スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。 2026年10月5日発売の書籍第3弾『小さな空間を生かす立体ガーデニング 玄関から始める花のある暮らし』(発行/KADOKAWA)予約受付中!
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スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。 2026年10月5日発売の書籍第3弾『小さな空間を生かす立体ガーデニング 玄関から始める花のある暮らし』(発行/KADOKAWA)予約受付中!
3and gardenの記事
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照明・ライティング

おしゃれなイルミネーション! ‘おうちイルミ’と‘ナイトベランピング’のアイデア集
昼と夜、光の演出で異なる庭の表情を楽しもう! ここはガーデンクラフトアーティストとして活躍する原嶋早苗さんの「Sanae Garden」。庭にはたくさんのバラがあふれるように咲き、原嶋さんのモルタルデコ(モルタル造形)による蜂蜜色の石と花々が共演し、まるで英国コッツウォルズのよう。でも、この庭の美しさは昼間だけのものではありません。夜は光の演出で、昼間とは異なるメルヘンチックな世界が展開します。 カラフルな草花が夕闇に沈んでいく頃、庭の主役を引き継ぐのは「光」。暮れゆく庭に、あたたかな光が浮かび上がります。 庭の入り口のアーチを輝かせるのは、「彩プレミアム ストリングスライト(300球)」。17mのコードをアーチに2周させて、光の華やかさを強調しています。電球はLEDのため熱くならず、植物が傷むような心配もありません。 門柱の脇に堂々とそびえるのは「彩プレミアム ビッグツリーライト」。サークル状の足元の基盤に、LEDライトのコードの先についた輪ゴムを引っ掛けるだけなので、設置も簡単。飾り付け、収納も短時間でできます。LEDライトが170個も取り付けられており、この1本だけでも見応えたっぷり。 彩プレミアム ストリングスライト(300球) 8,600円(税込)全長:約17.2m/LED部:約15mLED色:シャンパンゴールド&フレンチミックス(ホワイト・ピンク・ブルー・グリーン)/LED数:300球 彩プレミアム ビッグツリーライト 21,000円(税込)約幅70×奥行70×高さ240cm(約3.5kg)LED色:シャンパンゴールド&フレンチミックス(ホワイト・ピンク・ブルー・グリーン)/LED数:170球 夜の闇に、庭の輝きはますます増していきます。 秋冬の庭も光の演出で華やかに 季節が進んで秋冬になると、庭の花色は寂しくなっていくものですが、光の演出があれば、この季節ならではの楽しみが生まれます。ガーデンハウスの前のハナズオウの木を「ひかりノベーション 木のひかり」で下からライトアップ。2灯がセットになっているので、株元の両脇に設置しました。落葉前の黄色い葉が光に輝いて、季節の終わりに美しい姿を見せてくれます。もちろんこちらもLEDなので、植物を傷める心配もありません。ローボルトで誰でも設置でき、暗くなったら自動で点灯。コントローラーで消灯時間を設定しておけば、自動消灯してくれる簡単システムです。 ひかりノベーション 木のひかり 16,280円(税込)約幅8.5×奥行8.5×高さ25cm/コード全長:5m/LED色:電球色 ガーデンハウスの扉の前には、「あかりクラシック ポストライト」(左の写真)を。ヨーロッパの街灯のようなクラシカルなデザインが庭の格調を高めてくれます。アンティークの扉のデザインともよく似合い、昼間も庭のフォーカルポイントとして活躍してくれます。木の枝にかけたのは、「あかりクラシック ルミエールランタン(テラコッタ)」(右の写真)。どちらもソーラーライト式で、太陽の光に当てるだけで充電し、暗くなると自動で点灯。最大6時間、明かりを灯し続けてくれます。 あかりクラシック ポストライト 22,400円(税込)約幅32×奥行32×高さ182cm/LED:1球(電球色)/6時間タイマー付き/ON/OFFスイッチ付き/高さは3段階調整可能 あかりクラシック ルミエールランタン 3,100円(税込)約幅15×奥行11.7×高さ35.5cm(高さは取っ手約10.5cmを含む)/LED色:電球色/LED数:1球/ON/OFFスイッチ付き/USB充電コード:約50cm/調光機能付き/カラーはブラック・キャメル・ブルーグレー・テラコッタの4色(*写真はテラコッタ) キラキラ輝く光でガーデンハウスを特別空間に ガーデンハウスの中もイルミネーションを施して、光あふれるスペシャル空間に。窓辺にイルミネーションを設置すると、光がガラスに反射してキラキラ度倍増! その向こうの庭も、いつもとは少し違って特別に見えます。いずれもローボルト仕様で屋内でも屋外でも使えます。 ローボルトLEDストレート100球(シャインレモネード) 4,620円(税込)コード全長:約12m/LED部:約10m/LED色:シャインレモネード(レモンイエロー・ホワイト)/LED数:100球 ローボルト2Dツリー L 9,800円(税込)約幅80×奥行25×高さ180cm/コード全長:約5m/組み立て式/LED色:シャンパンゴールド/LED数:153球*他にS・Mサイズあり ローボルトLEDクラスター400球(シャンパンゴールド) 7,980円(税込)コード全長:約6.8m/LED色:シャンパンゴールド/LED数:400球/コード色:グリーン 白いガーデンハウスに合わせて選んだ「ローボルト2Dツリー」は、幹も枝もすべて真っ白で、まるで雪が降り積もった樹木のよう。細い梢の先の小さな灯りが美しく際立ち、静謐な冬の森の雰囲気を室内に与えてくれます。カラフルでにぎやかなクリスマスツリーも素敵ですが、大人のクリスマスを楽しみたい方には、こんなツリーがぴったり。 窓枠に沿わせた「ローボルトLEDクラスター400球(シャンパンゴールド)」も、糸を絡めたような細いコードと線香花火のようなパッと開いた光の繊細さがおしゃれ。どちらもクリスマスに限らず、インテリアとして一年中活躍してくれます。 ハロウィンの窓辺。イルミネーションがあれば季節の演出も手軽にさりげなく、おしゃれにできます。 デザイン性の高いソーラーライトで庭にストーリーを 灯りが導く先に重厚な木の扉。「その向こうには何が…」と想像力を刺激し、ワクワクさせてくれるのも原嶋さんのガーデンクラフトの魅力です。そんなストーリーを盛り上げてくれる小道具の一つが照明。「あかりクラシック パスライト(フルール)」を小道の両脇に設置し、秘密の扉(?!)へと視線を集めます。 クラシカルなデザインが庭の雰囲気にぴったり。ソーラーライトなので、日中は太陽の光で充電し、暗くなると自然に明かりがポッと灯ります。秋の庭が温かな雰囲気に。 あかりクラシックパスライト(フルール) 3,600円(税込)約幅14cm×奥行14cm×高さ53.5cm(高さは地中杭約10.8cmを含む)/LED:1球(電球色) 『不思議の国のアリス』をモチーフにした「アリス シルエットライト」。影絵のようなデザインが昼間も庭のフォーカルポイントになってくれます。暗くなると自然に明かりが灯り、スイッチ2を設定しておくと明かりの色が青、緑、黄色、赤、紫…と揺らぎながら移り変わり、アリスの物語さながらの幻想的なムードを醸し出してくれます。 アリス シルエットライト 3,400円(税込)約幅12.8×奥行12.8×高さ54.5cm/LED:イエロー(2/ON1)・RGB(3球/ON2)/ON1/ON2/OFFスイッチ付き ひらひら舞い散る雪のように、スノーフレークが青白くきらめき動くイルミネーション「ローボルトガーデンモーションプロジェクター(スノーフレーク)」を扉に投影。夜の庭に生き生きと楽しい表情が生まれます。アミューズメントパークのようなワクワク感を自宅で演出できますよ。 ローボルトガーデンモーションプロジェクター(スノーフレーク) 4,980円(税込)約幅9.1×奥行11.4×高さ10cm、コード全長:約5m、LED色ホワイト、LED数4球 光の演出で大人な ‘ナイトベランピング’を楽しもう! ところ変わって、ここはマンションのベランダです。ベランダやテラスにローテーブルやクッション、ラグマットを持ち出して、周囲に大小のライト製品を組み合わせれば、キラキラ輝く星空の下のようなベランピング空間が簡単に演出できます。頭上に、「ローボルト ストリングパーティーライト」を垂らすことで、ほのかな明かりが食卓を照らし、傍に「あかりクラシック ルミエールランタン(ブルーグレー)」(写真内左)を置けば、キャンプ気分もアップ! 季節の植物が植わるコンテナ周辺にもソーラーライトの「フェアリー メイソンジャー」や「フェアリー ストリングライト」を飾って蓄電しておきましょう。日が暮れて、自動点灯したら、さあパーティーの始まり! ローボルト ストリング パーティーライト 11,550円(税込)全長7m/LED色:電球色/LED数:10球/付属品:取り付け用S字フック12個 コンパクトに収納できるのも嬉しい大人のツリー ベランダの左右に白い枝を広げ、キラキラ光る「ローボルト2Dツリー」は、高さ150cmのMサイズと高さ120cmのSサイズを使用。ベランダのような限られたスペースにもクリスマスの雰囲気をプラスしてくれます。枝ぶりが細かいので、飾りがなくても十分存在感のあるクリスマスツリーになりますが、オーナメントを吊したり、リボンをかけるなど、シンプルだからこそアレンジも自由自在! 飽きずに長く使えます。シーズンオフにはギュッと枝を束ねれば、80×30cmとコンパクトに収納できるのも嬉しい。 ローボルト2Dツリー M 8,800円(税込)約幅60×奥行25×高さ150cm/コード全長:約5m/組み立て式/LED色:シャンパンゴールド/LED数:115球*他にL・Sサイズあり ローボルト2Dツリー S 6,600円(税込)約幅70×奥行25×高さ120cm/コード全長:約5m/組み立て式/LED色:シャンパンゴールド/LED数:99球*他にL・Mサイズあり 日暮れとともにライトON! 植物が闇に浮かび上がる 季節の草花のそばに明かりを灯せば、葉や枝が闇に浮かび上がって、昼とは違った趣に。秋の草花の花瓶のそばには、「ルミエールランタン(ブルーグレー)」を。コンテナに挿したトレリスには、S字フックで「フェアリー メイソンジャー」を3色(ゴールド、シルバー、コッパー)ランダムに配置。植物の間に「フェアリー ストリングライト 120球」の細いコードを張り巡らせば、賑やか。どちらもソーラー式なので、電源が近くにないベランダでも手軽にライトアップが楽しめます。 あかりクラシック ルミエールランタン 3,100円(税込)約幅15×奥行11.7×高さ35.5cm(高さは取っ手約10.5cmを含む)/重量0.4kg/LED色:電球色/LED数:1球/ON/OFFスイッチ付き/USB充電コード:約50cm/調光機能付き/カラーはブラック・キャメル・ブルーグレー・テラコッタの4色 フェアリー ストリングスライト120球(シャンパンゴールド) 2,100円(税込)コード全長:約7.8m/LED色:シャンパンゴールド/LED数:120球/他にフレンチMIX(ホワイト、ピンク、ブルー、グリーン)もあり/6時間タイマー付/コード色:シルバー フェアリー メイソンジャー 1,880円(税込)約幅10×奥行10×高さ25.3cm(高さは取っ手約9.3cmを含む)/重量0.6kg/LED数:20球(シャンパンゴールド)/他にゴールド、シルバー、コッパーの3色 ベランダの片隅に、ナイトおうちカフェオープン LEDの優しい明かりは、季節を問わず、一息つける夜のカフェ空間づくりにも大活躍! 例えば、ベンチの横のつる植物に「ローボルト LED クラスター400球」の明かりをまとわせ、自動点灯するソーラー式の「あかりクラシック ポストライト」をそばに置けば、ほのかな明かりに癒やされる家族の憩いの場所に。秋冬には、フルーツをたっぷり入れたホットワインでリラックスがおすすめです。 前出の「Sanae Garden」でも、ヨーロッパの街灯のようなクラシカルなデザインで庭のアクセントになっている「あかりクラシック ポストライト」は、ポールの接続数によって182cm、147cm、112cmの3段階に高さを変えることができます。写真のように低くすれば(112cm)、ベランダに置いても圧迫感がありません。また、光があることで、夜間に植物をちょっとお手入れするのにも役立ちます。 ローボルトLEDクラスター400球(シャンパンゴールド) 7,980円(税込)コード全長:約6.8m/LED色:シャンパンゴールド/LED数:400球/コード色:グリーン あかりクラシック ポストライト 22,400円(税込)約幅32×奥行32×高さ182cm/LED:1球(電球色)/6時間タイマー付き/ON/OFFスイッチ付き/高さは3段階調整可能 『不思議の国のアリス』をモチーフに、アリスの姿が浮かび上がるランプは、テーブルに置いたり、ベンチに置いたり、お気に入りの場所に手軽に移動できるランタンタイプも。昼間は影絵のようなデザインがアクセントになり、夜には、まるでキャンドルの炎のように揺らぐ温かな色合い(スイッチ1)や、青、緑、黄色、赤、紫…と移り変わる色(スイッチ2)が楽しめます。眺めているだけで時間を忘れてしまう明かりです。 アリス シルエットランタン 3,900円(税込)約幅12.8×奥行12.8×高さ21.5cm/LED:イエロー(揺らぐLED/ON1)・RGB(3球/ON2)/ON1/ON2/OFFスイッチ付き イルミネーションを含めたライト製品は、いつもの空間を手軽に楽しく、ドラマチックに変身させるアイテムです。ご紹介した製品は「青山ガーデン」で取り扱っています。豊富なラインナップが揃い、屋内でも屋外でもコーディネートは自由自在。特別サイト「ひかりのマルシェ」でも楽しみ方を提案中。おうち時間をキラキラ輝かせませんか?
