まえだ・まみ/高知県四万十市出身。マンション暮らしを経て30坪の庭がある神奈川県横浜市に在住し、ガーデニングをスタートして15年。庭では、故郷を思い出す和の植物も育てながら、生け花やリースづくりなどで季節の花を生活に取り入れ、花と緑がそばにある暮らしを楽しむ。小原流いけばな三級家元教授免許。著書に『小さな庭で季節の花あそび』(芸文社)。
前田満見の記事
-
ガーデン

球根花が群れ咲く春の北海道ガーデン 〜上野ファーム〜
射的山の斜面を彩る可憐な花々 上野ファームのエントランスでは、シンボルマークが刻印された石板がお客様をお出迎え。 じつは、上野ファームを訪れたのは、今回が2度目です。初めて訪れたのが6年前。バラやクレマチス、多年草が色鮮やかな7月半ばでした。その雄大なスケールと、咲き急ぐかのように溢れる花々に、言葉では言い尽くせないほど感動し、「いつか、また違う季節に訪れよう」と心に決めていました。 逸る気持ちを抑えながら、最初に向かったのが小高い射的山。山の麓に足を踏み入れると、芽吹いたばかりの落葉樹の足元で、クリスマスローズ、シラネアオイ、スイセン、ムスカリ、ニリンソウ、そして、滅多にお目にかかれない憧れのフリチラリアが群生していました。それぞれの花は、好きな居場所を得て、待ちわびた春を喜んでいるよう。何だか、秘密の野原に迷い込んだような気分でした。 射的山の山頂。 可憐な花々に誘われるように、緩やかな山道を登ると、虹色の椅子が並ぶ山頂です。そこで目に飛び込んできたのは、360度見渡せる上川盆地の山々と、のどかな田園風景。鼻の奥をツンと刺激する冷気の清々しさに、思わず深呼吸をしたくなりました。あいにくの曇り空でしたが、一面に広がる田植え前の水を張った田んぼが水鏡のようにキラキラと輝き、とてもきれいでした。こんな景色が見られるのも、春だからこそですね。 射的山の頂上からの眺め。 スイセンが輝くノームの散歩道 射的山の山頂から来た道の反対側に山道を下ると、見えてくるノームの散歩道。前回訪れた時は造園中だったので、楽しみにしていました。 そこは、落葉樹の淡い黄緑色の若葉の木立に、緩やかに曲がりくねった一本の道が続いていました。道の両脇には、足元を照らすかのようにスイセンが群れ咲き、奥へと誘います。 時折射し込む柔らかな木漏れ日と、踏みしめる度に伝わる落ち葉のふんわりとした感触の何と心地よいこと。そのうえ、所々に愛嬌たっぷりのノーム(オーナメント)の姿も。そんな微笑ましい世界観に、夢を見ているようでした。こんな散歩道だったらどこまでも歩いて行けそうです。 絵本の世界が広がるノームの庭 ノームの散歩道を抜けると視界が開け、その先にひと際大きな西洋シロヤナギと、とんがり屋根の可愛らしい小屋が見えてきます。ここが、大人気のノームの庭です。 西洋シロヤナギは、別名黄金枝垂れヤナギともいわれ、かの有名なモネの「睡蓮」に描かれたヤナギだとか。上野ファームのホームページやインスタグラムで見る度に、いつか本物を見てみたいと思っていました。 西洋シロヤナギは、運よく芽吹きを迎えていて、長くしなやかな枝に小さな黄金色の若葉を纏い、輝いていました。その堂々たる佇まいは、まるでノームの庭の守り神のよう。ユッサユッサと春風にたゆたう様は、何とも優雅で神々しいほどでした。 そして、ガーデンを彩るチューリップやスイセンなどの可憐な球根花と、とんがり屋根のノーム小屋は、どこを切り取っても絵本の世界さながら。さらに、小屋を囲む池の水面に映った美しい光景は、一幅の絵画のようでした。 特に印象的だったのが、水面に映るスイセンの花。その姿は、まさに、スイセンの学名「Narcissus(ナルシサス)」の由来となったギリシャ神話に登場する美少年のナルシサス。初めて目にするスイセンの神秘的な姿に、暫し見惚れてしまいました。 清々しい色彩のミラーボーダー 真っ直ぐ伸びたレンガの道とブルーのガーデンチェアーが印象的なミラーボーダーは、前回訪れた7月の色鮮やかな景色が嘘のような静寂に包まれていました。 目に映る色彩は、ふかふかの絨毯のような土の色と白いチューリップ。そして、微かに見える白樺の若葉の黄緑だけ。たった2カ月でこんなに景色が違うとは…。短い花の季節に咲き急ぐ、北海道の草花の逞しさを目の当たりにしたような気がしました。 それにしても、広大なミラーボーダーに漂うひんやりした浅い春の空気と、清々しい色彩が調和し、何と心地よいのでしょう。きっと、これから次々と遅咲きのチューリップが咲き、芽吹き始めていた多年草の花が咲き始める頃は、また違った景色になっていることでしょう。何だか、想像するだけでワクワクします。 色とりどりの球根花が咲く白樺の小径 ミラーボーダーの奥にある白樺の小径では、色とりどりのチューリップやスイセン、ムスカリが競い合うように咲いていました。前回目にした景色は、白樺の新緑と下草の緑が爽やかな印象だったので、ちょっと驚きでした。聞けば、白樺の小径がこんなにも彩り豊かな表情を見せるのは、この時季だけだとか。 そう、春しか見られない特別な景色なのです。 白樺の黄緑色の若葉と白い幹に、色とりどりの球根花が映えて、何と美しいのでしょう。そのうえ、やさしい花の香りに包まれて夢のよう。「もし天国があるのなら、こんな場所がいいな」、そんなことを思いながら小径を歩きました。 春の球根花が一斉に咲き誇る上野ファームは、目に映る全てが、まるで夢の世界。またいつか、春にしか出合えない景色と感動を味わいに訪れたいと思います。
-
育て方

憧れの春咲き球根花〜シラー・カンパニュラータ&フリチラリア・メレアグリス〜
私が好きな春咲きの球根たち 小さな庭に、春一番を運んでくれる、スノードロップやムスカリ、水仙、チューリップ、シラー・カンパニュラータ、フリチラリア…..。春の球根花は、どれも個性的でとびきり愛らしい姿をしています。中でも、釣鐘形のシラー・カンパニュラータとフリチラリア・メレアグリスは、イギリスの森や庭園に咲く景色に憧れて植えた球根花です。 シラー・カンパニュラータ~ブルーベルの森に憧れて~ シラー・カンパニュラータを庭に植えたのは、かれこれ17年も前のこと。きっかけは、ちょうど庭づくりを始めた頃、ガーデン雑誌で目にした「イングリッシュ・ブルーベルの森」でした。ページをめくると目に飛び込んできた若芽色の初々しい木々の緑と、その足元に絨毯のように群れ咲く青い花。初めて見た景色とイングリッシュブルーベルの可憐な美しさに心を奪われ、「庭のどこかにこんな景色をつくりたい!」と思いました。 早速、秋になるのを待ってイングリッシュ・ブルーベルの球根を探してみましたが、なかなか手に入らず….。代わりに、よく似たシラー・カンパニュラータという球根を見つけました。2つの花の違いは、どちらも同じ「ヒヤシンソイデス属」ですが、ブルーベルは「ノンスクリプタ種」。シラー・カンパニュラータは「ヒスパニカ種」に分類されています。確かに、よく比べてみると色合いと花の咲き方が違いますが、見た目も性質もさほど違いがなかったので、10球ほどヤマボウシの株元に植えてみることにしました。 待ちに待った翌春。初めて目にしたシラー・カンパニュラータは、薄紫のコロンとした釣鐘形の愛らしい花でした。