八ヶ岳にある種苗メーカー「エム・アンド・ビー・フローラ」に勤務。膨大な植物の知識を生かし、花の個性を生かしたブーケのように華やかな寄せ植えが好評。ブーケ作りも得意。同社のショップ(現在はクローズ)での店長を担当しつつ、寄せ植え教室を開催。現在は、同社インスタグラムを通じて、季節毎の華やかな寄せ植えの紹介や、水やりなどガーデニングの基本知識や様々なお役立ち情報の発信を行っている。
難波良憲(なんば よしのり)の記事
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寄せ植え・花壇
【プロが解説】玄関をパッと華やかに! ハレの日の寄せ植え5実例
防犯効果も!寄せ植えで玄関を華やかに演出しよう 玄関はその家の印象を決める大事なエリアです。季節の寄せ植えで、いつも明るく美しくしておきたいもの。来客はもちろん、家人にとっても、きれいな風景がいつも目の端に入る暮らしは、心の保養にもなります。それに、玄関が草花で美しく彩られていると、防犯効果があることも国内外のいくつもの実例で示されています。 年末年始は家族だけでなく、親戚・友人の帰郷などお客様も増えるので、美しい玄関でお迎えしましょう。冬の寒さのなかで可愛い花を咲かせてくれるシクラメンを主役にした寄せ植えの実例を5つご紹介します。 「シンメトリー植え」の寄せ植えで格調高い雰囲気を演出 正方形の鉢に対称的(シンメトリー)に植物を配置した寄せ植えです。「シンメトリー植え」は整った印象があり、フォーマルな雰囲気をつくるのに最適。同じ鉢で同じ内容の寄せ植えを2つ作り、門や玄関扉の手前、左右に置くと、格式高い雰囲気を演出できます。 「きれい」のポイントは花の間に挟んだリーフ 植物の配置は、上の図のようになっています。まず、主役となるシクラメンを植えます。シクラメンは3種2株ずつ、中央と4隅に配置します。シクラメンはグリーンのフリルやピンクの八重咲き、ミニサイズなど、それぞれに異なる個性があります。その個性を際立たせるために必須なのが、リーフ類です。 長方形で示した部分はリーフ。花と花の間に挟み込むように入れます。個性的で華やかな花同士が隣り合うと個性が相殺されますが、間にリーフを入れることで、それぞれの花の個性を活かすことができます。仮に、長方形の箇所がすべて花、例えばシクラメンやパンジーだったりすると、個性が渋滞して見所がどこなのか分からなくなってしまいます。 主役を決め、それを引き立たせる脇役をキャスティングするのが、見応えのある寄せ植えのコツ。ブーケを作るときにも、お花屋さんは花だけでなく葉っぱを入れますね。寄せ植えのリーフ類もそれと同じで、リーフはいわば主役の花を引き立てる名バイプレイヤー。リーフ使いが上手になれば、寄せ植えの名手になれます。 ハードとソフトの融合 リーフといっても緑色だけではありません。発光するようなライムイエローやパープル、キャラメル色、シルバー、斑入りなど、「カラーリーフ」「オーナメンタルリーフ」と呼ばれる魅力的なリーフ類が膨大にあります。その代表的なものが、アイビー。アイビーはつる性で、茎が長く伸びる性質があります。その性質を生かして鉢の縁に配置すると、直線的な鉢(ハード)のラインを隠して、有機的なラインの植物(ソフト)を融合し、寄せ植えの完成度を格段に上げてくれます。ここではアイビー‘白雪姫’を鉢縁に配置しています。アイビーはまるで白と緑の2種類が入っているように見えますが、‘白雪姫’は株元が緑で葉先が斑入りになる品種。気温が低くなると、葉色が白っぽいクリーム色になります。 丸鉢での「シンメトリー植え」もきれい。主役は八重咲きガーデンシクラメン‘チモ’。 横長の鉢にシンメトリー植え。 「アシンメトリー植え」の寄せ植えで躍動感を演出 対称に対し、非対称(アシンメトリー)の寄せ植えは、ある一点を際立たせて躍動感のある雰囲気を演出できます。ここではワインレッドのシクラメンの存在感が際立ちます。シクラメンの色に合わせて、ビオラ、ハボタン、セイヨウイワナンテンを。