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DIY

庭のオブジェを手作りしよう! 女性でも楽にできるモルタルデコ
英国コッツウォルズにあるような蜂蜜色の不揃いの石を積み上げたような壁に、つるバラが枝を伸ばしてたわわに花を咲かせる「Sanae Garden」。ここは長年、造園・植栽の仕事とともにガーデンクラフトを手掛けてきた原嶋早苗さんの庭です。 「レンガの石積みに見えて、じつは実際に石を積んだわけではなく、土台は、発泡スチロールの一種、スタイロフォームなんです。庭のフォーカルポイントになっている花台もモルタルデコです」(原嶋さん) モルタルデコとは、スタイロフォームという建築用の断熱材を削って形を作り、そこに薄くモルタルを塗り、色づけしてレンガや擬木のように見せるガーデンクラフトです。 「スタイロフォームは、押し出し発泡ポリスチレンの商品名で、通常の発泡スチロールと違って粒子が密なんです。防水性が高くほとんど水を吸収せず、軽くて丈夫な一方、カッターなどで簡単に切ったり削ったりできて加工性もよいので、屋外使用が前提のガーデンクラフトには最適な素材なんです」(原嶋さん)。 モルタルだけを使って作ると、重量がありすぎて取り扱いも飾るのも大変ですが、原嶋さんのモルタル造形はスタイロフォームがベースになっているため、見た目の重厚感とは裏腹に、軽量で女性にも扱いやすいのが特徴です。 「石積みやテラコッタなどの風合いは、モルタルの上から塗る水性アクリル絵の具による着色で出していきます。皆さんがよく目にするテーマパークのお城やレンガの小屋も、モルタルを加工して作られているのをご存じですか? 塗料などを駆使してエイジング加工し、時代感や風合いを演出しているのですが、モルタルデコも同様に、“らしさ”を追求していきます」(原嶋さん) つまり、着色次第でどんな素材らしさも演出できてしまうのがモルタルデコの楽しさです。また、本物の石積みは費用もかかりますが、モルタルデコなら、スタイロフォームもモルタルも千円ほどで購入でき、保ちは半永久的というコストパフォーマンスの高さも見逃せません。 「それとガーデンのオブジェって、テラコッタやアイアンや石でできているものが多くて、素敵なんですけど、ちょっと位置を移動しようにも重くて、女性1人じゃ難しいものもあるんですよね。だけど、モルタルデコで大鉢や花台を作れば、ガーデンでの取り扱いも楽にできます。モルタルデコのよさは、自分のイメージ通りのものが簡単に作れて、作った後のガーデニングも楽ですし、リメイクにも向いているんです。以前、古いブロック塀をモルタルデコでプロヴァンス風にリメイクしたことがありますが、全く雰囲気が変わって素敵でしたよ」(原嶋さん) 庭の見え方は植物の組み合わせだけでなく、壁などの背景も大事。特につるバラを仕立てるときには、背景や絡ませる構造物次第で見栄えがかなり左右されますが、モルタルデコのテクニックを使えば、自分のイメージ通りの背景を自分で作り出すことができます。例えば「Sanae Garden」の壁はモルタルデコで石積み風に作り、そこにいくつかの扉をつけています。バラの花の下、扉を開けるのを想像するとワクワクしませんか? 実際には隣家との境の目隠しで、その向こうに何かがあるわけではないのですが、大切なのは、この先に何があるのかしらと思わせること。それだけで実際の庭より奥行きを生むことができます。 「モルタルデコによるミニチュアハウスは想像力の賜物です。モルタルデコのクラフト教室では、最初はボードのような簡単なものから作るのですが、皆さんはこのミニチュアハウスが作りたいんですよね。これはガーデン版のドールハウスのようなもので、中にソーラーライトを入れておくんです。これを庭に置いておくと、夕方帰った時に小さな家々に灯りがともっていて、本当に妖精が住んでいるみたいで楽しいんですよ。庭に物語が生まれるワクワク感を、ぜひ皆さんにも体感してほしいですね」
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イングリッシュガーデン旅案内【英国】注目のガーデナーが生み出す21世紀のイングリッシュガーデン「マルバリーズ・ガーデンズ」後編
オープンガーデンで大人気 今回訪れているのは、クラシカルなガーデンデザインと表情豊かな植栽で人々を魅了する、マルバリーズ・ガーデンズ。ここは個人邸の庭ですが、英国の慈善団体、ナショナル・ガーデン・スキーム(NGS)のオープンガーデンに参加していて、年に数回、一般公開が行われます。また、庭園独自の一般公開日も設けられていますが、その人気は高く、どちらの日程も発表されるなり、あっという間に予約が埋まってしまうそう。 この大人気の庭園を作り上げたのは、2010年からヘッドガーデナーを務めるマット・リースさんです。彼は、英国王立植物園キューガーデンと、英国王立園芸協会のウィズリーガーデンという、世界最高峰の2つの庭園で経験を積んだ後に、20世紀を代表する名ガーデナー、故クリストファー・ロイドの自邸、グレート・ディクスターで7年間修業したガーデナー。生前のロイドから直に庭づくりを学んだという、貴重な経験を持つ人物です。 「マルバリーズ・ガーデンズ」前編では、マットさんが一から作り上げた、セイヨウイチイの生け垣に囲まれた美しいガーデンルームの数々をご紹介していますので、ぜひご覧ください。 では、庭巡りを続けましょう。 屋敷を彩るテラスボーダー 小さなウッドランドガーデンの木々の間を抜けていくと、アーチの先は明るく開けていました。左奥に屋敷が見え、その脇に、植栽豊かなボーダーが広がっています。 「ここは、先日発売されたガーデン誌〈The English Garden(2019年7月号)〉の表紙になったんですよ。写真は早朝ですね。4月には、別のガーデン誌〈Gardens Illustrated〉でも紹介されました」 屋敷に沿って、敷石の小道と花壇が長く伸びています。石と石の隙間にも緑がのぞいて、ナチュラルな雰囲気。黄色の穂を立ち上げるエルサレムセージ(フロミス・フルティコサ)や、オレンジの花穂のエレムルス、フランネルソウ、ゲラニウム、ユーフォルビアなどが混ざり咲いて、花々の競演は、遠く、奥まで続いています。 イタリア風のレンガ造りの屋敷は、ヴィクトリア朝時代の1870年に建てられたもの。テラスガーデンの植栽が、この屋敷をより美しく見せています。屋敷を背に立つと、花壇の先に芝生があって、その向こうには、パークランド(草原)が遠くまで広がっています。 このテラスボーダーは、マットさんにとって「実験」を行う場。植物の性質を確かめたり、植物同士の組み合わせを試したり、新しいものに挑戦する場所です。たくさんの草花が混じり合う植栽を魅力的に保つためには、頻繁に植え替えを行うなど、こまめなメンテナンスが欠かせませんが、マットさんは労力を惜しみません。さすが、「世界一、忙しい庭」と呼ばれるグレート・ディクスターで修業したガーデナーさんです。 ゲラニウムにジギタリス、バーバスカム、セリンセ、オリエンタルポピー、エリンジウムなど、たくさんの植物が混じり咲くボーダー。それぞれが自由に茂り、ラフな雰囲気が心地よい楽しい一角。左側には、パーゴラがあります。 花壇の中で、オレンジがかった明るい色を添えていたのは、一重のハイブリッドティー、‘ミセス・オークリー・フィッシャー(Mrs. Oakley Fisher)’。これは、マットさんにとって大切なバラなのだそう。なぜなら、名園シシングハースト・カースル・ガーデンを作り上げた、ヴィタ・サックヴィル=ウェストから、マットさんの師匠であるクリストファー・ロイドに贈られ、その後、ロイドからマットさんに贈られたものだから。20世紀を代表する2人の偉大なガーデナーから、新時代を牽引するガーデナーの一人であるマットさんへと託されたバラは、イギリスの庭園史の流れを象徴しているかのように思えます。 マットさんは、師匠ロイドの著書だけでなく、イングリッシュガーデンの基礎を作り上げたウィリアム・ロビンソンや、ロマンチックな植栽を得意としたヴィタ・サックヴィル=ウェストが書き残した本からも、多くを学んできたそうです。 無数の植物がコレクションされたガーデンに圧倒されてしまいますが、まだ他にもガーデンがあるとのことで、次のエリアに向かいます。 対比を楽しむトピアリーメドウ 最初、車で入ってきた時に目にしたトピアリーメドウにやってきました。真っ赤なポピーの咲くメドウに、エレガントなスタイルに刈り込まれたトピアリーがいくつも立っています。赤と緑の色彩が鮮やか! メドウにはワイルドフラワーが咲きますが、時期によっては真っ白な花が咲き広がるなど、色彩が変化するようです。 「ポピーなどが咲く自然なメドウを、人工的なトピアリーと並べることで、対比の面白さを見せているガーデンです。トピアリーの形は、鳥のようにしたいと思っています」 刈り込まれたトピアリーの頂上付近をよく見ると、まだ整形されていないよう。この部分を伸ばして、鳥を形作るのでしょうか。 グレート・ディクスターにも似たスタイルのメドウガーデンがありますが、この庭は師匠のロイドに捧げるオマージュかもしれませんね。 トピアリーメドウの奥には、柵に囲われたニワトリ用のスペースがあって、キュートな小屋が建っています。じつは、これらのニワトリもガーデナーさんたちがお世話しているとのこと。この他に、ヒツジやウシも飼われています。 クラシカルな美しさ ホワイトガーデン どんどん進んでいくと、レンガ塀でぐるりと囲われた、大きなウォールドガーデンにやってきました。扉の向こうに、ホワイトガーデンが見えます。 このウォールドガーデンの中には、英国の有名なランドスケープデザイナー、トム・スチュワート=スミスが、前オーナーのために作った庭がありました。多年草を取り入れた、モダンな要素のある、個性的なデザインの庭だったそうです。 「しかし、私たちはこの場所を、例えば、ウィリアム・ロビンソンが作ったような、ナチュラルな、イングリッシュガーデンの伝統を感じるものにしたかったので、すべて作り直しました」 ウィリアム・ロビンソンは、19世紀後半に活躍した造園家。整形式庭園全盛期の、人工的な庭園が人気を博していた時代に、植物の自然な姿を生かした庭づくりを提唱し、現代に続くイングリッシュガーデンの基礎を築きました。ミックスボーダーやメドウガーデンなど、植物が思い思いに咲き乱れる、イングリッシュガーデンのナチュラルなイメージは、ロビンソンの時代に生まれたものです。 ホワイトガーデンは作り直してから6~7年経ちますが、3年程前に生け垣を足して、エリアを拡大したそうです。人の背丈以上に伸びた白花のバラや宿根草などが、奥に建つガラス温室を覆い隠すように茂っています。 ガーデンの途中に、再び水音の演出を発見。四角く組まれた石の中心から隙間へと流れ落ちる水が底で反響して、涼しげな音が周囲に響いています。 小さな噴水は、全部で4つ。景色に静かな変化を与えています。 エレガントな雰囲気のキッチンガーデン ホワイトガーデンの隣には、野菜や果物、切り花を育てるキッチンガーデンがありました。ツゲの低い生け垣に囲まれて、季節の野菜が整然と育っています。2つの白い構造物は、果樹を育てるための大きなフルーツケージ。他の庭園にあるものを参考に、マットさん自身がデザインしたものだそう。装飾性の高い白いケージときれいに刈り込まれた生け垣が、このキッチンガーデンに優美な雰囲気を与えています。 2棟のフルーツケージの中にあるのは、サクランボの木。収穫が2度できるように、早く実る木と、遅く実る木が、それぞれ1本ずつ植えられています。果実が鳥に食べられないように、ケージはぐるりとネットで囲まれています。 訪ねた時は、ちょうど、サクランボが実っていて、足元には、イチゴが広がっていました。2段ベッドのような、効率的な空間の使い方ですね。 「2010年にここをオーナーが買い、その2~3カ月後に私は雇われ、それ以来、すべての植栽やデザインを行ってきました。これまでいろいろ手を加えてきましたが、これからももっと変えていきます。プロジェクトがたくさん待っていますが、まだまだ新しい植栽法にチャレンジして、植え込みも毎年変化させていく予定です。日本は幾度か行きましたが、北海道の庭はまだ見たことがありません。クマに遭遇しないように気をつけながら、いつか行ってみたいと思っています」 マットさんは最後に、未来の庭への思いをそう話してくれました。 ホワイトガーデンとキッチンガーデンが接する地点には、向こうまでずっと続く、緑のトンネルがありました。花は終わっていましたが、キングサリのトンネルのようです。長さを尋ねてみると「80mかな」と、あまり気にしていない様子。黄金色の花が満開の頃、ここにはどんなゴージャスな景色が現れるのでしょう。 マルバリーズ・ガーデンズの庭巡りを終えて、同行した北海道上野ファームのガーデナー、上野砂由紀さんは、このように話していました。 「マルバリーズはインスタグラムで見つけたガーデンで、書籍などでも情報を得ていましたが、これが初訪問となりました。インスタでは分からなかったことも見ることができて、非常に勉強になりました。 日本では、一年草は植え替えることが定着していますが、宿根草については、一度植えたら抜いたり移動したりしてはいけない、という意識が強いですよね。(でも、ここでは宿根草も植え替えていて)イギリスに来る度、マットさんのような、果敢にチャレンジするガーデナーたちの姿を目にして、私も多くの刺激を受けます」 「帰国したらすぐに植え替えたいもののイメージも、もう頭の中にあります。よく、宿根草は植え替えちゃいけないんですか? と訊かれますが、色合わせに失敗したなとか、もう少し色を足したいな、と思う場合は、一年草でも宿根草であっても、根がダメージを受けやすいものを除いて、春や秋のタイミングで植え替えていくのは、庭にとって非常に大切なことです。マットさんも、庭の成長とともに植栽を変えていくことが、いちばん面白いことだと話していました。ガーデン雑誌でもまだ十分に紹介されていない最新のガーデン、見せていただけてよかったです」 イギリスの庭巡り、残念ながら2020年は中止となりましたが、またいつか訪れて、ガーデナーさんたちの交流によって庭が進化していく様子を、ガーデンストーリーでお伝えすることができたらと、強く願っています。