その花姿にすっかり魅了され、それからは毎秋、同じ場所に少しずつ球根を植え込みました。 下萌えの頃、乾いた土の中から一斉に芽吹き始めるシラー・カンパニュラータ。鳥のクチバシのように固く引き締まった姿は、冬の名残の寒さをぐっと堪えているかのよう。ひと雨ごとに暖かくなる春の陽射しと共に、徐々に背伸びしながら放射状に葉を広げます。しばらくすると、葉の中心に隠れるように花芽をつけ、日に日にニョキニョキと花茎を伸ばします。そんな球根花特有のみずみずしく力強い姿を見ると、何だかこちらまで、縮こまった身体を背伸びしたくなります。そして、春分の日を迎える頃、穂状のつぼみに色が差し始め、下の方からだんだんと薄紫色の花が咲きます。 嬉しいことに、年を重ねる毎に株が充実し花数も増えてきました。さらに、いつの間にか思いがけない場所で増えて、より自然な風情に。ようやく、庭につくりたかったあの憧れの「ブルーベルの森」の景色ができてきたような気がします。 ヤマボウシの若葉の木漏れ日の下、群れ咲く薄紫の小さな花々は、耳を澄ませば「チリンチリン」と鈴の音が聞こえてきそうです。 フリチラリア・メレアグリス~妖精が住む魅惑の花~ 釣鐘形の赤紫と白の市松模様の花弁が魅力のフリチラリア・メレアグリス。じつは、この花を知ったのは3年前から始めたインスタグラムでした。ある時、「オススメ」のアカウントを覗いてみると、イギリス王立植物園「キューガーデン」の地面を埋め尽くさんばかりのこの花の群生に目が釘付けになりました。「一体、この花は何?!」と、胸がドキドキするほど感動しました。まさに、ひと目惚れです。 ウィリアム・モリスも好んだフリチラリア・メレアグリス この花の原産地は、欧州~西アジア。別名チェッカーリリー、スネークヘッドとも呼ばれ、イギリスでは、「妖精が住む花」として、古くから親しまれているそうです。まさか、フリチラリア・メレアグリスがそんな花だったとは….。 そのことを知った時、ふと、あるデザイン画が頭に浮かびました。それは、「モダンデザインの父」と呼ばれる19世紀のイギリスの詩人、ウィリアム・モリスがデザインした一枚の壁紙です。 直ぐに、数年前に「ウィリアム・モリス展」で購入した図録を開いてみたところ、「ブラックソーン(スピノサスモモ)」というタイトルのデザイン画に、この花が描かれていたのです。驚きと同時に、感動で胸がいっぱいになりました。改めて図録を読み返してみると、このデザイン画に描かれている植物は、モリスが「地上の楽園」と表現したコッツウォルズ地方にある別荘「ケルムスコット・マナー」に自生していた野草たち。ページの右下には「スモモ、ヒナギク、ワスレナグサ、バイモ(アミガサユリ)」と、小さく記されていました。 そう、フリチラリア・メレアグリスは、日本で茶花や生け花として親しまれているバイモユリやクロユリの仲間だったのです。何だか、急にこの花が身近に感じられ、「きっと、モリスもこの花が好きだったんだろうな…. 」と思うと、どうしても実物を見たくなりました。 ●ウィリアム・モリスの過ごした「ケルムスコット・マナー」の記事はこちら 庭に咲いた2色の花 それから、ようやくインターネットのサイトで球根を見つけ、試しに5球だけ庭に植えてみました。そして、一昨年の春、庭に3輪のフリチラリア・メレアグリスが咲きました。そのうち1輪は何と白花。残念ながら2球は芽吹きませんでしたが、白花が咲いたのは嬉しいサプライズでした。実物の花は、花弁の市松模様は想像以上に繊細で奥深い色合い。見れば見るほど幻想的で、イギリスで「妖精が住む」といわれている理由が頷けます。それに、バイモユリやクロユリのような、奥ゆかしく品のよい風情も感じました。 北海道ガーデンでの偶然の出合い じつは、2019年の5月上旬。友人と訪れた北海道旭川市の「上野ファーム」で、思いがけずフリチラリア・メレアグリスに出合いました。北海道の5月は、まさに芽吹きの春。園内は、木々の枝先が淡い若芽色に染まり、足元にスイセン、ムスカリ、チューリップなどの無数の球根花が鮮やかな彩りを添えていました。そして、射的山の斜面とノームの庭に、この花がたくさん咲いていたのです。何と、憧れのキューガーデンの景色が目の前に….。 その時の感動と興奮は、今でも忘れられません。 そんな思いがけない出合いに不思議な縁を感じ、ますますこの花の虜になりました。 昨秋は、新たに5球の球根を庭に植えました。 さて、今年はどんな出合いがあるでしょう。今から楽しみで仕方ありません。
-
育て方

春を待ちながら、小さな庭の冬仕事
新たなシーズンを迎える前に 立春を迎え、暦の上では春が始まる2月。 とはいえ、冬の名残の小さな庭は、まだ古枯れ色の景色が広がっています。 芽吹きが始まる前のこの時期は、やっておきたい庭仕事が山積みです。例えば、枯れ草の剪定や植え替え、つるバラの誘引や寒肥は、草花の一年の成長を決める、とても大切な作業。その他にも、構造物やガーデンファニチャーのメンテナンス、道具やラベルの整理など、新たなシーズンを迎えるための準備も始めます。 構造物をメンテナンスして冬枯れの庭を美しく 植物が休眠中の冬は、庭がすっきりしているので塗装がしやすい。 冬枯れの庭で目に付くのは、門扉や塀、ガーデンシェッドなどの構造物。そのほとんどが木製なので、2年に一度の塗り替えが欠かせません。作業は、空気が乾燥するこの時期が最適。天気予報とにらめっこしながら、晴れ間の続く数日に集中して行います。 緑が茂る初夏の様子。 使用している塗料は、オイルステインの「キシラデコール」です。その特徴は、防腐・防カビ効果があり耐候性に優れていること。さすがに15年以上経つと所々劣化が目につくようになりましたが、この塗料のおかげで随分長持ちしています。また、ムラになりにくく、塗膜の張らない木目を生かした自然な仕上がりも気に入っています。色は、いくつかあるカラーバリエーションの中から、家の外壁の色と一番馴染む「ウォルナット」をセレクト。理想としている「庭と家が一体化した庭づくり」に、この色が最適でした。また、構造物をこの色に統一することで、不思議と広がりも感じられます。 真冬の寒さが残る中、手間隙かかるこの作業はなかなか大変ですが、色のないこの時期だからこそ構造物をきれいにメンテナンスしておくと、庭の景観もそれなりに保てるし、気持ちよく庭仕事ができます。それに、なんといっても構造物は植物を引き立てる名脇役。もうじき眠りから覚める主役たちがどう輝けるかは脇役次第ですから、手は抜けません。 ガーデンチェアやガーデンシェッドの窓枠はニュアンスカラーで絵になる景色を演出 もう一つ、この時期にメンテナンスしておきたいのがガーデンチェア。できれば、無塗装で自然劣化の風合いを楽しみたいところですが、狭い庭では、どうしても汚らしく見えてしまうので水性塗料を塗っています。 使用している日本ペイントの「The Rose Garden Colors」は、嬉しいことに、木部と鉄部に使用可能で、微かな光沢感のある美しい仕上がりに。34色あるニュアンスカラーも、どれも花や緑と調和するコーディネートしやすい色合いです。その中から「オンブラージュ」と「シャルボヌー」の2色をセレクトしました。 「オンブラージュ」は、例えるならブルーグレー。