クリーム色の鉢に合わせて、ネメシア、アイビー、斑入りのへーべをセレクトしています。紫と黄色は補色の関係で相性がよいため、その色の延長線上にあるワインレッドとクリーム色も好相性。色テーマは一鉢に2〜3色くらいにすると組み合わせもしやすいです。 立てかけても使えるDIY「ラインフラワープランター」 このプランターはDIYで作ったものです。フラワーアレンジメントで、テーブルセンターのようにライン状に花を装飾する方法がありますよね。それから発想を得て、寄せ植えプランターバージョンを作ってみました。名付けて「ラインフラワープランター」。地面から咲いているような自然な雰囲気で、いつもとは違う表情が楽しめます。デッキなどに置くと、身近で花が眺められますよ。 4列の板材のうち、1列を植栽升としてあけ、そこに土を入れるスペースとしてシートのままの鉢底網をコの字状にはめ込んでいます。板材には屋外木材用の防腐剤を塗って仕上げているので、通常通りに水やりができます。 立てかけると板が額縁のような効果を発揮し、花を際立たせて見せてくれます。中央にシクラメンを配置し、リーフ類を加えてほぼシンメトリーに植えています。赤い実のチェッカーベリーもアクセントに。 立てかけたときに土がこぼれないように、植栽後は土表面に水苔をギュッと詰めています。 ご覧いただいたように、同じシクラメンを主役にしても、シンメトリーで植えるか、アシンメトリーにするか、また植え込む鉢によっても雰囲気の異なる寄せ植えが作れます。ぜひ、リーフ類を上手に使って、冬の寄せ植えを楽しんでみてくださいね。
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寄せ植え・花壇
【プロが解説】クリスマスにぴったり!1鉢で華やかさ続くブーケのような12月の寄せ植え
冬は寄せ植えに最適な季節 パンジーやシクラメン、ハボタンなどを使った華やかな冬の寄せ植え。 冬は花が少なくなると思われがちですが、寄せ植えの花材は逆に豊富になる時期です。気温の低さは冷蔵保存のように花の美しさを長く保ってくれますし、生育もゆっくりなため、水やりや花がら摘みなどの世話に忙しなく追われることもありません。クリスマスや年末年始などのイベントには、季節の華やかな寄せ植えでお客様をお迎えしませんか。 冬の寄せ植えの主役シクラメン 個性豊かなシクラメンたち。 シクラメンの進化は目覚ましく、花色や花形もユニークなものが次々に登場します。こんもりと茂った葉っぱの中から細長い茎をスッと伸ばし、上部に花が集まって咲く姿は、そのままでブーケのよう。ピンクや赤色やフリルなど、華やかなものが多いので、冬の寄せ植えの主役にもぴったりです。 寄せ植えに使うシクラメンの選び方 屋外で栽培可能なガーデンシクラメンの中でも大輪種の‘ドリームスケープ’。株幅が20~30cmまで広がるため、寄せ植えでは大鉢に。 寄せ植えに使うシクラメンは、耐寒性の強い「ガーデンシクラメン」と呼ばれるタイプです。ほかに室内で楽しむタイプのシクラメンもありますが、こちらは耐寒性がなく、たいていは1鉢で楽しめるよう大きな鉢に植えられているため、寄せ植えには向きません。 シクラメンが主役のクリスマスの寄せ植え ガーデンシクラメン‘ダブルワーリーギグ’を主役に、カラーリーフや実ものを入れたクリスマス用の寄せ植えを作ってみましょう。丸い鉢の場合は、中央から後方へ草丈の高い植物を配し、その周辺にだんだんと低くなるように植物を選ぶと、きれいなドーム形に仕上がります。ゴールドに着色した松ぼっくりを飾って、クリスマス感を演出します。 【花材】 ガーデンシクラメン‘ダブルワーリーギグ’ 1苗キンギョソウ‘ブランルージュ’ 2苗ヒューケラ‘メルティングファイヤー’ 2〜3苗チェッカーベリー 2〜3苗 (*鉢の大きさに応じて苗の数を調整してください) 【その他の材料と道具】 鉢/直径20cm前後鉢底石培養土水を張ったバケツ(手洗い用)/ 何も入っていないバケツ(土捨て用)回転台(あると便利) 【作り方】 ① 鉢の底に鉢底石を入れ、培養土を8〜9分目くらいまで入れます。