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イングリッシュガーデン旅案内【英国】注目のガーデナーが生み出す21世紀のイングリッシュガーデン「マルバリーズ・ガーデンズ」前編
緑の壁に囲まれた美しいガーデンルームの数々 ロンドンから車で西に向かい、1時間半ほど。庭園はハンプシャー州、ニューベリーの町の近くにあって、近隣には、人気のテレビドラマ『ダウントン・アビー』の撮影が行われた、ハイクレア・カースルがあります。 車が敷地内へと進み、まず目に入ってきたのは、真っ赤なポピーがトピアリーの間を埋め尽くす、鮮やかな景色! 目が釘付けになって、庭への期待がぐんと高まります。 車を降りると、ヘッドガーデナーのマット・リースさんが出迎えてくれました。マットさんは、英国王立植物園キューガーデンと、英国王立園芸協会のウィズリーガーデンという、世界最高峰の2つの庭園で経験を積み、その後、20世紀を代表する名ガーデナー、故クリストファー・ロイドの自邸、グレート・ディクスターで7年間修業し、腕を磨きました。生前のロイドから直に庭づくりを学んだという、貴重な経験を持つガーデナーです。 マルバリーズのオーナーがこの地所を購入したのは、2010年のこと。マットさんは、それからまもなくしてヘッドガーデナーを任されました。 「私がここに来た時、敷地の西の端には、以前からのウォールドキッチンガーデンがありましたが、それ以外は、サッカーグラウンドがあるだけでした。そこから、すべてのガーデンを新しくつくったのです。1年目は何もせず(といっても、観察したり、計画したりはしていたのでしょうが)、2年目以降は、そのウォールドキッチンガーデンと、少し離れたところに建つ屋敷を繋げるために、どんな庭をつくるかという課題に取り組みました」 マットさんは、オーナーとともに数々の名園を見て回り、どんな庭をつくるべきか検討を重ねました。さまざまな庭を見るうちに、目指すべき方向性が定まります。それは、「きちんと整った構造物の中で花々が豊かに咲く、イングリッシュフラワーガーデン」でした。マットさんは、オーナーの意向に沿いながら、自ら庭をデザインし、そして、セイヨウイチイの高い生け垣という「整った構造物」で囲われ、それぞれに異なるテーマを持った、魅力溢れるガーデンルームをいくつもつくり上げてきました。その「部屋」に入るたびに、玉手箱を開けるような楽しさがあります。 現在、マルバリーズの庭は、マットさんに加えて、4人の専任ガーデナーと学生さんによって維持されています。敷地の総面積は10エーカーですが、その多くは森や草原(パークランド)で占められています。マットさんが、庭園の各エリアを一緒に巡りながら、丁寧に案内してくれました。 ネプチューンに守られる水の庭 まず最初に入ったのは、コッツウォルドストーンを使った、優美なデザインの石塀に囲まれたエリアです。緑の芝生が広がり、その中央に、細長い池のような窪みが見えます。近づくと、チョロチョロと水の音が聞こえてきます。 窪みの中は細長い水路になっていました。左右から細く噴き出す水が、カーブを描きながらその中に注がれ、静かな水音が、窪みの空間に反響して聞こえてきます。 「この庭は6年前に、何もないところからつくられました。他のガーデンとは異なるスタイルで、植物の数を抑えて、構造物を生かしたウォーターガーデンとなっています。中央の長方形のスペースの下には水が流れていて、この水位を調整すると、反響する音が変わるようになっています」 「海洋の神ネプチューンの彫像と、グロット(少し窪んだ石組みの壁部分)のデザインは、2年前に追加しました。彫像は現代のもので、友人の彫刻家スティーブン・ペティファーが手掛けました」 芝生や木の葉の緑が主体の庭ですが、グロットの壁面や石塀には、‘メグ’や‘ニュー・ドーン’といったバラによって、ささやかな色が添えられています。 「庭のデザインに水を用いるアイデアは、京都に4週間滞在した時に出合った、小さな滝といった、水の音の演出から得ました。静かな空間にさらさらと水が流れる、そのサウンドに惹かれたのです」 マットさんは知日家で、京都をはじめ、日本各地を何度も訪れているそうです。 一方、細長い水路のデザインは、スペインのアルハンブラ宮殿の庭にインスピレーションを得たものだそう。 「いずれ、水辺の両側に植えた樹木は、丈高く、空を隠すくらいまで伸びて、枝葉のトンネルの中に水が流れているような景色になる予定です。これらの樹木は‘白普賢(シロフゲン)’という、日本の八重桜。アーネスト・ウィルソンが1910年に日本から輸入した桜です」 グロットの周辺には多少の色があるものの、緑を基本に構成されたシンプルな庭です。低く仕立てられた木々の下で、繊細に弧を描く水のラインが、緑に引き立ちます。それは、初めて目にする景色でした。サクラが満開の頃や、花散る頃の景色も、きっと幻想的で、美しいのだろうなと、想像が膨らみます。 いつまでも水の音に耳を傾けていたいところですが、次のエリアに進みましょう。 炎の色彩 ホットガーデン 先ほどとはテイストが変わって、こちらは植栽豊かなエリア。長方形の庭の2つの長い辺に沿って、奥行きのある花壇が伸びています。この花壇は、盛夏に向けて、トリトマ、ルピナス、ヘレニウムなど、赤やオレンジの鮮やかな色の花がどんどん咲いていくので、「炎の花壇(フレイム・ボーダー)」と呼ばれているそう。訪れたのは6月で、まだ少しおとなしい色彩でした。夏真っ盛りの様子も見てみたいものですね。 「ここは完全なミックスボーダー(混植花壇)で、樹木もあれば、灌木や宿根草、一年草もあります。そして、このポピーのように、勝手にこぼれ種で生えてくるものもあって、それらも生かしています。花壇を目にした時に面白いと思ってもらえるように、隣り合う植物が対照的な姿になるように計算して。例えば、尖った葉の横には丸い葉を、というように。形も色も対比させて、楽しめるようにしています」 「花壇の植物はどんどん育っていきますから、全体的なバランスが悪くならないように刈り込んでいます。また、花が咲き終わったら、スポットごとに次のシーズンの花へと変えていきます。例えば、ここには4月はチューリップが植わっていましたが、6月の今はルピナスがあって、次はダリアとなります。植え替えをする時は、宿根草でも多年草でも、完全に抜いてしまいます。抜いたものは、株分けすることもあれば、捨ててしまうこともあります」 銅や紫、ライムグリーン、赤……。色や形のさまざまな植物が隣り合って、生き生きと茂っています。 さて、先を見ると、小道が別の庭へと続いていて、奥のほうに置かれた彫像が見えます。 振り返ると、先ほどのウォーターガーデンから通ってきた小径があって、奥にネプチューン像が見えます。 左を見ると、遠くに可愛らしいニワトリ小屋が。 そして、右を見ると、これから向かう、池のある庭があります。 このホットガーデンは、いわば、十字の交差点の上に置かれている庭。四方向に小道が伸びて、それぞれ別の庭へと繋がっています。背の高い生け垣で囲われている庭ですが、四方向にある開口部は遠くまで視線が抜けて、メリハリのあるデザインとなっています。 水面を楽しむポンドガーデン さて、ホットガーデンから次の庭へ進むと、静かな水面が広がっていました。大きな長方形の池のある、ポンドガーデンです。 「ここも、大きなカシノキ以外は何もない、まっさらな場所でした。この庭の見どころは、池の水に映る影。水面に映り込む、周囲の植物の姿を楽しむ庭です」 池は四方を豊かな植栽で囲まれていて、その変化に富む植栽が水面に映ります。風がなく、艶やかな水面に映る草木のシルエット。ガーデンには静けさが漂います。 池の畔では、水の妖精、ニンフが水面を見つめていました。 さて、ぐるりと池を一周したら、隣のエリアへ向かいましょう。 オーナー夫人好みのクールガーデン 「ここは、清涼感のある寒色でまとめた、クールカラーガーデンです。オーナーは暖色(ホットカラー)が好きで、夫人は寒色(クールカラー)が好き。そういうわけで、先ほど見ていただいたホットガーデンと、このクールガーデンがつくられました」 「ここの花壇も、先ほどと同じように、樹木、灌木、宿根草などが混じり合った、ミックスボーダーです。また、ここでも、このルピナスが終わったら、次はサルビアという風に、植物を植え替えています」。 マットさんは、植え替えの労力を惜しまず、ベストの状態の美しい花壇を保とうとします。その姿勢は、おそらくグレート・ディスクター仕込みでしょう。師匠のクリストファー・ロイドも、美しい植栽を求めて頻繁に植え替え、「実験」を繰り返した人物でした。 株全体が青く染まるエリンジウムやサルビア、ゲラニウム、アリウムなどが青紫の色を添え、優しいトーンでまとまっていました。その他に、この庭では、アイリスやカンパニュラ、デルフィニウム、フロックス、アザミ、ワレモコウの仲間、カラマツソウの仲間などが使われています。 「花壇には、日本のカエデ ‘獅子頭(シシガシラ)’も植わっています。秋になるときれいに色づきますよ」。 心穏やかに、一つ一つの植物をじっくり眺めていたいエリアです。 太古の森のようなスタンプリー 砂利道をしばらく行くと、巨木が葉を伸ばし、濃い影を落としています。小さなウッドランドガーデンへと入っていきます。 進んでいくと、木の切り株がワイルドな雰囲気を醸し出す、スタンプリーがありました。スタンプリーとは、19世紀のヴィクトリア朝時代に生まれた庭園スタイル。切り株(スタンプ)を置いた、いわば「切り株園」で、プラントハンターによって英国に持ち込まれた、シダ類を栽培するのに適していました。 「この切り株には苔が生えていますが、これは屋久島のイメージです」 屋久島まで足を伸ばしたことがあるという、マットさん。ここは、イギリスにいながら、遠い日本での旅の記憶が蘇える場所なのかもしれませんね。このスタンプリーがつくられ始めたのは2015年ですが、もう苔が広がって、太古の森のような、長い時間が経過した雰囲気があります。苔がきれいに生えているのは、ミストシャワーが設置されていて、湿度が適度に保たれているからなのでしょう。 幹や根が折れていたり、曲がっていたり。そのワイルドなフォルムに、クサソテツやシダなどの緑が着生して、エキゾチックなイメージです。シダの中には、マットさん自身がヒマラヤで採取した、貴重なものもあるそうです。 さらに進むと、なんと大きな白い花でしょう。おばけモクレン? 「葉っぱの裏がビロードみたいに美しいね。ホオノキの仲間だよ、ほら見てごらんよ」と、マットさんが木を引き寄せたら、花茎が折れてしまいました。 同行していた、北海道・上野ファームのガーデナー、上野砂由紀さんのお顔より大きな花! 「すごいおっきいね!」日本にはない植物に、庭散策は盛り上がりました。 *『マルバリーズ・ガーデンズ』後編に続きます。
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果樹

たくさんの栄養素が含まれるキウイフルーツの育て方とは?
