多くの植物が休眠中の時期は、春到来までに意外とたくさんの庭仕事があります。このシーズンにやっておくべき塗装などのメンテナンスや、庭をきれいに保つために新調しておくとよい便利なガーデングッズについて、神奈川県横浜で小さな庭のある暮らしを楽しむ前田満見さんが教えてくれます。
新たなシーズンを迎える前に

立春を迎え、暦の上では春が始まる2月。
とはいえ、冬の名残の小さな庭は、まだ古枯れ色の景色が広がっています。
芽吹きが始まる前のこの時期は、やっておきたい庭仕事が山積みです。例えば、枯れ草の剪定や植え替え、つるバラの誘引や寒肥は、草花の一年の成長を決める、とても大切な作業。その他にも、構造物やガーデンファニチャーのメンテナンス、道具やラベルの整理など、新たなシーズンを迎えるための準備も始めます。
構造物をメンテナンスして冬枯れの庭を美しく

冬枯れの庭で目に付くのは、門扉や塀、ガーデンシェッドなどの構造物。そのほとんどが木製なので、2年に一度の塗り替えが欠かせません。作業は、空気が乾燥するこの時期が最適。天気予報とにらめっこしながら、晴れ間の続く数日に集中して行います。

使用している塗料は、オイルステインの「キシラデコール」です。その特徴は、防腐・防カビ効果があり耐候性に優れていること。さすがに15年以上経つと所々劣化が目につくようになりましたが、この塗料のおかげで随分長持ちしています。また、ムラになりにくく、塗膜の張らない木目を生かした自然な仕上がりも気に入っています。色は、いくつかあるカラーバリエーションの中から、家の外壁の色と一番馴染む「ウォルナット」をセレクト。理想としている「庭と家が一体化した庭づくり」に、この色が最適でした。また、構造物をこの色に統一することで、不思議と広がりも感じられます。

真冬の寒さが残る中、手間隙かかるこの作業はなかなか大変ですが、色のないこの時期だからこそ構造物をきれいにメンテナンスしておくと、庭の景観もそれなりに保てるし、気持ちよく庭仕事ができます。それに、なんといっても構造物は植物を引き立てる名脇役。もうじき眠りから覚める主役たちがどう輝けるかは脇役次第ですから、手は抜けません。
ガーデンチェアやガーデンシェッドの窓枠はニュアンスカラーで絵になる景色を演出

もう一つ、この時期にメンテナンスしておきたいのがガーデンチェア。できれば、無塗装で自然劣化の風合いを楽しみたいところですが、狭い庭では、どうしても汚らしく見えてしまうので水性塗料を塗っています。

使用している日本ペイントの「The Rose Garden Colors」は、嬉しいことに、木部と鉄部に使用可能で、微かな光沢感のある美しい仕上がりに。34色あるニュアンスカラーも、どれも花や緑と調和するコーディネートしやすい色合いです。その中から「オンブラージュ」と「シャルボヌー」の2色をセレクトしました。

「オンブラージュ」は、例えるならブルーグレー。鉄製とチーク製のガーデンチェアに使用しています。ガーデンチェアは、読書をしたりお茶を飲んだりと寛ぐだけでなく、そこにあるだけで自然と絵になる景色を演出してくれるアイテム。色やデザインによって庭の雰囲気がガラリと変わるので、色選びは大切です。この色は、パッと目を引くわけではないけれど、春から秋は草木の緑に溶け込み、どんな花色も美しく見せてくれます。そして、冬枯れ色の景色にも静かな彩りを添えてくれる、なんとも味わい深い色です。

もう一つの「シャルボヌー」は、グリーンブラウン。3年前、ガーデンシェッドの窓枠をオフホワイトからこの色に塗り替えました。「シャルボヌー」の深みのある色は、窓際に誘引しているアプリコット色のつるバラ‘ギスレーヌ・ドゥ・フェリゴンド’と、紫色の濃淡のクレマチス‘流星’、‘ビクター・ヒューゴ’とよく調和し、明るい印象だった窓際の景色が、ぐっとシックに変わりました。

窓枠の色一つで、見慣れた景色がこんなにも新鮮に感じられるなんて。色選びは、本当に大切ですね。
新たなシーズンを気持ちよく迎えるために

それから、新たなシーズンを迎えるために整えておきたいのが、庭仕事に必要な道具や肥料の補充、ラベルやポット鉢の整理。

グローブや箒、麻ひもなど消耗の激しいものは、新しく買い足します。ちなみに、わたしのお気に入りのグローブは、「ショウワグローブ株式会社」が販売しているもの。ガーデニング用のグローブではありませんが、手の小さい私の指先にもピタッとフィットする優れものです。しかも、薄くて丈夫なので、バラやクレマチスの誘引など細かな作業にとても重宝しています。見た目はおしゃれではないけれど、グローブはフィット感と機能性が一番! 手の小さい方に、ぜひおすすめです。

もう一つおすすめなのが、長年愛用している「アズマ工業」の庭園箒。繊維が太くコシの強いこの箒は、落ち葉を楽に掃くことができるうえ、「シャッ、シャッ」と、何とも小気味よい音がします。そういえば、以前、玄関前の落ち葉を掃いていたら、通りすがりの人に「その箒はどこのものですか? あまりにいい音がするので」と声をかけられ、嬉しくなりました。庭を美しく保つ秘訣は、こまめな掃除から。胸がスッとする心地よい箒の音は、庭掃除を楽しくしてくれます。

新しく庭に植えた植物のラベルの整理も欠かせません。じつは、いつの間にか絶えてしまったものも多々ありますが、庭に迎えた植物の名前を忘れないよう、ラベルを大事に保管しています。色とりどりのラベルは、目にするだけでもワクワクするし、時々見返してみると、「あ〜、そういえばこんな花も植えていたな」と、過去の庭を懐かしく回想することができます。また、「絶えてしまったけど、もう一回この花をあの場所に植えたら素敵かも」と、植栽のイメージが湧いてくることも。
たくさん集まったラベルは、17年経った小さな庭の歴史。これからもずっと大事にしたい宝物です。
冬枯れの景色に芽出し球根の寄せ植えを

メンテナンスの合間には、園芸店に並び始めたスノードロップやムスカリ、ミニアイリスの芽出し球根を、鉢やリースベースに寄せ植えします。鉢に植え替える時は、ポットから取り出しそのまま鉢へ。リースベースは、一球一球株分けし、根を短く切って植え込みます。仕上げに土の表面にみずみずしい緑のハイゴケをあしらい、落ち葉と樹皮をハラリと纏わせます。

小さな鉢植えは、まとめて陽当たりのよいテラスのガーデンテーブルへ。リースベースは、偶然にもピタリとハマッたバードバスに置いて、ひと足早い春を楽しみます。

さあ、冬の庭仕事ももうひと頑張り!
待ちに待った芽吹きの春は、もうすぐそこです。
Credit

写真&文/前田満見
高知県四万十市出身。マンション暮らしを経て30坪の庭がある神奈川県横浜市に在住し、ガーデニングをスタートして15年。庭では、故郷を思い出す和の植物も育てながら、生け花やリースづくりなどで季節の花を生活に取り入れ、花と緑がそばにある暮らしを楽しむ。小原流いけばな三級家元教授免許。著書に『小さな庭で季節の花あそび』(芸文社)。
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