鉢は回転台の上に乗せて作業します。 ② シクラメンをポットから取り出し、ビニールポットの中で根が回っていたらベリッとはがしながら、ほぐします。また、葉っぱをかき分けて、内側に枯れたつぼみや葉、黄変した葉があれば取り除きます。この後に登場するほかの植物も同様にします。 枯れた葉っぱにはカビが発生することがあり、そのままにしておくと病気の原因となります。 ③ シクラメンの株元を両手で持ち、土の中にグッと押し込むように中央に植えます。最初に土を8〜9分目まで入れているので、基本的に後から土は足しません。ですから、根っこが全部土の中に埋まるように、グッと押し込みながら植えます。 【きれいのPoint!】 苗をほぐす際に土を触ったら、1回1回、手を洗ってきれいにしましょう。土のついた手で植物を触ると、葉っぱや花が汚れて仕上がりが汚くなってしまいます。寄せ植えの花たちは、鉢の中で共演する、いわば舞台役者です。汚さないように丁寧に扱いましょう。 ④ キンギョソウをシクラメンの周囲に植えます。 【きれいのPoint!】 キンギョソウの葉っぱとシクラメンの茎を絡ませて、両者をなじませます。こうすることで生育後のような、よりナチュラルな雰囲気にすることができます。生育するにつれ、植物同士が自然に絡み合って一体感が出ますが、最初は隣り合わせて植えただけでは、ややよそよそしい感じがします。ですので、最初は一手間かけてあげます。何気ない作業のようですが、これが仕上がりを左右します。「美は細部に宿る」ですね。 ⑤ チェッカーベリーをポットから出します。チェッカーベリーは、太根が1〜2本伸びていることがあり、植える時に強い力をかけると折れてしまったり、土のうえに飛び出してしまうことがあります。太根があったら、根鉢にぐるっと巻いてから植え付けます。 ガーデンシクラメンの周りに植物を植え付ける際は、ガーデンシクラメンの葉をめくり上げて植えるようにしましょう。シクラメンの葉は大きく広がっているので、他の植物を植えるときに、シクラメンの葉を巻き込んで土に埋めてしまうことがありますので注意を。チェッカーベリーは鉢縁から実がこぼれるように植えます。 ⑥ ヒューケラの葉を少し斜めにして鉢縁に植えます。 【きれいのPoint!】 ヒューケラは、葉が美しいカラーリーフの代表選手。その葉がよく見えるように少し傾けます。一つひとつの植物をよく観察し、その美しさはどこにあるのかを意識し、個性を最大限活かすように配置しましょう。少し傾けて植えると土が見えなくなり、全体が植物の色合いで配色され、見応えも出ます。 ⑦ 回転台を回して全体のバランスを見てみましょう。植え込んでいくうちに、最初に植えたシクラメンが傾いてきてしまうことがあるので、微調整しましょう。 ⑧ 松ぼっくりに針金を巻きつけてピック状にし、寄せ植えに差し込みます。シクラメンの葉っぱは面積が広いので、5号くらいの大きい苗だと、寄せ植えにしたときに葉っぱの部分がポッカリ空間のように見えてしまうことがあります。そこに松ぼっくりを飾ると、可愛いアクセントに。金色に着色すると、よりクリスマスっぽい雰囲気になりますよ。 【松かさの着色方法】 全体を金色に着色してもいいし、地の色を残しておくとよりナチュラルな雰囲気に。松かさは水に濡れるとかさを閉じるので、いったん濡らして松かさを閉じ、水気を軽く拭き取って、閉じた状態で金色のスプレーをかけます。乾くと松かさが開き、先端のみが着色された状態になります。 ガーデンシクラメンの適した置き場所 ガーデンシクラメンは従来のシクラメンより寒さには強いですが、霜に何度もあたったり、雨や雪でずっと濡れた状態が続くと枯れてしまうので、置き場所は軒下などが向いています。 赤いガーデンシクラメン&チェッカーベリーの組み合わせは、クリスマスらしい雰囲気を演出するのに最適です。いくつか寄せ植えを作っておくと、より華やかになりますよ。次回はガーデンシクラメンを使った寄せ植えのバリエーションをご紹介します。お楽しみに!