キウイフルーツとは? キウイフルーツは、マタタビ科マタタビ属のつる性落葉樹で、原産地は中国南部です。暑さに強い性質で、真夏もぐんぐんつるを伸ばして生育します。一方で寒さがやや苦手で、栽培の北限は関東北部から東北南部です。雌雄異株の植物のため、果実を実らせるには、雄木と雌木を植える必要があります。 一年のライフサイクルは、以下の通りです。3月頃から新芽を出し、5月中旬〜6月中旬に開花。旺盛に枝葉を伸ばし、夏には涼しい緑陰をもたらします。10月中旬〜11月中旬に果実を収穫でき、11月下旬には落葉。12〜2月に休眠します。一年を通して表情を変えていくため、季節の移ろいを強く感じさせてくれる果樹といえるでしょう。 キウイフルーツの樹高は約1.5m、株張りは3mほど。つる植物のため、家庭で栽培するなら広めの棚仕立てにするとよいでしょう。棚は2mくらいの高さで、3〜4m四方ほどを用意。つるや果実の荷重がかかるので、しっかりと支える丈夫な資材を用いて設置します。雌木は棚に仕立てて、枝葉をたっぷりと伸ばしましょう。雄木は授粉樹として開花させるのが目的となるので、コンパクトに仕立てても構いません。鉢栽培にしてもOKです。 キウイフルーツの果実は、果実の色みで青系と黄色系に分類することができます。青系より黄色系のほうが実つきがよいようです。また、青系は黄色系に比べて花が遅い傾向にあります。雄木と雌木のカップルは、受粉が順調に進むように開花期が揃う品種同士を選ぶとよいでしょう。 キウイフルーツの歴史 キウイフルーツの原種は、中国のサルナシだといわれています。サルナシは日本にも古くから自生してきた馴染み深いつる植物で、果実は2〜3cmくらいのミニサイズ。果皮はキウイフルーツのように毛で覆われておらず、つるんとした緑色ですが、味も果肉もキウイフルーツにそっくりです。 このサルナシがニュージーランドに渡り、20世紀初頭に品種改良されてキウイフルーツが生まれました。キウイフルーツという名称は、ニュージーランドからアメリカへ輸出されるにあたって、国のシンボルとなっている鳥のキウイから名づけられたといいます。今や人気のフルーツとして、全世界に普及しています。 キウイフルーツに含まれる栄養素 キウイフルーツには、多様な栄養素が含まれています。まず、ビタミンCの含有量はミカンのおよそ22。風邪予防や疲労回復などに効果があります。食物繊維も豊富で、青系のキウイはバナナの3本分の含有量があるとされ、腸内環境を整える効果が。抗酸化作用のあるビタミンEはリンゴのおよそ7倍。血行を促す働きもあるとされています。ほかにも塩分の排出を促す効果のあるカリウム、細胞に働き、造血ビタミンともいわれる葉酸、抗酸化作用のあるポリフェノールなども多く含まれ、大変栄養価の高いフルーツです。 また、キウイフルーツの属名「Actinidia」から名づけられたアクチニジンはタンパク質の分解酵素で、キウイフルーツに多く含まれる成分。魚や肉を食べた後、消化促進や小腸への吸収率をアップさせる効果が期待できます。キウイフルーツは、食後のデザートとしてぴったりのフルーツなのです! 代表的なキウイフルーツの品種 キウイは人気のフルーツだけに、品種改良は日進月歩で進んでいます。その中から青果店で人気の高い品種はフルーツ業界にお任せするとして、ここではガーデニング用の苗として出回っている、入手しやすい品種をピックアップ。雄木と雌木のおすすめペアをご紹介します。 雌木の‘ヘイワード’はキウイフルーツの代名詞ともいえるもので、病気に強い品種。パートナーには、雄木の‘トムリ’がおすすめです。雌木の‘ゴールデンイエロー’は糖度が高く適度に酸味が乗って濃厚な味わいが魅力。果実は大きめで1本に100個ほど実ります。雄木には‘孫悟空’または‘ロッキー’と相性が抜群です。‘レインボーレッド’はやや小玉で種子の周辺が赤くなる果実が特徴。甘みが強く、酸味が少なく香りがよくてジューシー。開花期が早いので、ペアには極早生の雄木を選びましょう。‘ミンキーゴールド’は3〜4cmの小さな果実が多数実ります。つるが伸びすぎずに節間も短いため、鉢栽培などでコンパクトに仕立てることができる品種です。雄木には‘ミンキーメール’が向いています。 キウイフルーツの育て方 キウイフルーツは樹勢が強く、病害虫もつきにくい果樹です。放任しても丈夫に育つので、ビギナーにおすすめ。なんといっても、秋には豊かな実りをもたらしてくれ、収穫の喜びを味わえるのもいいですね。ここでは、植え付けから日頃の管理、収穫、追熟の仕方まで、詳しく解説していきます。 栽培環境 キウイフルーツの栽培にあたっては、日当たりがよく、風通しのよい環境を選びましょう。水はけのよい土壌でよく育ち、土壌酸度は微酸性から中性付近がよいとされています。 キウイフルーツは雌雄異株の果樹です。収穫には、必ず開花期が近い雌花と雄花の両方を植え付ける必要があります。また、旺盛につるを伸ばして生育するので、つるを誘引するための棚を設けておきましょう。雌株を棚仕立てにして枝葉を広げて育成します。雄株には果実が実らず、花を咲かせて授粉を促すのが役割なので、近くに植えて行燈仕立てにし、コンパクトに仕立ててもかまいません。 土づくり 【庭植え】 苗を植え付ける1カ月前の10月下旬頃に、土づくりをしておきます。100cm四方、深さ40〜50cmの植え穴を掘り、掘り上げた土に苦土石灰約200g、熔リン約200gと土壌の状態に合わせた適応する堆肥をよく混ぜ込みます。植え穴に戻して、少し高めに盛り上げておきましょう。1カ月ほどで分解が進んで土が熟し、植え付けに適した土壌になります。 【鉢植え】 果樹栽培用にブレンドされた、市販の園芸用培養土を利用すると便利です。 植え付け 【庭植え】 植え付けの適期は、11月下旬〜12月中旬です。土づくりをしておいた場所に、入手した苗の根鉢より一回り大きな植え穴を掘ります。植え穴に根を広げて苗を入れ、根の間にも土を入れて密着させますが、深植えにならないようにしましょう。最後にたっぷりと水やりをします。 【鉢植え】 8号鉢を用意します。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから果樹用の培養土を半分くらいまで入れましょう。苗をポットから取り出して鉢に仮置きし、高さを決めます。水やりの際にすぐ水があふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底から水が流れ出るまで、十分に水を与えましょう。 水やり 【庭植え】 地植えの場合は下から水が上がってくるので、ほとんど不要です。ただし、乾燥には弱いので、梅雨明け以降から収穫期までは、日照りが続く場合は水やりをして補いましょう。大きな葉が朝露を持たない時や、新梢が垂れ下がっている場合は、水を欲しがっているサインです。真夏は昼間に水やりすると水の温度が上がってすぐお湯になってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に与えることが大切です。 【鉢植え】 日頃から水やりを忘れずに管理します。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。新梢がややだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサインです。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイント。特に真夏は高温によって乾燥しやすくなるため、朝夕2回の水やりを欠かさないように注意します。真夏は気温が上がっている昼間に水やりすると、水がすぐにぬるま湯になって木が弱ってしまうので、朝夕の涼しい時間帯に行うことが大切です。 追肥 【庭植え】 7月、9月、11月に堆肥などの有機質肥料と緩効性肥料を株の周囲にまき、土壌にすき込んでなじませます。 【鉢植え】 2月下旬〜6月中旬に、木の状態を見て勢いがないようであれば、適宜緩効性肥料を施します。9月下旬〜10月中旬に、有機質の固形肥料を与えます。 人工授粉 風や昆虫によって自然に受粉しますが、人工授粉を行うと確実です。開花直後の雄花から花粉を採取し、やわらかい筆などにとって雌花の柱頭につけていくとよいでしょう。 摘果 品種によって異なりますが、たくさん実がつきすぎているようなら、葉4〜5枚につき1個の結実を目安に、摘果します。ほかよりも小さい実や、形が悪い実を選んで摘み取りましょう。 収穫 10月下旬〜11月に実が充実してきたら、ハサミで切り取ります。果皮に傷をつけると長く保存できなくなるので、取り扱いに注意しましょう。 追熟の仕方と食べ頃 キウイフルーツは収穫したてを味わうフルーツではなく、しばらく置いて追熟させることが必要です。デンプンを多く含む果実なので、リンゴなどエチレンを発するフルーツと一緒に置いておくと、デンプンが糖へと分解され、甘みが増します。リンゴやバナナなどと一緒に、密閉できる袋に入れて20日くらい置いておくと、糖度が増して食べ頃になりますよ! 長期保存しておきたい場合は、冷蔵庫などに入れておき、必要な時に室温で追熟させて食べるとよいでしょう。 ふっくらとして弾力があり、少し柔らかくなってきたら食べ頃。押さえて確認する場合は、真ん中あたりの腹の部分ではなく、頂部と下部の軸を挟むようにしましょう。 病害虫対策 病害虫の心配はほとんどありません。一般家庭では、無農薬で栽培できます。 仕立て方 【庭植え】 キウイフルーツはつる性植物のため、庭植えの場合は棚仕立てにしましょう。一年生苗の場合は、植え付け直後に地際から50〜60cmの高さで切り取って摘芯し、仮支柱を立てて主枝を誘引します。主枝が棚の天井部まで達したら仮支柱をはずして棚上に主枝を出し、90度曲げて棚の頂部に誘引していきます。主枝を棚で屈曲させた部分の葉腋から、副梢が発生するので、これを第2主枝として育成し、主枝とは反対方向へ棚上で一直線に誘引していきましょう。棚の下から発生する枝があれば、すべて元から切り取ります。主枝・第2主枝からは、さらに新しい枝が出てきます。枝が伸びるごとに棚に仕立てて、やがて棚全体を覆うようにします。込んでいる場所があれば、枝を元から切り取って透かし、風通しよく管理しましょう。 【鉢植え】 一年生苗の場合は、植え付け直後に地際から30cmの高さで切り取って摘芯し、仮支柱を1本立てて誘引します。その年の5〜6月に、伸びた新梢の先端を切り取って摘芯しましょう。翌年(栽培2年目)の3月頃に仮支柱を撤去し、鉢にリング支柱を設置して、芽吹く前の枝を支柱に沿わせてあんどん仕立てにします。以降は、伸びる枝葉をバランスよく支柱に誘引して育成していきましょう。 剪定 キウイフルーツは樹勢が強く、徒長枝は年に5〜6mも伸びることがあります。放任すると棚がつるで覆い尽くされてジャングルのようになってしまうことも。基本的には、棚面から地面に木漏れ日が落ち、晴れたら土壌が乾くくらいの光量を保つことを目安にするとよいでしょう。剪定の適期は1〜2月頃です。枝の先端を切り戻す剪定を中心にします。ただし、古い枝があれば元から切り取って若い枝に切りかえ、不要な徒長枝も元から切り取りましょう。込み合っている部分も光量や風通しを保つために、間引き剪定をして全体のバランスを取ります。 増やし方 挿し木で増やせます。挿し木の適期は6月頃です。勢いのある枝を選んで切り取ります。園芸用培養土を育苗トレイなどに入れて、採取した枝葉を挿しておきます。直射日光の当たらない明るい場所で、水切れしないように管理を。発根したら黒ポットなどに植え替えて育成します。大きく育ったら、植えたい場所に定植しましょう。挿し木のメリットは、採取した株のクローンになることです。 キウイを家庭菜園で育ててみよう キウイフルーツの特性や魅力、育て方まで幅広くご紹介してきました。「キウイフルーツってどんな植物?」とあまり馴染みのなかった方には、理解が深まったのではないでしょうか。収穫できる植物が庭にあると、家族の会話のきっかけにもなり、何より美味しく味わえて、暮らしを豊かにしてくれます。生食にして美味しく、タルトやケーキの飾りにも活躍するキウイフルーツを、ぜひ自宅で育ててみてはいかがでしょう。 Credit 文/3and garden ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。 Photo/1) Mattis Kaminer 2) Oksana_Konotop 3) hal pand 4) Ana Brettas 5) itaci 6) T.Kai 7) wavebreakmedia 8) noranoranamona 9) Akin Ozcan 10) 1New Africa 11) DGSHUT 12) Srdjan Delic 13) Climber 1959 14) Pavlo Baliukh 15) Andrea Ravasio 16) Tienuskin 17) Emmily 18) Filippo Cogotti /shutterstock.com 参考文献: 『決定版 はじめてでも簡単 おいしい家庭果樹づくり』 著者/大森直樹 発行/講談社 2010年11月28日第1刷発行 『はなとやさい』2015年9月号/タキイ種苗