鉄製とチーク製のガーデンチェアに使用しています。ガーデンチェアは、読書をしたりお茶を飲んだりと寛ぐだけでなく、そこにあるだけで自然と絵になる景色を演出してくれるアイテム。色やデザインによって庭の雰囲気がガラリと変わるので、色選びは大切です。この色は、パッと目を引くわけではないけれど、春から秋は草木の緑に溶け込み、どんな花色も美しく見せてくれます。そして、冬枯れ色の景色にも静かな彩りを添えてくれる、なんとも味わい深い色です。 もう一つの「シャルボヌー」は、グリーンブラウン。3年前、ガーデンシェッドの窓枠をオフホワイトからこの色に塗り替えました。「シャルボヌー」の深みのある色は、窓際に誘引しているアプリコット色のつるバラ‘ギスレーヌ・ドゥ・フェリゴンド’と、紫色の濃淡のクレマチス‘流星’、‘ビクター・ヒューゴ’とよく調和し、明るい印象だった窓際の景色が、ぐっとシックに変わりました。 窓枠の色一つで、見慣れた景色がこんなにも新鮮に感じられるなんて。色選びは、本当に大切ですね。 新たなシーズンを気持ちよく迎えるために それから、新たなシーズンを迎えるために整えておきたいのが、庭仕事に必要な道具や肥料の補充、ラベルやポット鉢の整理。 グローブや箒、麻ひもなど消耗の激しいものは、新しく買い足します。ちなみに、わたしのお気に入りのグローブは、「ショウワグローブ株式会社」が販売しているもの。ガーデニング用のグローブではありませんが、手の小さい私の指先にもピタッとフィットする優れものです。しかも、薄くて丈夫なので、バラやクレマチスの誘引など細かな作業にとても重宝しています。見た目はおしゃれではないけれど、グローブはフィット感と機能性が一番! 手の小さい方に、ぜひおすすめです。 もう一つおすすめなのが、長年愛用している「アズマ工業」の庭園箒。繊維が太くコシの強いこの箒は、落ち葉を楽に掃くことができるうえ、「シャッ、シャッ」と、何とも小気味よい音がします。そういえば、以前、玄関前の落ち葉を掃いていたら、通りすがりの人に「その箒はどこのものですか? あまりにいい音がするので」と声をかけられ、嬉しくなりました。庭を美しく保つ秘訣は、こまめな掃除から。胸がスッとする心地よい箒の音は、庭掃除を楽しくしてくれます。 新しく庭に植えた植物のラベルの整理も欠かせません。じつは、いつの間にか絶えてしまったものも多々ありますが、庭に迎えた植物の名前を忘れないよう、ラベルを大事に保管しています。色とりどりのラベルは、目にするだけでもワクワクするし、時々見返してみると、「あ〜、そういえばこんな花も植えていたな」と、過去の庭を懐かしく回想することができます。また、「絶えてしまったけど、もう一回この花をあの場所に植えたら素敵かも」と、植栽のイメージが湧いてくることも。 たくさん集まったラベルは、17年経った小さな庭の歴史。これからもずっと大事にしたい宝物です。 冬枯れの景色に芽出し球根の寄せ植えを メンテナンスの合間には、園芸店に並び始めたスノードロップやムスカリ、ミニアイリスの芽出し球根を、鉢やリースベースに寄せ植えします。鉢に植え替える時は、ポットから取り出しそのまま鉢へ。リースベースは、一球一球株分けし、根を短く切って植え込みます。仕上げに土の表面にみずみずしい緑のハイゴケをあしらい、落ち葉と樹皮をハラリと纏わせます。 小さな鉢植えは、まとめて陽当たりのよいテラスのガーデンテーブルへ。リースベースは、偶然にもピタリとハマッたバードバスに置いて、ひと足早い春を楽しみます。 さあ、冬の庭仕事ももうひと頑張り! 待ちに待った芽吹きの春は、もうすぐそこです。
-
暮らし

針葉樹と常緑樹を楽しむクリスマスシーズン
手作りで迎えるクリスマス 街にイルミネーションが灯り、どこからともなくクリスマスソングが流れてくるこの時季。 わが家も、少しずつクリスマスの支度を始めます。毎年、玄関ドアに飾るスワッグや室内に飾るフライングリースは、フレッシュな針葉樹や常緑樹を用いて手作りします。時間も手間もかかりますが、この時季だけの清々しい色合いと香りに触れるだけで、不思議と幸せな気分になります。 また、スワッグやリースの端材で、クリスマスプレゼントに添えるタグやポプリを作るのも楽しみの一つです。 お気に入りの針葉樹 数ある針葉樹の中で、特に気に入っているのがオレゴンモミ、西洋ネズ、ブルーアイスの3品種。どれも青灰色を帯びた葉の色と清々しい香りが魅力です。 オレゴンモミは、マツ科の北米原産の常緑針葉樹。クリスマス前のこの時季だけ、北米のオレゴン州から直輸入されているそうです。日本産のモミと比べると、葉の色や密度が異なります。こんもりと丸みを帯びた形も美しく、ドライになってもパラパラと葉が落ちないので長く観賞できるのも嬉しいところ。オレゴンモミを見ると、「今年もいよいよクリスマスシーズンだな」と、ワクワクします。 ヒノキ科の西洋ネズは、北米やヨーロッパ、アジアの寒冷地に自生している常緑針葉樹。青灰色の小さな実は、「ジュニパーベリー」といわれ、熟すると黒紫色になりスパイシーな独特の香りを放ちます。西洋では、古くから香辛料や洋酒のジンの香り付けとして用いられているのだとか。日本では、アロマショップで見かける「ジュニパー」という精油が馴染み深いかもしれません。ちなみに、この精油の効能は、「心身を温め強くする」。真冬の寒さが増すこれからの季節に最適なアロマですね。 そして、ここ数年、大人気のブルーアイスもヒノキ科の常緑針葉樹。比較的暖地でも栽培可能のようで、庭植えしているお宅も見かけます。雪を纏った樹氷のような滑らかな葉が特徴で、常緑針葉樹の中でも最もシルバー系で、強い香りを放ちます。 森の香り漂う針葉樹のポプリ そんな針葉樹をリースやスワッグに用いると、青灰色を帯びた緑のグラデーションがシックで落ち着いた雰囲気に。玄関や室内に飾ると清々しい森の香りがふんわり漂います。 そして、余った材料はハサミで小さくカットしてポプリに。「パチンパチン」とカットする度に弾ける香りが、これまたたまりません。ポプリを入れる容器は、葉の形や色のニュアンスの違いを楽しめるようにガラス製のものを。 ガラス越しに見る青灰色の緑は、よりスモーキーで幻想的。どこか北欧の冬をイメージする色合いにうっとりします。さらに、相性のよいスターアニスやシナモンを加えると、見た目もお洒落。スパイス香がブレンドされて、鼻腔を刺激するキリッと深みのある香りが楽しめます。 細くカットしているので、香りはそのまましばらく楽しめますが、乾燥して徐々に弱くなったら、ヒノキの精油を1、2滴。これを何度か繰り返して香りを持続させます。針葉樹から発散されるフィトンチッド(木の香り)には、鎮静、浄化、殺菌作用があるようなので、風邪やインフルエンザの予防にもなりますね。 ●前田満見さんのクリスマス飾りの記事は、こちらでもご覧いただけます。 クリスマスプレゼントには、常緑樹のタグを添えて 針葉樹の他にも、ユーカリやヒイラギなどの常緑樹も好きな花材です。それぞれ葉の形に個性があるので、針葉樹に合わせるとリズミカルに仕上がります。 特にユーカリは、丸葉や細葉など種類が豊富です。中にはハート形のかわいらしい葉も。