を不用意に剪定すると、かえって株を弱らせてしまうことになります。そこで、枯れ枝を切り、残っている葉を取り除く以外は、極力剪定を控えます。贅沢をいえないので、弱小枝も大切に残します。
ここでは、調子の悪い‘楽園’を例に、生育の悪いバラの剪定方法を解説します。この株は植え付け1年後で、周りに植えてある既存のバラに圧倒され、さらに追い討ちをかけるように黒点病が発生したこともあり、生育が悪い状態です。
‘楽園’
花径は約10cmで、明るいオレンジ色で花弁の裏は黄色を帯びる。早咲きで花付きがよく、香りも強い。樹高1.2mほどとコンパクトでまとまりよく生育するが、黒星病には注意が必要。
調子の悪いバラを剪定する場合、手順は3つのみ。
1.枯れ枝をつけ根から切ります。
2.残った葉を落とします。
3.非常に枝が込み合っている場合に限り、多少枝を透かすように弱小枝を切り取ります。
これで剪定は終了です。このバラは大輪品種なので、本来ならば鉛筆以下の太さの枝は切り落とすのですが、今回は竹串程度の細い枝も残しました。弱った株の場合、あまりハサミを入れずに株の体力を温存し、春以降の生育に繋ぎます。
Credit
アドバイス&文責/河合伸志
千葉大学大学院園芸学研究科修了後、大手種苗会社の研究員などの経歴を経たのち、フリーとして活躍の場を広げる。現在は横浜イングリッシュガーデンを拠点に、育種や全国各地での講演や講座、バラ園のアドバイスやガーデンデザインを行う。著書に『美しく育てやすい バラ銘花図鑑』(日本文芸社)、『バラ講座 剪定と手入れの12か月(NHK趣味の園芸)』(NHK出版)監修など。
写真/3and garden
撮影協力/横浜イングリッシュガーデン http://www.y-eg.jp
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