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イングリッシュガーデン旅案内【英国】「グレイブタイ・マナー」〈後編〉イングリッシュガーデンの源流を訪ねる
緑の丘に広がるワイルドガーデン ロンドンから南へ50km。ウェスト・サセックス州の美しい田園風景に囲まれたグレイブタイ・マナーは、現在は高級カントリーサイドホテル、そして、ミシュランガイドの一つ星を獲得したレストランとして知られています。屋敷の周りに広がる35エーカー(約14万㎡)のガーデンは、宿泊かレストランのゲストのみ見学ができます。 ウィリアム・ロビンソンについては、『グレイブタイ・マナー』前編にて詳しくお話しているので、ぜひご覧ください。この後編では、屋敷の周りに広がるガーデンを散策していきます。歴史的なキッチンガーデンで採れる食材を使った、美しいお料理もご紹介しますよ。 それでは、ガーデンツアーを始めましょう。16世紀の屋敷は南を向いた丘の斜面にあって、屋敷前には、芝生と花壇からなるフラワーガーデンがあります。その外周には、屋敷を囲むようにメドウと果樹園が広がっていて、そして、丘のてっぺんに、大きなキッチンガーデンが待っています。 グレイブタイのヘッドガーデナーを務めるのは、名園グレート・ディクスターで腕を磨いた、トム・カワードです。彼は、園芸史に名を残す文化遺産、グレイブタイの管理者として、「ロビンソンにも満足してもらえるような」進歩的な庭づくりを行っています。 屋敷を囲む塀の外側には、赤いポピーやヤグルマギク、フランネルソウ、バーバスカムなどが植わっています。後ろのほうには、丈高いアーティチョークや黄花のディルなどがあって、ダイナミックな、動きのある植栽です。このような、宿根草や灌木などいろいろな種類の植物が混在するミックスボーダーのスタイルを生み出し、一般に広めたのも、ロビンソンです。 ここがメドウガーデンの始まり 塀を背に南側を向くと、眼下にメドウが広がり、その先には湖と森が見えます。100年以上前のこと、ロビンソンは周辺の森や牧草地、1,000エーカー(約4㎢)を所有していました。現在、その土地は慈善団体によって管理されていますが、おそらく、ここに見える草原や森までも彼のものだったのでしょう。 ロビンソンは、森のはずれや森の中の空き地、牧草地や湖の周りに、耐寒性のある外来種の球根花や植物を植え、それらを帰化(野生化)させて、イギリスの在来種と一緒に、自然で美しい景色を作ることを試みました。彼が「ワイルドガーデン」と名付けた庭づくりで、それは当時の園芸に対立する、全く新しい概念のガーデニング法でした。ロビンソンは、この湖の周りにも、イベリア半島原産の小さなスイセンを10万球植えたと伝えられますが、春になると、それらは今も咲くのでしょうか。 こちらは、もう少し丘を上った、果樹園の区画に広がるメドウです。これらのメドウは、グレイブタイのワイルドガーデンを形作る、最も大切な要素です。ロビンソンの著書を参考に植栽が考えられ、2月のスノードロップとクロッカスから始まり、3月は黄色いラッパズイセンと青いシラー、4月は野生種のチューリップや北米原産のカマシア、その他の球根花が花開いて、5月になると、イギリスの野生の花々が夏の終わりまで咲き続けます。私たちが訪れた2019年6月は、ワイルドフラワーが咲く景色でしたが、春の球根花の群生も見てみたいものですね。 フラワーガーデンの西の端にある小道から、遠くに屋敷と芝生が見えました。 上ってきた道を振り返ると、左手に、先ほど立っていた、パーゴラの連なる小道が見えます。ロビンソンはその昔、パーゴラに日本原産のフジや、クレマチスを絡めていました。それに倣って、現在、このパーゴラにもフジを這わせています。春になると、頭上から白い花房が垂れ下がり、両脇にブルーのアイリスと紫のアリウムが咲くという、夢のように美しい取り合わせが見られるそうです。 こちらは果樹園のメドウ。広さ2エーカー(約8,000㎡)の区画には、リンゴを中心とする果樹が点在しています。100年以上前にロビンソンが植えた第1世代の木々は、1987年の大嵐でほぼ倒されてしまい、今ある果樹は、1980年代に植えられた第2世代と、現在のオーナーによって2011年に植えられた第3世代の50本だそう。歴史を感じますね。果実はレストランの料理に使われるほか、ジュースにして保存され、ホテルの朝食で提供されます。 丘の中腹に、バラの絡まる、石塀で囲われたベンチがありました。ひと休みできるこのスポットは、そのうちバラで覆われるのでしょう。もう少し丘を上ると、ガラスの温室がいくつか見えてきました。 背の低い温室はコールドフレーム(冷床)と呼ばれる、苗を寒さから守るものです。苗を保管するバックヤードもおしゃれな雰囲気。 中で育てているのはハーブでしょうか。ガラス屋根をずらして通気できるようになっています。 背の高いほうの温室は、ちょっとレトロな雰囲気です。出番を待つ苗が並んでいます。 その先にあるのは、ピーチハウス。桃専用の温室のようで、実がなっているのが見えます。桃を露地で育てるにはきっと涼しすぎるのですね。 広い敷地の中を、パブリック・フットパスが通っていました。パブリック・フットパスとは、イギリスの丘や川辺、牧場などを抜ける公共の遊歩道のことで、このように私有地を通っている場合もあります。私有地は勝手に入ることができませんが、遊歩道上なら歩いてもよいことになっています。こんな美しい緑の中で、ゆっくりウォーキングを楽しんでみたいですね。 丘の上のキッチンガーデン さて、さらに上へ登ると、石塀に囲まれたキッチンガーデンのゲートが見えてきました。ウィリアム・ロビンソンが1898年に建設を始めたというキッチンガーデンです。 これまで英国の庭をいくつか見てきましたが、その中でも最大級のキッチンガーデン! 広さは堂々の1エーカー半(約6,000㎡)。丘のてっぺんの、南向き斜面につくられています。 地面に立っているとよくわかりませんが、上空から撮った写真を見ると、このキッチンガーデンは木の葉のような楕円形という、とても珍しい形をしています。通路は、中央を貫く通路が一本と、そこから左右に枝分かれして、ぐるりと一周できる大きな楕円の通路があって、それらの通路と、野菜の植わる畝の線が、まるで葉脈のように見えます。ロビンソンが木の葉をイメージしたかどうかはわかりませんが、緑の丘に抱かれるようにつくられた菜園に、四角が似合わないと思ったことは確かでしょう。 石塀には、地元サセックス州で切り出された砂岩が使われていますが、当時、この石塀を建ててガーデンを完成させるのに、3年を要したそうです。斜面に建てられているので、階段状の塀になっています。 イギリスの大きなお屋敷では、かつてこのようなキッチンガーデンが必ずあって、屋敷で消費される食料をまかなっていました。しかし、当時の菜園で、今も実際に使われているものはあまりありません。100年前と同じように、同じ手法を用いて作物を収穫できているのは特別なことだと、ヘッドガーデナーのトムは言います。昔ながらの方法でこのキッチンガーデンを使い続けることも、保全活動の大切な一部です。 2012年に、キッチンガーデンの大規模な修復作業が行われて、通路などがきれいに手入れされました。 エスパリエ仕立ての果樹と、菜園には、ハーブや切り花用の花も植わっています。 石塀に誘引されているのはレッドカラントでしょうか。ここでは四季を通じて収穫があり、それらはすべて、レストランの料理に使われます。まさに採れたての鮮度と、風味豊かな食材の魅力を存分に生かすべく、料理は考えられています。野菜などの栽培計画は、レストランのシェフとヘッドガーデナーが話し合って決めていて、シェフも毎日ここに足を運ぶそうです。 この壺のようなものは、ルバーブの遮光栽培をするための、ルバーブ・フォーサーでしょう。使いこまれているので、古いものかもしれませんね。果樹は鳥よけのケージの中に植えられています。 果樹のエスパリエ仕立てには、省スペースや日光を効率よく浴びるといった実用的な側面もありますが、古い石塀を背に枝を広げる姿はただ美しいものですね。さて、キッチンガーデン散策はこれで終わりです。 ゲートを出て、鬱蒼とした木々の間の小道を進むと… 一転して、開けた場所に出ました。丁寧に芝刈りが行われている、クロッケー用の芝生です。ここでは、バドミントンやショートテニスを楽しむほか、読書をしてゆっくり過ごしてもよいとのこと。静けさの漂うクリーンな空間は、ワイルドガーデンとコントラストをなす、ガーデンデザインの上でも大切な要素です。 屋敷周りのフラワーガーデン そのまま進むと、屋敷を見下ろす場所に出ました。見晴らしがよく、遠くまで見渡せます。 屋敷に続く石段を下りていきます。階段脇にもいろんな草花が植わっていて、楽しい! 階段を降りると、突然、古い建物に挟まれる形で、現代的なガラス張りの増築部分が出現しました。レストランに使われている新しい区画で、とってもおしゃれ。 この増築部分を設計した建築家は、30年にわたってレストランの常連客だったそう。だからこそ、素敵な庭のことがよくわかっていて、庭を存分に味わえるように考えたのでしょう。 レストラン脇の斜面は、グラス類やルピナスを使った、他の区画よりモダンで軽やかな印象の植栽。レストランのガラスや新しい白い敷石のテラスによくマッチしています。 レストランのテラスからは、昔からの敷石の小道が続いていて、途中にパラソルのあるテーブル席が用意されています。 庭で草花に囲まれながら、お茶や飲み物を楽しむこともできます。とても贅沢な時間の過ごし方ですね。 ウィリアム・ロビンソンが暮らしていた当時、芝生の生えている4つの区画は、低い生け垣に囲われた大きな花壇になっていて、いろいろな植物が植えられていました。海外からやってきた新しい植物がイギリスのどんな環境に合うのか。どんな植物同士を合わせると美しいのか。ロビンソンはそんなガーデニングの実験を繰り返し、花壇は日々、変化していたそうです。 芝生の中央には、ロビンソンの頃からのものでしょうか、古い石造りの日時計が、素朴なエリゲロンに彩られています。 フラワーガーデンの芝生は、見晴らしがよく、開放感のある空間です。カントリーサイドホテルの醍醐味ですね。 軽やかな明るい花色の中で、渋めの赤が効いた、とても美しい植栽です。春の植栽は、オレンジや赤のチューリップが主役だそう。 これぞ21世紀のコテージガーデン・スタイル。植物が自然に生い茂るような、ナチュラルな植栽ですが、花色に立ち姿、開花期間など、きっと計算されつくしているに違いありません。 ミシュラン一つ星の優雅なランチ 庭めぐりを終えて、いよいよランチの時間です。漆喰の天井飾りが美しい、二階の一室に通されると、イギリスの貴族ドラマに出てくるような長テーブルが私たちを待っていました。お庭からちらりと見えた、一階のガラス張りのお部屋にいた皆さんは、とても優雅な雰囲気で楽しんでらっしゃいました。誕生日や結婚記念日など、特別の機会に訪れるお客様も多いそうです。 窓から庭の緑が見えます。さて、キッチンガーデンで採れる野菜はどんなお味でしょう。料理が楽しみです。 こちらは、特製スモークサーモンに、サワークリームのようなクレム・フレーシュをミルフィーユ状に挟んだもの。上品な甘さのビートと、爽やかな苦味のクレソンが添えられています。 メインディッシュは、マッシュポテトとスプリンググリーンの上に載った子牛のステーキ。肉や魚は地産の最高級のものが使われていて、しっかりとした味わいです。マッシュポテトはぽってりとして、少し苦味のあるスプリンググリーンがアクセントに。デザートのカラメルホワイトチョコレートムースのカカオニブ添えは、地産のハチミツの繊細な甘みが美味しく感じられました。 美しいガーデンと、ミシュラン一つ星のおもてなしに、心もお腹も満たされた、とても幸せな時間でした。
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イングリッシュガーデン旅案内【英国】「グレイブタイ・マナー」〈前編〉イギリスのガーデニングを変えたウィリアム・ロビンソンの庭