ブルーグレーのおしゃれな色や、ドライになっても続く香り、クリスマスが終わってもインテリアとして飾れるところが女子に大人気です。 そして、艶のある深緑と独特の造形美が魅力のヒイラギ。どこかツバキの葉に似た風情もあります。それぞれを漢字で表すと「柊・椿」。冬から春へ季節をつなぐ植物だということがよく分かりますね。ヒイラギもまた、ツバキと同じく邪気を払う聖なる植物として、昔から日本人に親しまれてきました。西洋でも、クリスマスになると玄関ドアにヒイラギのリースを飾っているのをよく目にしますが、文化や風習は違っても、ヒイラギに込めた想いは同じのようです。 そんなユーカリやヒイラギは、余った葉でクリスマスプレゼントに添えるタグを作ります。作り方はとっても簡単で、一葉ずつ穴あけパンチで穴をあけて麻紐を通すだけ。細字の油性ペンで名前を書き、プレゼントに添えます。この時、銀や白のペンを用いると文字が映えてきれいです。 贈る人の顔を思い浮かべながら作るユーカリとヒイラギのタグは、この一年の「ありがとう」の気持ちを込めたささやかなひと手間です。 庭からもらったクリスマスプレゼント それから、ちょっと余談になりますが、去年、ヤマボウシにかけてある巣箱を掃除した際に、あまりにきれいで捨てずに取っておいたシジュウカラの巣で、クリスマスプレゼントを作りました。 空き箱の中心に巣を入れ、周りにモミやヒムロスギ、カラマツなどの端材を詰め込んで。きっと、誰も欲しがらないと思うけれど、私には最高に嬉しいクリスマスプレゼントになりました。 さて、今年は庭からどんなプレゼントをもらえるかな? 今から楽しみです。
-
個人邸

秋から初冬の庭を彩る野菊【小さな庭と花暮らし】
郷愁を誘うノコンギクの小径 黄金色に輝く田んぼの畦道や、野辺に群れ咲く野菊….。そんな故郷の秋の情景を身近に感じたくて庭に植えたノコンギク(野紺菊)。濃紫色の花びらと黄色の花心のコントラストが鮮やかな、花径2cmほどの小さな野菊です。 当初は、鉄平石の踏み石の両脇に所々植えていたのですが、あっという間に地下茎でふえて、思い描いていた「ノコンギクの小径」になりました。 その繁殖力は想像以上で、生育も旺盛。芽吹きからそのままにしておくと、草丈は80cmにもなります。残念ながら、小径の距離はたったの7、8歩。幅も狭く覆い被さってしまうので、梅雨時に一度切り戻ししています。そうすると、脇芽が出て膝下のちょうどよい草丈に。花数も増えて、満開時には数え切れないほどの濃紫色の花が鮮やかに小径を彩ります。 踏み石を歩くと、足元でこんもりと群れ咲く野紺菊。まん丸顔の可憐な花の何と愛らしいことでしょう。ほのかな野菊の香りに思わず立ち止まって顔を近づけては小径を行ったり来たり…。 故郷の懐かしい秋の情景と重なる「ノコンギクの小径」は、わたしの一番好きな景色です。 秋の木漏れ日に映える「清澄シラヤマギク」 サクランボのような実と葉が、ほんのり色付き始めた西洋カマツカ(別名:アロニア)。その木漏れ日を浴びて咲いているのが「清澄シラヤマギク」です。この花は、千葉県の清澄山周辺で発見されたノコンギクとシロ菊系の雑種だとか。 初めて園芸店で目にした時、一瞬で心を奪われました。その特徴は、スッと伸びた細い褐色の茎。こんな茎色の菊は見たことがありません。しかも、見た目よりずっとしっかりしていて、ほどよいしなやかさも。 品のよい藤色の花との調和も素晴らしく、凛とした風情が漂います。地植えでは草丈70〜80cmほどになりますが、自立してくれるので、あえて切り戻しはせず自然樹形で育てています。 秋風にたゆたうしなやかな茎、金平糖をちりばめたような小さな花が満開になる頃は、なんとなく甘い香りが漂ってきそうです。 季節の終わりを告げるアワコガネギク 清澄シラヤマギクが満開を迎える頃、ちらほら咲き始めるアワコガネギク。なんとも可愛らしいこの名前は、黄金色の小さな花が寄り集まって泡立つように咲くことから名付けられたとか。花径1cmほどの極小花は、野菊の種類では珍しく花心と花びらが同色です。 そのせいか、黄金色の発色がとても鮮やかで目を奪われます。陽光を追って曲がったり枝垂れたり。野趣溢れる楚々とした姿も大好きです。 そんなアワコガネギクが一番映えるのが秋晴れの日。チラチラと降り注ぐ木漏れ日を浴びて、泡玉のような花が黄金色に輝きます。ワクワクするほど美しい光景です。 秋のなごりを惜しむ野菊の花あしらい 花もちのよい野菊は、切り花にも最適です。 曲がった茎や虫食い葉など、庭咲きだからこそ味わえる表情豊かな野菊をいろいろな器に活けて楽しみます。 野生種の野菊に合わせる器は、花瓶に限らずコップやピッチャー、片口、カゴなど、身近にある日用品を用います。 例えば、飴色のピッチャーや陶器のリキュールグラスなど、特徴ある色や形の器に短く活けると、野菊の可憐さが際立ちます。こんなさり気ない花あしらいは、一日の大半を過ごすキッチンやダイニングに。また、お茶の時間に添えると季節感も味わえて、より豊かで和やかなひとときになります。 片口の銅製の燗鍋も気に入りの器。古物なのでちょっと歪んでいますが、その使い込まれた佇まいが庭咲きの野菊の風情によく似合います。口径がゆったりしているので、ふんわりナチュラルに活けられて、鍋の持ち手がいい塩梅に花の支えに。 燗鍋に清澄シラヤマギクを一種。そんなシンプルな花あしらいが一番好きです。持ち運びしやすいので、ガーデンテーブルに置いたり玄関に設えたり。その日の気分で場所を変えて楽しみます。 また、竹やアケビなど天然素材のカゴも、野菊の楚々とした美しさを引き立てます。キク科のガイラルディア‘グレープセンセーション’、赤く色付いた西洋カマツカの実。庭の秋花も添えると華やかです。 秋の彩りをカゴいっぱいに詰め込んだ野菊の花カゴは、庭からの今年最後の贈り物。愛おしい一輪一輪に「ありがとう」の気持ちが溢れます。
-
暮らし

ランタンを灯す夕暮れの庭時間【小さな庭と花暮らし】
癒しをくれる虫の音とキャンドルの灯り 朝夕の風に、秋の気配を感じられる9月。酷暑で傷んだ草花の手入れをしながら過ごす夕暮れは、庭の其処此処にランタンを灯します。薄暗い葉の茂みから聞えてくる虫の音と、ランタンのほのかな灯りは、庭仕事の癒し。日中の暑さから解放されて、心地よい疲労感に満たされます。 時を経た錆色のランタン 小さな庭に吊るしているランタンは2つ。一つは、ヤマブドウの棚に吊るしているインド製のランタンです。確か、庭づくりを始めたころ、ガーデンショップで購入しました。かれこれ17年以上も前のことです。当時は黒色でしたが、今では見事な錆色に。途中、何度か塗り替えようと思いましたが、この錆色は、雨風にさらされながら庭と同じ時を重ねてきた証。そう思うと、何だか惜しくなって、ずっとそのままです。 けれども最近は、かえって錆色が庭に馴染んでいるような気がしています。特にこれからの時季は、徐々に深みを増すヤマブドウの実や葉の色合いと合って、いい雰囲気に。細かな透かし模様からチラチラと溢れる灯りと相まって、味わい深い景色を演出してくれます。 見た目はサビサビだけど、まだまだ現役。これからも、ずっとこの場所で庭を見守ってほしいランタンです。 骨董市で見つけたオリジナルランタン もう一つは、ナツツバキの枝に吊るしている鉄製のランタン。