歴史的価値を持つガーデン 16世紀後半のエリザベス朝時代に建てられたグレイブタイ・マナーは、ロンドンから南に50kmほど、ウェストサセックス州イースト・グリンステッドの近くにあります。19世紀、ヴィクトリア朝時代のガーデナーで園芸著述家のウィリアム・ロビンソン(William Robinson 1838–1935)が所有し、暮らしたことで、イギリス園芸史に残る文化遺産となりました。 現在、グレイブタイ・マナーは、美しい庭と田園風景の中でくつろぐことのできる、高級カントリーサイドホテル、そして、ミシュランガイドの一つ星を獲得したレストランとして知られています。屋敷の周りに広がる35エーカー(約14万㎡)のガーデンは、宿泊かレストランのゲストのみ見学ができます。現在見られる庭は近年の修復作業によって生まれたものですが、そこにはロビンソンの精神が息づいています。 「ワイルドガーデナー」ウィリアム・ロビンソン ウィリアム・ロビンソンは1838年、ジャガイモ飢饉の貧しさにあえぐアイルランドに生まれました。幼い頃から庭師見習いとして働き、23歳でロンドンに移ると、リージェンツ・パークの植物園で経験を積みます。 彼がロンドンで働き始めた19世紀中頃、ヴィクトリア朝中期のイギリスは、産業革命による豊かさの絶頂にありました。当時の園芸は、最新技術で建てられたガラスの温室で、プラントハンターが集めてきた熱帯の植物を育てたり、外来種の一年草を使って整形式花壇を作ったりするのが主流でした。非常にお金のかかった、贅沢な園芸が人気だったのです。 ロビンソンは次第に、そのような人為的で、自然を支配するような栽培や植栽の在り方に疑問を持ち、森や草原などの自然の美を生かした庭づくりを考えるようになります。 1866年、彼は29歳で有名なリンネ協会の特別会員に選ばれ、その後、雑誌や新聞に園芸記事を寄稿する著述家として仕事を始め、独立します。そして、1870年、代表作となる “The Wild Garden” を発表し、イギリスの森の外れや草原に、寒さに耐えられる野生種の外来種を植えて帰化させ、外来種と在来種を合わせた「自然で」手のかからない景色をつくることを提言しました。花々で幾何学模様を描く整形式庭園がもてはやされていた当時、その流れに真っ向から対抗する新しい庭づくりを示したのです。ロビンソンはその後も植物の最新情報を書き加え、改訂を繰り返しました。大反響を呼んだこの本は、今も読み継がれる、園芸本のベストセラーとなっています。 同時代を生きた友 ガートルード・ジーキル ロビンソンは翌年から、園芸週刊誌 “The Garden” を編集者として立ち上げ、ワイルドガーデンの考え方を一層広めていきます。週刊誌の寄稿者には、友人の女性ガーデンデザイナー、ガートルード・ジーキル(Gertrude Jekyll 1843-1932)もいました。 ジーキルは、昔ながらのコテージガーデンのスタイルを、鮮やかな色彩の植栽に発展させて、富裕層のガーデンシーンに大きな変化をもたらした人物です。2人はコテージガーデン風の自然な植栽というデザインの信条を分かち合い、長年にわたって友人関係を続けました。1883年にロビンソンが発表した著書 “The English Flower Garden” には、ジーキルによる寄稿記事が含まれていますし、また、このグレイブタイ・マナーの庭づくりにもジーキルが協力したといわれます。 早春の森のスノードロップに始まり、公園や草原に咲き広がるクロッカスやラッパズイセン、木立の中のブルーベル、そして、メドウの花々。イギリス各地で季節の移ろいを告げる、英国人にお馴染みの「自然な」花景色は、ロビンソンのワイルドガーデンの考え方から生まれたものといえます。ロビンソンは、宿根草を使った植栽スタイルやミックスボーダー(混植花壇)を広め、高山植物を使ったロックガーデンも提案しています。一方のジーキルは、さまざまな花が色彩豊かに咲く、ナチュラルな植栽スタイルを生み出しました。現在あるイングリッシュガーデンの姿は、ロビンソンとジーキルの2人によって、大きく形作られたと考えられています。 ガートルード・ジーキルについてはこちらの記事もご覧ください。 ●ジーキル女史のデザインがよみがえった「マナーハウス、アプトン・グレイ村」 ●現在のイングリッシュガーデンのイメージを作った庭「ヘスタークーム」【世界のガーデンを探る19】 理想の景色を求めた実験の日々 文筆業の成功で財を成したロビンソンは、1884年にグレイブタイ・マナーの屋敷と庭園、そして、周辺の土地を購入し、翌年から庭をつくり始めます。そして、亡くなるまでの約50年間をここで暮らし、自らの考えを実践する場として、理想とする景色を求めてガーデニングの実験を続けました。新しい外来植物がイギリスのどんな環境に合うのか、どんな植物同士を合わせるとよいのか、彼は実験の結果を著書や園芸誌で伝え続けました。 ロビンソンは周辺の牧草地や雑木林を徐々に買い増し、最終的には1,000エーカー(約4㎢)の土地を所有しました。森を守ることは人間にとって大切なことと考え、北米やインド、中国を原産とする、さまざまな広葉樹や針葉樹を植えて、新たに森をつくっています。そして、その森のはずれや、森の中の空き地、メドウ(牧草地)や湖の周りには、自らの考え通りに、耐寒性のある外来種の球根花や植物を植えて帰化させ、在来種とともに、自然で美しい景色をつくることを試みました。 ハシバミやクリの雑木林では、日本の白いシュウメイギクをはじめ、ユリ、ハアザミ、パンパスグラスを大きな茂みに育て、その下に、ブルーベルやシクラメンのカーペットをつくりました。屋敷近くの湖の周りに、イベリア半島原産の小型のスイセンを10万球も植えたり、北米原産のシロバナマンサクや、ナツツバキ、ヌマミズキなど、姿の美しい樹木や灌木を森に加えたりもしました。 ロビンソンは、剪定ばさみやホースといった新しい園芸用品も一般に広めました。70歳の頃、彼は怪我で背中を傷め車いすの生活になりますが、車いすを押してもらいながら庭を見て回ったといいます。現代のガーデニングに多大な影響を与えたロビンソンは、1935年に96歳でその生涯を閉じました。 美しさを取り戻した現在の庭 ロビンソンには後継者がいなかったため、全ての財産は営林に役立ててほしいと、国の林業委員会(フォレストリー・コミッション)に遺贈されました。屋敷や土地の管理のために慈善団体が設立されますが、しかし、その後まもなくして第二次世界大戦が始まり、屋敷はカナダ軍の駐留のため接収されます。この時、兵士が花壇を野菜作りのために掘り起こしてしまったので、ロビンソンの残したものは残念ながら、すべて失われてしまいました。 現在、ロビンソンの残した広大な森や牧草地は、ウィリアム・ロビンソン・グレイブタイ・チャリティという慈善団体によって管理されています。敷地の中心にある屋敷と屋敷周りの35エーカーのガーデンは、1958年にピーター・ハーバートに貸し出されて、ホテルとレストランの経営が始められました。ハーバートは2004年に引退するまでの約50年間で、グレイブタイ・マナーを、美しい田舎で最高級のサービスを受けられるカントリーサイドホテルの先駆けとして成功させましたが、彼の引退によってグレイブタイは衰退してしまいます。 しかし、2010年、現オーナーのホスキング夫妻に経営が移ったことで、大規模な改修も行われて、この場所はかつての輝きを取り戻しました。現在のヘッドガーデナー、トム・カワードは、名園グレート・ディクスターで腕を磨いた人物。「ロビンソンにも満足してもらえるような」ダイナミックで実験的なガーデニングを行い、庭をますます美しい姿に変えています。 *『グレイブタイ・マナー』後編で、ガーデン散策の様子をお伝えします。
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ビギナー向け! この夏にミニトマトを自分の手で育ててみよう!
トマトとミニトマトについて トマトは、ナス科ナス属の果菜類で、原産地は南米アンデスの高地。3〜4月にタネを播き、5月〜6月上旬頃に苗を植え付けて、6月下旬〜9月中旬に収穫、その後は枯死する一年草です。トマトの種まきには加温設備が必要なので、家庭菜園でトマトの栽培を楽しむ場合は、4月下旬頃から出回り始める苗を購入して、植え付けから始めるのが一般的。草丈は、放任すれば人の背丈を越えてぐんぐん伸びます。 トマトは、サイズによって大玉トマト、中玉トマト、ミニトマトに分類されています。今回スポットを当てるミニトマトは、果実の重みが20〜30gくらいで、栽培しやすく収穫量が多いのが特徴です。 トマトは、南米アンデス地方で古代から食用されていましたが、ヨーロッパを経て日本に伝えられたのは、江戸時代。最初は真っ赤な色や青臭い味が好まれず、「赤茄子」と呼ばれて観賞用として栽培されていたようです。一般に食べられるようになったのは明治後期以降で、日本人の嗜好に合った品種が開発された昭和以降から急速に普及しました。 今日では、人気の夏野菜として需要が高いことから品種改良が進み、糖度の高いトマトや料理に向くトマト、黄色やオレンジのトマトなど、さまざまな種類が出回っています。 トマトとミニトマトに適した環境 南米のペルーやエクアドル近辺が原産地のトマトは、標高3,000m級の高原地帯がふるさと。比較的雨の少ない地域で、日当たりがよく、昼夜の温度差が大きい環境を好みます。したがって、日本の高温多湿の気候、それも夜に気温が下がらず熱帯夜が続く夏が、トマトにとっては過酷な環境なんです! そのせいか「トマトの栽培は難しい」と、家庭菜園の世界ではささやかれがち。そこで、ビギナーさんにおすすめなのが、ミニトマトにターゲットを絞ることです。ミニトマトなら収穫量も豊富なうえに、摘芯や摘果、雨除けなどの栽培テクニックにあまりこだわらず、放任してもよく実ってくれますよ! マンションでもミニトマトは栽培できる! ミニトマトの育て方 ここからは、ビギナーさんに向けて「ミニトマトの鉢栽培」にターゲットを絞った、育て方の実践編です。準備するものから、鉢への植え付け、日頃の管理など、ビギナーさんでもすぐに取りかかれるように、詳しく解説していきます。 準備するもの 【大鉢】 10号鉢(直径約30㎝)に1株を目安に、大型の鉢を用意します。ミニトマト自体は小さく、購入時の苗もまだ小さいので、ビギナーの方なら「小さい鉢でもいいかな」とイメージしがちでしょう。しかし、すぐにミニトマトはぐんぐん茎葉を伸ばして、人の背丈ほどにまで成長します。ベランダやテラスなどでの鉢栽培では、たっぷり土が入る大鉢を用意するのが成功の秘訣です。 【鉢底ネットと鉢底石】 鉢底ネットは、鉢穴から土が流れ出すのを防ぐとともに、病害虫の侵入も防ぎます。 鉢底石は、水はけをよくするために鉢底に敷きます。 【培養土】 市販の果菜類用の培養土を使うと便利です。トマトに向いている培養土か、必ずパッケージの記載を確認してから購入しましょう。なぜなら野菜によっては、土壌酸度の適正値が異なるためです。トマトに適した配合の土を選んでください。 【ミニトマトの苗】 ヒョロヒョロと間延びしておらず、節間がしまってがっちりとした、勢いのある苗を選びましょう。値段は高めになりますが、接木苗(野生の台木に品種を接木している苗)を選ぶと、病気に強いので、より管理が楽になります。 【支柱とひも】 ミニトマトは人の背丈ほどにまで成長し、たくさんの実をつけるので、倒伏を防ぐために支柱とひもは必須アイテムです。長さ約2mの支柱を3本用意し、誘引するためのひもも準備しておきましょう。ひもの代わりに園芸用のビニタイを購入しておくと、より使いやすくて便利です。 植え付け 大鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、底が隠れる程度に鉢底石を入れます。 市販の果菜類用の培養土を入れます。鉢縁から2〜3cm下くらいまでを目安に、水やりの際に水があふれ出さないよう、ウォータースペースを取っておきましょう。 鉢の中央に、苗の大きさに合わせた植え穴をあけます。ポットからトマト苗を取り出して、根鉢を崩さないように植え付けましょう。根元に土を寄せて、ぐらつかないようにしっかり押さえておきます。 鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと水やりをします。 3本の支柱を鉢縁に立て、奥まで深く差し込みます。差し込みが浅いと倒れやすくなるので注意。3本の支柱の上部をまとめ、ひもでとめて固定します。 トマトの苗の主枝を支柱に誘引し、ひも、またはビニタイでとめて固定します。 日々の手入れ 【置き場所】 日当たりがよく、風通しのよい場所で育成します。ベランダやテラスなど、コンクリート状のフロアで管理する場合は、床からの熱を遮断するために、脚をかませておくか、ウッドパネルなどを敷いて対策しましょう。実がつき始めたら、雨が当たらない軒先やベランダなどへ移動するとベター。 【水やり】 表土が乾いたら、株全体にかけずに株元の土を狙って鉢底から水が流れ出すまでたっぷりと与えます。一番花が果実をつける頃までは、水やりを控えめに管理しましょう。梅雨明け後、真夏の高温期は乾燥しやすいので、朝夕2回の水やりを行いましょう。真昼に与えると、すぐに太陽熱によって温度が上がり、お湯のように熱くなってトマトが弱るので、涼しい時間帯に与えることがポイントです。 【誘引】 茎葉が順調に伸びてきたら、随時支柱に茎を誘引して、ひも、またはビニタイでとめて、倒伏を防ぎます。ひもをかける位置は、花の下ではなく、葉の下を目安に。主枝が折れないように、無理せずに螺旋状にとめていきます。 【肥料】 一番果が膨らみ始めたら、大さじ3杯くらいの化成肥料(N-P-K=8-8-8)を表土にまいて、土になじませます。以降は2〜3週間に1度を目安に、追肥しましょう。あまり肥料を多く与えすぎると、茎葉ばかりが茂って実がつかない「つるボケ」の状態になってしまいます。株の状態を見て、与えすぎには注意しましょう。 【仕立て方】 脇芽が葉のつけ根から出てきたら、茂りすぎて日当たりが悪くなるため摘み取ります。脇芽が出たらすべて取り、主枝の1本のみを残す、1本仕立てにしましょう。ミニトマトは樹勢が強いため、主枝と第1果房のすぐ下の脇芽を伸ばして、2本仕立てにしてもかまいません。草丈が支柱の高さを越えて、持て余すようようになったら、主枝の先端を切り取って、それ以上伸びないようにします。 【一番花を実らせる】 トマトは、一番花に確実に実をつけさせることがポイント。一番花に実がつかないと、茎葉ばかりが茂る「つるボケ」の状態になってしまうからです。しかし、一番花が咲く頃は気温も低く、天候が悪いと虫が活動しなくて受粉できないこともあります。そこで、「トマトトーン」などのホルモン剤を吹きつけて、確実に実らせるのがおすすめ。すると、樹勢が安定して第2花房以降も安定して結実します。 ちなみに大玉トマトの場合は、1花房に6個以上の実がついた時は、4〜5個のみ残して他は摘果し、一つひとつの果実を充実させる必要がありますが、ミニトマトは摘果の必要はありません。 【害虫の予防】 トマトの生育期は、病害虫が発生しやすい時期です。早期に発見して捕殺しましょう。適応の薬剤を散布して防除すると万全ですが、「せっかくの家庭栽培だから薬剤を使いたくない」という場合には、木酢液やニームなど、自然由来の害虫除けけを利用するのも一案です。 【雨除け】 トマトの果実は、雨に当たると実が割れてしまったり、病気にかかりやすくなったりします。果実がつき始めたら、軒下やベランダなど、日当たりがよく雨の当たらない場所へ移動しましょう。そのような場所がない場合は、支柱とビニールがセットになった被覆資材のキットを設置すると便利です。 【収穫】 実が赤くなって熟した順に、朝のうちに収穫していきます。ミニトマトは約3カ月間、収穫を楽しめます。 害虫の対処方法 トマトの大敵は、オオタバコガやタバコガ。青い実のヘタ近くに4〜5mmの丸い穴があき、周りに糞がついていたら、オオタバコガやタバコガの幼虫がいることを疑いましょう。茎の中に入って食害し、茎の先端のほうが枯れ込んでくることもあります。幼虫は緑色をしたイモムシで、大きくなると4〜5cmにもなって、旺盛に活動するので注意。異変があった時は株周りをじっくり観察し、見つけ次第捕殺しましょう。被害にあった果実は摘み取って処分します。薬剤で駆除しようとしても、果実や茎の内部に入り込んでいるとあまり効果がないので、6月頃のまだ小さいうちに発見して対処することが大切です。 ミニトマト栽培の注意点 トマトの中でも比較的育てやすいミニトマトは、ぜひビギナーさんにチャレンジしていただきたい野菜の一つです。しかし、じつのところビギナーさんにハマってほしくない「ミニトマト栽培の罠」があります。これからご紹介する栽培の注意点について、知っているのと知らないのとでは大違い。健やかに育てて、収穫の喜びを味わいましょう。 プランターの深さが足りない 4月下旬頃から花苗店やホームセンターに出回り始めるミニトマトの苗は、まだ大変幼い状態です。トマトが生育している姿を見たことがないビギナーさんは「これより1〜2回り大きな鉢を準備すればいいのかな」とイメージしがちでしょう。でも、それが失敗の原因に。ミニトマトであっても、草丈は人の背丈以上になるんです。その地上部を支えるためには、十分に根が張れる土の量が必要になります。少なくとも深さ30cmはある10号以上の鉢や、大型プランターを準備して植え付けましょう。背丈が大きくなるのはもちろん、茎葉を大きく広げて株幅も40〜60cmになるので、ベランダやテラスなどで育てる場合は、置き場所を確保できるかも検討しておいたほうがよさそうです。とにかく、実際に育て始めてから「こんなに大きくなるの!?」とビックリしないように、サイズ感をイメージしておいてくださいね。 水を与えすぎている トマトの原産地は、南米アンデス地方の高原地帯です。年間を通して日照量が多く、比較的雨の少ない気候の下で生育してきたトマトは、乾燥した気候には大変強い性質をもっています。したがって、トマトの栽培では、適切な水の管理がポイントに。水を与えすぎると、根腐れを起こしたり、甘みが落ちたりするほか、実が水分を含みすぎて膨張し、割れてしまう原因にもなってしまいます。 トマトの栽培に限らずですが、毎日の習慣として水やりをするのはNGです。動物のように毎日決まった時間に食事を欲しがるのとは違い、植物は土の状態に合わせて水やりをする必要があります。晴れた日もあれば、雨の続く日もあり、毎日土が乾くわけではないのです。常にジメジメした状態が続くと健康に育たなくなってしまうので、土の状態を見て、乾いていたら、鉢底から流れ出すまでたっぷりと与えることがポイント。また、トマトの茎葉がだらんと下がっていたら、水を欲しがっている証拠です。ただちに水やりをしましょう。植物が発するメッセージが分かるようになると、愛情もより増していきますよ! 脇芽かきをしていない トマトを栽培していると、主枝とは別に葉の茎の根元から、脇芽が出てきます。この脇芽が出たら、小さいうちに摘み取っておくことが大切なポイントです。脇芽を放置しておくと、茎葉の量が増えて日当たりや風通しが悪くなるうえに、茎葉が多くなるだけ養分が分散されて、実つきが悪くなってしまうのです。脇芽は収穫まで頻繁につくので、こまめにチェックしましょう。 脇芽を見つけたら、晴れた日の午前中に手で摘み取ります。これは、ウイルス病が入らないように傷口を早く乾燥させるためで、同じくウイルスの伝染を防ぐためにも、剪定バサミよりは手で摘み取るのがおすすめです。 大玉トマトにも挑戦してみよう! この記事では、ミニトマトの栽培について、さまざまな角度から解説してきました。ビギナーさんでも、きっとたくさんのミニトマトを収穫できるはずです。この成功体験は、次のステップに進むきっかけとなることでしょう。栽培難度は上がりますが、次は中玉トマトや大玉トマトなど、食べ応えのあるトマトの栽培にきっとチャレンジしたくなるはず。いずれも基本的な栽培方法は同じですから、さまざまなトマトを育てて、味比べを楽しんではいかがでしょう。 Halfpoint/shutterstock.com ミニトマト・トマト栽培についてよくある質問 ミニトマトが成らなくなってきました。このままにしておけば、来年も収穫できますか? 秋が近づくと、夏の間元気に実ってくれていたミニトマトもそろそろ終わりになる時期に。ミニトマトは日本では一年草なので、そのままにしておいても残念ながら翌年は芽を出しません。株が弱り、収穫できなくなってきたら根から抜いて片付けます。ミニトマトを片付けるとスペースがあくので、冬に楽しむ秋植えの野菜や花を植えるのもよいですね。あまり広い場所が取れない家庭菜園では、効率よくスペースを使うためにも、終わってしまった株は抜いて、土を休ませてやりましょう。枯れた株がないので、見た目もすっきりしますよ。 鉢植えのミニトマトがたくさんできたのですが、皮がかたくて生ではあまり美味しくありません。何か良いレシピはありませんか? 野菜の中でもミニトマトは育てやすく人気です。品種もたくさん出ており、色とりどりのミニトマトがガーデニングで楽しめるようになりました。丹精込めて育てたのだから美味しくいただきたいですよね。皮が固いトマトは、湯むきして使う方法もありますが、お湯を沸かすのが面倒な時はそのまま冷凍します。凍ったトマトを水で洗えばスルっと皮がむけ、そのままサラダに添えれば、ひんやり新しい食感が楽しめます。また練乳をかけると、お子さんにも人気のデザートに。たくさん収穫できた時は、セミドライトマトにするのもオススメです。ミニトマトを半分に切り、切り口を上にして塩をかけ並べます。そのまま天日干しするか、130℃のオーブンで1時間程焼成。トマトの水分が飛んでしぼんでいたら完成です。そのまま食べても濃厚な旨味が楽しめますが、パスタの具材としてやオリーブオイルに漬けて調味料として、色々な料理で楽しみことができます。庭の収穫を存分に楽しんでください! 今年、初めてトマトを育てましたが、たくさん実が割れてしまいました。どうしてですか? キッチンガーデンでの最大の醍醐味は、やはり収穫です。せっかくなら、健康で生き生きとした野菜を収穫したいですよね。しかし、トマトのひび割れは、農家の方でも起こってしまう症状。この実が割れることを「裂果(れっか)」といいます。乾燥している時に、大雨などが降り、一気に水分を吸い上げたトマト。それに伴い、実もあっという間に大きく育てばいいのですが、皮はそのスピードに付いていくことができず、ひび割れが起きてしまうことがあるのです。実を甘く育てるために、水分を少なくし乾燥気味に育てる方法もありますが、極度に乾燥させすぎたりすると裂果が起きやすくなるので要注意です。予防対策は、雨除けをすること。プランター栽培の場合は、直接雨の当たらない場所で育てて、極度の乾燥や過湿を防ぐのもいいでしょう。ちなみに、裂果したトマトも、もちろん食べることができますので、ご心配なく! 家庭菜園でトマトを育てています。甘くするにはどうしたら良いでしょうか? 太陽の光をたっぷり浴び、ガーデンで育ったトマトはとても美味しいもの。そんな家庭菜園のトマトを、さらに甘く濃厚な味にするコツが水分です。水分を多く与えられたトマトは、成長が早い反面やや味が薄くなってしまう傾向にあります。トマトを育てる時には、水を控えめにしてゆっくり成長させることで味が濃く甘いトマトを楽しむことができます。完熟するまでしっかり育ててから収穫するのもポイントです。実が柔らかく、濃厚で甘いトマトを楽しめます。また、実の表面がひび割れてしまう「裂果」という現象は、水分を一気に吸収するとなりやすいので、水分を控えめに一定量与えることでこれを防ぐという効果もあります。 併せて読みたい
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バラ咲く季節のバーチャルオープンガーデン〜バラのフォトコンテスト受賞の庭から〜