数年前に骨董市で見つけました。一見洋風ですが日本製で、もともとは室内用の灯りとして利用されていたのだとか。どこか大正ロマン漂うふっくらとしたフレームがなんとも素敵で、目にした瞬間、テラスのナツツバキの枝に吊るしたいと思いました。さまざまな物が溢れる骨董市で、これほど明確にイメージできるものはなかなかありません。とはいえ、底抜けなので、直ぐにはランタンとして使用できず…。 何か代用できるものがないかと家の中や庭を探していたら、偶然、底のサイズにぴったりの鉢皿とキャンドルガラスを見つけました。身近な物が古物にぴたりと収まった時の快感はなかなかのもの。ひらめきとアイデアで古物をリユースする楽しさは、まさにそこにあるような気がします。そうしてできたランタンは、他にはないオリジナルランタン。愛着は格別です。 デザインが素敵なので吊るしておくだけで絵になりますが、気泡ガラス越しのキャンドルの柔らかな灯りが、辺りの緑をふんわりと照らす様は、夏の陽射しを浴びて傷ついた草木を癒すよう。こちらまでホッとした気分になります。さらに、秋が深まり草木が紅葉する頃は、いっそうレトロな情緒が漂います。 それにしても、昔は、家の何処で、どんな風に使われていたのでしょうね。静かに揺れるランタンの灯りに、ふと、そんなことを想像します。 北欧デザインのランタン そして最近、新たに「Holmegaard(ホルムガード)」のランタンが仲間入りしました。「Holmegaard」は、デンマーク王室御用達のグラスウェアブランド。ここ数年、日本でも大人気なので、きっとご存じの方も多いのではないでしょうか。レザーハンドルとガラスの組み合わせが印象的なこのランタンは、シンプルなデザインと持ち運びできる手軽さ、置いたり掛けたりできる使い勝手のよさが特徴です。 実際に使ってみると、無駄のないデザインがどんな場所にも馴染み、機能性も抜群。普段はリビングやダイニングに置いていますが、庭時間が長くなるこれからの時季は、ガーデンテーブルに置いて楽しみます。 一日の終わりに、庭仕事を終えてテラスでいただくお茶は、何よりのご褒美。虫時雨とランタンのやさしい灯りに包まれて、ゆっくり時が流れていきます。
-
一年草

夏庭に涼を呼ぶ変化朝顔「江戸風情」
青紫の絞り模様の変化朝顔「江戸風情」 古来より、夏を彩る植物として日本人の暮らしに根付き親しまれてきた朝顔。 江戸時代には、突然変異の朝顔を交配した変化朝顔が一大ブームとなったようですが、ここ数年、そんなブームが再来しているようです。 実は昨年2018年の夏、わたしも園芸のウェブサイトで偶然目にした、山形県酒田市の「ホンマ農園」さんの変化朝顔「江戸風情」に一目惚れしました。注文した苗を鉢植えで育ててみたところ、夏中、絶え間なく花を咲かせてくれました。その強健さと青紫の涼やかな絞り模様にすっかり魅了され、来夏はタネから育ててみようと秋に採種しました。 タネ播きから発芽まで 待ちに待ったタネ播きは、日中の気温が20℃前後に安定した5月下旬。まず、下準備として釘で2カ所ほどタネに傷をつけました。ネットで調べたところ、発芽率が高まるとのこと。とはいえ、3mmほどの硬いタネに傷をつけるのは意外と難しく、釘が滑って手に刺さることが何度もありました。 その後、トレーに並べ浸水させて待つこと一晩。なんと翌朝には、あんなに硬かったタネから小さな根が。傷つけないように急いで苗床に移植しました。 双葉から本葉までの様子 苗床に移して3日後、早くも双葉(ふたば)が顔を出し始め、日に日に苗床が元気な双葉で一杯になりました。嬉しいことに、発芽率はほぼ100%! タネを花友さんにもお裾分けしていたのですが、彼女が播いたタネは約30%の発芽率だったとか。浸水はさせたけれど、タネに傷をつけなかったようです。もしかしたら、このひと手間が発芽率の良し悪しを左右したのかもしれませんね。だとしたら、手に刺さった痛みも報われます。 双葉が出揃ってから5日後には本葉が出てきました。一般的な朝顔の葉は、くびれがあり、葉先が3つに分かれて尖っている並葉(常葉)ですが、「江戸風情」は丸葉。ハートに似た、とても可愛らしい形をしています。 本葉が3〜4枚になると、細いつるも伸びてきたので、鉢に移植しました。 竹製のオベリスク仕立てをテラスの窓辺に タネを播いた苗が、予想以上に育ってくれたので、鉢植えの仕立て方をいくつか試してみることに。 その一つが、竹製のオベリスク仕立てです。 オベリスクはどちらかというと洋風なイメージですが、竹を支柱にすると、どこか和の雰囲気に。朝顔とも相性がよく、より夏らしい風情が楽しめます。三角形の支柱のてっぺんに、小さな素焼きの鉢も被せました。尖った先端で目や身体を怪我しないためですが、ガーデンアクセサリーのように見た目も可愛いので、庭のアクセントになります。 鉢に移植すると、直ぐに反時計回りにつるが絡まり、一日に20cm以上伸びることも。丸葉も一回り大きくなって、3〜4日で既にてっぺんに到達しました。慌てて伸びたつるを支柱の下部へ誘引しましたが、やはり上へ上へと伸びてしまうので、やむを得ず先端をカットしました。今回使用した支柱の長さは150cmでしたが、もっと長い支柱を用いてもよさそうです。 それから約1週間後、小さなつぼみが顔を出しました。ここまでくればひと安心。花が咲くのを今か今かと待っていたのですが、7月の記録的な日照不足で成長が足踏み状態に…。さらに、つぼみの一部が黄色に変色し、「もしかしたら、つぼみのまま咲かずに枯れてしまうかも」…そんな不安が胸をよぎりました。植物の成長に日光は不可欠だと、改めて痛感しました。 ようやくポツリポツリと花が咲き始めたのは、例年より1週間遅れた梅雨明け間近。梅雨空を晴らすかのような清々しい初花を見つけた時は、ほっとしました。まるで、一人歩きを始めた幼いわが子を見守るような気分。こんなにハラハラしながら開花を待ったのは初めてです。 長かった梅雨が明けると、テラスの窓辺は、朝日を纏った青紫の絞り模様の花で賑やかに。花径6〜7cmの涼やかな花は品がよく、絞り模様も一つとして同じものがありません。時には青紫と白の単色の花が混じって咲くことも。そして、お昼前には青紫から赤紫へ移ろい、徐々に萎んでいきます。こんな豊かな表情を楽しめるのも、たった半日。まさに、一期一会です。花が萎むと何となく淋しくなりますが、リズミカルに並んだ丸葉のカーテンが届けてくれる心地よい光と緑陰が、心を癒やしてくれます。 ハンギング仕立てを夏椿の枝先に そして、もう一つはハンギング仕立てです。 この仕立て方を試してみようと思ったきっかけは、今年初めて、園芸店でハンギング用に改良された新品種の朝顔を目にしたから。残念ながら花は咲いていませんでしたが、葉が枝垂れる様が新鮮であまりに素敵だったので、「江戸風情」で真似してみたいと思いました。 早速、直径20×高さ15cmの小鉢に苗を一株植え、夏椿の枝に吊るして様子を見ることにしました。案の定、つるが上へと伸び始めたので、半ば強引に下のほうへ誘引しながら葉が茂るのを待ちました。途中、上へ伸びるつるの先端をカットすると、脇枝が伸びて鉢全体にやや小ぶりの丸葉がこんもりと。