壁一面がバラ色に染まるゴージャスな写真投稿で受賞 この投稿をInstagramで見る Bluemoon Cottage(@bluemoon_cottage)がシェアした投稿 2019年5月17日から6月9日まで、バラの開花シーズンに開催した【Instagram バラのフォトコンテスト2019】。“お気に入りのバラ”の写真をテーマに、約1万3,000件ご投稿いただいた中から、編集長賞を見事受賞したのは、つるバラの‘芽衣’が壁一面に無数に咲いて、bluemoon_cottageさんの喜びが画面から伝わってくる写真でした。 ●受賞写真のご紹介記事はこちら ●2020年バラのフォトコンテストも開催中! 編集長賞の受賞を記念して、今年のバラの最盛期に編集部が取材に伺うお約束でしたが、緊急事態宣言により実現することが叶いませんでした。そこで、今回は、ご自身が撮影したお気に入りの写真と、昨年、今井秀治カメラマンが撮影した写真をお借りして、bluemoon_cottageさんこと牧勝美さんの庭づくりをご紹介いたします。 ピンクのバラ‘芽衣’が咲く景色づくり フォトコンテストで受賞した写真に写っていたのは、“我が家のシンボル”という、つるバラの‘芽衣’が絡む建物です。現在、コテージと呼んでいるこの建物は、7年前に築50年の納屋を業者さんにリフォームしてもらったもの。 庭を訪れたお客さまが靴のまま入ることができる、おもてなしの場所として、また、レッスンの場として活用している、と牧さん。 「以前、この建物の周囲はアスファルトで地面が覆われていて、地植えができる場所がなかったんです。壁につるバラを絡めたら少しは華やかになるかなぁと思って、‘芽衣’を植えました。本当は、母屋につるバラを這わせてみたいという夢があったのですが、純和風の建築物の壁に釘を打つ勇気がなくて……。納屋なら気軽に打てるかな? と、主人に頼んでフェンスを壁に取り付けてもらいました」 この建物の周囲は風の通り道で、台風が来ると強風が吹き抜けるそう。風の被害を軽減するためにも、しっかりとつるを固定できるものが必要でした。壁に取り付けたフェンスは、コンクリートの基礎に使う資材のメッシュフェンス。年々伸びるつるを毎年丁寧に誘引し、植えてから数年で二面の壁を覆うほどのボリュームになりました。 撮影/今井秀治 このバラを選んだ理由は、どの位置で剪定しても花が咲くことから。バラ栽培の初心者だった頃に迎えた品種で、日頃の手入れには、木酢液とキトサンを散布。病気に悩まされることもなく、毎年たくさんの花が咲きます。 でも一昨年は、テッポウムシの被害にあって、何本も枝が枯れてしまったとか。 2020年4月下旬、バラが咲き始める前のコテージ。 「今年は最盛期の70%位のボリュームではないでしょうか。昨年、もう1株‘芽衣’を隣に植えたので、来年はもう少しボリュームが出るかと思います」 庭づくりが日々の楽しみになるまで 敷地奥のエリアは、バラのアーチが誘う秘密の花園。 牧さんがこのように庭づくりを始めたのは、結婚してこの家に嫁いだ1996年から。二世帯で暮らす母屋の周囲には、和の庭があり、その裏手の敷地なら使っていいよとお義父さまの許可をもらったことから植物を育て始めました。 「今、‘芽衣’が咲く建物があるエリアは、嫁いだ時は、地面はアスファルトで舗装されていました。他の場所も砂利だったので、チューリップやビオラなどを地植えしようとしても、固くて植え穴を掘るのが大変だったのを思い出します」 鉢植えで植物を育てていた2009年の様子。 そのため最初の頃は、写真のように鉢植えで植物を楽しんでいました。でも年々、鉢植えだけでは満足ができなくなった牧さん。ご主人に頼んで花壇を作ってもらったのです。 「花壇といっても、敷地内の片隅に置いてあった余りものの御影石の柱で土止めをした簡単なもので、深くは掘らずに、上に少し土を足した程度のものでした」。 庭巡りやイベントで庭づくりのヒントを得る 植物をもっと知りたいという思いが日に日に膨らんでいった牧さん。2000年に知り合った寄せ植えの先生のレッスンを受けたり、バラが咲く庭を見学に行ったりしているうちに、年々庭のある生活が楽しくなっていきました。 ふわふわと咲くクレマチスは、牧さんのお気に入りの植物の一つ。 「神奈川の横浜イングリッシュガーデンでは、こんなに密植してもバラは育つんだというカルチャーショックを受けました。茨城にある坂野ガーデンでは、雄大な庭のロケーションに感動しましたし、昨年訪問した埼玉のガーデンカフェ・グリーンローズでは、バラやクレマチスがたくさん植えてあって、我が家にもまだまだたくさん植えられるというヒントをもらいました」。 ご主人が手作りしたパーゴラ付きフェンスには、右に‘バフ・ビューティー’、左に‘クラウン・プリンセス・マルガリータ’を。パーゴラの背後からは‘トレジャー・トローブ’が絡み、殺風景にならないようにと雑貨を飾っています。撮影/今井秀治 各地のガーデンやイベントに足を運んで、植物やDIYのアイデアを得ながら、できるところは夫婦でコツコツと、時には部分的にプロに任せたりしながら、庭をつくり続けてきた牧さん。これまでご主人は、コテージ周辺のレンガ敷きや木材のフェンス、ガーデンシンク、パーゴラ付きのフェンスなど、数々のDIYで庭づくりに協力してくれました。また、念願のコテージを「ユ・メ・ミ ファクトリー」に依頼したりして、敷地のあちこちに見所が増えていったのです。 通路のピンコロ石は夫婦で敷き、コテージ前の植栽は牧さんが試行錯誤しながら植え込みをしました。撮影/今井秀治 家庭菜園から秘密の花園へ、約3年でリニューアル 小径が大好きという牧さん。秘密の花園エリアでは、奥へと続くワクワク感を楽しめるデザインに。 現在、秘密の花園と呼んでいる敷地奥のスペースは、もとはお義父さまが果樹を植えたり家庭菜園を楽しんでいた場所でした。 バラが咲く秘密の花園エリアは、2017年までは家庭菜園でした。 「義父が亡くなった後、家庭菜園として管理し続けるのはとても大変で、真夏の草取りは苦痛でした。なので、自分が楽しめる庭につくり替えようと思い立って、バラやクレマチス、宿根草を植え始めました」。 2017年、秘密の花園づくりを始めた頃。 まずは、草取りのための足場になるようにと敷石の小径を何本か作って、メンテナンスしやすくデザインしました。また、バラやクレマチスを立体的に育てられるよう、ご主人にメッシュフェンスの仕切り壁を建ててもらうなどして、骨格を作っていきました。 今は、花が咲いていない時期でも、カラーリーフが美しく映える庭を目指しています。 「‘芽衣’が咲くコテージガーデンの半分以上は、業者の方に助けていただいたので、秘密の花園は、できるだけお金をかけずに、主人と2人、DIYで頑張るつもり。今もつくり続けています」 庭に入って右手にあるレンガのボーダーガーデン。バラやクレマチスなどが咲いていなくても楽しめる植栽を目指しています。撮影/今井秀治 こうして、自宅の敷地を少しずつ庭に変えていった牧さん。現在は、バラや紫陽花が100株以上、クレマチスも50株以上育っています。 「バラの剪定や和の庭の草取りは主人に手伝ってもらい、和の庭の樹木の剪定は庭師さんにお願いしています。その他のエリアは、ほとんど私一人の作業です。暑さ寒さでくたびれたり、台風対策など、いろいろ大変なことも時にはありますが、こうして四季折々の風景を楽しめる庭を目指して頑張っていられるのは、日々庭から癒やしをもらっているからかなぁ」と牧さん。 外出自粛時に庭で過ごした時間 昨年は白とブルー系の花が多くて全体にぼやけた印象だったので、今年は濃い花をプラスしてメリハリを。 牧さんは、これまで毎年オープンガーデンを開催して花好きな方に楽しんでいただいてきましたが、今年はこの状況下のため、オープンガーデンは中止に。その分、インスタグラムに日々咲き進む庭の写真や動画を多数投稿して、庭仲間たちと花が咲く喜びを共有することができたといいます。 「秘密の花園を本格的に植栽し始めて今年で3年目になりました。今年はバラやクレマチスの株が充実して、フェンスいっぱいに花が咲いたのに、その景色を皆さんに楽しんでいただけなかったのは本当に残念です。でも、インスタグラムを通じて大勢の方に私の投稿を楽しんでいただけたのは、庭づくりの励みになりました」。 オベリスクのスイートピー。こんなにきれいな色に咲くとは想像していなくて、この景色に感激しました。 今回、この取材のために、牧さんには過去の写真や今年撮影した多くの写真を見せていただきました。取材を終えて、牧さんは、こう話してくれました。 「編集長賞をいただいたお陰で、自分の庭づくりの歴史をじっくり振り返ることができました。これまでの頑張りと庭への思いが再確認でき、これからも大切につくり続けようと改めて力が湧いてきたように思います。来年はぜひ、我が家のバラシーズンを、ここで楽しんでいただけますように」。 来年こそ、最盛期の庭で牧さんに会えることをガーデンストーリー編集部も楽しみにしています。 ●牧さんのバラ咲く庭や秘密の花園の動画もご覧ください。 写真協力/今井秀治、牧 勝美
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家庭菜園

小さな庭で収穫たっぷり! デッキ一体型家庭菜園
ビフォーは、雑草が繁茂していた庭 庭づくりをする前は、軽自動車2台分のスペースに雑草が繁茂していました。このままでは雑然とした雰囲気ですし、ヤブ蚊も発生してしまいます。このような雑草だらけの庭をどうにかしたいと思っている方は非常に多く、その手段としてコンクリートで覆ってしまうケースがよくあります。でもその前に、別の案を探ってみることを強くおすすめします。 庭をコンクリートで覆ってしまわないで! コンクリートで覆われた地面は、日射を受け赤外放射という熱を発します。頭上からの日射に足元からの赤外放射が加わると、外気温が30℃でも体感温度は40℃にも上がってしまいます。コンクリートで覆われた面積が広ければ広いほど、この赤外放射の熱量は増し、室内の冷房効率も著しく低下します。 一方、地面が緑で覆われている場合、その表面温度はコンクリートと比較し10℃も低くなることが環境省から発表されています。 ●庭づくりは暑さ対策にも効果絶大! 10℃も差が出る緑の実力 アフターは駐車もできて、家庭菜園も芝生もある庭に! この庭の依頼を受けたのは、造園家の阿部容子さんが在籍する「かたくり工房」。公園や病院、マンションの庭、ショーガーデンなどを手がける一方で、個人邸の庭づくりを大事にしています。 施工にあたっては、庭の手前に駐車スペースを確保し、フェンスを仕切りにして奥をガーデンにしました。駐車スペースは全体をコンクリートで覆ってしまうと、前述のように高温になりすぎるので、芝生を張ってタイヤが通る部分だけを石張りに。タイヤが通る部分は踏圧で植物が育たないので、最初から石張りにしたほうが芝生の張り替えなどの手間も省けて効率的です。 スリッパのまま行き来ができるデッキ一体型菜園 フェンスの奥が、芝生とデッキ、菜園が揃ったプライベートエリアです。デッキと菜園は一体型になっていて、地面レベルがほぼ同じ高さです。リビングからスリッパのままデッキへ出て、菜園で野菜を収穫し、そのまま室内に戻るということが可能です。施工当時、まだお子さんが小さかったことから、できるだけ菜園を生活空間に近づけて、靴を脱いだり履いたりする手間も省けるようにしました。 隣家との境には、リンゴの木とジューンベリーを植栽してあります。ジューンベリーは春の白い花、初夏の赤黒い果実、秋には美しい紅葉と、楽しみの多い果樹です。果実は生で食べても甘酸っぱく美味しくいただけますし、ジャムなどにして保存することもできます。ジューンベリーを角地に植栽し、その両サイドにリンゴをエスパリエ仕立てにしました。エスパリエ仕立てとは、枝を水平に伸ばす果樹の仕立て方の一つです。枝をそのまま自然樹形で仕立てると、その下にある菜園が日陰になってしまいますが、エスパリエ仕立てなら陰を作ることなく省スペースで果樹栽培が可能なので、小さな庭づくりにはおすすめの仕立て方です。菜園は深さがあるので、ジャガイモやダイコンなどの根菜類も育てられます。 家族がゆったり集えるオリジナル「デッキ in テーブル」 デッキは家族が庭を眺めながらゆっくり過ごせるアウトドアリビングとして活躍します。デッキチェアが2脚置けますが、テーブルセットも置くと菜園までの動線の邪魔になるので、使う時だけ引き出して使える「デッキ in テーブル」を制作しました。使用しない場合は、デッキの中にしまえる仕掛けになっています。この写真は、このデッキを制作したのは「かたくり工房」スタッフで、テーブルは4人で囲めるくらいの大きさです。また、庭へ降りる際のステップは、上り下りしやすい段差であることはもちろん、奥行きも吟味。ステップに腰を下ろしてリラックスできるよう、十分な奥行きが取られています。 防犯対策にもなるメロディーフェンス フェンスは格子状のデザインとし、庭への風通しや日照が確保できるようにしました。このフェンス、じつは音が鳴るのです。間に長さの異なる鉄筋が入っており、バチで叩くとメロディーが奏でられる楽しい仕掛けがあります。お子さんやその友人たちにも大人気です。 中央の白い大きなコンテナは、ライトが灯るライティングコンテナ。夜になると公道に面した駐車場側は明るく照らし出され、庭側は暗くなるので、プライベートエリアを守ることができます。このように、完全に壁などで覆ってしまわないほうが、防犯対策には有効です。 庭は五感刺激の宝庫 デッキを下りたエリアは芝生にしました。立水栓の周囲を玉砂利でデザインし、タイムも植栽してあります。玉砂利の上を裸足で歩くと足裏が刺激され、タイムの香りも立ち上ります。タイムは料理にも使えるハーブですし、五感への刺激は豊かな感性を養うきっかけにもなります。 立水栓の位置は意外と大事。庭の真ん中にあったほうが水まきの際にホースさばきが楽です。地植えの植物には基本的に水やりはいらないのですが、近年のような猛暑が続く場合には、菜園にも芝生にも水やりをしたほうがいいでしょう。特に、ナスは水が不足すると硬くて食べられません。葉っぱがくたっとなるような場合には、水やりが必要です。 このように、小さな庭こそプロの知恵と技術を借りましょう。最初にいいデザインをしてもらうことで、その後のガーデニングの楽しみや暮らし方が大きく違ってきます。「こんな小さなスペースをお願いしていいのかしら」「ガーデンデザイナーに依頼するなんて敷居が高い」と思われている方が少なくありませんが、そんなことはありません。気軽に相談して、充実したガーデンライフを叶えてくださいね。




