なんとなくハンギングらしくなってきました。 植え付けから約20日後に、無事に開花。夏椿の枝先で軽やかに揺れる涼やかな花は、水鉢に浮かんだホテイアオイやフロッグピットと共に、庭に一服の涼を運んでくれます。 「江戸風情&クレマチス」の嬉しい共演 また、鉢植えのクレマチスの足元に、試しに一株ずつ植えつけた「江戸風情」が、クレマチスの二番花と同時期に開花するという嬉しい出来事もありました。クレマチスは、壺咲きの‘天使の首飾り’と‘紫苑の君’。どちらも返り咲き性のよい品種なので、初夏に咲いた一番花を切り戻ししていたのです。 よほどこの場所が気に入ったのか、クレマチス用のネットに絡みながら軒まで伸びました。そんな「江戸風情」に寄り添う小指ほどのクレマチスの何と微笑ましいこと。花のサイズも色合いもバッチリです。今年初共演の「江戸風情&壺咲きクレマチス」。なかなかのベストカップルです。 タネ播きならではのサプライズ じつは、不思議なことに、タネ播きした「江戸風情」の中に、並葉(常葉)の形をしたものが何株か出てきました。「こんなことってあるの?」と疑問に思いながらも、なんだか面白いことが起こりそうな予感がしたので、丸葉の「江戸風情」と一緒に鉢植えすることにしました。 しばらくすると、丸葉と並葉がオベリスク仕立ての鉢で仲よく絡み合い、つぼみも上がってきました。「一体、並葉の朝顔はどんな色でどんな形をしているのだろう?」と、毎朝、窓を開けて見るのが楽しみで仕方ありませんでした。そして、待ちに待った開花! 並葉の朝顔は、濃青紫に白い筋入りの大輪花でした。どことなく「江戸風情」の青紫の単色花に雰囲気が似ているような…。もしかして先祖返りでしょうか? ともあれ、こんなサプライズもタネ播きしたからこそ味わえます。 そういえば、「江戸風情」は、赤い「るこう草」が突然変異して誕生した朝顔だそうです。このサプライズも、そんな性質が影響しているのかもしれませんね。 さらに、「江戸風情」の誕生秘話には、感動的な続きがあります。その「るこう草」は、花好きだった「ホンマ農園」さんの奥様が、長年大切に育てていらしたそうです。10年前、最愛の奥様が病気でお亡くなりになり、一周忌でご親戚一同が集まった時、庭に見たことのない朝顔が咲いていたのだとか。その朝顔が「江戸風情」。以来、ご主人は「突然変異を起こしたのは妻かもしれない」と思い、大切に育てていらっしゃいます。 そんなご夫婦の慈愛に満ちた秘話を知ってから、「もしかしたら、この朝顔は、奥様がご主人を慰めるために残された形見だったのかもしれない」と思うようになりました。 毎朝、静かに花開く「江戸風情」。 一輪一輪にその思いを重ねて見ると、この花に出合えた喜びと愛おしさで胸が一杯になります。 小さなこの庭で、これからも絶やさず大切に育みたいと思います。
-
みんなの庭

夏の庭を涼やかに彩るギボウシ【小さな庭と花暮らし】
花の少ない夏に涼やかな印象のギボウシ 春から晩秋まで観賞期間が長いギボウシは、半日陰のグラウンドカバーとして大人気の宿根草。近年、海外で品種改良されたギボウシが次々と発表されていますが、もともとは日本の野山に自生している植物です。日本の気候でよく育ち、病害虫も少ないので、庭植えや鉢植えに最適です。 特に、蒸し暑く花の少ない夏は、庭の救世主。個性豊かなさまざまなギボウシが涼やかな彩りを添えています。 半日陰で冴える黄緑〜黄色系のギボウシ 数ある庭のギボウシの中で、最も植栽効果抜群なのが、黄緑〜黄色系の‘ゴールデンティアラ’と‘グアカモール’、‘リトルオーロラ’の3品種。薄暗い半日陰で明るい葉色が目を引きます。 ヘンリーヅタの株元に育つ‘ゴールデンティアラ’。 ‘ゴールデンティアラ’は、黄緑に黄色の斑入りの可愛らしい小型種で、こんもりとコンパクトにまとまるので、狭い通路のヘンリーヅタの株元のグラウンドカバーに。深緑のヘンリーヅタとのコントラストも美しく、限られたスペースを最大限に演出してくれます。嬉しいことに、丈夫でよく増えるので、株分けして移植したり、花友さんに分けたりします。子株たちが、あちこちでスクスクと成長している姿を見守るのも嬉しいものです。 大葉のヤグルマソウの手前で明るい黄緑の葉を茂らせるのが、ギボウシ‘グアカモール’。 落葉樹のヒメシャラやアジサイの株元に植えている‘グアカモール’は、黄緑に葉縁が緑色の中大型種。滑らかで艶のある丸葉が上品で華やかなギボウシです。植えた当初より株がひと回り大きくなり、高木のヒメシャラや低木のアジサイ、大葉のヤグルマソウとのバランスもよくなりました。何より、醸し出す優美さが単調になりがちな下草のアクセントに。まるで発光しているかのように輝いて見えます。 斑入りのイワミツバに対比してアクセントになる鉢植えの‘リトルオーロラ’(右)。 そして、黄色系の「リトルオーロラ」は、しっかりした細長い葉が密に茂る小型種です。この「リトルオーロラ」を初めて園芸店で目にした時、混じり気のない黄金葉に一目惚れしました。迷わずカゴの中へ入れたものの、植える場所を決めていなかったので、とりあえず鉢植えに。それが後に、鉢植えで管理すると利点もあることに気づきました。 ベンチのコーナーで彩りを添える鉢植えの‘リトルオーロラ’(右)。 というのも、小型のギボウシは、鉢のサイズも重さも苦にならず楽に移動できるので、花が終わって何となく物足りなくなった場所や、庭のレイアウトを変えたい時に、とても重宝します。小ぶりながら放射状にこんもり茂った黄金葉は、その場の印象をガラリと変えてくれます。 シックでモダンなブルー系のギボウシ ユリに似た小さな筒状の花が咲く6月の‘ブルーエンジェル’。 青味がかった灰緑葉の‘ブルーエンジェル’は、一番大きなギボウシです。狭い庭には大きすぎるかなと随分迷いましたが、シックでおしゃれな葉色と流れるような葉脈に魅せられ、4年ほど前に迎えました。今では、なんと葉長40cmに成長し、予想通り狭い場所でちょっと窮屈そう。けれども、周りの草花を包み込むように大らかに葉を広げる様は、庭に安定感をもたらし、不思議なことに狭さも忘れさせてくれます。 左から、ギボウシ‘ブルーエンジェル’、‘エルニーニョ’、ブルネラ‘ルッキンググラス’。 その‘ブルーエンジェル’に寄り添うように植えた白い斑入りの‘エルニーニョ’と、ギボウシと相性のよいブルネラ‘ルッキンググラス’も同じ青灰色。あえてグラデーションを統一し、`ブルーエンジェル’が目立ちすぎないようにしています。意外にも、その色合いはコンクリート塀とも好相性。ちょっとモダンな雰囲気も気に入っています。 写真右手前の銀色がかる葉が‘ハルション’。 多品種のギボウシを地植えしている北東のシェードガーデン。中でも‘ハルション’は、一番の古株です。落ち着いた色合い、整った葉形、程よい株の大きさは、どこに植えても周りの草花とよく調和します。盛夏には、このシェードガーデンが植物にとって一番居心地よさそうで、花はなくてもみずみずしい緑のグラデーションに癒やされます。 少し高い場所で葉を広げる鉢植えの‘ファーストフロスト’。 そして、この‘ハルション’の芽変わり品種の‘ファーストフロスト’は、明るい青灰葉に黄金色の斑が入ったとても華やかなギボウシ。葉の造形美と色彩のコントラストに目を奪われます。地植えでも鉢植えでも、その場の印象を劇的に変えてしまうほどの存在感。あえて鉢植えには、花ではなく葉物を合わせてシンプルな寄せ植えにしています。 フウロソウ越しに見えるのが、地植えの‘ファーストフロスト’。 涼やかな白い斑入りのギボウシ 大株のギボウシをウエルカムコンテナに。 庭の入り口に鉢植えにしている白い斑入りのギボウシは、近所の植木市で見つけました。残念ながら品種名は分かりませんが、波打つ細長い緑葉に白い斑入りが何とも爽やか。ポット苗だった小さな株も年々充実して見映えがよくなりました。今では、このギボウシの鉢植えが庭のウエルカムコンテナです。 グリーンのストライプが浮き立つ‘ゼブラストライプ’。 そして、今春、新たに庭に迎えた‘ゼブラストライプ’は、去年から出回っている新品種だそう。白葉に細いグリーンのストライプがスタイリッシュでおしゃれなギボウシで、その名前も素敵です。白花の京鹿子とシモツケソウを合わせてバードバスの足元に植えました。まだ小株ですが、これからどんな風に成長していくのか、楽しみで仕方ありません。 姫ギボウシを小鉢や盆栽鉢で楽しむ 昨年、立ち寄った道の駅で見つけた愛らしい姫ギボウシ。何と1ポット150円と格安のお値段だったので、迷わず幾つか連れて帰りました。地植えするにはあまりにも小さくて不向きなので、墨黒の小鉢に幾つか植えることに。同じ鉢に植えることで統一感が出て、ちょっと和モダンな雰囲気になりました。和洋問わずどんな場所にも馴染むので、時々置き場所を変えて楽しんでいます。 そして、盆栽風の寄せ植えにもチャレンジしてみました。四角い隅切りの盆栽鉢に、姫ギボウシをシンプルに一種類。もう一鉢には、十和田アシと株分けしたホトトギスも添えました。イメージした景色を鉢の中に描きながら寄せ植えする作業はとても新鮮で、昔習っていた「いけばな」にもどこか共通しているなと、新たな発見もありました。本格的な盆栽は、何となく敷居が高くて習ったことはありませんが、盆栽鉢に植えるだけで、その世界観にほんの少し触れられたような気がしました。 無事に越冬し、新たに芽吹いた景色は、去年より緑深くなりました。 夏椿の木漏れ日の下、サワサワと葉を揺らす十和田アシ、もうすぐ小さな花が咲く姫ギボウシ。そして、秋にはホトトギスの花も。 盆栽鉢の中で紡がれる小さな季節を楽しみたいと思います。 併せて読みたい
-
みんなの庭

初夏の庭を彩るつるバラ【小さな庭と花暮らし】
窓際の2種のランブラーローズ ‘アルベリック・バルビエ’&‘ギスレーヌ・ドゥ・フェリゴンド’ テラスの窓際に、つるを約5m誘引している ‘アルベリック・バルビエ’は、乳白色の品のよいロゼット咲きのつるバラ。清潔感のあるほのかな香りも、このバラによく似合います。光沢のある葉との調和が素晴らしく、花後も緑陰をつくり落葉するまで美しい景観を演出してくれます。ただ、驚くほど生育旺盛なので、こまめな剪定と誘引が欠かせません。 さらに、つると葉の裏に厄介なトゲがあるので注意が必要です。とはいえ、枝はしなやかさがありどんな仕立ても可能なので、わが家は、ガーランド風に緩くつるを絡ませながら軒下に誘引しています。また、病害虫の心配も少なく、消毒や駆除といった手入れが不要なのも嬉しい限りです。 とても花つきが良いので、満開時には惜しみなくカットして室内で楽しみます。浅めの器に挿すほか、浮かべてみるのも素敵ですね。‘アルベリック・バルビエ’が醸し出す落ち着いた品の良さは、和室にも馴染むので、今年は、染付けや備前焼の器に活けてみようかなと思っています。 ガーデンシェッドの壁面と窓際を彩る‘ギスレーヌ・ドゥ・フェリゴンド’は、杏色から白色へと移ろう暖かい色彩が魅力のつるバラ。房咲きの中小輪の花も軽やかで、満開時に壁面からこぼれ咲く姿は感動の一言。橙色のシベがその魅力を際立たせています。また、刻一刻と色合いが変化するので、時間の経過とともに、さまざまな花の表情を楽しめます。残念ながら香りは微香ですが、トゲがほとんどないので扱いやすいのが長所。病害虫予防として芽吹きから開花前までニームオイルを定期的に散布しています。 そして、‘ギスレーヌ・ドゥ・フェリゴンド’が終盤を迎える頃、同じ場所にフロリダ系のクレマチス‘ビクター・ヒューゴ’が咲き始めます。つるバラとクレマチスが奏でるハーモニーも楽しみの一つです。 小輪房咲きのピンク系バラ2種 ‘ブラッシュ・ノアゼット’&‘コーネリア’ ‘ブラッシュ・ノアゼット’は、桜のような淡いピンクが美しい、小輪房咲きのつるバラです。花つきと返り咲き性がすこぶる良好で、オリエンタルなスパイス香(丁字香)も魅力的。その香りに魅了されてこのバラを庭に迎えました。ただ、天敵のバラゾウムシもこのバラに魅了されるらしく、毎年その被害に遭っています。そのため、つぼみが上がってきたら要注意。パトロールを怠らず見つけたら直ちに捕獲します。その他は、比較的病気にも強くとても育てやすいバラです。 半つる性なのでオベリスクに誘引していますが、鉢仕立ても可能。わが家の庭のような狭いスペースの植栽に最適です。 コロンとした濃いピンクのつぼみと桜色の花の優しい雰囲気は、目にするだけで自然と心が和むので、切り花にして家族が集うリビングやダイニングに飾ります。器は、花のイメージに合った形のかわいいピッチャーを。また、時には玄関に飾って来客を迎えます。摘みたての‘ブラッシュ・ノアゼット’の香りも、ささやかなおもてなし。 日々の暮らしがちょっと豊かになるこんな設えに、バラを育てる歓びを感じます。 杏ピンクの小輪房咲きの愛らしい‘コーネリア’。このつるバラを庭に迎えて、かれこれ15年以上が経ちました。庭づくりを始めて間もない頃、園芸店で初めてこのバラに出合い、温かみのある柔らかな色合いと愛らしい表情に一目惚れ。バラの栽培知識もさほどなかったのに、思わず衝動買いしてしまいました。 以来、毎年花を咲かせてくれますが、ここ数年、経年のせいか元気がなく花つきがあまりよくありません。だからこそ、このバラの愛おしさは格別です。咲いた花はもったいなくて、なかなか切り花にできないのですが、せめて一輪挿しで楽しみたいもの。間近で見る ‘コーネリア’は、柔らかな色にくっきりとしたシベが本当に美しく、時を忘れて見入ってしまいます。あと何年楽しめるかわかりませんが、もし枯れてしまっても、また庭に迎えたいほど大好きなバラです。 シックな個性が光るオールドローズ ‘カーディナル・ドゥ・リシュリュー’ ‘カーディナル・ドゥ・リシュリュー’は、オールドローズ最古の系統といわれるガリカローズ。その歴史は、2000年前の古代ローマ時代にまでさかのぼります。咲き始めの赤紫から灰色を帯びた青紫へと移ろう色合いは、惚れ惚れする美しさ。まさにオールドローズの品格と繊細さを兼ね備えたバラだと思います。 どちらかというと強い色みですが、中小輪の房咲きなので華美な印象はなく、咲き進むにつれ渋みが増すと、意外とアヤメや山アジサイ、京カノコなど和の植物とも好相性。しっとりとした和の植栽に深みを与えてくれます。 満開時には、花びらが散りそうなものから順にカットして室内に。 ‘カーディナル・ドゥ・リシュリュー’のニュアンスのある渋い色合いを邪魔しない透明なガラス製の器を選びます。また、褪色して灰色を帯びた花には、古いピューター皿もお似合いです。このお皿を添えるだけで雰囲気がぐっと西洋風になり、心は遥かローマ時代へ…。きっと‘カーディナル・ドゥ・リシュリュー’は、こんな風に長い歴史の中で、人々の心を魅了し続けてきたに違いありません。 原種系つるバラ ロサ・フィリペス‘キフツゲート’ わが家のつるバラの中で、最も伸長力旺盛なロサ・フィリペス‘キフツゲート’。白い小さな一重の花はとても清楚で、野バラのような風情があります。ところが、このつるバラは、見かけによらず一番の暴れん坊。じつは、バラの栽培に不可欠な肥料もまったく与えていないのに樹勢が非常に強く、年に何度も剪定が必要です。しかも太く硬いトゲもあるので、グローブをして作業しても手はいつも血だらけに。 「どうして、こんな狭い庭にこのバラを植えたのだろう….」と、正直なところ反省と後悔は多々ありますが、庭の入り口で、波打つ一重の白花が大きな房になって咲く姿を目にすると、そんな気持ちもどこかへ飛んでしまいます。ちょうど同じ頃、スタージャスミンも開花し、庭の入り口は白い小花で溢れます。 さらに、バラとジャスミンの甘い香りがブレンドされて、それはそれは素晴らしい香り。その香りに誘われて、どこからともなくミツバチたちもやってきて、庭の入り口は朝から大にぎわいです。そして、何より嬉しいことは、ご近所さんからも「すごくきれいね、癒やされるわ」、「ほんとにいい香り」、「またこの香りを嗅げて嬉しいわ」と、声をかけてもらえること。ありがたいことに、このバラの開花を毎年楽しみにしてくださっているのです。 満開時には、そんな皆さんへ自宅でも楽しんでもらえたらと、小さなバラの花束を差し上げています。こんなお付き合いができるのもこのバラのおかげ。 これからも手間はかかるけれど、この暴れん坊のつるバラと仲良くしていきたいと思います。
-
ガーデン&ショップ

春のお出かけお花見スポット〜城山かたくりの里〜
待ちに待ったお花見の季節 御殿場ザクラ。 うららかな休日は、日帰り可能なお花見スポットに足を伸ばして、春を満喫したくなります。いくつかある気に入りのお花見スポットに、2018年の春、偶然インスタグラムで見つけた「城山かたくりの里」が新たに仲間入りしました。 「城山かたくりの里」は、神奈川県相模原市にある個人所有の山村で、カタクリの花が咲く春のみ一般公開されています。また、所有者で花守人の小林一章氏が、昭和50年頃から始めたカタクリの自生地保護と増植の努力で、今では400坪に30万株が自生し、南関東随一の群生地として知られています。 山の斜面に群れ咲くカタクリの花 カタクリやユキワリソウ、コイワウチワが寄り添うように咲く様子を間近に見ることができます。 「城山かたくりの里」を訪れたのは、2018年の4月1日。残念ながら、カタクリの花は満開を過ぎていましたが、山林のほぼ3分の1が群生地。そこには、今まで見たことのない景色が広がっていました。 山の斜面に咲いているカタクリの花は、散策路から見上げると一輪一輪うつむきがちな花の可憐な表情がよく見え、クルンと反り返った花びらのなんと可愛らしいこと。「春の妖精」と多くの人に親しまれていることがよく分かります。背景のツツジの花も色鮮やかで、満開時には辺り一面が赤紫色に染まり、さぞ美しい光景が広がることでしょう。想像するだけでうっとりします。 キバナカタクリが咲き始めていました。 赤紫色のカタクリの花に代わって、ちらほら咲き始めていたキバナカタクリも見ることができました。黄花はやや遅咲きの希少種だそうで、黄緑がかった透明感のある花が、柔らかな木漏れ日に輝いていました。その清らかさは、一株を今すぐにでも庭に植えてみたいと思ったほどです。 素朴で愛らしいアズマイチゲ。 とはいえ、恥ずかしながらこの時まで、わたしはカタクリの生態をほとんど知らなかったのです。調べてみると、カタクリは北海道や本州の北中部に自生しているユリ科の多年草。樹木が目覚める前の早春に花を咲かせ、春が深まり草木に葉が茂る頃には葉を落とし、再び土の中で長い眠りにつくのだとか。 ニリンソウ。 さらに、タネから花が咲くまでに最短でも7年かかるそうです。7年もかけてじっくりと球根に栄養を蓄えて花を咲かせる準備をするなんて驚きですね。また、日本では自生地が激減し貴重な花となっているようです。 生態を知れば知るほど、どこか神秘的でその健気さが愛おしく感じます。と同時に、約45年もカタクリの保護と増植に時間と手間を費やしてこられた花守人の方々の情熱に、只只、感服するばかりです。 山野草の愛らしさに魅せられて 林床に咲くユキワリソウ。 カタクリの花以外にも、山林のそこかしこにさまざまな山野草の花が咲いていました。例えば、ニリンソウ、ユキワリソウ、イワウチワ、アズマイチゲ、ユキワリイチゲ、ショウジョウバカマ、オオバキスミレ…。地面に積もったフワフワの枯れ葉の間から覗かせる可憐な花たちは、「わたしを見て〜!」と言わんばかり。その姿を、何度腰をかがめて覗き込んだことでしょう。 オオイワウチワ。 じつは、山野草といえば、園芸店で売られているポット苗や庭植えのものしか見たことがなく、こんな風に自然に咲く姿を見たのは、この時が初めてでした。顔を近づけて見れば見るほど、個性的で繊細な花に釘付けに。そのうえ、どの葉っぱも愛らしく、花が終わった後も十分楽しめそう。そう思うと、わが家の庭にも植えてみたいなと思いましたが、居心地良さげに咲いている姿をしばらく眺めているうちに、ちょっと可哀想な気もしてきました。やっぱり山野草は、自然の中で愛でるのが一番なのかもしれませんね。 咲き誇る春の花木 山野草の群生地を抜け、山林の奥へと散策路を進むと、今度はサクラやツツジ、ツバキ、ヤマブキ、ミツマタなど、花木が一斉に花を咲かせていました。赤、桃、黄、白…。 色とりどりの無数の花々が織りなす景色は、まさに春爛漫。中でも、清楚な一重咲きのおかめ桜や御殿場桜、ふくよかな花びらのヤシオツツジ、シベと花びらのコントラストがハッとするほど美しいト伴椿(ボクハンツバキ)など、ふだん滅多に見られない花木の種類の多さに胸が高鳴りました。 ト伴(ボクハン)椿。 紅ヤシオツツジ&ヒカゲツツジ。 それにしても、これほど春咲きの花木のみ植栽している場所は、他に見たことがありません。 さらにその先に広がっていたのは、目を見張るほどの箒桃(ホウキモモ)の群生。真っ直ぐ上に伸びた枝いっぱいの艶やかな大輪八重咲きの紅や白、桃色の花。それぞれが競い合って春霞の空をつかもうとしている壮観さは、感動の一言。その力強さに自然と心が奮い立ちました。 そんな箒桃の下では、写真を撮る人や椅子に腰掛けて絵を描いている人、お弁当をひろげてにこやかに寛いでいる家族の姿も。まるで名画のような幸せに満ちた光景でした。 30万株のカタクリと山野草、そして、春の花木が咲き誇る「城山かたくりの里」は、まさにこの世の桃源郷。今春も、この時季ここでしか見られない景色と感動を味わいに出かけたいと思います。 「城山.かたくりの里」公式ホームページhttps://www.katakurinosato.com/



















